第061話:アジール再登場!vsアレドシア最終決戦前日譚!!(前編)
文字数 6,312文字
もう大丈夫です。
無事にスチュキート騒動は治まりました。
皆さんが
自分の役目を果たす為
シモンさんとイムラさんが先頭を切って
君達を守ってくれたんです。もう
この里が被害に遭う事はありません。
済まない、ブラウン。
未だ害虫騒動が終息しただけで
根本的な解決には至ってないんだ。
前回のあらすじ。
海食崖から落とされた
レブロンの身体が漂着したのは
ロックドクリフ近くにある人気スポット "クラムビーチ"。
崖の上に家を構えているゴッシュが
早急に見つけ出したお陰で、彼は無事に救出される。
部屋に置かれている
通信機器でギルド幻惑ノ紅の首領、ヴァーロンと
話している間に、まだ乾き切っていない
濡れた体を引きずりながら、レブロンは
思い詰めた表情で何処かに
立ち去ってしまった……。
その場から居なくなった事を唯一知っているのは
彼の側にずっと居たフレンドモンスター "グレント"。
親玉スチュキートを倒した狐族ランザー達と共に
山道を下り、シノヴァシアの中央広場に
戻るとそこには――
ブルーノ様、
申し訳ございません。
被害は最小限に食い止めましたけど
里中に設置された松明と灯籠が
アレドシアに壊されてしまいました。
はい。僕達が
マツカゼさんの自宅の蔵から
運搬をしていた光景を息を殺しながらも
茂みから監視していたらしく。それに……
ブロスを人質に盗られていてな。
奴は彼の背中に血液付きの剣を
突き立てていた。親切に振舞ってくれていた
俺達の目の前で処刑するのが狙いだった。
何処まで
卑怯な奴なんだ!!!
くそっ!!!
裏山で作業している間に
そんな事態が起きていたとは。
ブロス、それに皆は無事なのか?
マツカゼ宅から退出し
シノヴァシアの生活用水として使われている
井戸の水を汲みに行こうとした瞬間
自分の話題が中央広場に居るイムラ達が
出されている事に気付き
会話に参加する。
ブロス、
お前外出禁止って言っただろ!!
また何処で奴が狙っているか
分からないんだぞ。大人しくブラウンの
面倒を看てやってくれねえか!?
井戸の水を
汲んで来るだけですよ。
汚水で絞った雑巾をブラウン君の
身体を拭くのは可哀想でして。
ダメですかね?
まあまあ。
イムラもそう、かっかするな。
それがブロスの優しさなんだ。
少しは気持ちを察してあげてくれ。
取り敢えず
壊された灯籠と松明は僕達が
処理して置きますので、マツカゼさんは
御自宅で休養なさって下さい。
皆さんが貴方の帰宅を心待ちにしています。
こっちはまだ体力が有り余ってるからな。
任せて置け。
マツカゼ宅の蔵前で
アレドシアに遭遇してしまったブロスだけれど
説得に次ぐ説得のお陰で、彼を解放する事に成功。
ただ、失った物は
スチュキート退治の際に
大いに役に立ってくれた灯籠と松明の数本
それと、謎過ぎる血液が付着している剣。
蔵の中で保管している事実から推測すると、
マツカゼにとってあまり知られたくない
代物であるのは間違いなさそうだ。
****
マツカゼ宅、玄関――。
マツカゼさんも
夜遅くまで倒木の処理作業お疲れ様です!
話はブルーノから聞かせて貰った。
ブラウンの様子はどうだ?
大事には至ってないか?
何とか大丈夫です……。
僕と同じように、肩の位置に
スチュキートが刺した痕がありました。
シャノンさんから頂いた薬を
塗って今安静にして貰ってます。
そうか。そこでシルドラにお願いがある。
彼の側に居てやってくれ。
拙者からの頼みだ。
起床した際に、
横に誰も居ないと不安がるだろ。
其方の顔を見れば、ブラウンも安心する筈。
もちろんです。
フラジーさんとは仲が良く
ブロス君は会って間もないのに、彼の為に
井戸の水を汲んで来てくれたり
身体の汗を拭いてくれています。
必死さが伝わって来ました。
完治するまで看病しないといけませんよね。
ああ見えて、
臆病でな。
両親を幼い頃に亡くして以来
身寄りも無かった彼を拙者が引き取った。
雨上がりの
泥濘に
足を取られてしまい、崖から落下。
気付いた時には遅くてな、即死だったらしい。
常に天然で
陽気な性格も他界した両親の教え。
彼自身が馬鹿やれば、誰かが
笑ってくれると涙ながらに語っていた。
だから、シルドラに
ちょっかい出しながらも笑っていたんだな。
もうっ。
水臭いじゃないですか。もっと
揶揄ってあげた方が良かったんですね。
それなのに、本気出して
怒っちゃいました……
そこは大丈夫!
ブラウンは何やってもめげないからねー。
どんなにマツカゼさんに怒られても
不屈のメンタルを持ってるもん。
もう、マツカゼさん遅いですよ!
ミルフさんと一緒に裏山に行ったっきり
戻って来なかったので、突風にでも
吹かれてピューって何処かに
飛ばされたかと思いましたよ!!!
その効果音は
ごちゃ〇〇専用です。
作者に申し訳無いので、こちらの作品では
使わないようにしましょう。
あっ、そうそう。
さっきシルドラ遊びって寝言呟いていたよ!
多分少しずつ回復してる兆しだね。
開始いいいいいいいい!!!!!!今夜は寝かさないよ。
良いよね!?
ブラウンの寝言なのにいいいいいい!!!
後布団敷いて寝るだけだよ。
寝かせてくれーーー!!!
さてと、ブロスに
五右衛門風呂の湯を沸かし直してくれって
言わないとな。身体が汗まみれだ。
フラジー、余計な
戯れを
旅人の宿の大浴場でやるからだ。
ブラウンは熟睡中。一代表として
シルドラからお灸を据えられて来い。
良いな?
さてと、
ミルフ殿を五右衛門風呂へと招待しよう。
付いて来てくれ。こっちだ。
はい。言い直し!!!ヴァッじゃなくて "ば"。
声が裏返ったら喉を震わせてあげるね。
ばばばばばばばばばば……
斯くして、
長時間にも及んだシルドラの闇説教を
逃れる事が出来なかったフラジーの就寝時間、深夜1時。
2時間も
彼の闇掛かった表情を凝視しながら
皆が寝静まった約23時から座禅を組み
ブラウンを起こさないようにと、工夫を凝らしながらも
拷問とも言えない説教は混沌と化した。
****
早朝、シモン宅。
レブロンの
フレンドモンスター "グレント"
そして狐族のランザー達。一緒に行動を共にしている為
彼の家に宿泊させて貰う事に。
もちろんシノヴァシアの師範達は
起床時間も早いようで――
ふむ。今日も良い天気に恵まれたな。
そう思うだろう?
ああ。快晴の日は
大地に吹く風の匂いも変わるんだ。
スティンゼアは色で例えると緑、かな。
風を色で表現するなんて面白い奴だ。
シノヴァシアはどうだ?
きっと樹木や地面の匂いが
この里に吹く風に沁み込んでるんだろう。
自然の恵みが
こんなにも良質な所、何故
アレドシアは襲撃したんだろうな。
シノヴァルド同様にこの里も地図から
消し去りたいと思える一悶着が
以前遭ったにしか聞こえないぞ。
一瞬、背筋が凍るような瞬間が訪れる。
彼には心覚えがあるようだ。
師範代表の3人、
そして狼族の長を務めるヴァル。
均衡の証として交わされていた"とある手約束" 。
それを有権者である
ファーラック一族に伝えに行った際に起きた一悶着が
引き金となり、フランバージュを立ち上げ
目に物を言わせようとアレドシアが
首謀者となった経歴がある。
****
マツカゼ宅。
ずっと付添で
ブラウンを看病していたシルドラ達。
気が付くと上は天井。ふかふかな布団の上で
寝ている事にようやく少しずつ瞼を開けながら
周りの状況に気が付く――。
ようやく目を覚ましてくれたか。
ずっと心配してたんだぞ。
大丈夫でしたか?
ブラウン君が例の虫に刺されたって
ブルーノさんから聞かされたので
ずっと心配してたんですよ。
もう大丈夫です。
無事にスチュキート騒動は治まりました。
皆さんが
自分の役目を果たす為
シモンさんとイムラさんが先頭を切って
君達を守ってくれたんです。もう
この里が被害に遭う事はありません。
クマさんタオルの
クマさんもきっとブラウン君の事を
守ってくれていたかもしれませんね!
うん。
ボクね、幼い頃に両親を亡くしちゃって
ずっと寂しかったんだけど……
お誕生日の日に
このタオルをパパから貰ったんだ。
近くに居なくても、この布きれを通して
見守ってくれているような
気がするんだよね!
あっ、シルヴェス君おはようー。
それにアロイス君も。
もう大丈夫だよー。
だけど、念には念を入れて
今日は無理しないでゆっくりする予定ー!
うむ。その方がブラウンの為だ。
酷使して来た身体を安静させる
機会でもある。
今日は拙者も里内で
色々やらなければならない作業が
あるからな。何かあればブルーノ宅に
来てくれると助かる。順次対応しよう。
それに、フラジーさんは
僕の説教に2時間も耐えたんです。
未だ半分、寝ぼけ眼だと思うので。
おいおい。また俺達の
居ない所で何かやらかしたのか?
あたい、その理由知ってるけど
敢えて皆には秘密だ。
あーっ、フラジーさん
ボクの居ない間に何か悪戯したんですね!
いっけなーいんだー。
お前が言うなー!!!
何でこうなるんだよおおお!!!
うむ。全ては元気が一番。
ブラウン、峠を越さなくて良かったな。
未だ害虫騒動が終息しただけで
根本的な解決には至ってない。
其方達もアレドシアの計画に
巻き込まれる可能性も少なからずある。
姑息な手を使いながらも
複数個所に渡り、隙が無い状態を
作るのがアレドシアの手法。
只、不可能を
可能にする方法が1つだけあってな。
それはもう1つの権力を使う事なんだ。
うむ。このティブルエイドに
存在する有権者は1人だけじゃない。
此処にいる一同は誰しもが
お世話になった事がある御方だ。
ある時は
ティブルエイドの玄関口
港町ビューウェーブにてこの大陸を旅する
冒険者に絆を深める腕時計を贈呈し……
また、ある時は
この大陸を住み良い自然溢れる場所を
目指す為、少ない努力から積み上げ
様々な町民の意見を聞き込み、その声を
元に島全土を発展させていこうとする御方。
久しぶりだな、シルドラ。
マリーナブルー以来だった筈。
元気にしてたか?
アジールさんじゃないですか!!!
と言う事は、もう1人の有権者って……
アジール殿、遠方から
遥々と来訪してくれた事に感謝する。
マツカゼさん、ご無沙汰しております。
シノヴァシアの現状況は全て
ブルーノ様からの封書を以って
拝見させて貰いました。
俺で良ければ力になります。
皆さんには極秘で、1つだけ手配は
完了させて貰いましたけどね。
もうすぐ、
ティブルエイド海域に
牢獄島が到着する。悪いけど
アレドシアを野放しにするのはダメだ。
彼等に連行して貰う事にした。
おい、シルドラ。
お茶の準備が出来たぞ。
こっちに来て一緒に飲まないか?
ブロス、君もだ。
レブロンを崖から落としたみたいだな。
封書は嘘を付いてはいけない鉄の掟がある。
悪い。こんなにマツカゼさんの元で
罪を償おうと頑張って貰ってるのに。
いつか、
この時が来るとは思ってたけど
来てみるとやっぱ怖いな。僕も
シルドラや皆に多大な迷惑かけたし。
もうすぐこの場所ともお別れか……。
ブロス君、行かないで!!!此処にずっと居ようって言ったじゃんかー。
絶対にこの手は離さないよ!!!
お、俺も反対!!!!
シノヴァシアが好きって言ってくれた。
そんな人に悪い人は居ないよ!!!
確かに、拙者の世話係が
居なくなるのは何処か物寂しいな。
そうか。さすが
この物語の作者は皆さんを擽る
熱いシチュエーションを狙って来ますね。
この展開は誰にも真似が出来ません。
だったら、1つブロスに
頼みたい事があるんだけど良いか?
アレドシアの情報提供
そして、自分が犯した罪を
牢獄島の獄長ブレイア、そして
ライザ海上情報機関のライアンに
嘘を付かずに全て話してくれると助かる。
この試作段階のリンクリングの新機能さ。
ブロス、君にはモニターとして
俺達と会議に出て貰う。
拙者やイムラ、シモンの
2人も同席させて貰う事になってる。
何かあれば何なりと尋ねて来てくれ。
其方の力になってあげたいんだ。
あの!!!リンクリング一所有者として
どんな新機能か気になるので
その会議にお邪魔する事って可能ですか?
もちろんだ。それと
アレドシアの計画を阻止する為にも
皆さんの協力が必要不可欠。どしどし
意見を述べてくれ。
港町ビューウェーブの町長であり
もう1人の有権者、アジール。
ファーラック一族とは対称的で
この自然溢れる大陸が好きだからこそ
海から空、そして池や湖、公園や森、川のせせらぎから
小鳥の囀り、回遊魚が優雅に泳げる海を
守る保持活動はもちろん
月に1回、町民からの意見の交換の場を
提供し、様々な議題を交わしながらも
住み良い場所にする事をモットーに掲げている。
彼こそがアレドシアなんかより
権力を持つ器があるのかもしれない。
シノヴァシアへの来訪により、
いよいよ計画を食い止めるべく
賛同してくれた牢獄島の獄長と異例のタッグを組み始める。
今、最終決戦前日の会議が始まる――。
※ おまけ(設定)
アジール、そしてリリラビのキャラクターである
海産業会社クランチャードのフロスト所長と
研究員グラスは3兄弟で御座います。
クロスウッドでは無く、ティブルエイド
出身で御座います。
第062話(後編)へ続く。
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