第106話:一夜限りの贅沢!禁断のスイートルーム・ナイト!!(Ⅲ)
文字数 8,503文字
Ⅰ・
Ⅱのあらすじ
空大陸を誇る
高級旅館 "グランテオール"。
戴冠式当日に王妃に受け継がれる王冠が
空賊デッドアッシュの手で壊された状態で返却。
ミルフィムの就寝時間が近付くけれど、城内は
騒然と化してしまい、彼女の睡眠の
妨げだけはあってはならないと場所を移し
シルドラ達と
貴重な一夜を過ごす為
スイートルーム "雅星" でのやり取りを筆頭に
3階の温泉施設やマッサージ師 "フェロミア" のサロン体験。
それと2階のBAR「アルペジオ」にて
異世界インストカラオケを心行くまで堪能した。
※ このお話はその後
シルドラとオリバーの悪知恵により生まれた
秋のホラー劇場と今後に繋がる展開で構成されています。
健気で可愛げのあるブラウンをどうか
温かい目で見てやって下さい。
って、ちょっと待てい!!!秋のホラー劇場って何だよ!?
そうですよ!!!
夏の季節は肝試しとかって恒例行事ですけど
秋だとハロウィンと勘違いされますから!!
もしかして、この旅館に
カボチャに扮した野郎が現れるのか!?
フロントに仮装客が来たら
俺は逃げるからな!!!
ゴソゴソ(シルドラが懐から"あの仮面"を出す音)
大丈夫ですよ。何処をどう見ても某有名オペラの仮面を装着し
これからブラウン君を驚かすんですから。
遅くなってごめんー。
えっ、何? ボクの登場が遅いって!?
ぎゃああああああ!!!!
まだ宇宙人に侵略されてるの!?
うんうん。
ファントムシルドラの爆誕だな。
良いぞ。こうやって次々にカオスが生まれ――
それでは、次はレブロンさんの顔皮を剥いでご覧差し上げましょう。
止めろおおおおおおおおお!!!!
顔は大切にしろって母ちゃんが言ってたぞ。
えっと、もうそろそろ前座はおしまいかな?
皆、ここからが本編開始だから
一字一句見逃さずに見てね!!
-本編-
これは、BAR「アルペジオ」を
堪能し終えてから30分後のお話となります。
スイートルーム"雅星"。
な、何だって!!!
入浴後にサロン味わってたのかよ。
お前等、あたいを除け者にしたなあああ!!
ミルフは姫様の世話をしてたじゃないか!!!
逆にこっちも大変だったんだからな。
何処かじゃ!!!
入浴と身体のマッサージで体をリフレッシュ。
そこの何処が大変なんだ、なぁ!?
男湯ではシルドラに無視される。
ブラウンには迷惑掛けるな、と忠告される。
こちとら贅沢な旅館で過ごしてるんだ。
少し位、羽目を外したって良いだろ!?
本当に少し、ですか!?王妃の前で服を脱ごうしたんですよ!?
シルドラ君、大丈夫だよ。
レブロンさんが寝てる間にボクが
こちょこちょして6パックから1パックに
大変身させてあげるからさー。
1パックなのはお前のお腹だろ!?
こちとら長年トレーニングして来てるんだぞ。
ひ、酷い!!!ボクのお腹には夢と希望が
たーくさん詰まってるのにさー。
それにデップリじゃない!!!
丸みを帯びた愛くるしいふくよか系男子!!
ぷんぷんっ。怒っちゃったもんねー。
今からレブロンさんに肉弾戦車するんだから。
おのれえええ!!!
この薄情者おおおおおおお!!!!
おい、お前等。
もう少し静かにしてくれないか?
ミルフィム様が寝てるんだ。
あっ、そうなんですね。
部屋に戻って来てまだ起きていたら
少しお話をしようと思ったんですけど……
気付いたら0時回ってました。
僕達もそろそろ就寝しましょうかね。
アイツならちょっと用事があるって
フロントに向かったぞ。
成程。そうなら
まだ部屋の照明は付けて置いてやるか。
ふふっ。それに
消灯でもしてまた「シルドラ君ー!」って
大声を出されたら他のお客に
迷惑を掛けちゃいますもんね。
よしっ。オリバーが
戻るまでこの俺が筋肉子守唄を披露しよう。
おやすみなさあああああああい!!!!!
ちくしょおおおおおお。
このような深夜帯に
お客が来るのは珍しいんだよなあ。
ゆっくりして行って下さいね。
私は一足先にお休みさせて頂きます。
うんっ。話終わったら
玄関扉の鍵を閉めてフロントに置いとくね。
高級旅館「グランテオール」の営業は終了。
昨日分の宿泊名簿の整理、
ロビー周りの清掃やゴミ分別を終えた
フロント係のティセルは突然来てくれたオリバーの
客に対しても笑顔で振舞い、お辞儀をしながらも
彼女の自室へと戻って行く。
あっ、えっと……
仲良くは出来てると思う。だけど
リンクリングの絆登録はまだでして。
空挺ホークスオッドの貨物庫に
無断侵入し、空大陸に来ようとした事
ずっと牢獄島に黙ってあげてるんだぞ!!!
ふっ、別に良いんだけどな。
そのお陰でシルドラと言う少年に近付けた。
その点に関してはオメェに感謝してるぜ。
戴冠式を潰して
底辺冒険者からリンクリングを奪う。
"あの方" からの指令でな、
リョーグンと言った闇者に譲渡するんだ。
ふっ、悪りぃな。
俺達はファリオシーフと言った大陸で
元々彼一派の支持を援助していた人間の集。
そこに偶然にも俺の息子が居ただけさ。
まあ、良いさ。
オリバーには為すべき事が残ってる訳だし。
周囲に警戒しながら与えられた
任務を遂行するように。
今やお前も空賊の仮メンバー。
悪者に目を付けられたらどうなるか
これで分かっただろ?
お前だけは俺達みたいに
犯罪に手を染めるんじゃねぇぞ。
ははっ。同じ仲間なのに
俺ったら何でお前を励ましてるんだ?
ヴァレッドだけでも落ち着かせるのに
世話が焼くって言うのによ。
これが親心って言う奴か?
ふっ。性に合わない事をするなんてな。
こんな時間に呼び出して済まなかった。
オリバーもゆっくり休め。
そう、この
空大陸編を
読むに置いてオリバーはかなりのキーパーソン。
かなりの絆族の方が
オリバーが "あの方" 或いは "諜報員" 要員では?と。
それか "あの方=諜報員" を結び付けた人も少なからずは。
今、その正解がこの話で明らかになりました。
彼はティブルエイドから
空大陸に向かう際に空挺ホークスオッドの
格納庫へ荷物を積載中に無断侵入してしまい
滞空時に彼等に見つかってしまった
悪い言い方に変えるとならば "違法" の冒険者。
しかし、その言動が裏目に出てしまい
牢獄島に通告しない代わりに計画の一部の協力者になる事が
彼等から突き付けられた交換条件だった。
決して許されない犯罪行為に手を染めたと言う境遇は
フランバージュのブロスと同じ。空賊の皆みたいに
未だ色んな罪を重ねて来た訳では無い、と
逆にエドガーに励まされてしまった。
ただ、オリバーが為すべき協力はまだ終わって無い。
どう言った内容の物であるか。
それが追々シルドラ達に
待ち受ける信じられない "事態" を招くことに
今は誰も知る由も、無い……。
****
時は過ぎ、
現在の時刻27:00(深夜3時)。
さあ、いよいよ
秋のホラー劇場の始まり、始まり。
オリバーが雅星に戻って来ると皆、速攻に就寝開始。
空いた時間を使ってシルドラとオリバーの
悪知恵で考え付いた2人考案のホラー。
ビビり散らすブラウンに注目して下さい。
部屋の中は寝静まり、
彼の横には寝間着に着替えずに
きちんと「く」の文字の態勢で熟睡中のレブロン。
身体は筋肉質、寝顔は笑顔。イケメン要素が揃っている
彼をもう少し寄り添って見てみようと近付こうとすると
隣で寝ていたブラウンが起きてしまった。
うわあああああああああああ。
も、漏れる漏れるー!!!
寝る前に
喉が
渇いて
沢山お水飲んじゃったんだよー。
あ、あれ!?
あれあれあれあれあれ!?
何で開かないの? 誰か用足してるの!?
ちょっと!!!
僕、今大きい方してるんだから
あまり大きな音出さないでくれませんか!?
まだ入ったばかりだから
大体5分は掛かると思うよ!!!
僕、ウォシュレット嫌いだから
トイレットペーパーで何度も拭いちゃうんだ。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁん。
廊下って独特の暗さがあるから
出来ればお部屋のトイレで済みたいのにー。
ちょっと、2人共うるさいですよ!!!
良い夢見てたのになあー。
あっ、シルドラ君!!!
無理に起こしちゃってごめんなさい!!!
あっ、ちょうど良かった!!!
今オリバー君がおトイレで用足してるんだ。
廊下の突き当たりにあるトイレルームまで
ボクと一緒に来てくれない!?
えっ。僕より年上なのに
お手洗いに1人で行けないんですか?
えっ、な、何言ってるの!!!
そ、そんな事無いもん。
****
スイートルーム "雅星" の廊下。
た、確か……
目的地に向かう時は壁に沿って
歩くのが良いって聞いた気がするんだよね。
よーし!!!
お、お化けでも何でも来い。
ボクの誠拳道でやっつけてやる!!!
と、その前におトイレに行かなくちゃ。
急げーーーー!!!
膀胱の限界値近くまで来ていたブラウンの尿意、今まさにここぞと無い緊急事態。
一目散に彼は暗い廊下を
壁沿いに歩きながらようやくトイレルームへ向かう。
彼が部屋外に居なくなった事を確認し終えると
オリバーとシルドラが何か企んだ顔で
あの可愛い表情を崩す悪魔的作戦を
仲間内で遂に実行し出す。
行きました、か……。ようやくこの仮面が役に立ちますね。
ブラウン君が居ない時に
フェロミアさんから借りたんだっけ?
ありがとうございます。では、闇夜の祭典を始めましょうか。
****
男子トイレルーム。
小便器では無く洋式トイレの便器に座り
膀胱の尿意合図がマックス状態から0へ戻った事に対し
ブラウンの表情が焦りから笑顔に。
あはは。さっきから
ずっと我慢してたからまだ止まらないな。
尿意って波のように
断続的に強弱を繰り返し徐々に強くなるから
無理に我慢しちゃダメだって
師範の皆に言われた事があるんだよね。
ちょ、ちょっと!!!扉を強く叩いたら壊れちゃうからさ。
強い音を出さないでよー!!
出るモンも出ないじゃんかー!!!
絶対に
あの2人の悪知恵でしょ!?
分かってるんだからね!!!
えっと、確か
この手の扉はこの溝にコインをっと――
『良いか、オリバー。
対象人物が扉の向こうにいる際は
コインを非常開錠装置の溝に差して回せ。
そうすれば一時的に鍵を開けられる。』
扉の接続部分に
嵌めてある
蝶番のオイルが切れているせいか
ギーギーと軋む異音が免れないノブをしっかりと掴み
ホラー要素満載の緊張感と胸の鼓動が
用足し中のブラウンを襲う事に。
【オリバー憑依モード】
アッハハハハハハハハハハ。正解は僕でぇ~す。僕も推しを真似たよ。
今宵はサイコパスの世界へようこそ。
イヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!
し、シルドラ君助けてーー!!!
ブラウンは
咄嗟に
クマさんパンツの前部分だけ上げ
お尻だけ出ている状態、所謂半ケツで雅星へ逃げ込む。
大丈夫です。
彼は先程の入浴時に石鹸で
綺麗に磨き上げるかのように丁寧に洗っています。
桃のようなプルンプルンな肌質を
維持されていますので決して汚くはありません。
注意点)
童心さが招いた珍事件と思ってくれれば幸いです。
チンだけに。←
****
もうっ!!!
ホント、勘弁してよね。
絶対にシルドラ君が主犯だな。ぷんぷんっ。
さーてと、
出すモンも出してスッキリしたから
もう一眠りしようっと!!!
そして、本 当 の 恐 怖 が始まる。
ブラウンとレブロンが
一緒に使用中の掛け布団を捲り、
再び寝床に付こうとすると、そこには――
こ ん ば ん は。ブラウン君、待ってたよ。
さあ、一緒に眠りに付こうか?
キズワン流、
秋のホラー劇場は如何だったでしょうか?
某有名オペラ作品を彷彿とさせるシルドラの仮面。
推しから学んだオリバーの憑依表情術。
そう言った類が苦手な方にも気軽に読めた筈、です……。
これはフィクションですので
実際にトイレに待ち受ける怪物や
掛け布団に潜む怪人は決して存在しません。
絆族や読者の皆様、安心して毎日をお過ごし下さい。
****
空大陸、とある路地裏。
おい、遅いぞ。
定期的な連絡が途絶えてたからな。
急に呼び出した事を許してくれ。
【フォック】
ああ。全然構わない。
ちっとばかし機関のPCをハッキング中でな
重要な情報を全部抜いてた所さ。
勿論。
諜報員を
炙り出すなら
繋がってるライザの埃を叩けば良いだけの事。
それ位なら俺の腕で十分だ。
頭領は調査予定の遺跡が爆破で
生じた瓦礫で封鎖された事にご立腹中。
その事で頭が一杯でな、
俺の正体に気付く暇すらも無いだろう。
そうか。それは好都合。
こっちも先程大きな動きがあってな。
ふっ。デッドアッシュは
賊のエリート集団。
さぞかし良い成果なんだろう。
精巧に作られた完璧な贋作だ!!!まんまと偽物を掴まされてしまった。
伏線番号⑱:
バラバラ状態で返却された王冠の謎
この伏線が回収されました。
中央噴水広場にて開催された
特別展示中にヴァレッドが盗んだと思った
戴冠式当日に受け継がれる王冠は贋作。本物は別にある。
偽物を掴まされた腹いせに彼の手で
ぶち壊したバラバラ状態と化し
フィルハート城に返却した。
しかし何故、贋作を展示したのか?
それは今までに開示した伏線のどれかの解答と
同じですのでカウントしていません。
そして、新たに浮上した2つの伏線。
⑲:空賊からオリバーに与えられた任務とは。
⑳:空賊と幻惑の紅メンバー "フォック" との関係性。
遂に空大陸に置ける
全ての伏線が出揃いました。
空賊が戴冠式に執着する理由、王冠に纏わる謎。
諜報員が明らかになった時、物語が大きく動き出す――。
次回、レブロンとの一時的な別れ。
そして今度こそ出向く事になるフィルハート城にて
ライトフェザー騎士団の皆と交流を交わす
直前の出来事までが明らかに。
朝6時00分。
スイートルーム "雅星"。
何だ、レブロン。
織姫と彦星が出会う夜、短冊に
願いを書けば本気で叶うとでも思うのか?
悪りぃな。こっちは現実主義者なんだ。
そんな空想モンを信じてないだけ。
じゃあ、何で此処にいる?
興味があって来たんじゃないのか?
じゃあ、お前は前回何て書いたんだよ?
勿論叶ったんだよな!?
俺の笑顔で皆が救われるように、と書いた。
まあ、願いとして無理難題だけど。
へぇー。それこそ楽観主義者の考えだ。
本気でそう思ってるのか?
じゃあ、あそこで
短冊に
願いを書いている皆に話を聞いてみようか。
よし、書けた!!!
これこそ俺の願いに相応しいな。
ハデスバディードより
一回りデカい飛空艇を手に入れる事!!!
あの大きさを誇る
飛空艇ですよね!?
無謀過ぎません!?
願いって言うのは
いつ叶うか分からないんだ。
その方が人生を思う存分味わえるだろ!?
後は笹に飾るだけ。
俺も不束ながら応援させて貰うぜ。
どうだ、ヴァレッド?
願い事って言うのは大きく掲げた方が
叶えた時に達成感が強いんだ。
おいおいおい!!!
な、何だこの願いは!!!
ブラウンの奴、また余計な事をおお!!!
短冊コーナーで
七夕に対する想いをヴァーロンから
聞いた所で少し心を揺らいだヴァレッドは
複数枚重なってる色短冊の中から
自分のイメージカラーである
橙色を選び願いを書き始める。
ふっ。そこまで
執拗に
言われちゃ書かない訳には行かないだろ?
おーい、レブロンさーん!!!
エドガーさんの分の短冊も飾ってー!!!
めっちゃ照れ臭そうに書いててね
息子にも見られたくないからって
向こうでコソッと書いて僕に渡されたの!!
【エドガー】
いつかヴァレッドと一緒に
この空に澄み渡る星を見れますように。
ふおおおおおおおおっ!!!!
何て良い父親なんだああああ!!!!
七夕の日は
短冊に願いを記し、
飾ってある笹の葉に吊るし夜空に祈りを捧げる。
叶えたい夢や願いは人それぞれ。
到底叶わない夢も記した人も居るだろう。
ヴァレッドみたいに
現実主義者の考えを持つ方もいるに違いない。
こんな夢掲げたって絶対に叶わないだろ?と
思っていても、夢を1つ2つ持つ事は大切であり
別に叶わなくたっても良いと思う人も居るだろう。
結局は気持ちの問題だから。
今日は先程も
言った通り織姫と彦星が出会う日、七夕。
絆族・読者の皆様も短冊に願いを記した方が居れば
叶いますように作者・キズワンチーム一同
祈念させて頂きます。
第107話へ続く。
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