桜の雨が降る時期に

文字数 323文字

背が伸びたねって
撫でたその手のひらが
いつまでも頭の上に残っていて
好きだったんだって思い出した

都会のざわめきに
慣れてしまった自分の心
それでも嘘はつけない

明日電話しようと思ったけれど
変わってしまった私は
いったいどんな顔をして会えばいいのかわからない

あの時の桜並木は今も変わらずここにある
川が悠々流れている
桜の花びらが降っている

「好きです」
それは過去形なのかまだわからない
あの人に会ってみなくてはわからない

毎年そんなこと考えて
毎年迷っている

春になったら芽吹くこの花びら達みたいに
ボートを漕ぐ友人の笑い声が聞こえてくる

明日が来たらまたこの気持ちは無くなるのかな
桜のように散ってしまうのかな

声があったならあの一番大きい桜に聞いてみたい
春は私の残像の生き残り

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