第81話
文字数 488文字
「杏さん、座っていて。ケンちゃん。ほら、座って。マスター、デザインカプチーノ一つ。絵柄は……、そうね、一番で」
渚さんはテーブルの上に左手を出すと、ケンちゃんに指輪をはめてもらっていた。僕はその様子を横目で眺めながら、丁寧に一番の絵柄をカプチーノに描き、運んでいった。
男の子と女の子が向かい合って、腰を九十度に曲げて顔を寄せ、チュッとしている絵だ。僕はさらに周りをハートに囲い、ベルと鳩も描いた。祝福の気持ちのつもりだ。
メニューに載せてある見本よりも、ずっと賑やかな一番の絵を見て、渚さんは照れ笑いした。
「そういえば、まっつんと池田は仕事断っちゃっていいって言ってくれたの?」
「え……、何も言ってないよ。でも僕一人に来た仕事だったから、もともと二人は乗り気じゃなかったから平気だよ」
「そうなの? 一人売れれば、グループの仕事も増えるんじゃないの?」
「なぎちゃん、いいんだよ。ピンの仕事は、報酬分けないんだから、断った方が二人は心穏やかに過ごせるって。そうだ、なぎちゃん。僕、芸人やめたっていいんだ。なぎちゃんが不安定なのが嫌だったら、僕は就職するよ」
渚さんはテーブルの上に左手を出すと、ケンちゃんに指輪をはめてもらっていた。僕はその様子を横目で眺めながら、丁寧に一番の絵柄をカプチーノに描き、運んでいった。
男の子と女の子が向かい合って、腰を九十度に曲げて顔を寄せ、チュッとしている絵だ。僕はさらに周りをハートに囲い、ベルと鳩も描いた。祝福の気持ちのつもりだ。
メニューに載せてある見本よりも、ずっと賑やかな一番の絵を見て、渚さんは照れ笑いした。
「そういえば、まっつんと池田は仕事断っちゃっていいって言ってくれたの?」
「え……、何も言ってないよ。でも僕一人に来た仕事だったから、もともと二人は乗り気じゃなかったから平気だよ」
「そうなの? 一人売れれば、グループの仕事も増えるんじゃないの?」
「なぎちゃん、いいんだよ。ピンの仕事は、報酬分けないんだから、断った方が二人は心穏やかに過ごせるって。そうだ、なぎちゃん。僕、芸人やめたっていいんだ。なぎちゃんが不安定なのが嫌だったら、僕は就職するよ」