第22話
文字数 522文字
奏さんの目に、涙がふくらんだ。目をいっぱいに見開き、瞳を上に向けて、涙を目の縁でとどめていた。しばらくして、浮かんだ涙が目の奥にすうっとしみこんで消えていくと、杏さんに笑いかけた。
「杏さん、ありがとう。きゅうっと胸にしみました」
奏さんは卵をもとのようにキッチンペーパーできちんとくるんだ。そして最後のきれいな包装紙で包みかけて、はたと杏さんを見た。
「あの、これ……?」
奏さんは卵が、もともと誰かへのプレゼントのように包まれていたことに気がついて、首をかしげた。
杏さんは真っ赤になって、首を振った。
「それは、あの、いつも持って来てるからダイジョブです……。」
杏さんは小さな声で言ったのが、ギリギリ僕にも聞こえた。誰かにあげるつもりだったのかな……。そう思うと、胸が締めつけられて息苦しくなる。
奏さんは今度こそ明るく笑って頷いた。そして鞄の一番上に卵をそっと仕舞うと立ち上がった。
「杏さん、ありがとう。行ってきます!」
「はい。行ってらっしゃい」
奏さんは杏さんに手を振ると、カランカランとベルを鳴らしてエスペランサを後にした。
杏さんは何事もなかったように、カプチーノを両手でくるんで、いつものように大事そうに飲んだ。
「杏さん、ありがとう。きゅうっと胸にしみました」
奏さんは卵をもとのようにキッチンペーパーできちんとくるんだ。そして最後のきれいな包装紙で包みかけて、はたと杏さんを見た。
「あの、これ……?」
奏さんは卵が、もともと誰かへのプレゼントのように包まれていたことに気がついて、首をかしげた。
杏さんは真っ赤になって、首を振った。
「それは、あの、いつも持って来てるからダイジョブです……。」
杏さんは小さな声で言ったのが、ギリギリ僕にも聞こえた。誰かにあげるつもりだったのかな……。そう思うと、胸が締めつけられて息苦しくなる。
奏さんは今度こそ明るく笑って頷いた。そして鞄の一番上に卵をそっと仕舞うと立ち上がった。
「杏さん、ありがとう。行ってきます!」
「はい。行ってらっしゃい」
奏さんは杏さんに手を振ると、カランカランとベルを鳴らしてエスペランサを後にした。
杏さんは何事もなかったように、カプチーノを両手でくるんで、いつものように大事そうに飲んだ。