第066話:大ピンチ続出!町長アジールを襲うアレドシアの幾重たる策略!!
文字数 5,888文字
第1幕のあらすじ。
港町ビューウェーブを
恐怖に陥れた過去がある
狼族を纏める長ヴァルを公衆の面前で
大画面を通して生放送する形で公開処刑する
アレドシアの計画が遂に始動――。
そんな中、ティブルエイドでは久しぶりの大雨が記録。
フェルマータ城に向かう
シルドラ達はアッジの娘コトハが営む茶屋にて
一時雨宿りする事になり、大雨を凌ぐ。
ただ、1つ問題が発生。
雨が止んだ直後に濃霧が起こり
ブラウンと迷子になってしまう。茂みに隠れながらも
彼に接触して来たのはかなり真剣な
眼差しを見せるレブロン。
これから始まる第2幕。
更に加速する物語、心して掛かれ。
フェルマータ城。
今から1時間前の出来事。時刻で言うと午前11時。
苦しいだなんて考えなければ良いんだ。笑顔すれば緩和出来るはず!
ふん。
そんなの一時的な話だろ。
誤魔化せないように深く刺したんだ。
要するに致命傷。死は免れないな。
なぁ、レブロン?
ほらな。所詮笑った所で
お前等狼族がアレドシア様の右目に
キズを付けた事に変わりはない。
その報いをヴァルが受けた。
長なんだから当たり前だろ?
残り11時間の命と考えば楽な話だ。
大量出血死なんて良くあるケースだからな。
安心しろ。私も計画終了後
この城と共に姿を消す算段。
1人で行くより一緒に行った方が
天国も賑やかになる筈だろ?
言えるのは今だけだ。
ふん。死ぬ前に1つ聞きたい事がある。
聞きそびれたら元も子も無いからな。
シルドラと言う
ロッド一族の息子を知っている筈だ。
かつて奴の両親がお前に託したネックレスを
今彼が所持している。それを何故
私、如きに渡さないのか不思議でな。
す、済みません。それは本当に秘密なので、言えないです。
そうか、残念だ。
もう1人犠牲者を出さないといけないな。
お前のように
笑顔を大事にしてる奴との喧嘩だ。
腹を抱えて笑う事で、身体を癒せるか否かは
別として、私にとっては苦手な存在。
計画第2幕の主役に選ばせて貰った。
そして、笑顔を教わった
シルドラへの反撃の狼煙を上げる。
何も出来なかった事を……
そう、レブロンが
ヴァンウッドの森にブラウンを迎えに来たのは
第2幕の執行主軸となる喧嘩を仕掛ける為。
アレドシアの右目が
負傷してる事を彼から聞かされてから
レブロンは寝返るように今まで笑顔を貫いて来た
表情や正義の拳も封印し、ヴァルの死を
共に見届ける本当の用心棒になってしまった……。
****
フェルマータ城、
ゼルガスの監禁部屋。
いずれ来る城爆破の餌食にならないようにと
ヴァールブルグ海賊団の所有する海賊船を避難させる為
操舵方法に聞きに来たのはグラッツ。
おうよ!!いつも上手い飯食わせてくれるからな。
何時でも逃走準備は出来てるぞ!!!
アレドシアは計画の算段に応じて
フェルマータ城を爆破させる予定なんだ。
特にこの停泊場の天井には
鍾乳石があってな、お前等が乗って来た
海賊船でもほんの数秒で大破だ。
お願いだ。それは
是が非でも避けてくれねぇか!?
どんな荒波も越えて来た俺の愛船なんだ!!
それに、クルー達の
思い出も詰まっててな。少々
ボロいけど、まだ第一線で航海出来る筈。
その為にも船の移動が必要だ。
操舵方法はゼルガスにしか分からないだろ。
いや。
それはまだ出来ない。
アレドシアは緻密に計算を重ねている。
ゼルガスが監禁部屋から居なくなったら
血眼になりながらも不審に思うだろう。
その為、用心を重ねて
ロギュアがお前の海賊船を操縦する。
安心しろ。
彼はああ見えて元海賊でな、今も
現役で活躍しているアジュマリン海賊団の
船長を務めていた事があるんだ。
現在は娘が後を引き継いでると聞いたな。
おお。やっぱりそうか!
どっかで見た事ある顔だと思ったけど
ヴァネッサの親父さんか。イケメンと
絶世の美女。顔が国宝級の
すげぇ家族な訳だ。
だったら大丈夫そうだな。
よし。今から教えるから伝えて……
そこには、
ブラウンを迎えに行く前に
アレドシアに頼まれたゼルガスの様子を
確認しに来たレブロンの姿が――。
お? レブロン
お前無事だったのか!!!
どうした。俺が恋しくなったか?
グラッツ、邪魔だ!!!!!
何ゼルガスとじゃれあってるんだ!?
お前もアレドシア様の裏切者だったとはな。
何処をどう見ても
仲が良いじゃねぇかよ!!
こっち来いよ。ぶん殴ってやる!!!
レブロン、どうしたんだ!?
お前が手を出すなんて。らしくない――
遂に由々しき事態に発展。
あのレブロンが
鍛え上げられた拳を悪の道に使ってしまう。
今まで貫いて来た正義が、崩壊へと導く。
グラッツは物凄い勢いで、パンチを喰らった衝撃で
城壁に激突してしまい一撃で瀕死状態に陥ってしまう。
示指、中指、薬指の3指を揃えて
指腹で軽く押すように橈骨静脈の上に置き
無事かどうか、即座に脈を測り始める。
※ 示指とは……
人差し指の事です。
それと同じように、親指を母指、中指を中指
薬指を環指、小指を小指と言う呼び方もあります。
幾つもの海を
渡り歩いて来たゼルガスは
クルーを大事にする漢の中の漢。
航海中には別の海賊に襲撃され
何度も傷を負ったり、命の危険に遭ったりした同じ船友も。
誰一人欠けることが無いようにと
愛を持って治療する事を心掛けている。
ただ、今は
かつて仲間だったと思っていた
レブロンが彼に手を出した事に戸惑いを隠せない状況。
な、何とか脈はあるな。所々
乱れてはいるけど、大事には至ってない。
ふん。本気でやったのに
まだ脈があるなんてタフな身体だな。
何だ。
お前も殴られたいのか?
元々ゼルガスも俺が処刑する予定
だったからな。アレドシア様やブロスの
邪魔をした罰だと思え。この哀れ馬鹿。
シルドラが聞いたら
どんな反応するか大体予想が付くだろ?
それを手に取るように言いやがって!!!
そのままレブロンは
ブラウンを探しにヴァンウッドの森に
向かう為、殴ったグラッツをほったかしにした
状態で強く監禁小部屋のドアを閉め
1階に続く階段を昇り、フェルマータ城を後にする。
【悲報】
グラッツ、ロギュアペア。
早くも大ピンチ。
このまま
ゼルガスが所有する海賊船は避難できずに
爆破の餌食になってしまうのか?
これもまた、カウントダウンが始まろうとしていた――。
****
時は過ぎ、12時過ぎの出来事。
アレドシアの計画第2幕が始まる最中
ヴァンウッドの森、後半地にて
突如発生した霧のせいで、足止めを喰らっていたのは
先程まで茶屋「甘蜜」で雨宿りをしていたシルドラ達。
早くフェルマータ城に向かわないといけない。
迷子になったブラウンを助けないといけない。
此処に来て、再びシルドラにとある決断が迫られていた。
ああ。今はこの方法しか無いんだ。
ブラウンは置いて行くぞ。
シルドラ、これは
苦肉の策なんだ。
迂闊に探し回っても、俺達が今度
彷徨ったらこの森から出られる所か
フェルマータ城にすら到着出来ないんだ!!
そう責めるな。
あたい等にも責任はあるんだ。
霧発生を読め切れなかった事実は免れない。
大丈夫だ。
ブラウンは誠拳道を極めた強者。
シルドラを揶揄う程の精神力を持ってる。
臆病だけど、芯は強いかもしれないぜ。
アイツをもう少し信じてみないか?
ふふ。シルヴェスさんが言うなら
確かかもしれませんね。
分かりました。
心配ですけど、一先ず
フェルマータ城に急ぎましょう。
もしかしたら何処かで再会出来る
可能性もありますし。
そうだな。
多分ブラウンの事だ。
怖かったよー、とか言って来るに違いない。
よし。後は
この一本道に沿って森を出るだけだ。
不安だと思うなら俺の鍛えられた背中に
しがみついても良いんだぜ?
ええええええ!!!!シルヴェスさんの広背筋って
力入れるだけでヤバいじゃないですか。
立派に羽根が生えてるんですけど!!!
ってか、ホットソープ以来に彼の背中を見たような。
本当はブラウンの事を皆が心配している。
今すぐにでも彼の捜索をしてあげたい所。
しかし、状況を全て
把握していてもこの霧だけはどうしようも出来ないし
自然に起こりうる現象の1つ。いつ治まるかも分からない。
今はフェルマータ城に急ぎ
アレドシアの計画を阻止しないといけない。
ブラウンの無事を信じ、シルドラ達は前に進み出す。
****
港町ビューウェーブ。
噴水広場に置かれているモニターに再び釘付けになる群衆。
カメラは再びフェルマータ城の
テラスに出て来たアレドシアに焦点が移り
再び彼の演説が始まろうとしていた。
そう時刻は12時――。
雨が止んだようだな。
ご覧の通り、ヴァルは刻一刻と
死に近付いている。見ての通りだけど。
この生中継を見てる者が何人居るかは
気になるけど、このまま計画
第2幕を始めさせて貰う。
うおおおおおっ!!!!
アレドシア様が現れたぞ。
次は何をするんだ!?
聞いてくれ。
この世界にはリンクリングと言った
絆を深め合う事が出来る時計があるんだ。
そのせいで、私が企てた計画の一部には
遂行出来なかった物があってな。
シルドラと言う人物からネックレスを奪えなかったんだ。
本来ならヴァルを目覚ます為の代物だった。
彼の仲間が障害物となり、邪魔し続けた
結果が今に至っている。
あ、何だそいつ!?
良い気になってるんじゃねぇよ
馬鹿が!!!
洋服屋のカウンター横窓を開けて
アレドシアの演説を聞いていたクレア達。
しかし、
シルドラと言う言葉に対し
群衆が発した馬鹿の2文字に
流石に堪忍袋の緒が切れてしまったアジールは
扉を強く開けて、今の侮辱発言を見過ごす事が出来ないと
胸に秘めていた想いを吐露してしまう。
ふざけるな!!!!見ず知らずの人に容易く
馬鹿って言われる筋合いなど無い!!!
じゃあ、シルドラに
会ったことがあるのかよ!?
言葉だけで人を傷つけるのは止めろ!!!
えっ、私達の知らない所で
そんな事が起きていたんですね。
被害に遭われた方々って大丈夫なの?
心配だわ……。
うんっ!
お母さんにね、人の話はちゃんと
聞くようにって言われてるんだー。
偉いでしょ?
ああ、もちろんだ!!
おい。大の大人よりこの子の方が
ちゃんとしててお前等恥ずかしくないのか?
うるせぇんだよ!!!
この生意気なガキめ、口塞いでやる!!!
アレドシアの演説により
彼を推す群衆の1人が、モニターを通して
知る事になったシルドラの存在に対し
誹謗中傷、罵詈雑言を浴びせた。
その場に
偶然居合わせた女の子が発した一言が
まるで今の状況を物語っているように聞こえてしまい
フェルマータ城は勿論、更に被害が拡大するかのように
港町ビューウェーブも
波乱の幕が上がろうとしていた――。
あの、すみません。
1つお願いがあるんですけど……。
はい。少しの間
この子の面倒を見て貰っても宜しいですか?
アジールさんの言う事は
勿論聞かないとね。分かったわ。
斯くして、
彼の魔の手から危機を回避した女の子は
アジールの提案により、ちょっとスラッとした
大人の女性の方と散歩する事に。
これで安心して、
群衆の1人と対峙する事に――。
極力町の人との衝突は避けたいけど、今はやむを得ない。
そりゃあ、そうだろ!俺が本当の有権者だからな。
狩るべき相手はあの画面の向こうで
ほくそ笑んでいるアレドシアだ!!!
いい加減分かったらどうだ?
その時、モニターに映る
映像を食い入るように見ていた1人が
2人の論争を遮るように、すんなりと会話に入って来る。
なあ。言い争っている時に済まん。
また新しい奴が画面に映り込んでるぞ。
今度は誰だ?
そう言えば
さっきアレドシア様が喧嘩って言ってたから
激突させる相手の1人じゃないのか!?
どれどれ……。
どんな奴が相手か拝ませて貰うぞ。
そこには
レブロンが霧が立ち込めている
ヴァンウッドの森から連れ去って来た――
うわあーーーい!!!
ボク、有名人になっちゃったの!?
皆、見てるかな!?
おいおいおい。
ちょっと待て。何で
ブラウンが映ってるんだよ!!!!
シノヴァシア出身、
臆病でシルドラに一番可愛がって貰っている
ブラウンの姿が。
最悪な脚本がいよいよ幕を開ける。
そして次々話で遂にシルドラとレブロンが再会。
更に第2幕の最後でティブルエイドの何処かに
仕掛けられた爆弾が作動。
目まぐるしい怒涛の展開に備えよ。
第067話へ続く。
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