第67話
文字数 517文字
「杏さん。その後、猪はどうですか?」
「あっ、おかげさまで。フェンスは意外に効果がありましたね。罠猟の資格を取ればって言われているんですけどね」
蒔田は(座っても?)というように、杏さんの向かい側の席を手で指し示しながら、首を少し傾けた。杏さんは慌てて「どうぞどうぞ」と身振りで席をすすめた。
(蒔田の奴、会話が続いていたら相席を断りづらいと分かっていて、わざと途中で相席を頼んだな)
蒔田は杏さんの前の席にちゃっかりと座り込むと、鼻白んでいる僕を見上げて「惣一郎、ブレンドね」とメニューも見ずに注文した。よかった。新メニューのアプリコットコーヒーには気が付かれなかった。
すばやくメニューを取り上げてカウンターに戻ろうとすると、蒔田がメニューを握ったまま離さない。
「なんだよ」
「そういえば、この前のチャンキーチョコクッキーだっけ? メニューに入れたの?」
「えっ……。入れたよ。注文する?」
メニューを引っ張る。しかし蒔田も僕を観察するように眺めながらメニューを引っ張り返す。何かある、とばれたらしい。勘のいいやつめ。諦めてメニューから手を離した。
「一応、共同経営者としては、メニューの改変はチェックしておかないとな」
「あっ、おかげさまで。フェンスは意外に効果がありましたね。罠猟の資格を取ればって言われているんですけどね」
蒔田は(座っても?)というように、杏さんの向かい側の席を手で指し示しながら、首を少し傾けた。杏さんは慌てて「どうぞどうぞ」と身振りで席をすすめた。
(蒔田の奴、会話が続いていたら相席を断りづらいと分かっていて、わざと途中で相席を頼んだな)
蒔田は杏さんの前の席にちゃっかりと座り込むと、鼻白んでいる僕を見上げて「惣一郎、ブレンドね」とメニューも見ずに注文した。よかった。新メニューのアプリコットコーヒーには気が付かれなかった。
すばやくメニューを取り上げてカウンターに戻ろうとすると、蒔田がメニューを握ったまま離さない。
「なんだよ」
「そういえば、この前のチャンキーチョコクッキーだっけ? メニューに入れたの?」
「えっ……。入れたよ。注文する?」
メニューを引っ張る。しかし蒔田も僕を観察するように眺めながらメニューを引っ張り返す。何かある、とばれたらしい。勘のいいやつめ。諦めてメニューから手を離した。
「一応、共同経営者としては、メニューの改変はチェックしておかないとな」