第017話:チョコミステリー開幕!ヴァーズメルトとレブニャン!!(前編)
文字数 3,713文字
※今作は前編/後編によるバレンタインエピソードとなります――。
し、シルドラが……
チョコ食べたら猫になっちゃった。
ど、どうすればいいんだ……。
にゃーお。ねえー、レブニャン。
一緒に遊ぶにゃー!!
****
ゴッシュと別れ、簡易的展望台から
飛行場エアロブルーに向かう為
彼の自宅横の坂道を登って、
道なりに進む道中……、
クラムビーチで全く食事を摂っていなかった為
腰掛けが出来る大きな岩に座り
シルドラ達はお腹を空かしていた。
クラムビーチで何か食べて置けば
良かったかな。お腹空いたな……
確かにな。こんな時は
ガッツリじゃなく、少し甘いモノを
食したい気分に縋る……。
何処かに食事出来る場所とか、
カフェ的なモノ無いのか。この辺りは
無知過ぎて全く分からん。
エアロブルーに着けば
何があるだろうと少しは希望があったけど、
もう既に3人共空腹状態で、行き倒れ寸前――。
ちょうど、その時
ここから徒歩5分の所にある
カフェでお茶をし終えて帰って来た
通行人の会話を耳を澄まして聞いていた。
あー、美味しかったな!
ヴァーズメルトの……確か何だったっけ?
早速忘れたんかいっ!!
あの店でしか味わえない
バージュベリーケーキの事だろ?
あっ、そうだったな。
甘いけど何処かほんのりと酸味が
溜まらなかったな。また食いに……
お、おっと。オマエ誰だ?
通り掛かった所済まない。
俺達は空腹な冒険者と捉えてくれ!
ちょうど食事が出来る所を探してたんだ。
今、言っていたお店教えてくれないか?
君達はお腹空いてるんだな。
じゃあ、ちょうどここから1番近い
ヴァーズメルトがお勧めだぜ。
どういったお店なんですか?
さっきバージュベリーがどうとか
言ってましたけど……
お、君は目の付け所が良いね!
そこの可愛い店員が作るベリー多めの
ケーキが好評なお店なんだ。最近開店した
ばっかりで洋菓子好きの人には
溜まらないぜ!!!
お、良いじゃん。
あたい、そこで大丈夫だぞ。
シルドラ、レブロン……行ってみないか?
そうですね、善は急げですっ!
教えてくれてありがとうございますー。
よし、ミルフ。
その店にどっちが早く着くか勝負するぞ。
負けた奴がシルドラの分まで奢るんだ。
どうだ、勝負する気あるか?
お、勝負と言って
逃げるあたいじゃないぜ。
その話乗った。負けないからなっ!!
その意気だ、ミルフ。俺の
鍛え上げた足腰、今こそ見せ付けてやる!
シルドラ、スタートの合図を宜しく頼むぞ。
中学の体育で教わるクラウチングスタートの
態勢でシルドラの号令を今か今かと
待っている2人。負けた方には
ヴァーズメルトと言ったカフェにて
この大陸の通貨に未だ換金していない
シルドラの分を奢る事――。
ただ、彼もワル……。
良く在りがちな "ドンっ!って
言ってからのスタート" 発言にまんまに
引っ掛かった2人。さすが勝負好きの
血が騒いでいたせいか、シルドラが
何か仕掛けて来るなんて全く
ひとかけらも思わなかった様子。
まんまにシルドラにしてやられたな。
まさかこんな手を知っているとは
お前もワルだぜ。な、レブロン?
もちろんですっ。じゃあ、改めて。
位置について……、よーいっ!
ヴァーズメルトまでのダッシュ対決。
レブロンvsミルフ、勝負の行方は……!!
****
10分後――。
やったぜ。レブロンさんに勝った!!!
でも十分速かったと思うけどな。
でも負けは負けだ。
シルドラ、好きなモン食べて良いぞ。
俺の奢りだから遠慮など要らん。
ありがとうございますっ。
ホント良い匂いしますよー。何か
焼いてるのかな? 今から楽しみですね!
香ばしい香りもするぞ。
これは期待大だな。よし中に入ろうぜ!
ヴァーズメルトの雰囲気は洋風建築――。
以前使われていた洋館を改装して作られたカフェ。
外には店員が1から育てたお花が仕切り無しに
飾られている。花の薫りと共に食事が
楽しめる事が出来る工夫が施されていて
来店したシルドラ達は心奪われていた。
【????】
いらっしゃいませー。
こちらメニューですので、決まったら
テーブルに置いてあるベルで
呼んで下さいっ。
あっ、そして向こうにある石窯で
パン焼いてるのはシルリアお姉ちゃんっ。
わたしの姉なんだ。
【シルリア】
ごめんなさいね。すっかり
パン焼いてるのに夢中で気付かなかったわ。
これからだよっ。
メニュー渡したばっかりだから
今決めて貰ってるところ。
あっ、いや。
僕達、ここのバージュベリーケーキが
美味しいって聞いて来たんですけど、
それって3人分用意出来ますか?
もう、ホントっ……私の手作り
目当てで来る方多くて毎日大変よ。
けれど、それを食べて
幸せいっぱいな気分になれるなら
私はそれで十分よ。3人分だね。
ちょっと作ってくるから待ってて……
そんな時、さっきまで雲一つない快晴だった空が
一気に崩れ始め、雨が突如として降ってきた。
プラム、外にある看板を
中に閉まってきてくれないかしら?
せっかく書いたのに台無しになっちゃう。
僕達も手が空いてるので
何かあればお手伝いしますよー。
あたいはミルフ。格闘家目指してるから
摂取はしていなかったけど、こう見えて
甘いモノ好きな乙女だぜ。そして――
俺はレブロン。
プロテイン、トレーニング大好き
フランバージュのアレドシア様の用心棒だ。
今はこの通りシルドラ達と冒険しているぞ。
皆さん、宜しくね。
あっ、プラム……看板中に居れてくれて
ありがとう。助かったわ。
あっ、今聞いてたんですけど
レブロンさんの身体キレッキレですよね。
わたしのお兄ちゃんも結構
逞しい身体付きをしているんですよ。
な、何だと……!!
そう言う事はトレーニング好きと見た。
どう言う奴だ? 是非とも会ってみたいぞ。
うーん。えっと……
空の大陸 "スターシア" って知ってますか?
お兄ちゃんはそこで
古代遺跡の調査をしていますよっ。
白い服着ていて、誕生日にあげたキツネ柄の
スカーフしてるから見つけやすいですよー。
えっ、空にも大陸があるんですねっ!
す、凄いです。いつか行けたら良いなー。
さてと、私は注文のバージュベリーケーキを
3人分作ってくるわ。
あっ、そうだ。
せっかくだったら、プラム。
貴方が作ったチョコ
食べて貰ったらどうかしら?
うんっ。じゃあちょっと
取ってくるから待っててねー。
ここ "ヴァーズメルト" は
プラムとシルリア、女の子2人が切り盛りしてる。
"外に立て掛けてある看板作り"
"ケーキや軽食などの提供"
"庭に飾られている花の手入れ"
全てシルリアの拘りで、夢の1つだった
念願のカフェ開店が出来て
幸せに満ち溢れていた――。
バージュベリーケーキを待つ間にプラムが
手作りした試作のチョコをシルドラ達に食べて貰う事に。
ただ……、あんな事が起きるとは。
はいっ、皆さん。
これがわたしお手製のチョコだよっ。
是非とも食べてくれると嬉しいなー。
そうだな。せっかく
プラムちゃんが作ってくれたんだ。
食べて損する訳無いだろ……。
はっ……。
し、シルドラが……
チョコ食べたら猫になっちゃった。
ど、どうすればいいんだ……。
えっ、シルドラ君が猫になっちゃった。
な、何で……。
にゃーお。ねえー、レブニャン。
一緒に遊ぶにゃー!!
ねえー、ちょっと……
あたいも食べたのに皆と同じように
猫の毛が生えないの何でっ!
レブロンさんまで……。
もしかしてわたしのチョコ
失敗しちゃったのかな。
あっ、お姉ちゃん。
シルドラ君とレブロンさんが
猫になっちゃったんだけど、どうしよう……
さすがのシルリアも
作っていたバージュベリーケーキ作りの
手を一旦止めて、シルドラ達の元に駆け付ける。
"これはチョコに纏わるミステリー"。
君にこの謎が解けるか?
【シルニャン/元シルドラ】
にゃあー。読者の皆さんっ、
今後とも僕シルニャンと……
"本日はバレンタインデー"。
決してチョコ食べても猫になる事は無いので
ご安心して下さい。これはフィクションです。
第018話、後半へ続く――。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)