第067話:レブロンの拭えない傷!ブラウンが語る笑顔へのルーツ!!
文字数 4,170文字
おい。何避けてるんだよ!!!
きちんと攻撃して来い。
だ、ダメですって!
喧嘩は良くないよ!!!
早くその拳をしまって下さい!!!
う、うるせぇ。
やっとアレドシア様に認められたんだ。
俺の笑顔は紛い物。誰も
得なんてしない……。
何言ってるんですか!!!シルドラ君から笑顔を教わった、って
随時ブルーノ様の猫ミムちゃんから
報告受けてたんですよ。それでも
損だと言うんですか!?
あぁ、そうだよ!!!
リンクリングも壊され、海から落とされ
アレドシアの悪事も説得出来ずに終わり
こっちはもうメンタルが
ズタボロなんだ!!!
俺がシルドラ達と
この大陸を一緒に冒険したお陰で
本当の居場所を見つけた筈なのに……
前話のあらすじ。
雨上がりのティブルエイド。
計画第2幕を
始動させたアレドシアの
本当の用心棒になってしまったレブロンは
ネックレスを何時になっても渡さないシルドラに
反撃の狼煙、要するに復讐のような罰を与える為
彼の友人であり
少しお茶目で見た目が可愛いブラウンが
標的にされてしまった事が判明――。
ただ、彼の魔の手を
食い止めるシルドラ達の他にも
グラッツは爆破の餌食になろうとしていた
ゼルガス所有の海賊船の避難、アジールは同じ町民の説得を
試みようとしていたけれど、事態は
加速度を付けて更に悪化してしまっていた。
****
忍者の里シノヴァシア。
ブルーノ宅に勢揃いし
シルドラ達の無事を祈りながら、
何時襲撃して来ても良いようにと待機している中
テレビを付けてみると、フェルマータ城の正門前で
物珍しそうにカメラのレンズを覗き込んでる
ブラウンの姿を見てしまい、師範達は
驚きを隠せずにいた。
あっ、ブラウンだ!!!
フェルマータ城に到着したんだね!!
ふむ。
だとしても早過ぎではないのか?
此処からフェルマータ城までは
徒歩で大体2時間掛かる。
それに先程
長時間にわたる雨が降ったせいで
更に到着する時間が遅くなる筈です。
確かこの大陸に
久しぶりに降り続けたんだろ。
俺等の生息する森とは違うんだな。
あっ、それはね
トーンフロッグって言う大蛙が
このティブルエイドには居てね、この
少し先にある森の祠で子供達と
いっつも合唱してるんだ!
おう。合計10匹中
5匹以上が一斉に鳴き出せば
恵みの雨としてこの大陸の自然を
綺麗に潤してくれるんだぜ。
うむ。
気紛れな蛙でな
この大陸をずっと昔から守ってくれている。
さっきから
テレビにブラウンしか映っていません。
何処にもシルドラ達の姿が
見当たらないんですけど……。
多分、原因は
ほんの数分前に発生した濃霧だ。
あの城に向かうには、ヴァンウッドの森
後半地の地図を頭の中に記憶していないと
容易には抜けられない。
ゴッシュさんでしたか。
遠方から遥々と訪問の程感謝致します。
現在、
このティブルエイドで起きている
アレドシアの計画の全貌を一視聴者として
テレビで演説の冒頭部分を目視していたゴッシュ。
それは勿論だけど
そんな事より、唯一の心配は
看病していたレブロンが突如として
自宅から姿を消した事。彼の行方を掴む為に
雨や霧に負けじと、ロックドクリフから
徒歩で駆け付けて来た様子。
辺りをキョロキョロし
レブロンがこの里に来ていないか確認する。
ああ。
自宅で療養させていたレブロンが
突如として居なくなったんだ。未だ
凍えた口調に身体も震えている。
いち早い対処が必要でな。
あっ!!!
レブロンさんがテレビに映ってるよー。
ブラウンと一緒に何かやるのかな!?
主人公であるシルドラ不在の中
ブラウンとレブロンの姿をテレビで確認。
ずっと探していた彼が
フェルマータ城の正門前、増してやアレドシアが潜む
両親の所有建造物だと言うのに、対峙するかのように
よからぬ雰囲気、鋭い眼差しで
これから何かを成し遂げようとする
圧が覇気として伝わって来る。
おいおいおい!!!
何かあの2人、喧嘩する勢いだぞ。
どうなってるんだ!?
もしかしたらレブロンは
アレドシアの味方になった恐れがあるぞ。
な、何故ですか?シルドラさんとの深い絆を守る為に
笑顔まで交わした私の御主人が、もう一回
悪の道に進むなんてあり得ません……。
お前も分かるだろ!!!ずる賢い方法で人の心に邪魔する奴だ。
僕だって何回アイツの口車に
乗せられた事か!!!
確かにな。
此処から先の森には小道の他に
獣道も複数存在する為、一歩でも
間違った道選択を行うと、中々外にも
出られない。天然が作った
自然迷路のようなもんだ。
ふむ。ゴッシュ殿。
其方、以前にこの森の攻略方法と言う物を
彼に教えた事があるんじゃないのか?
『ティブルエイドの事なら
何でも知っている奴だ。この大陸の事を
聞くんだったら彼に聞いた方が
手っ取り早い。以前お世話になった
事がある。確か地図にも詳しい筈だ。』
(第08話参照)
マツカゼさん、
も、申し訳御座いません。
ブラウンを連れ出す為にこんな方法を……
まあまあ。
過ぎた事を悔やむより
今起きている事を解決する事が最優先だ。
其方もこの里に来訪してくれた訳だ。
共に彼に立ち向かおう。
ああ!!
ヴァルが死を迎えるまで
残り10時間切ったからな!!!
奴の魔の手の阻止してやろうじゃないか。
えっ!!!ヴァルさん死んじゃうの!?
もしかして刺されたの!?
あ、ああ……。
生中継だから事実上公開処刑でな
少し血液がこびり付いていた銀の剣で
狼族の弱点となる腹部を一刺しだったぞ。
マツカゼ様、
アレドシアが所有していたあの剣について
1つお聞きしたい事があるんですけど。
し、首謀者は
ブルーノの父親ギンジ。
アレドシアの激昂を抑え付ける為に
ギンジが彼の目に傷を入れる事を
拙者に促したんだ。
って言う事は、あの剣に付いてる血って
アレドシアの物じゃん!!!!
そんな物騒な物、
何で早く処理しないで蔵内に隠したんだ?
拙者の
家宝だからだ!!
捨てれる訳がないだろう!!!
マツカゼ家に代々伝わる剣で
アレドシアの右目に傷を負わせたのは
初代の長でありブルーノの父親ギンジである事が判明。
これはシノヴァシアが襲撃された過去への入り口――。
いよいよ忘れもしない
あの日の全貌が明らかになろうとしていた。
****
フェルマータ城、正門前。
笑う表情すら消え失せて
常に真剣な眼差しでブラウンの事しか見てないレブロン。
何とか笑顔を取り戻して欲しいと
これから始まろうとしている喧嘩なんかより
本当に大切にして欲しい物、を熱く主張し出す。
何だ。
喧嘩の事か?
さっき説明した通りだぞ。
ホントにどうしちゃったんですか!?
お願いですから笑って下さい!!
だから、さっきも言っただろ。
作り笑いならいくらでもしてやると。
忘れたのか?
ボクは赤ちゃんの頃から
ずっとパパとママの笑顔を見て来たの!
自分が笑えば他の人も笑ってくれる。
そう言う感情って伝染するって
言うでしょ!?
だから、
シルドラ君達と毎日楽しく
色んな場所を冒険していっぱい
笑っていたんじゃないんですか!!!
確かに。振り返ってみると笑ってたな。
今となっては良い思い出だ。
だけどな!!!アレドシアには一切敵わなかったんだ。
奴をもう1度振り向かせる為に
笑顔も拳も全て捨てた。
だから、
笑顔なんか嫌いだ!!!
おい、ブラウン!!!
ちょっとふくよかで、身長も低く150cm程度。
誠拳道で鍛え上げられた身のこなしで
レブロンの重そうなパンチを避け切る。
逃げ出す程だけど
マツカゼに稽古を付けて貰っていただけの事はある。
色んな人に注意されて、叱られたりしながら
ブラウンは此処まで成長をして来た。
彼に分かって貰う迄、懸命に説得をし続ける――。
う、うわっ!
ちょ、ちょっと!!
危ないじゃないですか!!!
おい。何避けてるんだよ!!!
きちんと攻撃して来い。
だ、ダメですって!
喧嘩は良くないよ!!!
早くその拳をしまって下さい!!!
う、うるせぇ。
やっとアレドシア様に認められたんだ。
俺の笑顔は紛い物。誰も
得なんてしない……。
何言ってるんですか!!!シルドラ君から笑顔を教わった、って
随時ブルーノ様の猫ミムちゃんから
報告受けてたんですよ。それでも
損だと言うんですか!?
あぁ、そうだよ!!!
リンクリングも壊され、海から落とされ
アレドシアの悪事も説得出来ずに終わり
こっちはもうメンタルが
ズタボロなんだ!!!
俺がシルドラ達と
この大陸を一緒に冒険したお陰で
本当の居場所を見つけた筈なのに……
だったら、
皆の元に帰りましょうよ!!!
ほら、ボクの手を握って下さい!!!
殴られた時に
口内が切れてしまったせいで
微量の血を滲ませながらも、ブラウンは痛みと戦っている。
今まで絶対に
拳を人に向ける事など無かった。
それは勿論、その行為や意味を重々と理解しているから。
しかし、自分の不手際や任務への貢献度を
リーダーであるアレドシアの心情と重ねてしまった彼は
本当の用心棒であった時の務めを今からでも
果たすべく、レブロンは心を鬼にし
シルドラ達に反撃を果たす事に。
俺に似合わない
笑顔を芽生えさせた、逆恨みの為に――。
次回、遂に
シルドラ・ミルフ・シルヴェスの3人が
フェルマータ城に到着。レブロンと最悪の再会を果たす。
第068話へ続く。
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