第008話:レッツバンジー!シルドラ勇気のチャレンジ!!
文字数 4,895文字
ここは大吊橋、エアロブルー飛行場に
向かう最中に掛かっている
アロウドブリッジ――。
前回のあらすじ
女流格闘家を目指すミルフと
港町「ビューウェーブ」を旅立ち
初めて一夜を共に過ごした。明らかになった
事と言えば、シルドラの趣味が釣り。
そして、ミルフはプロレス観戦や野宿。
そして翌朝――。
なかなか食に在り付ける事が出来なかった為
さすがの彼も空腹になると同時に、
旅人がイノボーと言った気性の荒い
モンスターと遭遇してしまい、ピンチに……。
ただ、颯爽と駆け付けたミルフのお陰で
尊敬している格闘家の必殺技をお借りし
撃退、そして朝食の具材となる獲物……いや
食糧を手に入れた。
****
今から数時間前の出来事……
無事に朝食の食糧であるイノボー、それと
近くに熟れていた木の実を手に入れ
夜振りに薪を組み、火おこしをし始め
じっくりと焦げ目が付くまでジッ と見続けている。
す、凄いですっ!!
何か良い匂いがして来たー。
丸焼きって言うんですよね?
凄く美味しそう……。
よし! こんなモンで良いな。
シルドラ、さっき取った
グレイブリーフを用意してくれ。
あ、この葉っぱか……。
特に何の変哲もない代物だけど
何に使うんだろう?
このグレイブリーフは太陽の日差しを
浴びて育つ事で有名な葉っぱで
この大陸でしかお目に掛かれないんだぜ!
大きな葉をしているから
皿替わりにも使えると言う事だ。
よしっ! 焼き目が付いた
木の実も添えて完成だ!
これがあたい特製 ″焼きイノボーと完熟
木の実添え″ だ。美味しく出来た筈だ。
シルドラ、待たせたな。
とくと味わってくれ!!
グレイブリーフの上に切り分けたイノボーの肉を
盛り付け、それと一緒に焼いた木の実にも
焦げ目が付き、豪勢な朝食タイムが始まる……
お、美味しそうっ!!
僕、こんな豪華な朝食初めてです。
どんな味するんだろう?
いただきま……
よう。確か名前は……
シルドラだったよな!!
あれから財布は盗られてないか?
あ、確か僕の財布を奪った
泥棒を撃退してくれた人だー!
でも、実際にやっつけてくれたのは……
本当に2人には
感謝し切れないですっ!!
え、えっと……
そうだな。これも礼儀だから
名乗って置こう。俺はレブロン……
フランバージュと言う
組織に所属しているぞ。
フランバージュって
料理の仕上げにアルコールをかけて
燃やす事ですよね。要するに……
…………。
何だ、シルドラ。
もったいぶらずに最後まで言ってみろ。
あっ、いや……
この組織を立ち上げた方が
燃え滾るような熱いハートを持つ性格を
しているんじゃないかと思って……。
成程な。俺等のリーダーに
伝えて置こう。シルドラ、お前の名をな……
いや。俺が交流した相手は
アレドシアに伝えないといけない掟なんだ。
もしかして、レブロンさんって
リーダーの用心棒を務めているんですか?
そうだ。しかしあまり俺達に首を
突っ込まない方が良いぞ。
そんな事よりミルフ……
お。ようやくあたいに
話を振ってくれたな! どうした?
あっ、は、早く!! ミルフさん……
急いで盛り付けて下さいっ!!!
レブロンとシルドラの話を
羨ましそうに聞いていたミルフはすっかり
焼いていたイノボーの事を忘れてしまい
急いでグレイブリーフの上に
盛り付けて、ようやく食の時間へ――。
****
30分後――。
どうだ、美味しかったか?
二人に振舞うのは初めてだからな……。
イノボーの脂身の部分、口の中で
蕩けて、それで尚且つ僕の好みの味で
本当に美味しかったですっ!!
そうか。シルドラの口に合った味
だったのなら作った甲斐があったぜ。
問題は……
何だ。俺の方をジッと見て……
何か顔に付いてるのか?
"レブロン=味にうるさそう" と言う
イメージを持っていた為、慎重に
感想を聞き出そうとしていた。
2人の中に一気に緊張感が走る中……
ミルフの口が遂に開く。
レブロンさん、味はどうだったか
聞かせてくれないか?
ああ。俺体力作りの為に肉
控えてたんだけど、久し振りに美味しい
モノを堪能出来た……。旨かったぞ!!
それなら良かったぜ。
それにしてもレブロンさんの身体
キレッキレで逞しいんだけど、どんな
トレーニングしてるか教えてくれないか?
俺のトレーニング談義は話すと長くなる。
科学的アプローチで作り上げたと
言っても過言じゃないからな。けれど……
ミルフの足腰も相当鍛えられているぞ。
おお、レブロンさんに
褒められた。素直に嬉しいぞ……
よし、決めた。
おいシルドラ、ミルフ……。
美味しいモノを振舞ってくれた
お礼がしたい。付いてきてくれないか?
バンジーだ!!!シルドラ、ミルフ……
お前達もチャレンジ決定だ。
"待ったなし"
レブロンの辞書には掲載されていないまま
美味しいモノを食した彼の提案で
ティブルエイド屈指のバンジースポットである
"アロウドブリッジ" へ向かい始める。
****
緑の木々、小鳥の囀り(さえずり)
向こう側に繋がる一本道に架けてある大吊橋。
ここを訪れた観光客、そして冒険者は
必ず1回は経験出来て、楽しめる人気な場所。
もちろん背後には滝、真下には滝壺が存在する為
王道なバンジーが体験出来る。もう既に
ミルフとレブロンは飛び終えて下の滝壺に
浮かんであるゴムボートでシルドラの
到着を待っている様子――。
おーい、シルドラ……
怖がらないですぐ飛んだ方が楽だぞ……
ミルフ……いくら言ってもあの高さに
居るんだ。聞こえる訳ないだろ……
シルドラの勇気が試されるんだ。
見守る事しか出来ないだろ?
レブロンさん……、まさかここに
シルドラを連れて来る事を狙ってたのか?
(ブルーノ。早くアレドシアの元に
戻らないと行けないんだ。それなのに
あんな事頼みやがって……)
まだ、ミルフ達と合流する……そして
ブルーノが温泉リゾート地 "ホットソープ" へ
向かう前、二人が極秘で密会して
話し合った話はまだ先の話――。
****
シルドラサイド――。
橋の真下にある滝壺には二人の姿、そして
ボディーハーネスを身に着けたシルドラは
常にいつでも飛べる準備だけは出来ていた。
ただ実際に見えた景色は、彼からしたら
奈落の底に突き落とされるような感覚に
陥ってしまっていた為、なかなか勇気を
振り絞る事が出来なく後退り
してしまっていた……。
シルドラさん、大丈夫です!!
勇気を振り絞って飛び降りてみて下さい!
見える景色がいつもと違いますよ。
って言われても、無理なモノは無理です。
飛び降りたくても足が震えちゃって……
どうしたらいいんですか?
まずは深呼吸して、自然と一体化する。そうですね……。自分を鳥と
思い込んでみて下さい。そしたら自ずとも
飛べるようになりますよ! 当スタッフは
全員シルドラさんの勇気応援しています。
頑張って下さい!!
ここは高空100m――。
沢山の鳥の先頭に立ち
指揮を執っているリーダー的存在。
立派な翼を生やし、完璧なフォームでまだ
育ち盛りの小鳥達をサポートしながら
誘導している鷲や鷹と言った
猛禽類(もうきんるい)をイメージしている。
堂々たる姿で飛んでいる大型の鳥、
それを想像していた為、シルドラの目には
炎が迸り、"もう逃げない!"と
いつの間にか迷いが消えていた……。
目を瞑りながら、飛び込み台から
大空という自然に一体化し、勇気を持って
飛び降りて行く――。
お、ミルフ見てみろ。
シルドラが勇気を示したぞ!
やれば出来るって言うのはこういう事だ。
えっ、す、凄い!!
空飛んでるよー。こんなに飛ぶ事って
気持ち良いんだねっ!
"ミルフの声がシルドラに聞こえる"
それに呼応する為、彼はゆっくりと
目を開けてみると、そこには目に迫って来るような
渓谷美。そして誰しもが子供の時に
思い描いた "空を飛ぶ事"。を味わっている。
実際にバンジーを体験して、
飛び終わったせいかシルドラの中で
何かが生まれ変わった気分になっていた……。
そして無事にミルフとレブロンが乗っている
ゴムボートに着地する事が成功――。
ふうー、ミルフさん……
遅くなってすみませんでした。
おう。さすがあたいのパートナーだ。
飛べると信じてたぜ!!!
今は旅の仲間なんで、
感想を聞きたかっただけですっ! それに……
まだ出会って間も無いんで
僕の直感でしか無いんですけど、
何か試されている感じがして……
いや、やっぱり僕の勘違いですよねっ!
今の事忘れて下さい……。
(これがブルーノが言った
ヴァルの心の傷を癒す勇気の力。ただ、まだ未完成……。
そしてリンクリングか。アレドシアに
言わないといけない掟だけど……)
(久し振りに良い奴に出会えたぜ。
アレドシアには当分黙って置こう。
当分付き合ってやるか……。)
あのー、レブロンさん……
厳しい顔してましたけど、大丈夫ですか?
ああ。考え事をしていただけだ。
そうだ。感想だったよな?
えっと、いざあの場に立つと
足が竦んでしまって前に進めなくて……
すみません。恐怖心で前が
見えなくなったって言うのもあります……
お前にも目標や夢があるんだろ?
恐怖心があるとそれが邪魔で
達成出来なくなるんだ!
克服さえすれば、こういったバンジーさえ
様々な挑戦の1つとして、勇気を持つ事で
向き合う自信が得られたんだ……。
男だったらくよくよするな!!
お前だってツイてる物あるだろ?
冗談だ。シルドラ……俺やミルフにだって
叶えたい夢や目標があるんだ。
頑張ってみないか?
あたいもお前の
叶えたい目標の手伝いをさせてくれ!
切磋琢磨し合うって言うのが仲間って
言うもんだぜ。もっと頼って貰って
良いんだからな!!
ミルフさん、レブロンさん……
本当にありがとうございますっ!!
よし。そう言う事なら
アロウドブリッジは退散だ。
もう1箇所連れて行きたい場所がある……
えっと……、今度は何処に
連れて行ってくれるんですか?
さっきミルフから聞いたぞ。シルドラ……
地図を作りながら両親探しを
しようとしてるんだろ?
ティブルエイドの事なら
何でも知っている奴だ。
この大陸の事を聞くんだったら彼に
聞いた方が手っ取り早い……。以前
お世話になった事がある。確か
地図にも詳しい筈だ。
フランバージュ、"赤髪の狼"ことレブロン……。
リーダーであるアレドシアと共に
水面下で何かが動いているのは間違いない。
そこに深く関係しているのは忍者の里
"シノヴァシア" と何らかの
接点を持つ "ブルーノ"。
シルドラが勇気を示した事で、
レブロンの心の中に少しずつ炎を灯し始め、
彼の中で1番敵に回しちゃいけない人物が
"彼" である事に気付き始める……。
(シルドラ、俺等を止めてみろ……。
ヴァルの処刑まで残り1ヶ月だ。場所は……)
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