第30話
文字数 531文字
仕方なしに顔を寄せると、蒔田は耳元で「杏さん、カワイイ」とささやいた。
思わず、ハハッと笑い声を立ててしまった。蒔田の女性の趣味は昔から悪くない。
確かに黄色い花束に顔を埋めた杏さんは、花畑にいるみたいだったな。うん。杏さんは可愛い。
杏さんの向かい側に座った女性が、杏さんに話しかけているのが聞こえた。注文に関する会話は、小さくても耳に飛び込んでくるのだ。
「あの、すみません杏さん。いつもブレンド頼まれていますけど、前回はカプチーノでしたよね。カプチーノ、お嫌いじゃなかったらご馳走させてください」
「えっ! いえいえいえ! 大丈夫ですよ、自分で払いますから」
「相席お願いして、しかも杏さんと少しお話したかったんです。だからご馳走させてください!」
杏さんは首をぶんぶん振ったが、押し切られてしまったようだ。女性は席を立つとカウンター越しに、「マスター! デザインカプチーノとフレッシュミックスジュースお願いします」と注文し、杏さんの向かい側の席に戻った。
「私、山内瞳って言います。」
と名乗ると、頭を下げた。
「はい。瞳さん。初めまして」
杏さんが人懐っこい笑顔で、瞳さんの名前を復唱し律儀に頭を下げると、瞳さんの肩の位置がカクンと下がった。
思わず、ハハッと笑い声を立ててしまった。蒔田の女性の趣味は昔から悪くない。
確かに黄色い花束に顔を埋めた杏さんは、花畑にいるみたいだったな。うん。杏さんは可愛い。
杏さんの向かい側に座った女性が、杏さんに話しかけているのが聞こえた。注文に関する会話は、小さくても耳に飛び込んでくるのだ。
「あの、すみません杏さん。いつもブレンド頼まれていますけど、前回はカプチーノでしたよね。カプチーノ、お嫌いじゃなかったらご馳走させてください」
「えっ! いえいえいえ! 大丈夫ですよ、自分で払いますから」
「相席お願いして、しかも杏さんと少しお話したかったんです。だからご馳走させてください!」
杏さんは首をぶんぶん振ったが、押し切られてしまったようだ。女性は席を立つとカウンター越しに、「マスター! デザインカプチーノとフレッシュミックスジュースお願いします」と注文し、杏さんの向かい側の席に戻った。
「私、山内瞳って言います。」
と名乗ると、頭を下げた。
「はい。瞳さん。初めまして」
杏さんが人懐っこい笑顔で、瞳さんの名前を復唱し律儀に頭を下げると、瞳さんの肩の位置がカクンと下がった。