第016話:クラムビーチ最終編!ゼルガスとの出会いと沖合ダイビング!!(後編)
文字数 4,601文字
前編・中編のあらすじ
鋭意製作中である
ティブルエイド、クラムビーチ周辺の地図を
書き記す為に、沖合までヴァールブルク海賊団の
船長ゼルガスに連れて貰って無事に
描き終える事に成功。
その中、シルドラは
フィランと言った美魚族の1匹と思われる
モンスターと奇跡的な出会いを果たしながら
彼等は再びゴッシュが待ちくたびれている
クラムビーチへと帰還――。
もしかして真横にいるのは美魚族
じゃないだろうな……。一体どうしたんだ?
あっ、ゴッシュさん!
その子、僕がダイビング中に出会った
メスのフィランちゃんですっ。
ただ、この子の友達とはぐれちゃった
みたいで困ってるようなんです……
だから、俺がこいつを連れて
アクアヴェークへ行こうと……
ゴッシュ、お前どうした?
フィランの友達がアクアヴェークで
待ってるんだ。放って置けって言うのか?
さっきと売って違って、ゴッシュの
様子が何処か変。それもその筈……
磯遊びする前、一旦自宅に戻り郵便ポストの
中に入っていた区域誌を玄関で
熟読してから彼の表情が変わってしまった。
ん、どうしたんだ?
さっきと様子が全く違うけど……
何かあったのか?
あ、アクアヴェークで
商船同士の衝突事故が遭った。
その影響で数名の負傷者、そして
海中に棲む生き物が死滅しているそうだ……
美魚族であるフィランさんの友達も
巻き添えになった可能性も少なからずは……
そんな……
私の家族や友達が待っているのに、
独りぼっちなんてイヤです……。
ゴッシュ、悲しませるような事を言うな!
もしかしたら安全な場所に避難
している可能性だってあるだろ。
俺が教えてやる。美魚族って言うのは
様々な深海に群れを成して移住する
綺麗な肌を持つ魚の一族なんだ。
もちろん言葉も喋れる。ただ
一つだけ言うなら……
彼等は移動する際に中深層まで出る
習性を持つんだ。その際に結構の割合で
群れから外れてしまって
迷子になる事が続出してしまう……
更に言うと、美魚族は綺麗な水の中でしか
生きる事が出来ない。商船同士が
積載していたモノは彼等にとって
有毒なんだ。少しでも触れると死に……
うっ……、みんな死んじゃったのかな。
もう会えないのかな?
フィランちゃん、怯えないでっ!
きっと安全な場所に避難していますよ。
もう! ゼルガスさんにも
言われたばっかりなのに更に不安にさせて
ダメじゃないですかっ。怯えてるんですよ!
もっと優しく接してあげて下さい。
確かに希望はありますね。
ゼルガスさん、無事に彼女をご家族、
友達の所に送り届けてあげて下さい。
頼みましたよ!!
おう。フィランの準備が出来次第
アクアヴェークへ急ぐぞ。
****
いよいよヴァールブルク海賊団、
船長ゼルガス……そしてフィラン。
甲板でクラムビーチにいる
シルドラ達にお別れを告げ始める。
お前の地図作り、俺の協力はここまでだ。
立派なモノ描き上げるまで
俺は応援し続けるぜ!!!
無事に友達、家族と再会出来る事
心から願ってますね!!
ありがとうございます。
シルドラ君、いつまでもミルフさん、
レブロンさんと仲良くしてくださいねー。
よし、行こうか……フィラン。
この世界は広いんだ。またいつか
何処かで出会えたらその時は宜しくな!
たった数時間の出会いでも
シルドラの一生の思い出となる交流――。
"もっと遊びたかった"
'もっと話したかった" かもしれない。
けれど今はフィランの家族や友達が
アクアヴェークで起きた商船同士の衝突事故の
巻き添えになっている可能性も少なくはない。
自分の事より最優先するべきと考えた
彼は優しく笑いながら「バイバイ!」と手を振る。
****
ダイビングを無事に終えて
海中の詳細も記入済みの地図をゴッシュに
評価して貰い、いよいよクラムビーチでの
地図も完成間近――。
よし。私が教える最後の
地図製作極意だ。
もう記入する事は無いか?
そうですね。もう記入する箇所は……
無さそうなんて大丈夫です!!
そうか。なら最後の工程を教えるぞ。
その地図を両手で持って太陽に
翳してみてくれ。
そうだな。お、少しずつだけど
地図に変化が表れて来てるぞ。早速
見てくれないか?
最終工程:特別なペンで描き終えた説明文を加えた地図を太陽の前で翳す。
シルドラは不思議そうに掲げると
炙り出しのように、自分が描いた範囲の
地図が港町「ビューウェーブ」から現在地である
「クラムビーチ」までの地図が
絵付きで表示されていく。
ゴッシュからくれた1枚の紙とペンは
本当に特別製。どんな絡繰りなのかは
シルドラからしたらまだ知る由もないけど……、
この2つのアイテムは "とある方" からの届けモノ。
す、凄いな。描いて太陽に
翳すだけで地図が完成する仕組みか。
時代も変わったな……
例えこの紙の絡繰りが分かっても
あたいに理解出来るか心配だ……。
けれどその分、シルドラは博識だから
この紙の謎もいつかは解き明かす
日が来るかもしれないな。ますます
これからの旅が楽しみだぜ。
それにしても、このペンで
描いただけでこんな正確な地図
出来るんですね! 凄いですっ!!
シルドラ君がミルフさん達と
過ごした思い出と道筋が詰め込まれた地図。
私は貴方達と出会えて、そして
地図製作を共に手伝えた喜び……
本当に楽しかった。
さあ、お見送りの時間だ。
私は一足先に私服に戻らさせて貰った。
君達も更衣室で着替えてきてくれ。
****
ここはシルドラ、レブロンの2人がいる
男性更衣室――。
ゴッシュとの別れが近付く中、
次の目的地エアロブルー、そして
ホットソープ……更なる冒険がシルドラ達を
待っている為、いつの間にか
彼の大好きな歌を口すざみながら
着替えをしていた。
♪ 繋がりたい この絆が導く
♪ 大空に響き渡るHappiness Chain
♪ 何処までも 色褪せる事ないこの思いが
♪ きっと光り輝きますように~
お、シルドラ歌ってるじゃん。
気持ち良い曲だな。何て言うんだ?
曲名はHappiness Chain。
クロスウッドで活躍しているレックスさんが
発売した楽曲なんですよー。爽快感があって
僕のお勧めなんですっ!!
訳すと
"幸せの鎖" か。
俺もフランバージュとしての役目を
終えたらもっとシルドラと更に
絆を深めたい。もう少しの辛抱だ。
それまで待っていてくれないか?
何言ってるんですか、レブロンさん。
いつまでも待ってますよー。
そうだよな。
よし、着替え終わったみたいだし
ゴッシュの元へ急ぐか!!
****
ここは彼と初めて出会った
簡易的展望台――。
名はゴッシュ。ティブルエイドを
知り尽くした権威ある地図博士。
そして今ここに居るのはこれから
色んな所を旅して、地図を描いていく
未来を担う地図博士。
シルドラ、ミルフ、そしてレブロン……
お別れだな。ほんの数時間だけど、
君達に会えて嬉しかった。
僕こそゴッシュさんに
出会えたからこそ、地図作りに大切な事
沢山学べたんですよー。本当に色々と
ありがとうございましたっ!
シルドラ君、何処までも君のピュアな
心を貫いて色んな方との交流、まだ
訪れてない未開拓の地、ティブルエイドを
心行くまで堪能してくださいね。
もちろんですっ。
また近くを通り掛かったら
ミルフさん達と共に会いに行きますね!!
そうだな。またそん時は
クラムビーチで思いっ切り
暴れようぜ。またカニと戯れたいからな。
じゃあ、別れの挨拶は
皆でレブロンさんのあのポーズで
しめませんか? もちろん私も教わったので
一緒にやらせて頂きます。
ゴッシュ、良く言ってくれた!
よし。皆でこれからの俺等の
旅路を祝して行くぞ!!! せーの……
【シルドラ/ミルフ/レブロン/ゴッシュ】
はいっ、サイドチェスト―!!!!
こうして、全員笑顔で
マッスルポージングである "サイドチェスト"を
行い、彼等は手を振りながら
ゴッシュに別れを告げ、次の目的地である
飛行場であるエアロブルーへと
足を運び始める――。
そして、シルドラの旅はこれからも続く……。
****
一方、
ここは忍者の里 "シノヴァシア" と
目と鼻の先にあるフェルマータ城――。
赤い特攻服を身に纏い、
城内を挙って歩いている集団は
レブロンが用心棒を務めている
組織「フランバージュ」。
いよいよ "何か" が動き出そうとしていた……。
【?????】
ブロス、爆弾の準備をしろ。
この先に "奴" がいる。手付かずの城、
岩盤のせいでこの部屋にだけ入れない。
壊すしかないだろ……
【ブロス】
もちろんです、アレドシア様。
今アッジさんが慎重に設置していますので
もう少し待って下さい……。
【アレドシア(リーダー)】
ふん。まだ奴の処刑まで時間がある……
慌てる必要は無いんだ。そういえば、
ブロス……。レブロンの姿が見えない。
何処に行ったか分かるか?
…………。
クラムビーチですよ。
情報によると地図を描く冒険者、そして
女性で格闘技を極めているお方と
行動を共にしているみたいです。
そうか。自由気ままな奴だな……。
アッジ、セットは終えたか?
【アッジ】
おっと……、済まねぇ。
タバコに火付いてたこと忘れてたぜい。
アレドシアの親分、爆弾のセット
終わらせやした!!!
よし。お前が吸ってる
煙草の火を
導火線に着火させるんだ。
組織『フランバージュ』の構成員、
所謂メンバーはレブロンの他に
まだ20代のブロスや、50代のアッジを
含む数十名で行動を共にしている。
そして
リーダーの名は "アレドシア"。
常に冷静沈着で、何事も思うように進まないと
気分を害してしまう。グレンドみたいに
綺麗な言葉遣いを心掛けているけれど
頭に血が上ると、キレ気味な口調に
なる事が多々ある。
岩盤で塞がれた扉を壊そうと
アッジが爆弾に繋がれた導火線を
着火させ、物凄い轟音が鳴り響き
扉と硬岩を吹き飛ばし、彼等の前に道が開かれる。
親分ッ、扉ぶっ壊れましたぜい。
ワイが先頭を歩いても……
ふん。ボサッとしてないで
さっさと先に進むんだ。おい、ブロス。
何を見てるんだ?
アレドシア様、い、居ました……。
あそこを見て下さい。
…………。
ようやく見つけたぞ。
忍者の里 "シノヴァシア" 襲撃犯……
ここは薄暗い部屋――。
いつ閉じ込められたか分からない位
年月が経っているけれど、何処を見ても
衰えを感じる事が出来ない。
そして逃げられないように
拘束用の首輪、手錠を嵌められている為
全く身動きが取れずに現在寝ている様子。
(シルドラ……、早く来てくれ。
処刑される前に伝えないと
いけない事があるんだ。君の家族は……)
いよいよ、フランバージュ本格始動――。
そして大陸 "ティブルエイド” での
序盤ストーリーも残り3話……。
第017話へと続く――。
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