第046話:シルドラの快復大作戦!フェイスウォールの薬草を求めて!!(Ⅲ)
文字数 4,284文字
今まで何してたんだろう……
全く記憶が無いんだけど。
うん。雷を落とされた感じかな。
ボク、初対面の人に余計な事を
言っちゃう癖があってね。怒られてから
初めて気付かされるんだ。
決して悪くないんだ。
許してやってくれないか? 俺からも頼む。
こう言った性格だけど
審査員として、ブラウンの舌は確か。
正しい評価や的確なアドバイスを
言い渡せる事が出来る。彼の食レポを通して
数々の信頼を得ているんだ。
でも、あまり調子に乗らない事。
僕だからまだ良いけど、世の中には無口で
滅多に怒らさそうな人程、怒らせると
怖いんですよ!!
坊主って言われちゃったー。グスン。
それにクソって呼ばないでよー。
毎日きちんと身体洗ってるのにー!
そういう問題じゃない。人に見せる姿勢の事を言ってるんだ。
分かったなら返事をしろ。
前回のあらすじ
ヴァンウッドの森、
関所周辺に現れた害虫スチュキート。
その虫によりシルドラは刺されてしまい気絶……
治癒して貰う為に
旅人の宿に担ぎ込まれるが、そこで
フラジーとの感動の再会を経る。ミルフ達は
彼の更なる快復を目指し、薬草の素材が手に入る
フェイスウォールへ向かい、シルヴェスが挑戦を始めた。
その結果、違う型の葉を採取して来てしまった。
リベンジを果たす。と
意気込むミルフの崖登りが今始まる――。
****
フェイスウォール。
何をやるにしても、事前に体を慣らすのは大切。
屈伸などの準備運動をしていた。
そうだ。ティブルエイドでは
馴染み
無いんだけど、シルドラに教えて貰ってな。
確か、
全13種類のエクササイズで
構成されていて、約400箇所の
全身の筋肉をくまなく使う体操だった筈だ。
ほう。それで身体も温まると言う事か。
私も機会があればやってみたいな。
大丈夫だ。あたいは何処に
生えている素材をゲットすればいいんだ?
あそこですっ!
木の根っこが生えているあの真下に……
ルミシー様もお気付きになられたのですね。
そう、あの素材が生えている辺りに
足を掛けられる場所が御座いません。
崖登りが難航な場所に存在するので
ちょっと苦戦するかも……
気遣ってくれてありがとな。
あそこにしかないなら、やるしかないだろ。
分かりました。くれぐれも足場には
お気を付けて、無茶だけはしないで下さい。
安全第一ですので、無理と判断した際は
必ず戻って来て下さいね。
ミルフ、崖登り開始。
次の採取ポイントには全く足場が無い為
シルヴェスの時と比べたら桁違いの難しさを誇る。
ただ、そこに
辿り着く経路を瞬時に判断し
足場に足を置き、多種多様な技を使い熟しながら
順調に上へ上へと移動している。
※ ボルダリング用語で
「どんな動きをするか」と言う事が「技」に直結する為
ムーブ=技という意味となります。
凄いですね。
対角線上の手と足を交互に使って
上に登っていく様子始めて拝見しました。
あれは
ダイアゴナルって言う
ボルダリングの基本的な技の1つでな。
そう言った技を
的確に使う事で登りやすくしたり
疲労を抑えながら登る事が可能になるんだ。
オリアナによる
ミルフの崖登り解説を聞きながら、改めて
彼女の凄さを再確認する。
大胆な技の連続で
一瞬たりとも見過ごす事が出来ない。
その中でも、手を伸ばしても届かない場所にある
足場に手を掛ける時に差し掛かっている状況を
打破するには……
す、凄いですっ!
ミルフさん、今飛びましたよ。
皆さん、見ましたか?
そう。自分の周りに足場が無くて
ちょっと離れた場所にあるなら、いっその事
飛べばいい。これも立派な技の1つなんだ。
ランザだな。
1,2回反動を付けて取りにくい方の手と、
同じ側の足で踏み切ってジャンプをする。
上級者じゃないと出来ないんだ。
息つく暇もせず、ミルフは
薬草が生えている採取ポイント付近に到着。
後は、どのようにして其処に辿り着くかが問題。
今度はさっきと違ってほんの少し離れている為、
かなりの飛距離を稼がないといけない……
しかし、何の躊躇いも無く
彼女は今の足場を思いきり蹴り上げ、大ジャンプ。
完全に空中に
浮く瞬間が出来る技こそ今ミルフが
見せたダブルダイノって言うんだ。
彼女からしたら楽勝に見えると思うが
かなりの難易度を誇るテクニックな筈。
じゃあ、間違いなさそうだ。
シルヴェス、今降りるから
あたいの身体をキャッチしてくれないか?
ミルフさん、お疲れ様でした。
素材の方、拝見させて貰っても
宜しいですか?
今度は間違えてない。と
言い張ったけど、何処か一カ所でも間違えていると
シャノンが提示した素材の特徴と
一致しない事になる。少しの間でも
彼女が無口になると緊張が走る……
何とか無事に
素材を手に入れる事が出来たわ。
ミルフさん、シルヴェスさんのお陰です。
本当に有難うございました。
俺、何にもしてないぞ。
間違った素材を手に入れたのに
それでも頑張りを認めてくれるのか?
本当だったら崖登りは危険なの。
一歩間違えたら死んでしまうかもしれない。
それに、高い壁を目前に命を
賭して
頑張ってくれたんだ。私からも
礼を言わせてくれ。
シャノンの為に
協力してくれてありがとな。感謝する。
それでは、旅人の宿に
戻りましょうか。もしかしたら
シルドラさんが起きたかもしれませんし……
そうですね。それと
いつフラジーさんも目を覚ますか
分からないです。結構時間も経ちましたし
そろそろ戻った方が良いかもしれませんね。
えっ!?フラジー、旅人の宿に居たのか?
ホットソープに向かう最中、彼の持っている
飛行機で送って貰ってたんだ。
その最中に、当機の左翼が壊れて
飛び降りろ!って俺達が指示したんだ。
それがシルドラ達との出会いだったな……
その後、森の上空で
フリューウィングと彼が墜落して行く光景を
目の当たりにしてしまった。
そうだったんですね。
フラジーさん、ずっと気絶していた上
空から落ちて来た衝撃に付いた
打撲の痕が沢山あって、可哀想で……!
でも、その様子だと
彼を助けてくれたんだろ? シルドラは
アイツの事をずっと心配してたんだ。
そりゃ、そうだろ。
リンクリングで繋がってる仲だからな!
ミルフの魅せる怒涛の
技にて
薬草に使う正確な素材を手に入れる事に無事成功。
危険と隣り合わせの崖登り。
1歩でも間違えたら死ぬ可能性もある。
無事にやり遂げた2人の頑張りを称え、
フラジーとシルドラが待つ旅人の宿へ帰還して行く。
しかし、シャノンの表情が少し曇っている様子。
それもその筈。フラジーが持つ
リンクリングは今……
****
場所は戻り、旅人の宿――。
シルドラは
バージュベリーケーキを届けに来た
シルリアとプラムをリフレッシュルームに通し、
皆の帰りを今か今かと待っていた。
あっ、ボクもお腹空いちゃった。
家でターニックポテト食べて来たんだけど。
どうやら足りなかったみたいだ……
えっ、良いなあー。俺なんか
起きてからまだ何にも食べてないのに!
ターニックポテトって言うのは
ティブルエイドで採取出来る
色んなナッツとポテトを炒めて、その上に
果実のターニックベリーを絞って作る
ソースと絡めて完成する料理なんだ。
うん!!
ナッツの香ばしさとベリーの独特な甘さが
良い具合に調和してるから本当に
美味しいんだ。甘香ばしいって
言えば分かるかな。
ティブルエイドでは
家庭料理として親しまれていてね。
ビューウェーブにその専門店が
組まれている位、住民からも
愛されている1品よ。
あっ……。
美味しそうな話題してるから
僕までお腹が空いてきちゃいました。
あーーーー!!!
バージュベリーケーキ食べていい?
もう我慢の限界だよー。
ダメよ。
食事は皆で摂った方が楽しいでしょ?
少し多めに持って来てるから、皆さんが
戻って来たら、美味しく頂きましょう。
それまでお預けです。
もう! フラジーさんの
食欲がボクにも移ったじゃないですか。
どうにかして下さいよ!!!
早く帰ってきてくれえーーーー!!!
シルドラ君も何か言ってよ。
まだかな。早よケーキ食わせろよ。
帰って来たら絞めてやる。
その時、複数もの足音が
旅人の宿の外から聞こえ始め、衝動的に
玄関先の扉の前にスーッと度が効いた表情で
立ち尽くすシルドラ。
目の前にいると思わないだろう。
扉開けてただいま!と言えるだろう。
しかし、そんな甘くは無い。
現実は、これからだ。
おかええええりいいいいいい!!!!!!何処に行ってたんだよ。事情を
聞き終わるまで逃がさなあああい。
うわああああああああああ!!!!
で、出たああああああああ!!!!
黒い鳥が空に羽ばたくと同時に
旅人の宿を通してブルーノの悲鳴が森中に響き渡る。
それは決して見た事が無かった彼の表情。
そして同時に見たくもなかっただろう……
この豹変ぶりに。
悲報:シルドラは変わってしまった。
次回、旅人の宿に居る皆に揮う
カオス過ぎるシルヴェスの熱すぎる筋肉クッキング開始。
そして……
今年は色々と
大変な年だったと作者から聞きました。
思い描いていた毎日を過ごせなかった人も
沢山いると思います。
でも、きっと来年は今以上に
楽しい事が待ってるに違いありません。
キズナ・ワンダーランドの
今年中の公開は今日でラストですけど、
来年も作者が描く冒険の続きを
楽しんでくれたら嬉しいですっ!!
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