第39話 才能だ

文字数 568文字

 夏のインターハイが始まろうとしていた。

 三年前、城山第一高校から生まれ変わり、体育科の募集を停止して進学校として力を入れだした大城学園。むさ苦しい体育科を廃し、スタイリッシュでポップなイメージに刷新した。
 去年から学ランから変わったブレザー、女子の制服もかわいくなり、さらには今年完成した新校舎、ちょっとしたカルチャーショックが起きていた。

 野球部はレギュラーのほとんどが三年、最後の体育科が占めている。そして昨年の実績は県四強である。まず望未は野球部でレギュラーを勝ち取らなければならない。
 学ラン組の三年生はブレザー組を妬み、特に体育科の学生はその存在価値をアピールすべく威張り散らす。
 運動部の一年生は目の敵にされていた。



「城山中出身、一年A組、来生望未。ポジション、キャッチャー」
 入部の際の自己紹介。
 幸いにも捕手は三年生の正捕手、二年に一人、しかもコンバートされてキャッチャーを『やらされている』ようだ。一年では望未の他にはいなかった。

 三年は大会に向け練習を始める。一年はポジション別にその実力を測る。それを二年生が担当する。
 経験がより濃く必要なポジションであるキャッチャーとして、望未はその日が浅すぎた。
 肩は申し分ない。キャッチングも及第点。配球の基本もクリア。しかし気配りや目配りなどリードには経験不足があった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み