第69話
文字数 499文字
「そうなんですけど、私、ダメですねえ。なかなか気が進まなくて。自分でできることはしないとって思うんですけどね。」
杏さんが楽しそうに蒔田と話すのをみるのは面白くなかった。杏さんが久しぶりにエスペランサに来店してくれて嬉しかった気持ちが、軽い苛立ちにとって代わられた。しかしエスペランサのマスターたるもの、ため息をつくなどはもってのほかだ。
吸い込んでしまった空気をそーっと吐き、アプリコットコーヒーの支度に取り掛かった。コーヒーカップやドリップサーバーに湯を注ぎ、温めておく。ネルの袋を準備して、細い口のコーヒーケトルの湯を、豆にゆっくり注いて、豆全体に行き渡らせる。
コーヒーを煎れるいつもの手順を始めると自然に心が凪いでいく。コーヒーの香りがふわりと立ち始めるこの瞬間が好きだ。眉間に入っていた力が抜けていく。
ケトルからコーヒー豆に細く湯を注ぐ。一回、二回、三回。
ブルーの模様が入った小さなお皿に、チャンキーチョコクッキーを並べる。コーヒーカップに入っている湯を捨て、煎れたてのコーヒーを注ぐ。
砂糖とミルクを添えて、二人分のコーヒーを持っていった。
「お、サンキュー、惣一郎。」
杏さんが楽しそうに蒔田と話すのをみるのは面白くなかった。杏さんが久しぶりにエスペランサに来店してくれて嬉しかった気持ちが、軽い苛立ちにとって代わられた。しかしエスペランサのマスターたるもの、ため息をつくなどはもってのほかだ。
吸い込んでしまった空気をそーっと吐き、アプリコットコーヒーの支度に取り掛かった。コーヒーカップやドリップサーバーに湯を注ぎ、温めておく。ネルの袋を準備して、細い口のコーヒーケトルの湯を、豆にゆっくり注いて、豆全体に行き渡らせる。
コーヒーを煎れるいつもの手順を始めると自然に心が凪いでいく。コーヒーの香りがふわりと立ち始めるこの瞬間が好きだ。眉間に入っていた力が抜けていく。
ケトルからコーヒー豆に細く湯を注ぐ。一回、二回、三回。
ブルーの模様が入った小さなお皿に、チャンキーチョコクッキーを並べる。コーヒーカップに入っている湯を捨て、煎れたてのコーヒーを注ぐ。
砂糖とミルクを添えて、二人分のコーヒーを持っていった。
「お、サンキュー、惣一郎。」