第13話
文字数 475文字
蛇騒動から三日後に、いつもの通り杏さんはやってきた。
杏さんが来るのは決まって月曜日と木曜日だとわかっているのに、蛇騒動からの三日間が僕にはとても長かった。だから杏さんがカランカラン、とドアベルを鳴らして入って来たとき、
「いらっしゃいませ」
と言いながら、思わずおもいっきりにっこりしてしまったんだ。
カフェのマスターたるもの、どのお客様にも同じようにクールに対応しなければならぬ、と日頃から自分をいさめているのに。杏さんにだけ特別な笑顔を向けたりすれば、他のお客様がつまらない気持ちになるかもしれない。
さりげなく辺りを見回してみた。僕の方を気にしているお客様はいないようだ。よかった。さらに注意して店内を観察してみると、どうやらお客様の関心はむしろ杏さんにむけられているようだった。興味津々な様子で杏さんの姿を目で追っているお客様がそこここにいる。
エスペランサには常連のお客様も多い。どうやら月曜日の蛇騒動が、口から口へ伝わっているらしかった。
これならお礼の一杯を杏さんに出しても大丈夫そうだ。
杏さんの席に歩み寄り、メニューを差し出す。
杏さんが来るのは決まって月曜日と木曜日だとわかっているのに、蛇騒動からの三日間が僕にはとても長かった。だから杏さんがカランカラン、とドアベルを鳴らして入って来たとき、
「いらっしゃいませ」
と言いながら、思わずおもいっきりにっこりしてしまったんだ。
カフェのマスターたるもの、どのお客様にも同じようにクールに対応しなければならぬ、と日頃から自分をいさめているのに。杏さんにだけ特別な笑顔を向けたりすれば、他のお客様がつまらない気持ちになるかもしれない。
さりげなく辺りを見回してみた。僕の方を気にしているお客様はいないようだ。よかった。さらに注意して店内を観察してみると、どうやらお客様の関心はむしろ杏さんにむけられているようだった。興味津々な様子で杏さんの姿を目で追っているお客様がそこここにいる。
エスペランサには常連のお客様も多い。どうやら月曜日の蛇騒動が、口から口へ伝わっているらしかった。
これならお礼の一杯を杏さんに出しても大丈夫そうだ。
杏さんの席に歩み寄り、メニューを差し出す。