第72話
文字数 498文字
コトン、とカウンターにブルスケッタを乗せた皿を置く。カリッと焼いた小さなバゲットに具材を乗せた前菜メニューだが、軽い朝食にも悪くない。
「朝飯、どうせまだなんだろ? ニンニクは使ってないから安心して食べてくれ」
「ブルーチーズにサーモン! うまそうだな。朝だけど飲みたくなるよ。サンキュー」
「まぁ、ドンマイってことで。」
首をすくめてニヤリと返した。友達には賛辞を送るより、不運をなぐさめる方が合っている。
「杏さん。もしよかったら、ご一緒させていただいても……?」
渚さんは物腰柔らかな営業スマイルで尋ねていた。
「もちろんです、渚さん」
「あら。私の名前、知っているの?」
渚さんは驚いた様子で聞いた。
「えーと……、はい。この前、最初におかえりって言ってくださったから……。マスターにお名前を聞いてしまって……。すみません」
杏さんはしまった、というように僕を見た。個人情報を漏らしてしまうなんて、マスター失格だと受け止められるかもしれないと思ったのだろう。確かにそうかもしれない。僕はちょっと考えなしだったかな、と思った。渚さんに謝ろうと口を開きかけたが渚さんが先に言った。
「朝飯、どうせまだなんだろ? ニンニクは使ってないから安心して食べてくれ」
「ブルーチーズにサーモン! うまそうだな。朝だけど飲みたくなるよ。サンキュー」
「まぁ、ドンマイってことで。」
首をすくめてニヤリと返した。友達には賛辞を送るより、不運をなぐさめる方が合っている。
「杏さん。もしよかったら、ご一緒させていただいても……?」
渚さんは物腰柔らかな営業スマイルで尋ねていた。
「もちろんです、渚さん」
「あら。私の名前、知っているの?」
渚さんは驚いた様子で聞いた。
「えーと……、はい。この前、最初におかえりって言ってくださったから……。マスターにお名前を聞いてしまって……。すみません」
杏さんはしまった、というように僕を見た。個人情報を漏らしてしまうなんて、マスター失格だと受け止められるかもしれないと思ったのだろう。確かにそうかもしれない。僕はちょっと考えなしだったかな、と思った。渚さんに謝ろうと口を開きかけたが渚さんが先に言った。