第102話

文字数 478文字

 「菜花とベーコンのクリームスープスパゲティ、お願いします」

 杏さんが下を向いたまま言った。

 「はい、承知しました」

 鍋に入っているスープベースをフライパンに取り分けて火にかけ、同時に渚さんのペペロンチーノに入れる野菜を手早く刻む。フライパンを出してオリーブオイルをたらす。
 細めのスパゲティはあっという間に茹であがってしまうから、その間に具材を仕上げておかなければならない。

 「マスター。あのね、ケンちゃんなんだけど」

 ケンちゃんと言えば、先日エスペランサで渚さんにプロポーズをした芸人志望の男性だ。

 「ケンちゃん、さんが何か?」

 「うん。あのね、結婚することになったんだけど」
  
 それは知っていますよ、渚さん。と思いながら、ベーコンをフライパンに投入する。ジュッといい音がして、すぐに香ばしい香りが立ちのぼる。

 「結婚パーティーをしようと思って」

 「いいですね」

 「ここで」

 「あっ、ここで……? ええと。」結婚パーティーの会場になるのは初めてのことだ。必要な確認事項に頭を巡らせる。「貸し切りになりますね。何人くらいいらっしゃいますか?」
 
    
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