砂漠の旅人

文字数 668文字

真っ白な色した砂漠に人の骸骨が転がっている。
   これは何の儀式なのか複数の人たちが(それも首に小さな猿の骸骨をつけている)
それを中心とした輪を作って踊り狂っている。
   言葉の意味などわかるものか。私は彼方からの旅行者なのだ。
空は青々と、しかし強い風が吹いている。
   私はそれらが終わるまで砂が盛り上がったところで眺めている。

 
 風が歌う。

「    どこに行くのか、魂の居所など、わからぬ。
      どこへ行くのか、孤独な世界で。
      行き着く場所へ、辿り着くのか素足で。    」

(素足で砂漠など歩くものか)
煩い風の呟きほど落ち着かないものはない。耳を塞いだ。
 私も暇人で内眺めてばかりいたが、そろそろ飽きてきた。
あの骸骨には覚えがある。知っているのは私のみ。
 奴らはどこからいったいやってきたのか?
しかしいつの間にか消えていた。

「  兄か弟か友人か恋人か父か母か。  」

風に応えてなどやる義理はない。
 私は心の斧で断ち切ったその関係を、
無限の宇宙に投げ出してきたのさ。
 ありふれた生き方などできるはずもなく見捨てたのさ。
今はこうして片手に花束を持っている。
 詫びはしない。自分が間違っているとは思わない。
彼が間違っていたのだ。
 砂漠から逃げようとするから砂漠は与えたんだ。

 死という魂の抜け殻をね。

一歩ずつ息を深くして近づくと、うもった王冠が見えた。 
 足で薙ぎ払う。
彼が愛したのは権力か。はたまた愛人か。
 そんなこと、分かりきっている。
私ではないことは分かりきっている。
 砂漠はもっと広がるだろう。彼の骸を埋めていき。


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