2004年7月18日 メアリー・ベルトランの日記

文字数 859文字

 ついさっきまで、あんなに楽しくはしゃぎながら新しく出来たボーイフレンドについておしゃべりをしていたヘザーも今はすっかり寝静まり、ようやく独りになれた。彼女のことは嫌いじゃないし、会話をしていて嫌な気分にもならない。けれど、私はこの眠る前の人生における僅かなひととき、そう、独り色々なことを考える時間が大事なの。今もこうして静かに時が過ぎてゆく…… いいえ、静かなんて程遠いわよ、ここは! 常に鳴り響く轟音のエンジン音! もう、これが無いと物足りなく不安に感じる程、私はこのフライト・アテンダントという職業に慣れてしまっているのかもしれない! 慣れなんて、本当に怖いものね。全てが、時の速さで私の気付かない内に過ぎ去っていく…… 実際のところ、私は人生の多くの時間をマッハ「0.8」の機上で過ごしている。どれぐらい速いかなんて、仕事をしながら少し休憩している間に日付けが行ったり、また来たりして、気付けば大海原を跨いで違う国に居るのだから、それは相当なものね……

「アインシュタインの相対性理論によれば君は地上に居るよりも時の流れが遅く、他の人達より若さを保てるよ」なんて昔付き合っていたつまらない男が言っていたけれど、「それも人生におけるたった一秒程度のことだけどね」って付け加えた時のあの憎めない意地悪なカワイイ顔を思い出すと、少しぐらいはあいつのことも好きだったのかもしれない。まあ、あの頃の私はあいつを好きだったんだよね。ああ、あいつの住んでいた安アパートを思い出しちゃったな。建物の屋根の傾斜がベッドのすぐ真上にあって、目覚めるとよく寝ぼけて頭をぶつけたっけな。今、居るこの機内の休憩室も、屋根裏部屋みたいで狭くて落ち着く。何だか少し懐かしくて、色々なことを思い出す……

「メアリー! まだ起きているの? もし寝る気が無いなら、今すぐベッドから出てきて働いてもかまわないわよ!」
「ケイト、答えはノーよ! おやすみ!」
 今日は、ここまで…… 起きた時、

の為のフルーツが残っているとイイけれど、どうかしらね。
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