第051話:フランバージュの追撃!ゼルガスとヴァンウッドに訪れる危機!!
文字数 6,192文字
前話のあらすじ
一緒に時を過ごした
シルドラの仲を売りたくないと
ヴァールブルク海賊団船長ゼルガス、
彼の事を全面黙秘。その腹いせに必要以上に
ブロスの手により叩きのめされ、気絶……。
それ以降、
同じメンバーのロギュアが裏切るかのように
怪我の手当てや面倒を見ていた。それもその筈。
彼は子持ちの父親。世話をするのはお手の物。
しかし、遂にブロスが逆ギレ。
同じフランバージュのメンバーであろう者が。と
言わんばかりに檄を飛ばして来る。
その際、ブロスは
リーダーに忠誠を誓っている理由、そして
フェルマータ城の所有者がファーラック一族の物と判明。
その身内がアレドシアとも知らずに――。
ファーラックって言ったらティブルエイドに
住む有権者で有名やないか。何でそんな
お前さんがワイ等のボスを
務めてるんや?
奴が目覚めたら教えてやる。
アッジ、何故下の階に降りて来た?
ヴァルの監視をしとけと言った筈だ。
さっきから外の様子が騒がしいんや。
気が散って監視に集中出来なくてな。
お前さん達は聞こえないのか?
そう言えば、
城内の見回りをした際に周辺の空に
複数もの蝙蝠、そして城壁を叩く音を何度も
耳にした。何者かがこのフェルマータ城を
攻撃しているように見える。
薄暗い場所を好む生き物の事だろ?
よく航路途中の海上洞窟で
何度も目撃したぞ。
レブロンは
蝙蝠が大の苦手なんだ……
加入して間もない頃、廃れ始めて来た
フェルマータ城の最上階にある奴等の
巣を見て気絶した過去があってな。
ふん。そんな生物ごときでビビるなんて……
お前の鋼の肉体は見せ物か?
うるせぇよ!!俺は誰かを守る身体を目指して
常日頃トレーニングしてるんだ。懸命に
背中を追いかけて鍛え上げた証をお前は
馬鹿にしたんだぞ。ゼルガスだって此処まで
辿り着くまでそれなりの努力をした。
何も分かってない奴が語るんじゃねぇ!!
今からブロスとレブロンには
1対1で戦って貰う。これは強制だ……
オイ!聞いてなかったのか?
お前の今の発言は力が全てだと聞こえる。
それはただの暴力じゃねぇか!
拳を揮って相手が怪我したら俺は
絶対に許さないぞ!!!
やっぱ親御だな。
シルヴェス同様正義面して反吐が出るぜ。
何だと!!!アイツは悪く無いだろ。俺の息子を
貶すなんて良い度胸してるな!
おい!!!
表に出ろ。お前が居なかったせいで
計画の準備はほぼ僕がしたんだ。その
お詫びもちろん味わってくれるよな?
話を聞け!!!レブロン、こいつ等の言い成りになるな。
急いで此処から逃げろ。
背後に隠していた握り拳を
恨みを込めた表情でゼルガスの腹部に入れる。
前屈みになり、石床を見ながら
苦しそうな表情をして息も荒い。
もはやブロスの言動は悪意の塊。
是が非でも計画を無事に遂行する為
そして、アレドシアを喜ばせる為に、例え用心棒を
務めていた彼に対しても心を鬼にし対応する。
馬鹿だな、お前。
さっきまでの威勢はどうした?
自分から寿命を削るなんて、身体に
より負担を掛けてるだけだ。
どうだ、痛いだろ?
へへっ。今まで色んな海賊と
渡り合って来たんだ。これ位平気だぜ。
苦し紛れの言い訳か?
だったらやる気のないレブロンより
僕の手で始末してやるぜ。結局処刑する事に
なるんだ。手間が省けて良いだろ。
腹部を抑えながら必死に痛みと戦っている。
しかし彼の猛攻は止む事なく
とどめを刺そうと背中を見せている
鍛えられた広背筋に向かって、
痛恨の一撃を入れようと右足を振り落とそうとした。
その時……
止めろ!!!わ、分かった。表に出るから
ゼルガスをこれ以上傷付けないでくれ!!!
(俺なんかの為に済まねぇな……
情けないのはこっちの方じゃないか!)
お前等、先に出てろ。
私は少しロギュアと話してから向かう。
お互いに身体が
鈍ってる筈だ。
準備運動だけはきちんと行い、
私が来るまで手出し無用だ。待機を
しとけば良いだけの事。ブロス……
後は分かってるよな?
ロギュア以外は
捕らえられていた小部屋を離れ
蠟燭の明かりを辿りつつ、右手の方向にある
少し離れた階段を上り1階へ向かうと
すぐ外に出られる城門がある。
気付くと、現在の時刻は深夜0時過ぎ。
フェルマータ城は
ティブルエイド北東に位置する
断崖絶壁の上に建てられている為、下はもちろん海。
この周辺は海食崖であり、さっき通って来た
通路を更に下に行くと海食洞が存在し
そこにゼルガス達が乗って来た
海賊船が停泊してある――。
腕が鳴るな。滅多にない機会だ。
お互い手加減無しに行こうぜ。
だから、無意味な喧嘩は止めさせるんだ!
俺が言ってる事が分からないのか!?
ロギュア、これは
喧嘩じゃない。
レブロンに用心棒としてのケジメを
付けて貰うだけ。後3日で計画実行日。
少しでも負の感情があると支障を来たす。
それ程大事な存在なんだ。
分かってくれ……
ふっ。大体の見当は付いてる。ブルーノから
あの2人の保護を頼まれたんだろ。
そう言えば、私の伝言をきちんと
彼に伝えたんだろうな?
そうだ。早めに回答が欲しいからな。
何か伝言預かってないか?
ああ。ブルーノ様の答えを聞くまでもない!
彼も望んでないからな。それに……
状況が変わった。
牢獄島の獄長が
お前に目を付けたそうだ。喧嘩は罪に
問われないけど、拷問や処刑は値する。
そのせいで、これから俺達に関わった
ヴェスターも尋問される。
フェルマータ城で
執り行われるヴァルの処刑計画は
新たな展開へ駒が動き出そうとしていた。
****
ヴァンウッド、旅人の宿――。
皆さん、お騒がしてすみません!
只今、戻って来ま……
あーーーーーー!!
シルドラ君、もう大丈夫なの!?
ホント、すっごく心配したんだよ!!!
ボディタッチして
彼の酔いが覚めているか確認するフラジーの姿も。
それそれー!!!
ブラウン君も一緒に、せーのっ!!!
ふふふ。くすぐったいですよ!
でも、寝ずに僕の帰りを待ってて
くれたんですよね? 凄く嬉しいです!!
おかえり!
元気も良くなって遂に復活か。
待った甲斐があったな。
心配かけて済みません。
皆さんに迷惑かけちゃいましたね……
全然気にしないで下さい。
誰にだってお酒の失敗談はあります。
もちろんボクにもあるんだー。
そん時狂ったようにお腹出して踊ってた
みたいなんだけど全く覚えがないんだ!
シャノンさんが持って行った薬が
効いたんだな。無事に帰って
来てくれて良かった。
ん、あれ?
そう言えばシルヴェスの姿が
見当たらないぞ。それにルミシー様も……
あのお2人なら
ツリーハウスのベッドで寝ているわ。
真夜中近くまでずっとシルドラさんの
面倒を診てくれていたのよ。
それにシルヴェスさんは
フェイスウォールで薬草の素材を
採取する為に果敢に挑んだ。そして入浴も
しないで私達の為に夕食を振舞ってくれた。
疲労が溜まっていたに違いないわ。
本当でしたら、服に
沁み込んだ
汗を洗い流して欲しかったんですけど……
あっ、プラムちゃんもシルリアさんも
居ない。寝ちゃったのかな……?
30分前位まで起きてて
お前の帰りを待っていたんだけどな。
眠気がヤバそうだったから、2階のお前等が
療養していた隣の部屋に案内して来た。
今はゆっくり寝てるぞ。
よーし!
ボクももうそろそろ眠いから
シルドラ君、一緒に寝ようね!!
ちょ、ちょっと!
ボクが最初に言ったんだよ。ベッドの上で
あんな事やこんな事いっぱいしながら
寝たいから邪魔しないでよー!!!
俺にだって
シルドラ君と寝る権利あるでしょ!
ブラウンはシノヴァシアで沢山の人と
いっぱい寝てるんだから別に
良いじゃないかー。
こういう機会位しか無いんだよ。
お願いだから譲ってくれー。
シャノンの作業部屋――。
スチュキートに
刺された箇所、肩に位置する部分を
塗布する薬を先程まで作成してた為、
机の上には使用済みの素材の一部分や、擂り潰した容器や
一時的に保存して置く小皿など様々な道具が散乱していた。
使い終わった物はすぐ
洗わないと匂いが残るため、少し汚れていた
半壊状態のフラジーのリンクリングと一緒の箱にしまう。
少しベルトの部分が汚れているわね。
精密機械だけどゴムの部分は
洗って置かないと……
よし。これで
一通り使用した道具は全部入れたわ。
室内の水道は皆さんの共有スペースですので
外にある水道に向かいましょう。
フラジーと偶然にもぶつかってしまい
両手に持っていた段ボールを床に落としてしまう。
申し訳御座いません。
私の前方不注意です……
フラジーさん、大丈夫ですか?
あっ、シャノンさん!
ごめんなさい。ちょっとベッドの奪い合いで
シルドラ君に追い掛けられてしまって。
今、拾いますね。
転げ落ちた道具はどれも割れ物。
自分が逃げている最中に
シャノンに体当たりした為割れていないか
確認しながら1つずつ段ボールにしまっていく。
しかし、その中には……
えっ、これってリンクリングだよな……
ガラス盤が割れているけど。
ねぇ、何で黙ってるの?
何も言わないって言う事は、この
リンクリングの持ち主……、俺だよね。
さっきから見当たらないと思ったけど。
何処に持って行こうとしたの?
もう使い物にならないから捨てに
行こうとしたの?
違うのよ。ベルト部分が
汚れていたから外の水道で濯ごうと……
ねぇ、返してよ!!!壊れてても良いからさ。
シルドラ君との絆を失いたくないんだ!!!
ブラウンと同じように
時折見せる子供らしい童心さを見せるけど
本業はエアロブルー飛行場で整備士を務め
フリューウィングを愛する伝説の操縦士――。
1つの事を極める為、
いつの間にか彼の周りから友達と呼べる
存在が居なくなっていた。沢山の絆を深めたい
シルドラの想いに彼の心は突き動かされ、
リンクリングと言った絆を結ぶ時計で繋がる事が出来た。
それを無駄にしたくない。と……
壊れてでも取り戻したい。と……
フラジーは切に願う。
ヴァンウッドの森、中央広場にある水道――。
現在の時刻、深夜1時。
フラジーさんには悪い事をしてしまいました。
せめてリンクリングの修理が出来る
箇所をお教えしないと……。
誰か来るぞ。
おい、此処は神聖な場所だ。
輩なら私の弓矢で射抜いてやる。姿を現せ。
そ、その声はブロスさん……。
ヴァンウッドに何か御用ですか?
アレドシア様からの伝言を預かって来た。
1度だけしか言わないからよく聞け。
ヴァルの処刑の計画に応じて
ヴァンウッドの森全土を燃やす事が決まった。
僕達を裏切った罰だそうだ。
その時、ブロスの頭に向かって誰かが勢いをつけて
見事に頭突きをかます事に成功。
※今触れられているのは
フェルマータ城が建てられている海食崖で
レブロンと喧嘩後の時間帯に起きた話です。
喧嘩の結末は次話となります。
これは誰も予想だにしなかった
とんでもない展開。
ボクの名前はブラウン。
シャノンさんとオリアナさんをいじめるな!
此処は巫女族が自然を愛する為に
一から築き上げたヴァンウッド。
燃やすなんて絶対に許さない!!
それを言ったら君もだよ!此処には大好きな皆がいる。ボクにも
出来るんだって証明するんだ!!!
てめぇ!!!こっちは一仕事終わった後なんだぞ。僕に
立ち向かって来た勇気だけは認めてやる。
しかし容赦はしねぇからな。覚悟しろ!!!
****
エアロブルー飛行場――。
1機の小型飛行機が
着陸態勢に入る為、滑走路全体を
四角く囲んでいる「滑走路灯」。
当機が接地する場所に設置されている「接地帯灯」と言った
様々な色を持つライトが一斉に照らし出される。
乗客の安全を考慮に
入れながら、巧みな操縦裁きで着陸に成功。
そう、彼もまたエアライドライセンスを
所持する空大陸出身の操縦士。
名前はランバード。
【ランバード】
ティブルエイドに来たのも1か月振りだ。
あまり変わってなさそうだな!
チャイ、ビッケの2人も元気そうで何より。
君達の空港は儲かってるか?
何言ってるのよ……。
充実度ナンバー1の空港に勤めてるくせに
それは無いんじゃない?
もうっ!ボク達の空港は超地道に
経営してるんですよ!!
もちろんに決まってるだろ。
本来はスカーロック遺跡の調査で
忙しい人だ。チームマスターに久々の
休暇を摂れって催促されたみたいだから
連れて来た。ほら、自己紹介していいぞ。
【ライガー】
よう、お前等!! 俺は
リュウガの親友でライガーって言うんだ。
作業してると甘いモノが恋しいだろ?
だから、この大陸で喫茶修行してる姉妹の
ケーキを頂きに来た。アイツの手料理は
誰にも負けねぇ位絶品だからな。
あっ、もしかして……
ヴァーズメルトで働くシルリアさんと
プラムちゃんのお兄さんって君の事!?
おう!!!
此処で出会えたのも何かの縁だ。
記念の握手しようぜ。
そう言えば……、
以前遺跡調査の人手が足りないって
言ってましたけど、あれから
どうなりました?
それが、思うように集まらなくてな……。
マスター同様俺達も困ってる所だ。
今の若者は好奇心と探求心が無さすぎる!俺は心から調査を楽しみたい人と
繋がりたい!!!
あっ、そうだ!!!
良いチャンスだ。読者からスカウト……
なんてな!!!俺はもう決めている人がいるんだ。
此処に来たもう1つの理由は彼に直接
会ってみたくてな。
名はシルドラ。冒険者で好奇心旺盛と来たもんだ。
俺のチームに入る資格がある!!!
アレドシアとの全面決戦、
そして、フェルマータ城で執り行われる
ヴァルの処刑が近付く中、エアロブルー飛行場に
降り立ったのはヴァーズメルトで働く
シルリアとプラムの兄ライガー。
フランバージュが企てる計画に
近々彼も巻き込まれる事態になるとも知らずに
次回以降は遂に舞台は忍者の里シノヴァシアへ。
ブラウン、フラジー……
そして長であるブルーノも各々の活躍を見せ始める。
第052話へ続く。
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