第087話:磑風舂雨!波乱の幕開けと新たなる冒険!!
文字数 5,962文字
磑風舂雨とは……
何かしらの物事の起こる前触れの事。
シルドラ達が
ティブルエイドを旅立つ昨夜の出来事。
此処は空大陸、
中央都市スカイテラスが一望出来て
断崖絶壁の上に建つダイナミックさを誇る "フィルハート城" 。
夜空に浮かぶ星々の綺麗さに目を光らせているのは
この洋風な城を携える一族の次期王妃。
【????】
ミルフィム様、こんな
遅くまで夜更かししてはいけませんよ。
【ミルフィム】
だってー、星は見てても飽きないもん!!
後10分。そしたら電気消して
きちんと寝るからさ。良いでしょ?
【????】
明日は一族の王冠が
1日限定で特別展示されるんだろ。
警戒態勢の方は万全なんだろうな?
あっ。
ティブルエイドの英雄だよねー?
来るって聞いた時驚いちゃったんだ!!
あのアレドシアを改心させた奴だったな。
難解な敵を良く相手にしたもんだ。
さてと、
ワタシは持ち場に戻るとしよう。
ミルフィム様、何かあれば申してくれ。
はーい。リザレアさんも
夜分遅くまでご苦労様ですっ!!
【リザレア】
王妃を守るのはワタシの役目。
心ゆくまでゆっくりと休むといい。
4階の寝室に集まるのは
グレース、ミルフィム王妃の側近であり、お世話役。
リザレア、彼女とこの城の安全を守る護衛担当。
明日、空大陸の
中央広場で執り行われる一日限定の王冠展示。
1度でも良いから見てみたい城の継承物に冒険者は勿論
滅多にお目に掛かる事も出来ない街の者でも
自由に観覧する事が可能。
そんな由緒ある日に、
シルドラ達が訪れる事になるとは――。
****
空大陸から少し離れた
遥か上空を漂う大型空挺、鷹を模した
ガス嚢や両翼を持ち、多くのプロペラ、推進エンジンを
搭載している事から付けられた名前は
『ホークスオッド号』。
そんな高性能で性能が優れた
空挺に乗船しているのは、最近空大陸周辺で
領空侵犯をやってのけた空賊とその一味。
常日頃、太陽の日差しを浴びているせいか
肌は焦げていて威圧感がフランバージュの時より異常。
【????】
あぁ。予定通り明日には空大陸に到着する。
オメェの読みは流石だな。
只、フルスロットルで飛んでいるせいで
赤燃石が底を尽きそうだ。
安心してくれ。
大抵の鉱石も空大陸に行けば略奪可能。
オレの計画に狂いはしないさ。
何しろ
空大陸には
遺跡を奥深く潜っては石コロを
発掘するプロ集団がいる位だ。上手く
行かなかったら急襲すれば良いだけの事。
どの策略も先を
見据えた結果を想定してるんだろ?
俺には絶対出来ない所業だぜ。
エドガーはこの茶色い羽根を
羽搏かせる役目を背負ってる訳だしな。
オレが出来る最小限の手伝いを
実行してるだけだぞ。
例の王冠ですけど
明日、1日限定で特別展示されるそうです。
ははっ。それは好都合じゃねぇか。
白昼堂々と盗み出してやる。
でも、何故そう言った
催しをする必要があるんだ?
一週間後に迫った
王妃に対する戴冠式に向けての事前
イベントだと白鳩報告社が流していますね。
デマに流されずに
正確な世界情報を様々な媒体を通して
全国民に伝える優秀なメディア業界……。
ふん。ライザ海上情報機関の
資本が入ってる社が宣伝してるのかよ。
まぁ、オレ達には関係ねぇけどな。
あのヴァーロン一味も牢獄島にしてやられて
不時着してるってもっぱらの噂。
俺達空賊は機関公認じゃない。
非公式で各大陸を周っては略奪を繰り返す。
あの城に眠ってる王冠もその1つ。
それだけは絶対に忘れるな。
オレを誰だと思ってる?
エドガーの息子、ヴァレッドだ。
滞りなく計画を遂行、そして成功させる。
首領らしきエドガー。
息子ヴァレッド含め、構成員は2名以外にも多数。
詳細が未だそんなに判明していないこの空賊。
彼等が引き起こすティブルエイドなんかより
身が縮むとある大事件にシルドラ達が
巻き込まれる羽目になるとは……。
****
アルジュバルト海域の中心に
建てられているライザ海上情報機関。
全5階建て。
沢山の部屋が隣接されている廊下を
抜けた先にある階段を昇り、一部の人物しか
立ち入りを許してない重厚な扉を開けると、そこには――
良いからその腕を止めろ!!!
いつまでトレーニングしてるんだ!?
デカく見せる為に日々精進。
1にトレーニング、2にプロテイン
3・4が無くて5に鏡の前で
バルクアップだ!!
【????】
あら、ライアン。
何、ムキになってるのかしら?
こっちは大事な報告をしてるんだ!!!
お前の耳は圏外なのか!?
【????】
ラスター大佐は
日々の執務で余暇を楽しむ余裕が無い。
ふぅ。よし!!!
良い感じに張ってるな。
ライアン、デスクの上に置いてある
プロテインを取ってくれ。
空大陸の戴冠式の事か?
はい。ライアンは
その由緒ある式典の宣伝に何故
白鳩報告社を取り扱ったのかと
聞いております。
調査部からの報告が
俺の元に上がって来ていてな
戴冠式の関係資料の中に何故か
スポンサーでも何でも無い
白鳩報告社の名前が記載されてたらしい。
最悪な場合、
機関に二重スパイがいる可能性があるな。
ははっ。笑えねぇ冗談させやがって……。
ラスター様、冗談等言ってられません。
戴冠式は1週間後です。
早く対処の方を……。
くそっ。アレドシアの1件が終われば
また直ぐ厄介な事件が浮上する。
一体どうなってるんだよ!!
ライアン、そう言えば
例の少年はあれからどうなった?
式典に
諜報員疑惑と良い
タイミングが良過ぎますね……。
じゃあ、何か!!!
また事件に巻き込まれるってか!?
それに皆も知ってる通り
最近、空大陸周辺に領空侵犯を仕出かした
空賊の存在も浮上しているしな……
ははっ。シルドラって言う奴も
安心して冒険出来ねぇな。同情するぜ。
ラスター様!!!
彼の両親は禁止区域に侵入した犯罪者。
身内と言い、同情しては困ります!!!
ふっ、別に良いじゃねぇか。
20歳の冒険者の芽を潰す事はしねぇさ。
息子には何の悪気も無いからな。
ただ、俺はまだ
クルディーとプリメラを許した訳では無い。
彼等の素行を許す訳にはいかない!!
徹底的に取り調べるまで!!!
【レイヤ】
ふふっ。骨の髄まで詮索するなんて
私にとって至高な時間。
【アスラン】
さっさと有罪にすれば良いだろ!?
ラスター大佐を煩わせるなんて、以ての外。
って、何言わせるんだ!!!今の発言直ぐに取り消せ。
そうか。何かあれば力になってやる。
何なりと言ってくれ。
物語が進むに連れて
事態も更に大きく加速して行く。
大佐の側近達が
抱える悩みとはこの機関に潜む諜報員が
遥か上空の戴冠式にどのような形で関わって来るのか?
この章も一筋縄では行かなそうだ。
****
エレメンツエアー飛行場。
ティブルエイドで
シルドラ達が訪れたエアロブルーとは違い
此処は公共用に属している為、何方かと言えば空港に近い。
機械増し増しの施設、
色んな客や冒険者、業者の行き交いが多く
特にブラウンが過剰な程に周辺の様子に1番驚いていた。
えっ、何、此処!?
ランバードさん、詳しい事教えてー!!
おう。改めて教えてやる。
此処はエレメンツエアーと行った飛行場で
今皆が居るのはターミナルビル。
旅客が飛行機に乗降する際に
必要な手続きや合流をする場所なんだ。
ははっ。ランバードは立派な免許所持者。
俺達は無料で乗れるんだぜ!!!
そうだ。彼はこの空港と提携を組んでいる。
空大陸との行き来も自由に出来てな。
滑走路にはランバード専用の
飛行機が常にスタンバイされてるんだ!
ズバリ言うと
プロの操縦士って事だろ!?
フラジーの時より立派な飛行機に乗れる。
今度は安全保障付きの空の旅じゃないか!!
ミルフさん!!!
彼は伝説の飛行士なんですよ。
人と比べちゃダメですって!!!
文化の違いと科学の進歩。
遂に此処まで来たんだな!!!
ねえ、シルドラ君!!
喉渇いたよー。水飲み場は何処!?
えっ。この建物は始めてだから
僕にも分からないな……。
うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!蛇口捻ったらいつも直ぐに飲めるのにー。
だったら、あそこで
突っ立ってる彼に話を聞いてみようぜ。
その方が早いような気がするぞ。
急に声掛けてすみません。
この辺りで水飲める場所ってありますかね?
でしたら、あそこに見える
ウォータークーラーで飲めますよ。
たった水欲しさの為に
ウォータークーラーの前に走り出し
ターミナルの中を行き交う冒険者や様々な
業者の目も気にせずに、飲料水争奪戦が始まる――。
おい!! ブラウン退いてくれ!!
俺にも飲ませろ!!!
そ、そんな白状な事
言わないで早く代わってくれ!!! 俺の
喉にも飲料水の爽やかな潤いをプリーズ!!
ずっと我慢してたんだからねっ!!!
もう少し、いや後1分待って下さい!!!
意地でも飲んでやる!!!!
うおおおおおおおおおおおおっ!!!!
ああああああああああああ!!!
だ、ダメですって!!!
お見苦しい所
見せてしまいましたね。
すみません。ちょっと注意して来ます。
この空港から
空大陸に向かうランバード専用の飛行機が
離陸する前に、真っ先に大空に飛び立ったのは
醜すぎる飲料水争奪戦を繰り広げている
ブラウンとレブロンに対する
シルドラ覚醒赤茶文字。
わっ!!!
ち、違うんだよ!!!
レブロンさんがボクの邪魔をしてね……
何でだよ!!!
ブラウンにちゃんと承諾を得ただろ!?
うんって言ったから仲良く水を
飲もうとしただけなのにさ!!
さっきから君達の事をジロジロと見ている人がいるって気付かない?
恥ずかしい想いをするのは僕なんだよな。
あははははははははは。
このお方がキズナ・ワンダーランド
主人公シルドラ=ロッド……。
【????】
アイト君、遅くなってすみません。
搭乗手続きに時間掛かってしまいました。
【シルフィーナ】
それにしても、
先程から何か騒がしいわね。
水飲み場の前で何かあったのかしら?
お騒がせしてどうもすみません。
只今戻って来ました。
お、俺の水がああああああああ!!!
結局飲めなかった……。
何か賑やかなパーティーメンバーですね。
見てるこっちまで楽しい雰囲気に
なってしまいました。
シルフィーナさん、
先ずは僕達が自己紹介しないと。
相手が知らない御方でも
挨拶だけは全国民を通しての基本中の動作。
これを機に皆さんにも我が社を
知って頂けるこの上ない機会ですよ。
じゃあ、私の紹介も
含めてアイト君にBABUの宣伝を
お願いしようかしら。
あっ、分かったー。
赤ちゃんが泣く時ってバブーって言うよね?
もしかして知育玩具を開発してる
会社じゃないかな!?
じゃあ、そんな赤ちゃんが
今の彼みたいに突然言葉を発したり
幼い時から特別な個性を持っていたら
君達ならどうする?
確かに、自分が生まれた環境と
持って生まれた遺伝子が相互に作用し合い
個性になりますもんね。
そう。そんなBabyに眠る
特別な能力を色んな派遣先で認めて貰う。
そして生活の保障等を請け負っているのが
僕の勤め先『BABU』なんだ。
そして横に居る彼女が
人事部の秘書、シルフィーナさんです。
ふふっ。アイト君良く出来ましたね。
100点満点です。
でも、何でエレメンツエアーに居るんだ?
出張とか、か?
クロスウッドの新生児保育団体
ベイビーリミテッドよ。大勢の赤子が
私達の到着を待っているのよ。
ちょっと待ってえええええ!!!!
ぼ、僕の故郷じゃないですか!!!!!!
次回予告。
ランバードが操縦する飛行機内での出来事――。
お客様、お食事を用意させて頂きました。
お肉にお魚が御座いますけど
何方が宜しいでしょうか?
真面に選んでください!!!後、スチュワーデスのお姉さんを
困らせない事!!!
そして、遥か上空に
浮かぶ空大陸にシルドラ達が遂に到着。
背後に澄み渡る青い空。
何らかの力で滞空維持している事も感じる事無く
肌で感じ取れる此処ならではの自然や文化を味わう
新たな冒険が待ち受けようとしていた。
第088話へ続く。
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