第010話:グレンドの過去!放浪狼ゼオンとの大ゲンカ!!
文字数 4,655文字
前回のあらすじ
アロウドブリッジを渡り終え、
簡易休憩スペースでそれぞれの時間を
過ごし、巡り会ったブランメナッツミルクが
プロテインに近い味で上機嫌になったレブロン。
そこからロックドクリフに向かう道中――。
フレンドモンスターの牧場に辿り着き、
彼が飼っていた "グレンド" と出会う。
ただ、以前は一緒にお供(パートナー)として
お互い切磋琢磨し道を切り開いていたけど
とある境を機に、彼元から離れ
この場所にお世話になっていた……。
確か俺がまだ
フランバージュに属する前の
出来事だったな。なあ、グレンド?
あっ、は、はい……。
今から5カ月前と認知しております。
あの日以来
レブロン様はフランバージュに属し、
私は独り身としてこの場所に……。
****
細かい事は言えないけれど
レブロンは26歳。親元を早く離れ
独り暮らしをしている。家族と居住していた際
ペットと共に暮らしていた為、いざ独り身と
言う時、側に居れる存在が居ない……。
フレンドモンスターを始めて知り
初めて契約を交わした存在こそ "グレンド"。
その日以来レブロンに仕えるパートナーとなり
色んな道を様々な形で歩んできた。
そんな5カ月前のある日の出来事――。
軽い散歩に出かけたグレンドの帰りが遅い為、
玄関の前で苛立ちながら待っているレブロン。
遅いな……。軽い散歩に出ただけで
こんなに時間掛かるのか!!!
アイツの事だ。また道草こいてるだけだ……
もう少し待ってみるか。
15分後――。
ようやくガチャッ と玄関のドアが開く。
ただ、すっかりグレンドだと思い込み
自分なりの方法で説教をしようと
思ったのも束の間……
入って来たのはゼオンと言う放浪狼――。
どうやら軽い散歩をしている間に
グレンドと何か揉め事を起こし
主である彼の家に押し掛けた様子。
誰だこいつ……。
お前、人の家に黙って入って
名も名乗らないのか? 恥を知れ……
じゃあ、言ってやるよ!
お前のフレンドモンスターに
してやられた "ゼオン" って言うんだ。
居住区に着いて早々
突然口調が悪ぃって言われて
ケンカ売られたんだ。腹立って当然だろ?
グレンド、隠れてないで出て来い。
ドアの後ろに居る事位分かっているぞ……。
主の事をより知っているグレンドは
彼が怒る時の口調、仕草を全て知っている為
ずっと家の中に入る事が出来ず
ドアの背後にずっと隠れていた。
ただ、レブロンもパートナーとしての躾がある。
とりあえず冷静を維持しつつ、きちんと
背を向けて話し合わないといけない。
その想いが伝わったのかグレンドは
恐る恐るゼオンの背後を回り
玄関へと入って行く……。
おい、俺の目をしっかりと見ろ。
謝るなら視線を逸らすな……。
グレンド、もう何回目だ?
ふん。悪いのはゼオンの方……
私はあくまで正しい言葉遣いを
教えたまでの事。悪くありません……
何だと、テメェ!
聞き捨てならないな……。
謝る気あるのか無いのか、どっちなんだ!?
私はレブロン様に仕えし者。
それ以外の者には興味ありません……
ただ、出会った際には
厳しく接するまでです。
そうか……。良い根性してるな。
グレンドって言ったな? 表に出ろ!!
ケリつけようじゃねぇか。
うっ……。ご、ご主人様……
足を退かしてくれませんか?
一向に謝る気を見せないグレンドに対し
ゼオンが怒るのは当たり前。"何回目だ?" と言う
問いにも全く聞こえない程、彼の声が届いてない。
全く反省の色が見えない為、こう言った
躾はしたくないと彼の中でずっと
胸に秘めていたけれど、それでも
相棒として共に過ごす以上、何とか
しないといけないと思い、遂に
思い切り足を踏んでしまう……。
おい、良い加減にしろ!!
グレンド、俺の声が全く聞こえないのか?
ケンカは野蛮な輩がやるような事だ。
拳で語り合うんだったら友情だけにしろ。
その意味分かるならゼオンにきちんと謝れ!
ゼオンさん……、誠に
申し訳ございませんでした……。
ゼオンと言ったな。
今回の所は見逃してくれないか?
躾が出来てなかった俺にも責任がある。
分かった。レブロン……
グレンドを大切にしてやってくれ。
邪魔したな!!
玄関で佇んでいたゼオンが
レブロンとグレンドのやり取りを見て
何かを察したかのように
"ここから先は2人の時間" だと気付き
励ましの言葉を贈り、立ち去り始める……。
レブロン様……、
貴方の言葉も無視して私はもう
フレンドモンスターではないですよね。
今までお世話に……
ふん。何怖がってるんだか……
そんなに怯えるな。ちょっと
話がしたいだけだ。
****
ティブルエイド、ホットソープから
少し離れた港町 "アクアヴェーク"。
ピュアブルーとは違い活気は溢れていないけれど
漁業が盛んな町で、漁師が多い所で有名――。
レブロンの自宅はそこから少し離れた場所に
点在してある。海で過ごす事が大好きな為、
彼の肌が黒いのも日光浴が趣味な証拠。
この大陸にはジムが無い為、港町から
少し離れた海岸で走り込みや、自然に出来た
モノで常にトレーニングしている。
そしてグレンドとの思い出の場所でもある……。
やっぱりこの辺りは空気が
澄んでるから星が綺麗だな……。
ほら、見てみろ。
この何処までも果てしない
夜空を見始めるグレンド――。
これが
"満天の星空" っていうモノですね。
私がこんな神秘的な体験をして
宜しいのでしょうか……?
何言ってんだ、グレンド?
クリアに見える事はお前の心が
綺麗じゃないと見れないんだ。本当は
ゼオンに分かって欲しかったんだろ?
はい。綺麗な言葉遣いを
継続したくゼオンさんに強く
当たってしまいました。私の悪い所です……
俺も済まなかったな。
お前の足を踏んでしまったのは事実だ……
大丈夫か……、痛くないか?
けれど、私を止める為に
真剣になってくれた事感謝します。
グレンド……、後1週間で
お前の元を離れないといけないんだ。
俺が居なくなっても今回のように
意地にならない事出来るのか?
やっぱり行っちゃうんですね……。
本当に寂しいです。けれど、レブロン様も
自分の道を選んだって言う事ですよね。
でしたら私も頑張らないといけませんね……
ほら、グレンド……顔を上げてくれ。
俺等はいつでも一心同体だ。だろ?
"今一度2人の想いが1つとなった瞬間"
怒る時は怒る。褒める所は褒める。
これがレブロンに置けるフレンドモンスターの
教育方針。綺麗な星空の下で交わした
この会話は時が流れてもグレンドの中で
忘れられない一幕――。
そしてレブロンがフランバージュに属する当日。
もっと色んなモンスターと
交流して欲しい一心で、少し離れた
フレンドモンスター専用の牧場へと連れて来た。
グレンド、お別れの時間だ……。
やっぱりお前が居なくなると寂しいな。
レブロン様、暫しの別れです。
今までお世話になりました……
1つだけ言って置く。ここにはもしかしたら
ゼオン以上に厄介なモンスターがいる
可能性もあるけど……
グレンドの目は前だけ見てる。
"もうあの時の自分じゃない" と……
その目は誇らしく、一皮剥けた所を
最後の挨拶としてレブロンに見せ付ける。
もう大丈夫そうだな。
じゃあ、俺はもうそろそろ行くぞ。
分かりました。レブロン様も
お気を付けて行って来て下さい……。
また会える事を願っております。
今まで楽しかったぞ!
ありがとな。じゃあ、行って来る!!
お前も頑張れよ……!!!
"暫しの別れは笑顔で"ずっと彼の中で決めていた事。
フレンドモンスターの牧場を背にして
アロウドブリッジ方面へ行こうとすると
今まで出して来なかった張り詰めた声で……
今までありがとうございました!!
私はレブロン様の事が大好きでした。
良い旅路を祈っております。
決して涙を見せる事なく
彼はフランバージュのリーダー
"アレドシア"の元へ向かい始める。
そう、これが2人に纏わる過去話――。
****
時は戻り、現在。
フレンドモンスターの牧場――。
気付いたらシルドラは2人の過去話を聞きながら
フレンドモンスターである "ミッシュ" と
触れ合っていた。風貌はウサギをしている。
良い話ですねっ!
お互いに思い合い、信じあう事が
ベストパートナーの証です!!
(ミッシュ/【ウサギ】)
はいー。僕実はグレンドさんと
お友達なんですよっ。本当に優しい方で
いつも面倒見て貰っています。
レブロンさん、あんたと
過ごした日々がグレンドを変えたんたぜ。
やっぱり心は繋がっていると言う事だ!
レブロン様……、あの時貴方が
強く言ってなかったら今の私は居ません。
今は沢山の友に囲まれて楽しく
過ごさせて頂いています。
そうか。立派になってくれて嬉しいぞ。
もう心配は要らないな!
はい、もちろんです。
レブロン様はこれからも私の御主人様……。
そうだ。
確か、ミッシュだったよな。これからも
グレンドと仲良くしてあげてくれ!!!
じゃあ、俺達は行くぞ。
次会う時は全ての任務を終えた後だ。
それまで待っていてくれないか?
いつまでも待ち続けます……。それとシルドラさん、ミルフさん。
レブロン様の事を宜しくお願いします。
分かりましたっ。レブロンさん
気付いたら服脱いで裸体を
晒している時あるんで……
晒しているんじゃない……
お前等に俺のキレッキレな
肉体を見せているだけだ!!!
****
その後、3人は牧場を後にして
ロックドクリフに向かい始めると
後ろからグレンドから付いて来ている事に
気付かず、シルドラの元にやって来る……。
グレンドから受け取った物は
ヴァル=バーンズの
所持物だと思われるネックレス。
これネックレスですよね……。
ん? これ以前何処かで見覚えが……
やはりそうでしたか……。
それは以前ヴァルが唯一心を許した
君の母親であるプリメラの物です。
ですよね、ロッド一族のシルドラさん?
あっ、思い出した。
確かにこのネックレス、
僕のお母さんの物ですね……。
うーん、ヴァルさんに渡したと言っても
その人の事が全く分からないので
何にも言えないです……
そうでしたか。
ヴァル=バーンズと言うのは
以前忍者の里 "シノヴァシア" を襲撃した
張本人です。現在フェルマータ城にて
幽閉されているのが確認されてます。
幽閉って確か……
ある場所に閉じ込めて、外に出られない
ようにする事。その多くが
何かの罪を犯して……あっ。
ま、まさか……。誰かがヴァルさんを
処刑しようとしているんですか?
これは止めないと行けないですけど
全く場所が分かりません……。
その為にロックドクリフに急ぐのです。
ゴッシュさんならフェルマータ城までの
道を知っている筈……。
早くもフランバージュの用心棒レブロン……
"大ピンチ"。
第011話へ続く……。
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