第052話:崖と海に響く不協和音!ブロスの非情なる大進撃!!
文字数 5,211文字
れ、レブロン……!
何処に居るんだ!?
お願いだから返事してくれ!!!
や、やべぇ……
沢山海水を飲んでしまった。
苦しい。だ、誰か……助けて……。
くっ。こうやって彷徨っている間にも
彼は命に晒されているんだ。何が
何でも見つけ出さないと!
う”っ。俺はこのまま死んじまうのか!?
シルドラに再会出来ないまま
もう2度と……。
現在、フェルマータ城周辺は
強風により海上が荒れていて
喧嘩に負けたレブロンはブロスに首を掴まれ
そのまま身体ごと、海に落とされてしまい
身体の自由も利かない程、絶体絶命のピンチが訪れていた……。
アッジも良い年齢だろ。
寒いようなら俺のこの特攻服貸してやるぞ。
遠慮無しに言ってくれ。
優しいんだな。なぁ、グラッツよ。
本当にこの
喧嘩必要なのか?
…………。
やはりお前もそう思うか。
ちょっと話がある。これはブロスはもちろん
アレドシア様にも内緒にして欲しい。
付いてきてくれ。
ブロスの目の届く範囲でさえ
ほんの数センチ移動しただけでも指摘されてしまう。
ただの散歩だ!!!
暗くて辺りは見えないけど
ここは自然豊富なティブルエイドだ。
少し位空気を味わっても良いだろ!?
おう。準備運動もしたし
後はその時が来るのを待つだけだ。
怖くなんかないぜ。
瘦せ我慢なんてしなくて良いぞ。
今は俺がお前の保護者だ。
何でも言ってくれ。
ほら、レブロン!
ハンカチ貸してやるから汗拭きな。
大丈夫だ。俺もお前を見守ってるから
ドンって言って来い!!!
いや、ちゃんと
ロギュアさんにも感謝しています、はい!!
申し訳ございません!!!
やっと素のレブロンが見れたな。
別に怒ってる訳ではない。揶揄っただけだ。
フェルマータ城、門前。
アレドシアの号令により
ゼルガス、そしてメンバー一同は
喧嘩に巻き込まれないように、少し離れた所で
レブロンを見守る形となり、静寂に包まれた海食崖で
2人の喧嘩が始まろうとしていた。
待たせて済まない。
では、これからレブロンとブロスの喧嘩を
始めさせて貰う。手は絶対抜くな。
よし、ルールを教える。
この世界の条例として暴力や喧嘩を
しても目を付けられる事は基本無い。目が
潰れようがお構いなしにやれ。それと崖下に
落とすのも規定として許そう。
死を覚悟して挑め。
オイ!!
死ぬなんてそう易々と言うもんじゃねぇ。
お前にとってレブロンやブロスは何だ?
一度でも同じフランバージュとして
付き合ったメンバーだろ。
さっさとやれ!!!余計な感情は捨てろ。私の為に働け。
僕はアレドシア様に
認められたんだ。あの日助けられて
ずっと彼の背中を追い掛けて来た……
負けてなんてたまるか!!!
相手の元に走り出し
ずっとポケットに入れてた恨みの拳が
彼の腹部目掛け、鍛えられた腹筋目掛けて
凹む位何度も何度も叩き付けて行く。
少しの焦りと戸惑いが、
ブロスの感情を更に加速させてしまい、
アレドシアにいるメンバー、そして右腕として切られても
可笑しくない状況になりたくない為にも
今自分が出来る務めを果たす。
苦境に立たされているレブロンも
必死に痛みを堪えている。
顔を歪ませても、怯む姿を決して見せない。
苦しくても、自分を
応援してくれてるゼルガスの為に握りしめていた
拳を彼の腹部におみまいしようとするけど
暴力の為に自分の力を発揮するのは
間違ってる、絶対に傷付けたくないと
レブロンは決して素手を出す事は無かった。
何でだよ!!
何で、僕を攻撃しないんだ!!!
恨みがあって尚且つ憎いんだろ!?
喧嘩って言う意味知ってるだろ。
互いに相手に対する怒りの感情をぶつける
場の事だ。シルドラの為に手を
出さないつもりか?
そんな生温い考え、
フランバージュの前では無用だ。
お前どうせヴァルも処刑しないんだろ。
計画準備中もシルドラなんかと
遊びやがって。もっと緊張感
持ったらどうだよ!!!
はぁ!?
こんなサークル幻滅じゃねぇか。
思いやりも無ければ、信頼を築く事も無い。
地獄のような付き合いは御免だ。
よく言った!!!馬鹿な連中共見たか!?
これがレブロンの意地……
その一瞬、ボクシングで
ストレートを決めたようなパンチが
ゼルガスの腹部に決まる。先程レブロンも
同じ思いをしたけど、割とブロスの上腕には
誰も想定しない程の筋肉が隠されている。
黙ってないとでも?と
言わんばかりに容赦なく暴力的な発言が彼に襲い掛かる。
邪魔する奴に慈悲もクソもない。
おい、レブロン。手を出さないなら
こっちを見ろ!!!
パンチを繰り出すと見せかけ
腰を回すようにして靴を履いた状態のまま後ろ蹴り回し。
足技として大きな衝撃力を与える
蹴りの方法として知られている為
急所に効く程の大ダメージを与えられてしまい
口内から大量の血液を吹き出してしまう。
アレドシア様、もう彼は戦意喪失してる。
この辺にしとくんだ!!!
駄目だ。私の用心棒としての
責務を果たすならブロス位で音を
上げてるなどご法度。この程度で吐血か……
レブロン、お前には失望した……
悪いけどここまでだ。海に落とせ。
ゆっくりと小刻みに、
少しずつレブロンの前に歩き出し
城の小部屋でゼルガスの首を鷲掴みした時と
同じように、見下す表情をしながら
ガシッと持ち掴み、今にも振り落とす"その時" が近付いていた。
おい。その手を離せ!!!
苦しんでるだろ!? もしこれで
本当に海に突き落としたりでもしたら
お前を一生恨むからな!!!
リーダーの権限は絶対だ。
文句があるならアレドシア様に言ってみろ。
ロギュア……
無能な人間はチームには不要。
用心棒として雇った私が愚かだった。
アレドシア様、最後まで
迷惑かけてすみませんでした。
俺は此処で幕を閉じます。ゼルガスも
シルドラと合流する時が来たら
遠い所に行った。と伝えて置いてくれ。
そんな事出来る訳無いだろ!!!
シルドラにどんな顔すれば良いんだよ……
力を入れて掴んでた手を振り解き
レブロンの身体は真っ逆さまに海へと落下していく。
暗い海に誘われるがまま
着水するけどさっきも言った通り、現在
この周辺の海域は風が強く吹き、海上も荒れている。
高波にさらわれたりでもしたら、ゆっくりと
海中に沈んでしまう為、もう二度と
太陽の日差しを浴びる事も出来ない。
必死に生きようと海上に顔を出し、足掻く――。
う”っ。あ”っ……
岩礁に足ぶつけてしまった。
お、思うように足が動かねぇ……
****
崖の上――。
レブロンが崖下に落とされてしまった事に対し
遂にロギュアの堪忍袋が切れてしまい
アレドシアに必要以上に問い詰めていた。
おい、お前等!レブロンを崖下に落として気持ち良いか!?
口答えするな。
私が無能と判断した訳だ。
それに始末する際は証拠も消すのが
フランバージュの鉄の掟。アイツは
計画の全貌を知り過ぎた……
ふざけるな!人1人殺したのと変わらないぞ。
それに仲が良いゼルガスの目前でよくも!!
私が不快と思うなら辞めるがいい。
しかし、今度会う時は完全に敵だ。その
覚悟があるなら、助けに行ったらどうだ?
身に着けていた
赤い特攻服をぐちゃぐちゃに丸めて
アレドシアの前に投げ捨て、今までその代物が
フランバージュの掲げるポリシーに
どれだけロギュアが悩まされていたか……と
ずっと胸に秘めていた想いを
鬱憤を晴らすように吐き捨てる。
ああ、そのつもりだ!!!今までお世話になったな。このクソ共が。
アッジ、グラッツ。
城に戻るぞ。ゼルガスも来い。
アイツに処刑されなくて良かったな。
ブロス、奴の始末ご苦労だ。
褒美があるなら何なりと言っていいぞ。
アレドシア様の側で更なる活躍が出来れば
僕は何のご褒美も要りません。
よし。それなら次の任務を言い渡す。
計画当日、ヴァルの処刑に応じている
同時刻にヴァンウッドの森を燃やす算段だ。
ま、まさか……。
こうなると予測してたのか?
恐ろしい奴やな。爆弾の数が
比例しないと思ったら、城を壊すだけ物
以外も含まれていたとは。
ああ、それとだ。
朗報を伝える。そこにシルドラがいるぞ。
その序に今度こそネックレスを奪え。
奴等の口車には絶対に乗るな。良いな?
****
落下した際の衝動で強く身体を
海面に叩き付けられないように、少し離れた場所にある
崖下へ行ける階段を物凄いスピードで駆け降り
出来るだけ水面に近い場所、約5mに
達した所で、海へ飛び下りる。
吹き
荒ぶ風の中でも、
水飛沫を上げて懸命に泳ぎ出す。
俺なんかよりレブロンの方が非常事態だ。
増してや高い崖の上から落とされて無事でいられる
保障も無い。波の大きなうなりがロギュアを襲うけど
今目の前には助けないといけない彼がいるんだ。
う”ぐっ。
海の中は自由が利かないな……
ど、どうすれば良いんだ!?
おい、聞こえるか!?
助けに来たぞ。確かこの辺りに落下した筈。
風の勢いが更に強さを増し
波も自由に形を変え、容赦なく2人に襲い掛かる。
特にレブロンはもう着水してから10分以上は経つ。
このままだと波に攫われながら
水中に沈められた事により、肺の中に水が
入ってしまい窒息して死んでしまう。
そのせいで、ロギュアは少しずつ焦りを見せ始めていた。
れ、レブロン……!
何処に居るんだ!?
お願いだから返事してくれ!!!
死んだなんて是が非でも言うなよ……
しかし、レブロンは既に
何回も押し寄せる高波に襲われながら
別の場所に移動してしまい、彼の必死な叫び声も
全く聞こえなかった。
や、やべぇ……
沢山海水を飲んでしまった。
苦しい。だ、誰か……助けて……。
くっ。こうやって彷徨っている間にも
彼は命に晒されているんだ。何が
何でも見つけ出さないと!
う”っ。俺はこのまま死んじまうのか!?
シルドラに再会出来ないまま
もう2度と……。
待ってろ。必ず見つけ出してやるから
それまで無事で居てくれ。
後少しの辛抱だぞ。
****
時間は過ぎ去り、
物語はヴァンウッド――。
レブロンを始末する一仕事を終え
アレドシアの口からこの森を燃やす事を、長不在の為
彼女を一番、慕っているシャノンに告げられた。
口喧嘩をしてると思い、
右腕のブロスの目の前に勇気を以って
現れたのは、誰よりもシノヴァシアとこの森に棲む巫女族を
大切にしている一人、名はブラウン。
そうか。お構いなしにやらせて頂くぞ。
その可愛い顔がどうなっても知らねぇからな。
可愛いだけだと思ったら大間違いだよ。
こう見えて強いんだから!
そうは見えないな。
どうせ口から出まかせ言ってるだけだろ?
馬鹿言う前に仕留めてやる。
今更後悔しても……
柔道をやる構えと同じ要領で
左足を前に一歩出し、右腕を肩の高さに構えて
そのまま右手で空気を殴るかのように
拳からパーの形に開くと
同時にブロスは空気の重さに耐えきれず、
足跡を地面に残しながら後ろへと飛ばされてしまう。
何だコイツ!
見た事ねぇ体術使いやがる。
意外と侮れねぇなあ……
ふん。余裕がある顔付きだと思ったけど
そう言う事だったんだな。
あっ、でも厳しいから
道場抜け出して来ちゃったんだ、あはは。
こう見えて、彼は
誠拳道と言った
体術を会得しています。
レブロンさんは言いました。
拳は正義の為にあると。それと同じです。
信頼関係が結ばれている里の皆さんを
1人1人守る拳を備える為に
誠拳道があります。
誠と言う言葉には
嘘や偽りがない意味が含まれています。
それこそ毎日を楽しく謳歌している
証拠です。現在3人の師範が亡くなった
僕の父さんの跡を受け継いでくれています。
彼等は全員……
お前等の敵だ!!!これ以上、好きにさせはしないぞ。
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