第2話

文字数 501文字

 犬を連れたお客様も散歩の途中で犬と一緒に休憩できる外のテラス席だ。パラソルが作る木陰の下で寝そべる犬の姿は、いつだって道行く人の目を楽しませてくれる。

 窓にはめ込まれた大きめのステンドグラスに自分の姿を映してみる。白いシャツを二回折り上げ、袖の中程に付いているボタンで留める。それから黒いパンツに黒いカフェエプロンといういつものスタイルを確認する。うつむくと前髪が揺れて、少しうっとうしく感じた。ふっと吹いて、前髪を払う。

 (少し伸びすぎだな)

 今度の休みに切らなくては、と心にメモをする。自意識過剰と笑われそうだが、カフェのマスターたるもの清潔感は必須。クールな紳士に決めるべし、というのが僕のモットーだ。イメージとしているのは少女漫画にでも出てくるような、出来る執事といったところか。
 
 さて、開店準備は完了だ。店内にもどろうとして、(今日もあのお客様はくるかな……?)とふと気になった。

 気になるのは彼女が綺麗な人だからという訳じゃない。
 颯爽とスーツを着こなす女性たちがエスペランサの常連の大半なのだ。綺麗な人は多い。

 では彼女が時折投げてくる視線が気になるのか、と言うとそれも違う。
    
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