第091話:ヴァリングス事件の裏事情!?第2の冒険者オリバーとの出会い!!
文字数 5,869文字
この度はフェルマータ城まで
御足労頂き誠に感謝する。私も君達と共に
温泉業界を盛り上げるお手伝いが
出来てとても光栄に思う。
前回のあらすじ。
インディム街道「ブラウン亭」に
辿り着いたシルドラ達は同姓同名の酒場のマスター
ブラウンと会話をする中、戴冠式と言った祝典が
6日後に開催、そして献上される
色彩の実の存在を知らされる。
ディグライズのリーダー、リュウガ。
ギルド「幻惑の紅」の首領、ヴァーロン。
次々に
新キャラの豪華な顔ぶれが揃っていく中
ティブルエイド、ゴッシュ宅では以前上空から
落下して来た謎の実をグランザが
必要以上に交換条件するかのように
瓦礫の山と化したフェルマータ城で回収した
「ヴァリングス建設に纏わる契約書」
要するに身内のヴェスターの家を
取り壊す事になった確実な書証を叩き付けられてしまう。
物語は本編が始まる2年前の春に遡る。
オランド様、御茶をお持ち致しました。
宜しければどうぞ。
応接間の扉をゆっくりと閉め
御茶を提供した際のお盆を返却に食堂へと向かう。
うん。これはマイルドに甘く
懐かしい香り重視の茶葉を使用してるな。
ハービーグラウンド製の高級品と見た。
おや。君の舌は味にも敏感なんだな。
目の付け処が違う。
有難う御座います。
入湯を終えたお客様に提供する
御茶を私自ら厳選する為に、茶葉の知識を
1から勉強させて頂いておりますので。
良い心掛けだ。
流石、ヒートリンスの社長
君となら良い契約を交わせそうだな。
改めて、この度はフェルマータ城まで
御足労頂き誠に感謝する。私も君達と共に
温泉業界を盛り上げるお手伝いが
出来てとても光栄に思う。
注意点)
これは裏の有権者との契約交渉なので
現実における正式な契約の取り方とは全く違います。
この作品内の世界の方法で物語が進行します。
➀ 先ずは契約内容。
ヴェスターと申す御方の家を
取り壊し、その地下に眠る源泉を採掘する。
その地所に温泉宿ヴァリングスを
施工する流れで良いんだな?
ちなみに
その御宅は借家か、それとも持家。
何方か分かるか?
ふむ。
持家の場合はその家族の
代表者に直接、承諾を得る必要が無くても
私の名前を申せば施工を円滑に進められる。
只、
借家の場合だと私の権限を失う。
表の有権者であるビューウェーブの町長
アジールの元に声が掛かる。賃貸対象物件は
全て彼が管理を果たしているからな。
シルギム様を
尋ねて正解だった、
と言う事か……。
築5年となれば家の骨組みの
解体作業も物の数分で成し遂げる筈。
契約終了後に早速業者の方に
連絡をするとしよう。
粗方の契約内容を記した1枚目の書類。もう1回自分の目で確認をし終えたら
同意の上、此処に御署名と押印の程を。
② 次に契約条件。
2枚目の書類となる紙上には
もし、施工途中に怪我を負った際に
適用されるこの世界の保険や、作業者における
不手際な事態が起きた際にどのような法が下されるとかが
事細かく箇条書きで記載されている。
ここでのシルギムとのやり取りは省略させて頂きます。
勿論、これも同意の上。
ただ、ヴェスターの一家が抵抗した際に
強制的に立ち退きさせる確実な書類が3枚目にある。
その書証が決め手になり、彼等は家を手放す事に。
③ 強制立ち退き命令書。
ライザ海上情報機関や牢獄島に
絶対バレてはいけない非公式過ぎる書類。
発見された場合、即座に連行され、
有罪と判決されてしまう代物。
此処にはもう既にシルギムの実印が押されている。
ん?
強制立ち退き……。
シルギム様、これがどう言った
書類か説明して頂く事って可能ですかね?
人間にはやむを得ない状況が必ず来る。
それを想定した書類。
これは
最後の手段。源泉の
採掘作業に対しヴェスターの家の者も
必死に抵抗する恐れがある。オランドが望む
ホットソープの未来を是が非でも
叶えたいのならこの書証を
彼等に見せると良い。
この世界の法令第13条。他所の地所に新しい建造物を施工する際には
契約書と共に必ず第3者に確認を執る。
シルギム様、
私は貴方の為に心を鬼にしても
必ずやホットソープを魅力ある場所
そして、ティブルエイドで活気がある
1つのアミューズメント施設を
目指して見せます!!
元はと言えば
自分が持参した契約ですから。
実印まで頂いています。ヒートリンスの
社長として分相応な殿方に迷惑を
掛ける訳にはいきません!!!
くっ、そうだ。
この違反契約書を持ち掛けてきたのは
秘密裏に動き出した謎の犯罪プランナー……
時間軸は現在へ。
****
ティブルエイド、ロックドクリフ。
ゴッシュ宅にて。
違反? 失敬な発言だな。
この世は悪に満ち足りてるんだ。
善人面してる奴を見てると反吐が出る。
おい、グランザ。
俺が黙ってるとでも言いたいのか!!!
だよなあー。
ヴェスターは牢獄島。両親は死。
家族がどんどん離れ離れになるのはさぞかし
オメェにとっても苦痛だろうな、ハハハ。
オランドが強気だった理由、
あのシルギム様が嫌々引き受けた理由も
これで全て一致した。
お前に兄と呼ばれる筋合いなど無い!!!全て2人を唆す卑劣な手段を提供し
自分は絶対に手を汚さずに平然な
態度で見下す事が出来る。
ハハッ。良いねぇ。
地図博士の見解、100点満点の解答だ。
ホットソープに何か恨みでもあるのか!?レブロンが知ったらどんな顔するか
分かって行動に移してるとしたら
相当タチが悪いぞ。恥を知れ!!
さっきから何でもかんでも有耶無耶にするでない!!
言いたい事があるならハッキリと
言ったらどうだ!?
ホットソープ編にレブロンは参加してない。
アイツをヴェスターの元に行かせたら
過去に約束を交わした時の記憶が蘇り
全てに支障を来たす恐れがあった。
ん、ちょっと待て。
ヴェスターとレブロンは大の仲良し。
シルギムが亡くなった今、契約の引継ぎは
当時フランバージュのリーダーを
務めていたアレドシア。
まさか、彼等が
ホットソープに向かう前から
既にティブルエイドに潜伏してたのか!?
そりゃそうだろ。
アレドシアが異常に情報を嗅ぎ付けるのが
早かったのは俺が常に報告をしてたから。
爆弾の正確な位置確認も然り。
第043話「緊急事態発生!ヴァンウッドとシノヴァシアに訪れる危機!!」より抜粋。
『そ、そうですね……
今は人の手も借りたい程。失言の程
御許し下さい。物は相談なのですけど、
この周辺で、素性を隠している人物を
目撃しませんでしたか?』
『身元の事ね。育った環境や
その人の職業や経歴。要するに
グレンドさんが言いたいのは、見た目で
判断出来なさそうな人物を此処に
来るまでに見掛けたか。』
『物分かりが早いですね。さすが
狐族の皆様です。それで心当たりの方は?』
『そうだな。強いて言うなら……さっき、
森の中で赤い服を着ている奴を見掛けた。
何か処刑がどうとか言ってたけど、
俺達には知らない事ばかりだった。』
この時は誰しもがティブルエイドで
暗躍しているフランバージュのリーダー
アレドシアが提示したドレスコード "赤い服" を
身に付けている集団メンバーの1人では
無いかと怪しむ所。
しかし、実際に狐族が見掛けた男の正体とは……
『アレドシアに渡したドえらい
爆弾。
ちゃーんと正確な位置に設置されてたか?』
『ああ。指示通り
ヴァンウッドの森全体、的確に
業火が行き渡るように仕掛けられてるぜ。
後は高みの見物、そしてフェルマータ城で
例の物を回収するだけさ。ハハハ。』
クソッ。ホットソープに
留まらずこの大陸で蠢いていた
誰も知り得ない影の暗躍者と言う事か。
お前は一体何を目論んでいるんだ!?
言って置くがな、
ヴェスターは獄長の監視下に置かれてる。
俺もそんな簡単に謎の実を渡す事等出来ん。
グランザがこれから何を
仕出かそうとしているのか正直に話せ!!!
それともう1つ悲しいお知らせだ。
オメェが持ってる謎の実は空大陸の
エネルギー源。色を失っている所から見て、
これはもう枯れ死んでいる証拠。
このような状態の実が各大陸の
海岸地帯で発見されているみたいでな。
空大陸の何処かの奥深くに眠る
巨大樹『シャマイム』に成っている
完熟実が底を尽きるとその時は……
さあ、どうする?
土足で家に上がった俺を追い返す?
それともその謎の実を渡してくれるのか?
その時、ティブルエイドに
不機嫌そうな顔付きで戻って来ていた"彼"が
玄関の扉が開きっ放しだったのを見付けて
土足で入り込む事はしないけど、グランザみたいに
扉もノックせずに黙って2人の会話に入り込んで来た。
おお、アグニブか!!!
ちょうど良い所に来てくれたな。
バカンスは充分に楽しんで来たのか?
ったく、サンオイル塗って貰ってる最中に
とんだ連絡が入って自由が奪われた。
はぁー、どうしてくれるんだよ。
ホント、ウザ過ぎて草。
ゴッシュに
託だ。
今からその謎の実を持って
スカイラッド蒼空精鋭機関の最高位に
属する責任管理者アルフレッド=グフランの
元へ行って欲しいんだけど。
ああ。例の
白鳩報告社が
流した戴冠式の情報。何処かの諜報員が
今日の朝の紙面上であの男に挑戦状を
叩きつけたお陰でどうやら1日中
ご機嫌斜めのようだぜ。
ゴッシュが所持していた
"謎の実"。
大きい核が巨大樹で、
その周りに成っている小さい核が
もう何個か空大陸から落下し枯れ死んでいる実。
それを失うと下海へと真っ逆様。
崩壊が免れない事態になる。
ただ、この編は
意外な展開と驚きを見せながら物語が動く。
何故ゴッシュがアルフレッド=ルフランと言った
空を取り仕切る機関の最高責任者と
面会をする事になったのか?
➀『戴冠式まで残り6日』
②『諜報員が何処かに潜んでいる』
③『献上する残り3つの色彩の実』
④『領空侵犯を仕出かした空賊の存在』
⑤『グランザが恐れる人物が始動』
⑥『グレースがシルドラを城に招待したい理由』
⑦『空賊の息子ヴァレッドが言ったアイツの存在』
⑧『シルドラの両親の道標』
こんなにも疑問点がある空大陸編。
シルドラ達の冒険に
ちょっとしたミステリー要素が加わった物語は
海上と大空の機関やエアフォース第1ターミナルも
かつてない苦境に立たされる事に。
****
ブラウン亭を後にした
シルドラ達は中央都市スカイテラスに
向かう道中にある『スパークリングスター』と言った
空大陸で一番星が綺麗に見える公園を訪れていた。
ねえー、シルドラ君!!!
これ、何て言う遊具なの!?
これはシーソーと言ってね、
両端にそれぞれ人が乗ってお互いに調子を
取りながら上げ下げさせて遊ぶ用具なんだ。
えっ、面白そうじゃん!!!
レブロンさん、一緒に乗ろー!!!
あ、あれ? どうしたんだろう。
全く動かないな……。
そして15秒後。
シルドラの目が
点になっていたのも当たり前の事。
明らかに筋肉質のレブロンが体重が重いのは一目瞭然。
ご覧の通り、この支点シーソーのレブロンの席の傾きが
どう見ても下の為全く微動だにしていない。
ブラウンが体験した事が
無い遊具で満面の笑みで楽しそうに遊んでいても、
この様子ではちょっと無理がある。
ねぇ!!!
何でビクともしないの!?
もしかして、レブロンさん太りました!?
うるせえええええ!!!!
太ったなんて言うな。これは筋肉だ。
脂肪なんかじゃ絶対無いからな!!!!!
じゃあ、今の体重教えて下さいよ!!!
ボクは65kg。22歳の一般男性の
平均体重と同じですから!!!
【????】
102.6kg。
僕のリンクリングが導き出した正確な数値。
どうだ、間違ってない筈だぞ。
ふむふむ。レブロンさんの
増量時の体重は100オーバー、っと。
ば、バレてしまったああああああ!!!!ってか、お前は誰だ!?
【オリバー】
ふっふーん。
僕の名前はオリバー。20歳。
シルドラ君のティブルエイドでの活躍を
画面越しで応援していたファンの1人さ。
ええええええええええええ!!!!
ぼ、僕のファン!?
そして、ボクが
シルドラ君のマネージャー。
名前はブラウン。22歳の超可愛い男の子。
彼と握手するならちゃんと手を洗って――
ああああああああああ!!!!
シノヴァシア以来のオチじゃんかー!!!
もうっ。皆のいじわるー!!!!
次回、偶然会話に入って来た
シルドラのファンと口語する冒険者オリバーが推す
彼の魅力を語り合いながらも物語の
舞台は遂に中央都市スカイテラスへ。
第092話へ続く。
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