第041話:切り開かれた道!フランバージュとシルドラの3つの勇気!!
文字数 4,608文字
ラズリアポート周辺の砂浜――。
牢獄島の看守
シルヴィ、カリエラの2人が大陸から乗って来た
小型潜水艦の後部座席に座らせている。
うんっ。だってヴェスターさん
逃げてないもん。普通だったら意地でも
抵抗するのに素直だからね!
そう。それこそ意志の表れ。
何か成し遂げたい想いがあるからこそ
芽生えるモノよ。貴方はきっと無罪だわ。
私達が全力でサポートしてあげる。
だから安心してくれない?
と言って、
ちゃっかりお菓子貰って食べないようにね。
あっ、バレた? 官長が食べる
お菓子どれも美味しいんだもんっ!
あっ、別に気にしなくて良いのよ。
シルヴィって筋肉質だけど食べる事に
目が無いの。可愛い風貌してるから
全職員に好かれていてね。私もその1人。
何か、お前等のやり取り見てたら
不安な気持ちも一掃出来るな。
少し気が楽になったぜ。
あら。シルヴィ
どうやらお客さんが来たわよ。
見慣れない顔だけどね。
更に向こうに停泊してある海賊船から
とある女性がこっちに向かって歩いて来る。
瞬時にお客様だと判断し、カリエラの
上司に当たるシルヴィへと通す。
ティブルエイドの事だね。
ごめん。そこまで詳しく無いんだ……
でも、君には興味あるなー。
だって美人だし、色気もありそうだしねっ!
もし良かったら名前聞かせてくれない?
あら。
煽てても何も出ないぞ。
君可愛いからせっかくだし教えてあげる。
【ヴァネッサ】
私の名はヴァネッサ。
アジュマリン海賊団の船長を務めてるんだ。
此処に来たのはちょっと捜し人が居てね、
なかなか見当たらないのよ。
へえー。海賊って本当に居るんだ。
さすがに牢獄島では扱ってないけど
君達を取り締まる機関もあるみたいだから
くれぐれも用心してね。
忠告してくれてありがとな。
急ぎなんだろ? 私はもう少し
捜してみるから先へ行って構わないぞ。
何、告ってるのよ。
早く戻らないと官長に怒られてしまう。
でも、告白する気持ちは大切よ。そうね。
君達がもっと味深い大人に
なったらその意味が分かるわ。
じゃあ、ボクがもっと成熟したら
告っちゃおうかなー。
シルヴィ。ヴェスターを
後部座席に座らせたわ。運転お願い。
容姿端麗で、海賊業界でも
右に出るモノが居ない程の絶世の美女TOP3に
君臨する位名が知られている。
名はヴァネッサ。
アジュマリン海賊団の船長で、
寛大な性格を持つ故、船員は全員彼女の事を
尊敬していて、「其処の海に我等あり」とモットーに
掲げ、順風満帆な航海をしていた。ただ……
ったく。私を置いて
何処に行っちゃったのよ。
合流して金貨大陸に行くって約束したのに!
****
地上からでも全く見えず、遥か上空を飛ぶ
謎に包まれた空中戦艦ハデスバディード――。
迎賓室にて、第一の目的地である
牢獄島の一件を話し合うヴァーロンとその仲間。
焦りは禁物です。
当機は順調に牢獄島へと向かっております。
……退屈なのか?
だったら、俺で良ければ相手になるぞ。
当機が壊れるような事をするな。
血の気速い事がお前の欠点だ。
早くその拳をしまえ。
話の腰を折って申し訳御座いません。
ヴァーロン様、お1つ御相談したい事が。
先程階段の方で首飾りの方を
ご覧になっていましたけど、中に
写っていたのはどちら様ですか?
ああ。この事か!
お前等にも見せてもよさそうだな。
見てくれ。名前はシルドラって言うんだ。
グランダイン、区切る箇所が違うぞ。
正確に言うとシルドラだ。お前は
いつも変わってるな。
【グランダイン】
ふん。ほっとけ。お前こそ俺みたいに
仮面付けてるだろ、ガディウム。
【ガディウム】
仕方ないだろ。住んでた家が
大火事になった際に重傷を負ったんだ。
生々しい傷跡を見る事になるぞ。
それでも良いなら外すけど、どうだ?
血を見るのは好きだ。だけど、お前の為止めて置こう。
優しいな。さすがヴァーロン様の傘下だ。
で、その彼がどうしたんだ?
アイツが幼い頃の話だ。シルドラが
覚えてるかどうかは知らないけど、
友達1人も居なかった彼を俺が
遊んでやった事がある。
流石です。確か、彼の親御さんは……
そうだ!!!
アイツの両親はハメられたんだ。
そのせいで牢獄島に連行されて
監禁されている。お前等も知ってるだろ?
ああ。確か書き残した地図に
伝説の月大陸 "ルナクレスト" の場所が
あったんだろ。様々な機関でも
辿り着いた事が無く、幻とまで
言われた箇所。そこを何故……
ふん。
機関が
何か隠し通し続けてるって言う事だ。
その何かを目撃してしまい、捕まった。
おおよそそんな感じだろ。
だから、俺達がこの目で確かめるんだ。
アイツの両親が間違って無い事を。
そして、やってやろうじゃないか!
****
そして、此処は何処までも広がり
見渡す限りの果てしない森 "ヴァンウッド"。
シャノンの宿から少し離れた場所にある、
木の幹が複雑に絡まり合って出来た、
巫女族が集まる憩いの場――。
森の長、ルミシー様は
忍びの里シノヴァシアと同盟を組んでいる方々と
フェルマータ城にて狼族のヴァルを
処刑する計画を始動させようとしている件について
今1度会議を始める為に収集をかけていた。
うんっ。2人を集めたのはヴァルさんの
処刑の事なんだけどね。
【????】
どうしたんだ?
まさか処刑しないつもりか?
【????】
わたし達に集まって欲しいと声かけたのに
それは無いんじゃない?
まあまあ。ルミシー様が
おっしゃる位だ。ちゃんとした理由が
無い限り私達を呼ばないだろ。
【オリアナ】
やっぱりな。そうだと思ったよ。
忍者の里との均衡を保つ為に、ブルーノ様と
仲良くしているのに、何にも考えてないとは
思えないからな。コレッタ、
当たってただろ?
いやな。ルミシー様の性格からして
本音言えばヴァルを処刑して欲しくない。と
内心思ってたんだ。コレッタなんか
任務の為なら犠牲は付き物と
少し考えすぎていたようだし。
ブルーノ様から聞いたんですよっ。
確かに忍者の里を襲った張本人ですけど……
ヴァルさん、何故か
涙を流しながら暴れ回ったみたいなんです!
それを聞いたら可哀想になっちゃって……
だから、彼の話を聞く為に今ブルーノ様が
シルドラ君の元に向かってるんだよー。
心が綺麗で、ピュアな心を持つ方って
言えば話は早いかな。
成程な。その純粋な性格が
ブルーノ様を突き動かしたのか。
ずっと探し求めていた逸材が現れたと
張り切っていた理由が分かったな。
それにしても、本当に
彼がヴァルさんの心を開いてくれるのか
不安だからって勇気の試練を
3つ課したんですよ!
1つ目は、目の前に
立ちはだかる壁を乗り越える勇気。
2つ目は、どんな状況になったとしても
耐え抜いて、挫けずに前を向く勇気。
彼の目に狂いは無いと、
忍者の里の長、ブルーノがシルドラの
純真無垢な性格に惹かれた理由は、フェルマータ城にて
幽閉されている狼族ヴァル=バーンズと和解、
そして処刑をしようとしているフランバージュに
唯一対抗出来ると一瞬にして見抜いたから。
憩いの場に集まったオリアナとコレッタ。
1人は背中に弓を構え、もう1人の実力は未知数。
見るからにしてお互いの関係を守る護衛のよう。
彼の勇気は如何に――。
****
そして、場所は戻りホットソープ。
突如として現れたアレドシア、ブロスの登場により
事態は一転。そして、シルドラに
少しずつ迫る脅威……
さあ、シルドラ。
お前の懐に眠っているネックレスを
渡して貰おう。さもなければ……
…………。
立ち向かう術が無い……
どうすれば良いんだ?
口数が少なく、風貌や
言葉1つ1つの重みで威圧を与える
リーダー、アレドシア。そして……
黙ってないで何か言ったらどうだ?
どっちに転がっても結果は一緒。
逆らったらヴァル、ゼルガスと
同じ運命を辿るだけだぜ。
ハハハ。俺が怖いか?
じゃあ、俺を1分間見つめてくれないか?
出来たら持ち場に戻ってやる。
さっきから目瞑ってばかりだな。
怖気付いて足も震え上がってるぞ。
ふん。だったら、お前に良い事教えてやる。
シルドラのダチ、レブロンがあの2人を
処刑するんだ。やり方はアイツの拳で
心臓を強打。即死っていう奴だ。
冷徹な目付き、卑劣過ぎる言葉を
巧みに操り、相手を総攻撃していく右腕、ブロス。
目の前にはレブロンと一緒に
過ごした仲間が沢山いるのにも関わらず
非情過ぎる態度で、ひたすら罵倒していく中
気付いたら、シルドラの右手には
今までにない拳を構えていた。
憎しみが膨れ上がったようだな。
その証拠にお前の右腕、拳になってるぞ。
俺をその腕で殴ってみろ。
受け止めてやるぜ。
その時、2人のやり取りを一部始終見ていた
忍者の里の長、ブルーノがシルドラの
拳を優しく振り解く。
シルドラ君、その拳で殴った所で
何も解決しませんよ。後は
僕に任せて下さい。
良いんですよ。
君が踏み止まった事だけでも
1つの勇気として受け止めさせて貰います。
(3つ目、決して相手に流されずに
踏み止まる事が出来る勇気。
シルドラ君……)
(3つの勇気の試練の完全踏破
おめてとうございます。シノヴァシアへの
道が開けました。ここからは
僕達の出番です。)
ゆっくりとフランバージュの
2人の元へと歩き出すブルーノ。
狼族のヴァル=バーンズによって
壊滅的に陥った忍者の里で起きた襲撃事件。
長の役目は、処刑より理由を聞き出す事を最優先とし、
心を閉ざしたまま幽閉されてしまった
彼へと導く事――。
どんな選択を迫られても、
常に色んな対策案を話し合いで決めて来た
森の長ルミシーとの約束を果たすために、遂に動き出す。
アレドシア様、そしてブロスさん……
申し訳ございません。これをもって
君達との契約は終了です。
終了? 馬鹿な事言うなよ。
オリアナとコレッタの2人もやる気だぞ。
やはり、君でしたか。
ヴァルさんの処刑を強く勧めたのは……
悪いですけど、あの2人は
ルミシー様の権限により森へ帰還しました。
現在シルドラ君達を迎える態勢を
順次、整えています。
えっ、端からそのつもりなんだけどなあ。
細目を怒らせると割と怖いんだぞ。
忍者の里の長、ブルーノ。
本格始動――。
そして、
ヴァンウッド・シノヴァシア編がいよいよ始動。
第042話へ続く。
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