白い神殿ウルク

文字数 475文字

一つの美しい魂の中に
堅牢な城壁に守られた
砦の王国があった

竪琴を弾く露馬
酒を飲んで酔っぱらう狼
口から火を出す熊
二足歩行する鹿
蠍人間
杖をふる山羊

丘の上の神殿では
この様な
たくさんの生き物たちが騒いでいる

そして頭上には炎を吹く大きな蛇
決して傍観するだけのことはできない
逃れることのできない彼の心の持ち様に
ひたすらに感嘆した

一方で寂しい路地がある
ここは孤独な島なのだった
孤児たちや
露頭に迷った人間たちがうろうろとしている

「  お前たちも
あの神殿で食事をすれば良い  」

王様はそう言って彼らを引き摺り出し
空にいた天使たちを呼び寄せようとした

彼らはでも諍いの真っ最中で
王様の声が聞こえない
一人の天使だけが答えて言った

「  お前には近づけぬ 
あの蛇が邪魔をしているのだからな 
それに私たちは天と地の戦いで
今は手一杯なのだ  許せよ  砦の主人(あるじ)  」

その後どうなったかはわからない
物語は静寂し
物語は唐突に静止した

*ピーテル・ブリューゲルの『叛逆天使の墜落』から着想。

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