第106話

文字数 429文字

 「お腹に少し余裕はありますか? デザートにフォンダンショコラがあるのですが、いかがですか?」

 食事が終わったところを見計らって、立ち上がりながら聞く。
 渚さんは名残惜しそうにしながらも首を振って、「ケンちゃんが待っているからもう帰らないと。」と断った。
 
 「それじゃあ、私も一緒に帰ります」

 杏さんが自分のバッグに手をかける。

 「杏さんはデザート、いただいていって。せっかくマスターがごちそうしてくれるって言っているし」
 
 渚さんは杏さんを押しとどめて帰り支度を始めた。
 キャッシャーに移動すると、渚さんは「杏さんの分も支払っていくから」と僕に耳打ちしてきた。
 うなずくと渚さんは僕を見つめて、何か言いたそうにしていた。

 「なんでしょうか?」

 パーティーの事で、何か聞きたいことでもあるのだろうか?

 「なんでもないわ。がんばって。じゃあ、私は帰るわね」

 渚さんが帰ってしまうと、急に緊張してきた。杏さんと二人きりになるのは、卵かけご飯以来のことだ。
    
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