第034話:温泉街に靡く風!シルドラとホットソープの湯煙絵巻「第一幕最終章」
文字数 6,255文字
壱の章から肆の章までのおさらい
ホットソープに辿り着いたシルドラ達は
ラグとの再会を経て、彼が番台を勤めるヴァリングスへと
足を運ぶ。景気が良さそうなこの場所にも
商売人と言った不届き者が温泉地を
不愉快と感じ、潰しに掛かろうと
リブマッドと言った獣を差し出して来る。
そんな際、全ての鍵を握るホットソープの西地区にある
ヒートリンスと言った管理施設の前社長夫婦であり
ミルフの両親が殺されてしまった事実を知ってしまう。
この話は次の話に続くプロローグ。
館内に離された
リブマッド襲撃の沈静、そして商売人が
根城にしていると思われるヒートリンスへの視察。
二手に分かれて行動する為、
提案したじゃんけんにより、その二組のメンバーが
発表されようとしていた。
よし! これで恨みっこ無しだ。
俺、ブランザ、エバス、アロイスの4人は
ヒートリンスへと向かうぞ!!
そして、リブマッドは俺を筆頭に
シルドラ、ハディーサ、ラグの4人で
対処する。うん。ベストメンバーだ!
おう。これも全て俺の責任でもあるんだ……
ケジメをつけさせてくれ。
そうだったな。でも、結局何故
排出口の開け閉めしてたんだ? 湯煙を
館内に充満してまで何かしたかったのか?
あ。僕達が初めてホットソープ訪れた時、
温泉街に湯煙が立ち込めていました。
もしかして、ですけど……
本当に済まない。
商売人の手に唆されて、自由に動ける
時間を作ったんだ。湯煙が
その合図だった……
そうだったら、
辻褄が合うな。
不用意に動いたら怪しまれる行為を
執ってるなら尚更だ。ん? そうなると……
何でですか!?
ブランザさんの協力があれば
一気に解決に導けるんですよ!!!
断ち切らないで下さい……
アイツに脅されてるんだ!!!
言う事聞かないと、完膚なきまでに
ヴァリングスを叩き潰す。って……
ラグやリタだけじゃない。
ここの従業員に多大な迷惑をかけるんだ……
全ては俺の発言に掛かってる。
ラグの温泉に掛ける思いは俺だってそうだ。
潰されてたまるか! と何度も口論に
達した。けれど、アイツの方が
一枚、上手なんだ……
お前等誰だ!?
エンディア様に触れたらマジで許さんぞ。
この一件を全て動かしている
商売人の素性を知っていたブランザ。
ただ、怖さに負けて後退りしている為
なかなか前に進むことが出来ずにいる。
彼の協力があるだけで、
状況は少なからず変わるかもしれない……
助けになってあげたい。と
彼の背中を押してあげようと
1階のロビーで励ましていると会話を遮るかのように
誰かが横入りして来た。
だが、しかし彼等が何故この場所に……
赤い特攻服に
裾の腕章が赤……
お前等、フランバージュの一員だな。
【ロギュア】
ほう。我々の事を知っているとは。
アレドシア様が重んじている礼儀を正す。
名はロギュアだ。そして……
【グラッツ】
俺はグラッツ。2人揃って補佐を務めてる。
ここに来た理由はシルドラと言う人物が
居ると情報を得てやって来た。
えっ……、あれ。
グラッツさんの顔、以前どこかで……
そうなのか?
おい、お前!!!
あん時はレブロンが一喝……ん?
どうしたんだ?
敵なんだろ。早く撃退した方が……
こっちは商売人で頭がいっぱいだ………
いや。アイツもフランバージュだ……
同じメンバーに喝を入れた事になる。
何かの作戦なのか、それとも……
ミルフさん、疑うのはヤメてください!
レブロンさんは騙してません。
そして僕達を裏切る事も
絶対にしないです!!!
おい!!
俺達のメンバーに私情を挟むな。
やっぱりお前が原因だったのか!!!
まあまあ。
今の時点で判断しかねないだろう。
ただ、俺達はフランバージュでの任務を
遂行するまでは君達に手出しはしない。
レブロンと一緒に悪事を犯そうと
してるなら俺が許さんぞ。
悪いな。それは保証出来ない……
それに、此処に来た理由はそんな話を
しに来たわけじゃないからな。
そう言えば、商売人の話をしてた最中に
無理もない。って言ってたな。
もしかして、身内か?
あんな奴は身内じゃない!!!アイツがこの街にいるって情報を得たから
通告しに来たまでだ。このままだと
ヴァリングスは確実に終わる……
奴の名は
ヴェスター。
俺達の元メンバーだ……
アレドシア様でさえ、手を焼いていた。
そうだ。リーダーや俺達メンバーが
決めた事項を守りはしない。挙句の果てに
自己判断で勝手な行為はするし、当時
まだ新人だったレブロンを罵倒していた。
確かにそうだったな。
奴と同じ身体付きな故に、先輩面しては
何かあればすぐ彼に八つ当たりしていた……
何だと……!!!
アイツはそんなに弱くない。
俺の自慢の息子なんだ……
そうだよ。何処かで見た顔だと思ったけど
ホットソープが出来た頃、お前が
連れてきてくれたじゃないか。
当の今まで忘れてた……
フランバージュの補佐として働く
ロギュア、グラッツの登場により元メンバーである
ヴェスターがヴァリングスを潰そうと企んでいる黒幕。
そんな彼は、当時後輩だったレブロンの
教育係を勤めていた。しかしながら
衝突ばかりでリーダーのアレドシアでさえ
意見が合わず、問題視されていたメンバーだった事が発覚。
アイツだけは絶対にそんな事ない! と
啖呵を切ってしまい、ブランザは
自分の息子である事を告げる――。
ヴェスターはかなりのキレ者。
それにアイツはお前の事を知っている……
ブランザ。正直に話してみてくれ……
奴の本当の狙いは……
そ、そうか!
ヴェスターは用意周到。ヴァリングス
潰しに理由があったとしても、シルドラに
辿り着くのは容易いからな。
アイツが突然変わったのは、お前が
ビューウェーブに到着した時なんだ……
その時、広場で揉め事があったらしく
ヴェスターは野次馬の1人として事を
ずっと見ていたと言っていた。それを
有効的に使えば造作も無いとも……
あの現場には俺も居た。
確かに奴の姿を確認した……
レブロンの付添をしていたからな。
辞めさせられたアイツが何をして来るか
分からない。悟られないように、咄嗟に
思い付いた案で財布を盗ませて貰った。
色々済まなかったな……
【????】
そうだったな!
お前、何チクってるんだ?
ブランザからの一報も何も無い。
痺れを切らした商売人の親玉、ヴェスター自ら
ヴァリングスへと足を運んでは、怒りに満ちた
表情で受付門の支柱を素手で壊してしまった……
音を立てて崩れて、砂埃が舞う中
何事も無かったかのように姿を現す。
【ヴェスター】
おい、ブランザ。
裏切るなんてどういう事だ?
もうイヤなんだ!
俺はラグと一緒で温泉を愛している。
それにお前よくも、レブロンを!!!
ああ。そんな奴いたな……
オレと同じ境遇だけど、あんな
優しいとはな。悪いけど、嫌いだったぜ。
それに、ミルフも居るな。
お前を見ると、以前殺した社長夫婦……
あぁ、間違えた。
お前の両親だったな!!
屋上から突き落としたんだったっけ?
うるせえ。俺は此処に居る
ロギュア、グラッツ。2人が所属する
フランバージュを辞めさせられて苛立ちが
隠せねえんだよ!!!
ふん。アレドシア様が下した判断だ。
それにレブロンの事を罵倒した罰でもある。
だったら、お前等が
このティブルエイドで何を仕出かそうと
してるのか此処にいる奴等にデカい声で
言ってもいいんだぞ!!!
言って欲しくないなら
そこで汗水垂らして、オレの視線を
逸らしてるシルドラを引き渡しやがれ!!!
呑気に温泉を楽しみやがって!
いっちょ前に浴衣など羽織りやがって!
何様のつもりだ?
どの口が言ってるんですか?
シルドラさんは全然悪くありません。
ふん。分かったような口聞くな。
オレは悪事を働いた奴の匂いを
嗅ぎ取れるんだ。お前が一番
高齢者っぽいけど悪いが、もし
手助けなどしたら手加減はしねえ!!
おい、ヴェスター。お前
このままだとプリズジェイド行きだぞ。
罪状が重くなるだけだ。
今ならまだ引き返せる。
ハハハ……、上等だぜ。
牢獄だろうが、何処へでも行ってやる。
その前にシルドラと話をさせてくれ。
別に悪いようにはしねえ。
シルドラ!
何故そいつの言う気に乗るんだ?
もしかしたら話終えたら殺される
可能性だってあるんだぞ!!!
くそっ!!
ここで俺が奴を引き止める。
行かせてたまるか!!!
圧倒的な存在感を放ち、かつての
フランバージュメンバーである
2人もたじたじ状態。レブロンを罵倒してた事も
分かる位の言葉遣い。全てにおいて彼に
敵う者は誰も居ない。増してや
リーダーのアレドシアでさえ
手を焼いていた人物。
私利私欲で、自己中心的――。
ただ、シルドラはヴェスターの何かを察知し
彼の指示通りに従おうとするけど、シルヴェスは
自分の友達が困っている姿を見て
攻撃を仕掛けてしまう。
ヴェスターの鍛えられた拳が
シルヴェスの腹部に埋め込むように入り
そのまま一直線上に、ヴァリングスのロビーを通過し
観賞用の金魚の水槽を壊してしまい
身体の数箇所には水槽のガラス破片が突き刺さって
痛々しそうに横たわっている。
シルヴェスくん!!!
リタさん、早く彼の治療を
お願いしますっ!!!!
リタがいつも所持している
救急箱からガーゼ等を出し、
流血している部位から黴菌が
入らないようにと処置を始めていく……。
ちょっと無茶し過ぎだけど、貴方の想いは
誰だってそうよ。シルドラ君を守りたい。
ラグもブランザ、もちろん私だって
本当だったら一発位ブチかまして
あげたいんだから!
貴方の勇気、私のお墨付きよ!だから頑張らなくちゃねっ。
事態はさらに悪化し、
彼の強さを見せられて、ぐうの音も出せずにいる
エンディア達。さっきまで活気を見せていた
ヴァリングスもリブマッドが暴れまくって
壊した壁の木片や、今割られた
金魚水槽のガラスが床に刺さっている。
それもこれも全部、ヴェスターのせい……。
彼を止めるには、完全な制圧。
それか、シルドラが指示通りに話をきいてあげて
改心させてあげるか。ただ、ロギュアが言った通り
どっちにしても罪状は思い。だけど自白するだけで
少しはプリズジェイドでの対応が違って来る。
そんな牢獄島『プリズジェイド』の全貌は
まだ先のお話――。
何とかしてあげたいけど、我々の
任務が終えるまでは、何も手出し出来ない。
おい、ヴェスター。
シルドラと話が出来れば事は済むのか?
おう。ヴァリングス潰しも止めてやる。
ただ、場所は移動させて貰うぞ。
安心しろ。あの件に関しては
言わないと誓おうじゃないか。
ただ、他の人が来た瞬間、交渉決裂だ。
特にそこの筋肉野郎!!!
そんな名前で呼ぶんじゃねぇ!!!
俺はエンディアだ。名前ぐらい覚えろ。
ふん。今興味持ってる以外の事は耳圏外だ。
忠告しとくぞ。お前は絶対に来そう
だから釘を刺して置くんだよ。
仲間想いなんだろ?
所詮仲間思いって言うのは
オレからしたら机上の空論なんだ。
そんな気分に縋ってるのはお前等だけ。
早くしねえと、手ぇ下す前にリブマッドの
暴動でヴァリングスが崩壊するぞ。
そんなんじゃ守り切れないぞ。
シルドラもな!!!
皆さんはリブマッドの対処お願いします。
僕はヴェスターさんを改心させて見せます!
こ、怖くないのか?
相手はシルヴェス君を傷付けた奴だぞ。
それにお前を狙ってる。
はいっ。もっと色んな人に頼られたくて
相談したら、努力次第で何とでもなる! と
教えてくれました。だからきっと
僕でもヴェスターさんを改心
出来る筈なんです!!
そうか。アイツもきっと
その成果を教えたら喜ぶだろうな。
それに、僕は見逃しませんよ!
彼の右腕にリングリングが
嵌めてあるのを見つけちゃいましたっ!!
あのヴェスターが油断してる……。
シルドラはやはり侮れないな。
俺達で見つけられなかった物も
意図も容易く。アレドシア様でさえ
敵わなかった相手に……
よし、分かった。
お前に全て託す。ラグより俺の方が高齢だ。
シルドラ! ホットソープを救ってくれ!!
良いよな!?
お前が言うなら間違いねえ!!!
シルドラ、リブマッドは俺達に任せてくれ。
これ以上指銜えてる訳にはいかないからな。
せっかくエンディアさんが
提案したジャンケン陣営、無駄に
なっちゃいましたね!!!
ヴェスターさんは
鬼じゃないです!!!
性格が鬼がかってるだけで……
勘違いするな。オレは決して
鉄球なんかでお前を攻撃したりしないぞ。
かくして、シルドラは
ヴェスターの話を聞いてあげる事で
改心させる決意を胸に秘め、彼と一緒に
全ての始まりであり、ホットソープ編の核心に
辿り着くヒートリンスへと向かい始める。
ホットソープの未来は彼に託される事に。
そして、エンディア達は彼の無事を祈り
ヴァリングスに放たれたリブマッド退治を
始めようとするその瞬間……
あ、あれ?
ブルーノ、どうしたんだ? 今シルドラなら
ヴェスターに連れて行かれたぞ。
図が高いぞ、ミルフ。ブルーノ様は
忍者の里 "シノヴァシア" の現、長だ。
父親の後を継いで今この地位に居る。
何だってええええええええ!!!!
子にして強し!!!!
シルドラとホットソープ湯煙絵巻、第1章終幕――。
次回、ホットソープ編第2章開幕。
ミルフの両親を殺害し、ヴァリングスを潰そうと企む
ヴェスターとシルドラのホットソープの未来を
賭けた談話が始まる。彼の想いは届くのか?
内密にエンディアが始動!?
そして、狐族であるランザー含む3兄弟が
ホットソープ周辺で見かけたヴァル=バーンズに
纏わる物を発見。それは一体?
物語のクライマックスで
明かされる衝撃の展開に備えよ。
第035話へ続く――。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)