第108話:第一印象は最悪!?暗雲立ち込むライトフェザー騎士団登場!!
文字数 7,510文字
す、凄い!!近くで見るとこんなに大っきいんだね!!
この規模はフェルマータ城以上ですよ!!!
監視塔って言うんですよね、あれ?
はい。
空大陸の平和を
守る為に常日頃城の者が交代で
あの塔から大陸や自然の様子を伺ってます。
じゃあさ、
あそこに見えるこの城の一番高い場所に
壁の色が違う塔見えるよな!!!
あそこには何があるんだ!?
あの塔の一番上の部屋が
私の自室なんだ。良いでしょー?
うっひゃー!!!
めっちゃ高いじゃん。怖くないの!?
私ね、星を見るのが趣味で
グレースさんに無理言って空に1番近い
お部屋を用意して貰ったんだ。
うんうん!!!
その気持ち大いに分かるよ。
趣味の為ならどんな労力も厭わないってね。
そう!!!僕にとってのスターはシルドラ君!!!
その輝きをキャッチするんだー!!!
グレースさん、中へ参りましょう。
今すぐ行きましょう!!!
ええ。私に付いて来てくれる?
玄関ホールに案内するわ。
前回のあらすじ。
戴冠式当日に何か仕出かそうと
企む諜報員探しが空大陸の随所で繰り広げられる。
前話で初登場した場所は航空自衛隊の基地局。
その一件で空将のフレイドは頭を悩まされていたけれど
彼はグランザによって盗まれた爆弾の行方も
スカイラッド蒼空精鋭機関に務めるジャックの力を
借りながらも懸命に捜索を続行。
しかし、未だ残りは見つかっていないし
空賊デッドアッシュも "とある任務" を与えた
オリバーに対し達成終了後に解放と約束したけれど
ヴァレッドは親父に反発し、口封じの為の始末と考えている。
中央広場では
最悪な再会を果たしたレブロンとグランザ。
彼が言ったみたいに、本当に空大陸は現在
混沌と化している。このままだと最悪な未来しか見えない。
諜報員、空賊。
厄介な存在の悪事を全て阻止する為、
ここからシルドラ達の巻き返しが始まろうとしていた、が……。
****
フィルハート城、玄関ホール。
ふおおおおおおおっ!!!!
至る所に扉があるじゃねぇかよ!!!
はい。
食堂に
客間数々の貴重な資料が保管されている書庫等。
それぞれのお部屋に繋がっているだけで
この玄関ホールには東西南北に
扉が6つ程御座います。
えっ!?じゃあ、さっきのミルフィム王妃の
お部屋に行くにはどうやって向かうの!?
【????】
グレースさん、見ず知らずの人に
姫様の部屋の場所を答えては行けません。
彼等は私が
お招きした冒険者の方達です。
つい先日話したティブルエイドを救った――
ふん。城内が騒がしい時に客人か。
用事を済ませてさっさと帰らせろ。
おい。それが初対面の人に言うセリフか!?
会って間もないのに自己紹介も
出来ないのかよ!!!
【セルヴァン】
奴では無い!!!
わ、私の名前はセルヴァン……。
このフィルハート城で執事を務めている。
なら、何であたい等を追い返そうとする!?
客をもてなすのが執事じゃないのか!?
はい。シルドラさん、
会って頂きたい方達が居るんですけど……。
ライトフェザー騎士団、
ギルベル団長率いる男団員の皆さんです。
そうだ。私も彼等の戦歴を聞いて驚いてな。
意外な事実が発覚したんだ。
一時期、この騎士団には
君の両親が深く関わっていてな
団員全員が息子のシルドラに目を付けた。
ああ。先日ティブルエイドでの君の活躍が
テレビで放映されただろ?
それを
意図も
容易く
冒険者の卵が完全なる悪を改心させた事に
目の敵にしていてな。
何をする気ですか!?
喧嘩だけは止めて下さいよ!!!
お前は悔しく無いのか!?
あたいやレブロン、色んな仲間の強力を経て
今、此処に居るんだろ!!!!
そりゃあ、悔しいですよ!!!
僕にしか出来ない方法でアレドシアさんを
救ってあげたのに……。
そうだよ!!!推しを罵るなんて最低だもん!!!
アレドシアさんの心に
寄り添ってあげただけのに、
何でそこまで言われないといけないの!?
悪いけど、あたいの仲間を
侮辱するようなら
一言物申さないと気が済まねぇ。
城に来たと言う事は、
諸々の作戦会議をしに来たんだろ?
ライトフェザー騎士団の
皆さんはあちらに見える階段を上って、
その先の謁見の間にてお待ちしております。
私は諸事情により
ご協力する事は出来ませんけど、
君がこのような仲間と一緒にいる意味を
十分に理解している所存です。
先程は軽率な発言を申して済まなかった。
ふふっ。最初からそんな気がしていたので
全然気にしていませんでしたよ。
はい。ミルフさん、
セルヴァンさんの佇まいを見て下さい。
彼を見てたら何故か怒る気が
無くなってしまいました。
誰かに似てますよね?
【オランド/ミルフの父】
ふん。それで何が悪い?
私は常に正しい事しかやってない。
あっ!!!!よくよく見たら、雰囲気に口調も
あたいの親父似じゃないかああああ!!!
天国に一番近い場所で何言ってるんですか?
不謹慎ですよ!!!
玄関ホールに到着したシルドラ達。
執事のセルヴァンと遭遇し、
謁見の間にて先に到着していたライトフェザー騎士団の
ギルベル団長と団員が過去にシルドラの
両親と何かしらの形で繋がっていた事が
彼の口から明かされる、けれど……
どうやら現在、諜報員探しや
バラバラと化した王冠返却の一件とは
別にその息子(シルドラ)が数年後に未だ冒険者の端くれとして
相応しくない「始まり」を告げた事に対し、
謁見の間にて目の敵としていた。
そんな彼等と
ようやく邂逅を果たす事になる前に、
どうやら、ライザ海上情報機関の方で動きがあったようだ。
****
ライザ海上情報機関、総務部。
あら、アスランさん。
今日は良い顔されていますね。
何か素晴らしい事があったのかしら?
彼女は現在、
空大陸にて
諜報員捜索。
本当に実働の2文字が似合う御方ですわ。
ふぅ。これにて腕立て伏せは終わり。
今日も良い感じにパンプアップ
出来てるな!!!
ほら。今日は私の特製プロテインだ。
是非とも飲んでみてくれ。
あれ? そう言えばライアンはまだか?
集合掛けたんだけどな。
この局には何処にも居ない。
多分、未だ現場で捜索中なんだろう。
彼女には
後程伝えといて置きます。
今は3人だけで近況報告を進めましょう。
よし、分かった!!!
傘下の白鳩報告社の内部捜索により
例の諜報員について新たな情報が入った。
ああ。とある部署が保管する
必要書類の中で戴冠式当日の流れや
式典関係者・来賓一覧が記された文書だけが
何者かに複写された形跡が見つかった。
規定違反。
会社の掟を破る事になる。
やはり、
諜報員は
この局の何処かに潜んでると言う事か。
その複写日付記録は
5月10日。
その日、白鳩の従業員が1人退職をしてな。
可能性は大いにある。
機関での大仕事をやり遂げたんだ。
諜報員、として
狡猾な方法で情報を手に入れる為に……。
一体、誰なんだ!?
退職記録が残ってる筈だろ!?
今は空賊デッドアッシュの
凄腕狙撃手。
各種銃の熟練者と言ったら
分かるだろ?
そうだ。しかし未だ確定事項では無い。
第3者の手を借りてる場合も有ると
捜索班は見立ててるようだ。
間違い無い!!!全ては戴冠式。式典最中に
何か良からぬ悪事を働くに違いねぇ!!!
だとしても、ハドリスが
諜報員と仮定して彼の狙いは一体何だ?
王冠は偽物を掴まされて
城へ粉砕返却されたとライアンから
報告を預かってます。それ以外となると……
…………。
狙撃による人命の奪取。だろ?
はい、ラスター様。
私の思い込みなら良いですけど……。
安心は出来ない……か。
ははっ。ホント、笑えねぇ展開だな。
でも、こっちも指を
銜えて
諜報員の犯行を見過ごす訳には行かんぞ。
海上機関の威信をかけて
諜報員を必ずや見つけ出してやる。
本当にラスター大佐が言った事は
唯事では無い。
空賊デッドアッシュが企む悪事。
そして諜報員の仕業かは知らないけれど
戴冠式に関する書類の情報が複写され、その横流し等の悪事。
その容疑者候補の1人にかつて
白鳩報告社で勤めを果たしていたハドリスの名前が浮上。
その書類が複写された端末の記載日と
退職日が偶然にも一緒である事から
一気に彼に容疑が掛かった。
しかし、空賊に居ながらも何を仕出かすのだろうか?
それか、1人の狙撃者として誰かを狙うのか?
黒か白か不明なまま、
誰も知らない真実への発砲音が
空大陸に響くまでそんなに時間も待ってくれなさそうだ。
****
フィルハート城、謁見の間。
ライトフェザー騎士団、男団員の皆さん。
シルドラさん達を連れて来ました。
あっ。今ご紹介に預かりました
し、シルドラ=ロッドと申します!!!
【????】
ふむふむ。
実物を見るのは初めてだ。
表情筋だけはいっちょ前……だな。
自己紹介をするとしよう。
俺はライトフェザー騎士団の肉体担当。
【ラウル】
魂拳のラウル=レイクスバーン!!!
長ったらしいのも何だ。
名前のラウルで呼んでくれると有難い。
あ、熱い!!!身体もレブロンさんみたいに大っきいね!!
【????】
そりゃ、そうだろ。
この男は筋トレに生涯を捧げて来たんだ。
騎士団の一員として名を恥じない為に
それ位の事出来て当たり前。
雰囲気悪いな。
騎士団って無愛想な奴等ばかりなのか?
馬鹿言うな。
ライトフェザーは空大陸専属の騎士団だ。
戦闘への意気込みは人一倍にある。
この地に魔の手が忍び寄ろうとするなら
俺達は拳も剣も出すまで。
この騎士団は
命を懸ける覚悟がある者しか入れない。
隙を見せたらそれは "死" を意味する。
【????】
その辺にしとけ、バージル。
彼は誠拳道を究めたマツカゼ師範のお弟子。
両親を幼い頃に亡くしている。
【バージル】
も、申し訳ございません!!!
ギルベル団長!!!
【ギルベル/団長】
ふん。しかし彼等もまた冒険者。
死と言う言葉で情緒不安定になるなら失格。
今すぐ自分の故郷へ帰るが良い。
はぁ? こっちも空賊にしてやられてるんだ。
黙ってられるかよ!!!
じゃあ、城に居る者として
相応しいか1人ずつ聞くとしよう。
先程、
剣と言う言葉に動揺してたな。
そんなに怖いのか?
う、うん……。人の命を奪って不幸にさせる凶器。
握った瞬間に人間の感情は殺意に変わる。
マツカゼ様に教わったんだ。
レブロンにも言える事だけど今は不在。
代わりに答えてくれ。
正義の拳を揮 うのはどんな時だ?
決まってるだろ!!!
あたいの仲間がピンチに陥ってる時!!!
それ一択だろうが!!!!
オリバー……か。
悪いけど騎士団一同君の正体を知っている。
悪い事は言わない。
早く奴等と手を引く事をお勧めするよ。
さてと。ティブルエイドの
英雄に冒険者として大事な質問をするぞ。
フランバージュの元リーダー
"アレドシア" を何故改心させた?
冒険者としてデビューしたばっかりだ。
他の大人に任せる事も出来ただろ。
見過ごす事が出来なかったからです!!!絆だって人の痛みを知れば
分かり合えると思って……。
それは勝手な良心の問題だ。
そんな心持で城に作戦会議しに来たのか?
良い気になるな。
貴様は未だ最低ランクの冒険者だろ?
俺達と共に空賊を退治するなど
百万年早い!!!
うーん……。
空大陸を守りたい気持ちは大いに分かる。
しかしだな、ここは上空。
一歩間違えたら死と隣り合わせなんだ。
此処にいると言う事は、覚悟を以って
彼等に挑もうとしてるんだよな!?
生半可な気持ちで
戦おうとしてるなら協力は出来ん。
あの難解な
アレドシアの猛攻を搔い潜り
改心させた活躍と頑張りは称賛に値する。
しかし、此処は遥か上空に浮かぶ空大陸。
ティブルエイドとは環境が違う!!!
ライトフェザー騎士団、
空を守る団長として1つ忠告をして置くぞ。
何時までも
過去の栄光に縋り付いてるようなら
それは大間違いだ。冒険者としての
自覚が未だ身に付いて無いと認識される。
分かったなら、
皆を連れて早々に城から立ち去れ!!!
シルドラの両親が
関わっていたライトフェザー騎士団、
団長ギルベル含めた肉体担当のラウルに
クール担当のバージルを含めた数名で
構成された男性団員こそ、空大陸の平和を守る精鋭達。
しかし、気難しいのか
ティブルエイドの英雄として名を馳せた
シルドラと仲間に対し、歓迎されてる様子がなく
最終的に「帰れ」や「立ち去れ」と囃し立てられてしまい
シルドラは悔しそうに謁見の間を立ち去ってしまう。
戦闘だけが全てと思うな。
人間の「心」を救い出すのも平和の1つだ。
ああ。これで
彼の両親との約束を果たした。
こんな早く一目を置かれるようになるとは。
『成長に近道など無い。苦労しながらも人は前へ進める。』
クルディーもそうして息子を博識にさせた。
彼の両親が教えてくれた
この正義は今も他団員に言い聞かせてます。
絶対に忘れてはいけない、と。
空大陸の平和を守るフィルハート城、
何処までも広がる大空の保守機関「スカイラッド」。
それは、ライトフェザー騎士団もまた然り。
男団員を纏め上げる
ギルベルは「平和と隣り合わせ」と言う理想を掲げる。
小鳥の囀り、青々しい木々の強い生命力
透き通る池の水、地産地消を推す農家の方達が
丹精込めて育て上げた野菜や果物。
此処に暮らす民間人が
気持ち良く過ごせる居場所がある事を知っている。
そんな彼等だからこそ、
誰よりも空賊の恐ろしい悪事を阻止する事を望んでいる。
時を同じように諜報員もまた
様子を伺いつつ絶好のチャンスを狙っている。
しかし、今はシルドラだ。
ティブルエイドでの頑張りが無駄だったのか、
冒険者として自分がして来た事が間違っていたのか、と
正門を抜けた先にある下へ続く階段に座り
落ち込んでしまっていた。
****
城の正門へ続く階段。
天気は快晴と言えど、シルドラの心は曇り模様のよう。
はぁ、はぁ……。
結局信じてくれるのは僕の仲間だけ。
冒険者として大事な事を
ティブルエイドを通して分かった筈なのに!
ミルフさんや
レブロンさんと出会った事も。
苦しくてずっと悩み続けていた
アレドシアさんの心を救ってあげた事も。
僕が今までにやって来た事は全て無駄なんかじゃありません!!!!
冒険の定義は人それぞれ。
自分の紡いで来た冒険と
成長過程が否定されると頑張りと努力が報われずに
何も会得出来ない。冒険者としては致命傷であり、
今のシルドラもライトフェザー騎士団の
無愛想な男団員と思いも得ない邂逅を
果たしてしまい、彼の心を現に苦しませてしまった。
次回以降、フィルハート城を
一先ず立ち去り、シルドラの心身共に癒す為にも
気分転換に未だ見学してない地を訪れながら
空大陸の事を更に知る新キャラの少年と
共に冒険が再び始まる。
第109話へ続く。
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