第005話:ビューウェーブとのお別れ!冒険者シルドラ誕生!!(前編)
文字数 4,080文字
早く着替えしないと……。
でも、この洋服がこの町の住民からしたら
裸に見えるなんて思わなかったなー。
そうだぜ。あたいも
その事を知るまで時間掛かったけどな!
ジロジロ見られてたから何かと思った位だ。
さあ、服屋に案内してやる。こっちだ!!
あっ、でも……もし店の人が
可愛い子だったら裸を見せている
気分になって何か少し申し訳無いな……
大丈夫だ。きちんとシルドラが
初めてこの大陸に来たって言えば
分かってくれる筈。さあ、気を取り直して
行こうぜ。ほら、善は急げって言うだろ?
【前回のあらすじ】
チーム「フランバージュ」レブロン、そして
女流格闘家ミルフの2人によって無事にシルドラの
所持品の1つである財布を泥棒の手から
取り戻す事に成功する。レブロンは自分の事をそこまで
語る事なく「フェルマータ城に近付くな!」と言う
警告と共に姿を消して行く……
そして、彼女の口から彼が着ている洋服に対して
この町の住民からしたら裸に見えると、思わずクスッと
シルドラの事を笑いながら服屋に行こうと提案し始める。
****
ここは大広場に1番近い服屋――。
様々な用途に応じた服のコーナーや
春夏秋冬4つの季節に分けられた服、小物から
アクセサリーまで様々な分野が揃っている。
バリエーションが凄いですね!
どれにしようか目移りしちゃうなー。
あっ、小物やアクセサリーまであるんだね。
【????】
いらっしゃいませー。あっ、男の子だ!
君の洋服はここの住民からしたら裸に
見えるんだよー。ここには
沢山の洋服があるから見て行ってねー!!
えっ、えっと……
僕…、この大陸に初めて来たから……
【???】
こらっ、ユエリア。
また余計な事を言って、駄目じゃない!?
君、ゴメンね。
ビューウェーブへようこそっ!
ここにはブランドの枠を超えた
誰にでも着こなせる洋服が揃っているんだ。
ユエリアちゃんだったよね。大丈夫だよ!
それにしてもやっぱり服屋の子だね。
着ているモノが可愛いよー。えっと……
妹系って言えば良いのかなあ?
うんっ。褒めてくれてありがとねっ!
この服はクレアお姉ちゃんに
編んで貰ったんだよー。私の宝物なんだ。
【クレア】
あら、褒めてくれたのかしら?
もし時間に余裕があるなら、ゆっくり
楽しんで行ってね。カウンターで
作業やっているから、分からない事があれば
どんどん聞いて来て大丈夫だよ!
このビューウェーブにある服屋は全部で
3軒。
その中、可愛い姉妹であるクレアと
ユエリアが働いている為1番人気があり、
売れ筋もトップを誇っている。
さすがスタッフと言った所。
対応している時に着ている洋服も
時代の最先端を行くようなファッションを
身のこなししているクレア、そして可愛い服なら
何でも着れちゃう所謂、幼児体型をしているユエリアも
ここに訪れる客を魅了させている。
そしてシルドラも洋服には目が無い。
試着を何度も試し、気に入った洋服はいくつか手に
持っているけれど、「これだ!」と決め手にならずにいた。
(うーん。やっぱり迷うなー。
これから色んな大陸を冒険する訳だから、
恥を掻きたくない洋服にしたい……
ちょっとクレアさんに聞いてみようかな。)
あら。もしかして
どれにしようか迷っているのかな?
カウンターで作業しながら見ていたよ。
君は服が好きなんだね!
はいっ。結構服には拘りがあって
こう見えてダークな物が好きなんですよー。
だから、黒を基調とした
服を探していたんですっ!
だけど、次から次へと
目移りしてしまって……
なかなか決められずに…、すみません。
お兄ちゃんはだーくな衣装が
好きなんだねー。だったら
クレアお姉ちゃんにコーディネートして
貰ったらどうかな?
えっ…、そんな事して貰えるんですか?
だったらお願いしたいんですけど……
今までここを訪れた何人の男性を
コーディネートしたと思ってるの?
君を納得させるような服を
チョイスしてあげる!
これは期待だー!
クレアさん、宜しくお願いしますっ!
ファッションのコーディネート……
色々ある服を色や形の相性によって、バランスよく
選び組み合わせて、お洒落に表現する。
服屋の店員としてクレアは
今までこの港町を訪れた冒険者、
そして住民を納得させるような数々のコーディネートを
して来た為、常に彼女の目に宿しているのは自信の2文字。
シルドラが着替えしている間、ミルフと
ユエリアも彼がどのようなファッションになって七変化
してくるのか期待大の顔をしていた……
あたいもシルドラがどんな
ファッションして来るか楽しみだ。
ユエリアはどうだ!?
もちろんっ! あの子の名前
シルドラくんって言うんだねー。あっ!
お姉さん、その腕にしている時計って……
おっ、お姉さんなんて嬉しい事
言ってくれるね! ユエリアちゃんも
この時計の事知っているんだな。そうだ。
シルドラとリンクリングする予定なんだぜ!
私も欲しかったんだけど、
お姉ちゃんがダメって言うんだー。
私14歳だから、まだ冒険するのは
早いって言われちゃってね。だから
一緒にお店の手伝いしてるんだ……。
でも、このビューウェーブで1番
賑わっているこの店で手伝いしてるんだから
偉いじゃん。あたいもユエリアの
姿勢見習わないとな! さてと……
もうそろそろ時間かな!!
レジ、お客様に対してのコーディネート、
そして、お店全般まで笑顔でこなして行く
クレアの表情から服屋の
店員としての情熱を漂わせている。
いつかはこのビューウェーブで一番大きな店舗を構えたい、
彼女は心の中でそう思っているに違いない……。
その時、シルドラを試着室に
案内して1着ずつコーディネートしていた
クレアの声が聞こえて来た。
おーい、君達ー!
シルドラくんのコーディネート終わったー。
彼がダークな色が好みって言ってたから
それをベースにした冒険者に合った
洋服をチョイスさせて頂いたよ。
じゃあ、出てきてくれるかな?
試着室の向こう側――。
シルドラが照れくさそうに「はい!」と言いながら
カーテンを開けて、ミルフとユエリアに
コーディネートして貰った洋服を
しっかりと見せ始める。
そう、この服こそが
彼が冒険者としてこれから様々な大陸で
身に着けて行く1着目となる。
いつかはボロボロになる時が来る。それはシルドラ自身が
この港町で手に入れた大切な思い出の品と
刻み込まれるに違いない……
ミルフさん、それにユエリアちゃん……
僕、似合ってるかな……?
おっ、カッコよくなったじゃん!
その鉢巻きナイスだぜ。クレアの
コーディネートセンスが光っているな!!
やっぱり、男の子はこうでなくちゃ!
ユエリアはどうだ?
うんっ! 凄くカッコイイよー!!
やっぱりお姉ちゃんは凄いな。
いつか私も沢山の人にコーディネートを
してあげるのが目標なんだよー。まだ
勉強中だけどねー。
褒めてくれてありがとねー。
勉強頑張って下さい!
ビューウェーブにまた訪れた際、
今度はユエリアちゃんに
コーディネートを任しちゃおうかなー。
シルドラお兄ちゃんのコーディネートっ!!
うん。その為に一生懸命頑張るよー。
ユエリア、良かったね。
こうやって1つの目標に向かっていく姿
私も応援して行くわ。良いお客様に出会えて
良かったね! シルドラくん、今後とも
このお店を御贔屓にしてくれるかしら?
もちろんですー!
ユエリアちゃんに、クレアさん……
こんな素敵な服をチョイスして頂いて
ありがとうございます。大切にします!!
ビューウェーブに訪れてから
様々なシチュエーションに応じて金銭面のトラブルが
常に起きていた為、コーディネートして貰ったのに
お金を出さないのは申し訳無い状態になっていた……
しかし、もちろんそれは重々承知していた為、
クレア、そしてユエリアの2人も常に笑顔を絶やさず、店員としての対応をシルドラに見せた。
あら。そんな事気にしてたの?
全然大丈夫よ。お客様、いや……
シルドラくんに合った服装を
コーディネートしてあげただけ。
それだけでお金取るなんて、
私には出来ない。でしょ、ユエリア?
うんっ。シルドラお兄ちゃんっ!
お金の事は全然気にしなくて大丈夫だよー。
そう言ってくれるなんて
凄く嬉しいですー! ユエリアちゃんと
クレアさんに出会えて良かった。交流記念に
リンクリングしたいんですけど……
あっ、まだ時計貰っていないんだった……
すみません。またの機会にでも良いですか?
クレアのコーディネート術で無事に
シルドラがこの大陸で着て行く事になる最初の洋服を手に入れる事に成功――。
現在の季節は夏――。
本来なら暑いこの時期に黒い服を
着ると熱を吸収し過ぎる為、あまりお勧めしていないけれど
この大陸周辺を覆う特有の紫外線を防止するには
最適な洋服をチョイスしてあげていた。
これが服屋としての店員の在り方……
その時、1人の男性がまず礼儀として
ドアをノックして、ミルフ達との会話を一旦ストップさせ
クレアとユエリアの元にやって来た。
あっ……、アジールさん!
例の洋服、入荷しましたよ!!
ご覧になりますか?
【アジール】
大丈夫だ。ここに来たのは
シルドラと言う男性が此処にいると
思ってね。つい持ち場を離れて
来たんだけど、正解だったようだ……。
では改めて、シルドラ……
ティブルエイド、ビューウェーブへ
ようこそお越し頂きありがとうございます!
あ、ありがとうございます……。
でも何で僕の名前知ってるんですか?
まだ名乗っていないような
気がするんですけど……
ああ。やっぱり不思議な顔してるな……
何で名前を知っているか? と
言いたい顔をしてるね。俺とアイツは
似ているからな。弟はピュアブルーで
元気にしてるかな?
弟は
フロストって言うんだ。
クロスウッドのピュアブルー近くにある
研究施設で海にまつわる研究を
している俺の自慢の弟なんだ!
実は……、君の事密かに聞いていたんだよ。
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