第044話:シルドラの快復大作戦!フェイスウォールの薬草を求めて!!(Ⅰ)
文字数 4,577文字
操縦士・整備士としての責務を
全う出来なかった
伝説の操縦士フラジー=キュレー。
ヴァンウッドの森の上空で、
左翼が壊れたフリューウィングと共に落下してしまい
機体から漏出していたエンジンオイルが
何らかの影響により自然発火してしまい、
その火の海に囲まれるかのように
彼は目を覚まさずにずっと気絶していた。
ルミシーとシャノンが
手際の良い治療をしたお陰で
一命をとりとめる事が出来た。そして、偶然にも
先ほど "とある虫" により襲撃されてしまった
シルドラを療養させている同じ
旅人の宿の2階、隣同士の部屋にて滞在中。
1階、リラックスルーム――。
そう言えば、シルドラさんの
容態確認が最優先だったから、
まだ自己紹介してなかったわね。
改めて、ヴァンウッドへようこそ。
私はシャノン。さっきも言ったけど
ルミシー様のお供と共に、怪我を負った方や
病気に掛かった皆様の診療もしています。
そして、私がこの森の
長を務めているルミシーと申します。
次は私だな。名はオリアナ。
同盟を組んでいるシノヴァシアと
この森を守る防衛隊を担っている。
森に野蛮な
輩が現れたら
このインテッドアローで撃退してやる。
こう見えて弓使いなんだ。習得するまで
時間掛かったけどな。
その前にコレッタの
自己紹介をさせてあげてくれ。
こう見えて彼女は凄いんだ。
こう見えて、って余計です!
オリアナさんの弓でも敵わなかった相手を
わたしが倒したじゃないですか。
改めて、わたしの名前はコレッタ。
打撃を得意とする拳闘士を務めてます。
遠距離がオリアナ、
近距離がコレッタって言う事か。
上手く連携が取れている証拠じゃん。
それに体全体を使うあたいと違い
拳を扱う職業だ。何か運命感じるよな。
皆さん、シルドラ君を
別室に移動させて来ました。
今は安静にして貰ってます。
クソッ!
それにしても、よくもシルドラを。
一体どんな虫なんだ!! 蹴散らしてやる。
ダメよ。貴方も刺されたら
彼の二の舞になってしまいます。
闇雲に動いて察知されたら、私達の負け。
確か、その虫の正体知ってるんだろ。
教えてくれ。どんな奴なんだ?
…………。
名前はスチュキート。
空気がひんやりしている場所を好んで
肉眼では見えない一種の虫。もちろん好物は
人間の血。自然と擬態する事ができ……
肉眼で見えないんじゃ、
あたい達もいつ襲われるか……
その辺りは大丈夫です。
巫女族が在住している広場には
虫の侵入を阻止する事が出来る
とある花が咲き誇っていまして……
うんっ!
私達にとって大切な花 "シンティア"
少しほろ苦い匂いを漂わせているんだよー。
と、言う事は虫を撃退する力が
その花に宿ってるのか!
ただ、その花の一輪を
シルドラさんを通して、とある御方に
届けて欲しかったんですけど……
こう言った事態になってしまったので。
だったらさ、シルドラの更なる快復の為に
俺達で一肌脱がないか? もしかしたら
一瞬にして完治する野草とか何処かに
生えてるかも……
実はあったりして。
シルヴェスさん、貴方の言った通り
全ての病気を完治してくれる素材がほんの
少し離れた場所なんですけど、
本当にあるんですよ。
あっ。と言う事は
もしその素材を手に入れるんだとしたら
エリア外になって、あたい達を見つけ
襲撃して来る可能性があるんじゃないのか?
そこは大丈夫なんだ。実はね
その素材が手に入れられるのって、
忍者の里に向かう道中にある
フェイスウォールに生えてるんだよー。
フェイスウォールって言うのは崖なんだ。
最近見知らぬ壁面が発見されてね。
ブルーノ様の知人、ブラウン君も
良く見に行っていますよ。
ブラウン君!?あっ。僕の外出中に
留守を頼んだのすっかり忘れてた!
あら。いけない
長な事。
じゃあ、せっかくだし皆さんで
彼の快復薬の素材を採取しに行きませんか?
それに、シルヴェスさんと
ミルフさんには協力して貰いたいですし。
ようやく俺の出番か。
シルドラを救う為ならどんな壁でも
突き破ってやる!!!
あたいもだ。
ずっとアイツの手助けをして来た!
此処で何も出来ないのは御免だぞ。
この森と里は私の庭ですし、
せっかくですので、私が案内します。
よくシノヴァシアに遊びに行くので
もう道順も慣れたんだよー。
あっ。それでは、出掛ける前に
シルドラ君に書き置きを残して来るので
一足先に外に出て待ってて下さい。
もちろんです。シルドラ君の
寝息を生で聴けました。よっぽど
疲れが溜まっていたのかもしれませんね。
シルドラは頑張り過ぎるんだよ。
そこがアイツの良い所なんだけどな。
その長所にあたい等は助けられたんだぜ。
皆さんの絆は本物ですね!
わたしも彼と話を交わしてみたいです。
その為にも皆さんの力が必要です。
一丸となって、必ず素材を
手に入れましょう。
それでは、ルミシー様。
フェイスウォールまでの
道案内お願いします。
ヴァンウッドの森――。
シルドラを襲った虫の正体は
スチュキートと言った害を成す虫。
ただ、この森では
中央に存在する広場にて咲き誇っている
シンティアと言う花のお陰で巫女族や森の民に
犠牲者が出る事は基本無かった。その代わり
関所周辺や忍者の里には生えてない植物の為、
次々に狙いを定めて襲撃したに違いない。
要するに憎き害虫。
療養しているとは言え
まだ完治した訳では無い。更なる快復に向けて
フェイスウォールの崖に生えている花を採取しに
初めて主人公が居ない物語が幕を開ける。
道中――。
シャノンさん、そう言えば
さっきルミシー様がそのフェイスウォールの
場所を教えてくれた訳だけど、本当に
その害虫は襲って来ないのか?
人々に害を成す虫の事をそう呼ぶのよ。
スチュキートもその1匹。そうね……
さっきシンティアの話をしたでしょ?
そう。今も脇道に沢山生えてるでしょ。
実はね、その花が最初に見つかった場所って
その崖の山道に入る前に生えてある
樹の下の土なのよ。
あっ。だから自信持って
虫は襲撃して来ないと断言出来たんだな。
別に良いのよ。
でも、その次の日また同じ場所に行ったら、
違う場所から新しい芽が出て来てね。
ルミシー様に伝えたら本当に
喜んだ事今でも鮮明に覚えてるわ。
あっ、そう言えば
あの方も
その綺麗な花を見て感動してましたね……
うんっ!!
ヴァルさんね。私もあの日に
初めて彼と会ったんですよー。
「えっとね……、初めて
見る花だから分からないんだ。
もしかしたら新種かもしれないしね。」
「きっとこの森を守ってくれる
大きな存在になると思うんだ!どうかな?」
「素敵な名前だね! うんっ!
ちなみに君の名前は何て言うの?」
「オレか? 名前はヴァル=バーンズって
言うんだ。長いからヴァルって
呼んでくれると嬉しい。」
「ヴァルさん、初めまして。
私の名前はルミシー。よろしくねっ!」
だから、優しくて
迷いの無い笑顔を見せてくれた
ヴァルさんがシノヴァシアを襲撃したなんて
絶対にありえないんですっ!!
それからのルミシー様は
当時就きたく無かった長に自分から
立候補して来ました。きっとヴァルさんが
彼女の心を動かしてくれたに
違いありません。
だって、澄んだ
瞳をしてたんだもん。
私も頑張らなくちゃ!ってね。
今は巫女族や森の民、
色んな方から支持される長になってくれて
素直に嬉しかったのよ。この子の横で
お世話してあげるのが私の役目だしね。
くぅ。泣かせるじゃないか!!
それと同時にヴァルも良い奴だ。
俺が保証してやる。
さぁ、長話はここまで。
もうすぐ到着するわ。皆様……
準備は出来ていますか?
あたいもシルヴェスも、
とっくに出来てるぞ。ドンと来いだ!!!
素晴らしいやる気です。
何とか無事に到着しました。此処が……
次回以降、フェイスウォールの全貌。そして
ミルフ、シルヴェスが崖に咲く
薬草の為に大奮闘――。
森の上空で
フリューウィングと共に
彼の身体も機体から振り落とされてしまい気絶。
それ以来、彼は今までずっと寝込んでいた。
その為、此処が何処で
自分が今どのような状況に置かれているか無知状態。
唯一知っているのはベッドの上で
気持ちよく眠っていた事だけ。
とりあえず、
旅人の宿をくまなく探索し始めるフラジー。
しかしこの管理人を務めるシャノンはミルフ達と
一緒に出掛けている最中。今此処に居るのは
自分とそして……
それに、お腹も空いたんだけど
勝手に食べたら怒られちゃうよね?
うわぁーん。誰も居ないのは寂しいよー。
スチュキートに刺されてしまい
ずっと気絶して眠っていたシルドラも
誰かが1階で大きな声で泣いているのを耳にし、
彼もまた眠りから覚めた。
誰かが泣いているけど、
何処かで聞いた事があるなあ。
えっと、
此処は何処だろう……。
とりあえず洗面所を探そうっと。
寝ぼけ
眼で
旅人の宿2階の部屋を1つずつ手探りで探して行く。
さっきまで横で寝ていた彼も今は居ない。
まだ寝起き状態の覚束ない
足取りの為、廊下に置かれた山積みの段ボールを
崩してしまった。割れ物注意と表記されている
シールに気を付けながら、1つ1つ
丁寧に片して行く。
もちろんその音は1階にも聞こえてしまい……
えっ!? 誰か2階に居るの!?
お化けとかじゃないよね。心霊現象とか
苦手なんだけど今から向かうよ!
ん。誰か階段上って来る……
一体誰だろう。此処の管理人が
戻って来たのかな?
だったら、取り敢えず
挨拶は
きちんとしないと。
あっ! もしかして
フラジーさん……ですよねっ!!
ずっと心配してたんですよ。
何言ってるんですか!
ヴァンウッドの森の上空で
フラジーさんの身体がゆっくりと地上に
落ちていく姿見て、死んじゃったのかと。
だけど、それを本当に信じたくなくて……
そうだったのか。
落ちた後の記憶は全く無いんだけど。
君を心配させたのは確かのようだな……
もうっ! 二度と
僕の前から居なくならないで下さいね。
約束ですよ!!!
伝説の飛行士、フラジー=キュレー。
そして、シルドラ=ロッド。
ヴァンウッドの森の広場にある旅人の宿にて
感動の再会を果たす。
2人共、眠りから覚めたモノも未だ快癒はしてない。
ミルフ達の帰りを待ちながら、物語は……
第045話へ続く。
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