君の大切なもの

文字数 489文字

君の記憶
これまで生きてきた記憶
その中にある忘れられない出来事の数々は
捨てたいのに捨てられない 出来事 ばかりなの?
だから足首に鎖で繋いでいるように引きずって
歩く のかい?

足首に絡まる鎖は、
苦しみや悲しみ憎しみや恨みでできている 
鎖の先にあるのは棺桶で
棺桶の中にあるものは
死んでいった出来事 たち
坂をのぼる時には、おもすぎる死人たち

君は薄闇の中を歩く
宙を見つめながら
身体の周りに、鬼火のような蝶と小鳥が虜になって彷徨って
記憶と君は薄闇の中を歩く
ふわふわと頼りない足どりで
「危ない、危ない」と僕は大袈裟に
大袈裟につまずきそうになる白い腕を背後から鷲づかむ
その時君は「あ、忘れ物」
夏の忘れ物が 「蛍」だと呟いた

棺桶には
世にも珍しい飾りがついているんだ
大切にしているの?
ついているのは飾りのようなもの?
冷たい?
音のない?
宝石?かなにかかな?
それとも澱んだ水が入った水晶玉?
日向の中で透かして見れば
墨色のすすけたビー玉
にでも変化する?
いつか鼻先につきだしてやるよ!
けれどきっと笑って言うだろう
「綺麗なビー玉ね!」
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