第100話
文字数 567文字
お客様が誰もいなかったので、ポーカーフェイスが崩れてしまったみたいだ。杏さんの方に気持ちの比重が大きかったのが、渚さんにばれてしまって焦る。
「まあ、いいわ。今日はマスターにお願いがあってきたんだから」
渚さんは誰もいない店内を見ると嬉しそうな顔でカウンター席に座った。メニューを手に取って、「杏さん、こっちこっち」と手招きした。
杏さんは渚さんの隣に座ると、一緒にメニューを覗き込む。しばらくメニューとにらめっこしていたが、「ご飯……、食べてもいいですか?」と遠慮がちに言った。閉店間近なので、食事を頼んでいいのか迷ったのだろう。
「もちろんですよ。今日は雨で冷えましたから、温かいものをどうぞ召し上がってくださいね」
と声をかけると、杏さんはにこっと頷いた。杏さんに笑顔を向けられるだけで嬉しくなってしまう。ああ、早く店じまいをしてしまわなくてよかった。先ほど練習に使用したカップを洗いながら杏さんがメニューを選ぶのを待つ。
「私、ベーコンと野菜のペペロンチーノね」
渚さんがメニューをさっと眺めただけで注文する。休日前に立ち寄ってくださったときには、いつも選ぶ渚さんのお気に入りのメニューだ。ペペロンチーノはニンニクを使うので、次の日が仕事の時に控えるのは、僕も同じだからよくわかる。
「ええと……。何にしようかな」
「まあ、いいわ。今日はマスターにお願いがあってきたんだから」
渚さんは誰もいない店内を見ると嬉しそうな顔でカウンター席に座った。メニューを手に取って、「杏さん、こっちこっち」と手招きした。
杏さんは渚さんの隣に座ると、一緒にメニューを覗き込む。しばらくメニューとにらめっこしていたが、「ご飯……、食べてもいいですか?」と遠慮がちに言った。閉店間近なので、食事を頼んでいいのか迷ったのだろう。
「もちろんですよ。今日は雨で冷えましたから、温かいものをどうぞ召し上がってくださいね」
と声をかけると、杏さんはにこっと頷いた。杏さんに笑顔を向けられるだけで嬉しくなってしまう。ああ、早く店じまいをしてしまわなくてよかった。先ほど練習に使用したカップを洗いながら杏さんがメニューを選ぶのを待つ。
「私、ベーコンと野菜のペペロンチーノね」
渚さんがメニューをさっと眺めただけで注文する。休日前に立ち寄ってくださったときには、いつも選ぶ渚さんのお気に入りのメニューだ。ペペロンチーノはニンニクを使うので、次の日が仕事の時に控えるのは、僕も同じだからよくわかる。
「ええと……。何にしようかな」