第8話
文字数 480文字
人影を目で追うと、僕の胸程の背丈のまっ黒な髪の毛の女性だった。
まっ黒な髪。オーバーオールの彼女だ。
「あら。こんな所に、どうしたの?」
と蛇に話しかけるが早いかさっと蛇のシッポを踏みつけ、素手で蛇の首根っこ、というものがあるとすればその辺りをキュッと掴んだ。
「あの、私のリュックを持ってきていただけますか?」
と僕の方を振り返って、少しはにかんで言った。彼女の「ブレンド珈琲をください」という以外の言葉は、ほとんど初めて聞いた。
けれどそんなことよりも、はにかんだ顔と手に持った蛇のギャップに僕はくらくら目眩 を感じた。それでもなんとか彼女にうなずきかけると、ふわふわとした足取りで店内に戻った。そして彼女のリュックを掴 むと、出来る限りの急ぎ足で彼女の元へ戻った。
カフェのマスターは店内ではけっして走らない、という自分のルールを無意識に守っていたからだ。
彼女は蛇を押さえていない方の手でリュックをうけとると、片手で器用にフタを開けた。そして中から、大きな巾着袋を取り出した。
「すみません、この巾着の紐を緩めて、口を広げて持っていてもらえませんか?」
まっ黒な髪。オーバーオールの彼女だ。
「あら。こんな所に、どうしたの?」
と蛇に話しかけるが早いかさっと蛇のシッポを踏みつけ、素手で蛇の首根っこ、というものがあるとすればその辺りをキュッと掴んだ。
「あの、私のリュックを持ってきていただけますか?」
と僕の方を振り返って、少しはにかんで言った。彼女の「ブレンド珈琲をください」という以外の言葉は、ほとんど初めて聞いた。
けれどそんなことよりも、はにかんだ顔と手に持った蛇のギャップに僕はくらくら
カフェのマスターは店内ではけっして走らない、という自分のルールを無意識に守っていたからだ。
彼女は蛇を押さえていない方の手でリュックをうけとると、片手で器用にフタを開けた。そして中から、大きな巾着袋を取り出した。
「すみません、この巾着の紐を緩めて、口を広げて持っていてもらえませんか?」