彷徨う白馬

文字数 510文字

森がある。湖に樹々が投写されている。
一頭の真っ白な馬が走っている。いや、歩いているのか?
咀嚼できないほどの圧倒的な絵画が、目の前にある。
大きなものではない。手に取れるサイズなのだ。

「彷徨っている」に近いのかもしれない。

まっさらな世界を駆け抜ける馬は、その両の目で、何を垣間見ているのか知りたい。

わたしの包帯はまだ取れないけれど、景色だけは見える。
この両眼もあの馬の目も同じ目なのに違う景色を見ているに違いない。

彼方に来まいしようとする魂よ、わたしの中に戻って来て欲しい。
荒れ狂う嵐の中、行き着く島のように。

さらにわたしは飛躍して明日を見よう。
そこには広がった世界があって、穏やかさが、この狭くなった世界でさえ生き残っている。

停滞した(静止した)場所で、いがみ合うことの愚かさが人々を変えていく。

音楽を奏でる時に、必要なテンポの指示が彼によって違うように、人によっても生きていくテンポが違う。

わたしは常にLentoで歩くことを息をすることを望む。
望むだけであって本当は違うのかもしれない。いいや、違うだろう。
昔々のこと、蜻蛉のように生きていくことが理想だった時期もある。

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