第16話
文字数 554文字
カプチーノには杏さんの似顔絵と蛇、Thank youの文字を描いてある。練習のかいがあって、我ながらうまく描けたと思う。
「う、わーあ」
杏さんの口からやっとひと言、ため息と共に発すると、店内にふふふと笑いが広がった。
カプチーノを見られなかった女性達が、誰からともなく席を立って、カプチーノをのぞきにやってきた。最初の一人はためらいがちに。二人目からは迷いなく。
「かわいい~!」
杏さんの背中越しにカプチーノを見ては、自分の席に戻っていく。けれど最後の一人の女性だけは、杏さんの前の席に力が抜けたようにストンと腰かけてしまった。パンツスーツ姿に、低いパンプス。左手の薬指には、シンプルな指輪をしていたが、腕時計やイヤリングはしていない。化粧も控え目で、朝だというのに、目の下にうっすらクマが出来ている。疲れているのだろうか? 「お客様…」と声をかけようと息を吸う。
「あの少しだけ、相席いいですか?」と彼女は杏さんに聞いた。
「はい。いいですよ」
杏さんが間をあけず、すぐにそう答えたので、僕は相席を遠慮して欲しいと声をかけるタイミングを失ってしまったが、半面、少しほっとした。やはり否定的な声かけは、なるべくしたくない。カフェの中の雰囲気も悪くなってしまう。
「かわいいですね、カプチーノ」
「う、わーあ」
杏さんの口からやっとひと言、ため息と共に発すると、店内にふふふと笑いが広がった。
カプチーノを見られなかった女性達が、誰からともなく席を立って、カプチーノをのぞきにやってきた。最初の一人はためらいがちに。二人目からは迷いなく。
「かわいい~!」
杏さんの背中越しにカプチーノを見ては、自分の席に戻っていく。けれど最後の一人の女性だけは、杏さんの前の席に力が抜けたようにストンと腰かけてしまった。パンツスーツ姿に、低いパンプス。左手の薬指には、シンプルな指輪をしていたが、腕時計やイヤリングはしていない。化粧も控え目で、朝だというのに、目の下にうっすらクマが出来ている。疲れているのだろうか? 「お客様…」と声をかけようと息を吸う。
「あの少しだけ、相席いいですか?」と彼女は杏さんに聞いた。
「はい。いいですよ」
杏さんが間をあけず、すぐにそう答えたので、僕は相席を遠慮して欲しいと声をかけるタイミングを失ってしまったが、半面、少しほっとした。やはり否定的な声かけは、なるべくしたくない。カフェの中の雰囲気も悪くなってしまう。
「かわいいですね、カプチーノ」