第113話:豪勢ディナーは波乱の後で!?魂拳ラウルの熱血男料理披露!!(前編)
文字数 6,270文字
あーーーーっ。
ユメト君だけずーるーい。
僕にもほんのちょっとだけ味見させて!!
ねえ!!!トイレ掃除終わったら味見したいから
少しだけ取り皿に残して置いてくれない!?
はい。さっさと手を動かす。綺麗にするまで夕飯はお預けですよ。
【前回のあらすじ】
前後編に渡ってお届けした
三大暴君魚 "オウズリウム" との凄絶な捕獲劇。
荒くれ魚の特徴の1つである "嗅覚"。
汚いオチと化したけれど、見事にブラウンの
放尿により気絶させられる事に成功。
合計6人でリトルボートに乗り、
釣具店フィスクブルーへと戻ってきたラウル達が
投網捕獲した荒くれ魚を頑丈な檻へと
入れる所から話は始まる。
よし!!! これでオウズリウムの一件は
取り敢えず片が付いたな。
でも、もう大丈夫っ!
檻の中では自由が利かないからね。
流石にもう
噛み壊さないよね!?
あの鋭利な歯だったら強行突破しそうな
予感がするんだけど。
安心してくれ。この
檻は
レアな鉱石 "レスラン"が使用されてる。
いくら奴が歯撃をして来ても
傷1つ付かない頑丈な代物なんだよな。
心置きなく淡水魚が自由に
泳げる湖 "ピュアレイク" の完全復活だ。
おーーーーーい。
ウットカーゴも綺麗な湖水を飲みに
いつでも戻って来ていいからねーーー!!!
あっ、ブラウン君、空見て!
あれ、ウットカーゴじゃないかな!?
僕の指差す方向だよ。
間違い無い。あの羽根の色は――
ユメトも気付いたか。
ブラウン達に教えてやってくれ。
えっとね、
綺麗な水が敷き詰める湖の上空を
飛ぶ習性がある "三大美艶鳥" の1匹。
名前は
"ハープライト"。
滅多に出会えない鳥で有名――
えーーーーーーーっ!!!
何で空大陸に!?
ちょ、ちょっと待って下さい!!!
その鳥が現れたと言う事はもしかして――
ああ、間違い無い。
この湖の綺麗さが認められた証拠かもな。
ほら、皆。ハープライトの出現に
お辞儀で感謝するんだ。
おーーーーーい。
三大美艶鳥のハープライトさーーーーん。
湖の厳重水質警備ご苦労様です!!!
来てくれてありがとねーーーー。
ぼ、僕からも感謝を言わせてーーーー。
本当なら面を向かってありがとうって
言いたいけど今は我慢!!!
皆で
此処の水質を守り続けるから
またいつか、いや必ず遊びに来てね!!!
※
"三大美艶鳥" の
詳細は今明らかには出来ません。
湖に平和が戻り
綺麗な水に釣られて伝説と謳われている
"ハープライト" が出現したに違いない。
どこを飛来してるのかも分からない貴重な鳥との出逢いに
シルドラは勿論、皆も貴重な経験が出来た。
残り2匹の鳥も、この空の下
綺麗な羽根を羽搏かせ、各々の役目を果たしながら
優雅に、そして自由に泳いでいる事だろう。
****
釣具店 "フィスクブルー" 店内。
さてと、
食用の淡水魚も用意出来た訳だ。
皆で夕飯の支度をするか。
今度はラウルさんのお手製夕飯タイムだ。
どんな料理を振舞ってくれるか
今から楽しみ!!!
魚や木の実、菌類をふんだんに使用した
空大陸でしか味わえない郷土料理が
俺の得意分野だ。
ボクも食べた事あるけど
淡水魚を網焼きにして、焼いたお魚を
豪快にドーン!って盛り付けるのが
ラウルさん流男料理の鉄則。
香ばしい匂いと
後に掛けるグワンソースの旨味が程よく
絡まっててホントに美味しいんだ!!
何それ!? 言ってる
側から美味しそうじゃないですか!!
あーーーーーん!!!
今にもお腹がなりそうですよーーー。
あっ、そうだ。
ユメト、菌類と例のブツの補充がしたい。
あっ、そうだ。
ラウルさん、せっかくだからさ
シルドラ君達に――
シルドラ、ミルフ、
ブラウン、オリバーの4人に聞かれないように
自称・空大陸宣伝大使である
ユメトは此処の食文化を知って貰おうと
ある提案をラウルに持ち掛ける。
題して
"菌類・木の実採取ゲーム"。特徴を教えるから条件に適した
物を採取する事が出来たら成功。
空大陸の食文化も知れて、
そのブツを調理した料理も食えて一石二鳥。
ストレス無く息抜き感覚で楽しんで欲しい。
どうだ!?
言ってしまえば素材調達だね!
ボクもやるやるー!!!
2人がやるなら僕もやる!!
誰よりも早く入手してみせるぞー!!!
何言ってるんだ、お前等!!投網で培った筋力で菌類も木の実もゲット。
間違えても握り潰さないように
あたいが素早く得てやる!!!
ユメト、シルドラ達に
広大な庭の敷地を見せてやってくれ。
俺は少し店を片してから向かう。
****
ピュアレイクを抜き抜ける風。
小鳥の囀り、草花の匂い、木の葉揺れる木々。
上空を羽搏く複数の鳥。
空大陸にいるなんて…と思う位の
大自然を肌で感じながら、シルドラ達はユメト宅に戻り
蔦が絡まるアーチ状の白い鉄製トンネルを
潜ると、そこに広がるのは
ドーム2個分の面積を誇る
ユメトの家族による自家栽培農園がご覧の通り。
うおおおおおおおいいいいいい!!!何だこの広さは!?
此処で採取なんて無理難題じゃねーか!!!
ユメト、お前の家族ヤバ過ぎだろ!?
どんだけ労力を費やしたんだ!?
でもね、ボクの家族は
レオードお兄ちゃん以外、空大陸の
割とあらゆる食材を常日頃美味しく
食べられる喜び、2人も味わいたいと思って
自家栽培を始めたんだ。
あっ!それが地産地消を
推奨する本当の理由じゃないのかな!?
ああ。先程署名してくれた同意書の
ファイリング。それにデスク上の資料等。
漏洩の恐れがある書類は
全て厳重に保管しないといけないからな。
パパッと終わらして来てやったぜ。
おう。与える特徴は1つだけ。
適した物か否かは俺が判断してやる。
先ずは1つ目の食材。
名前は "カンムリダケ" だ。
ブラウン、ミルフ、
それに、オリバーの3人は、
誰よりも早く正解の物を手に入れたいが為
カンムリダケの "カンムリ" を王冠だと思い込み
広大な庭をくまなく捜索する。
それと比べて
シルドラだけは確実な物を手に入れる為
特徴のヒントを先ず全部聞き、的確に獲る算段。
うーん。カンムリだから
王冠の形をした菌類なのか、それとも……。
おう!!!
ヒントは "カンムリ" の捉え方だ。
えっ!?カンムリって偉い奴が頭に付ける奴だろ!?
ち、違うのか!?
ああ。
空大陸で
カンムリと言えばアレの事だ。
ラウルが指差した方向には
広大な庭を自由に歩き回ってるニワトリの姿が。
おい、ニワトリ共
コケコケうるせぇーぞ!!!!
何でコイツ等がカンムリなんだよ!?
オリバーが見つけ、
指差した木の根元に生えていた茸には
明らかにカサの部分がギザギザとしていて、
何処かニワトリの頭の部分と類似していた。
※ カサ(傘)とは……
キノコの上部の帽子のような物。
傘の形はそれぞれあり、持たない物もある。
オリバー君!!!
な、何でこれがカンムリダケだと思うの!?
だって、カサの部分を見てよ!?
さっきラウルさんが教えてくれた
ニワトリの頭の部分と瓜二つなんだよ!!!
良いですか?
ニワトリの頭の部分を基本的には
トサカと呼ぶんですけど……。
この答えに辿り着くには
さっきのカンムリが鍵になって来ます。
むしろ、この問題はどちらかと言えば
ブラウン君が有利なんですよね。
そうだよ!!!以前、マツカゼ様に「トサカ」の事を
色々と教えて貰ったんだ。
遠い世界では
ニワトリのカンムリと書いて「トサカ」と
呼ぶらしいって!!!
改めて説明します。
ニワトリの頭の
ギザギザの部分は名称「トサカ」と呼びます。
ラウルがニワトリに向かって「カンムリ」と言ったのは
もうその時点で答えを言っていたからです。
現実世界ではトサカを「鶏冠」と表記します。
要するにカンムリダケと言うのは
王冠のカンムリではなく、鶏冠の形をしたカサをしてる茸の事。
良いか? このカンムリダケは
空大陸でしかお目にかかれない菌類でな、
ニワトリが群がっている場所にしか
生えていない習性を持つ独特な茸なんだ。
その分、炭火で焼くと
めっちゃ香ばしい匂いが漂って来てな
調理中でも見てるこっちまで
食欲をそそられる食材でもあるんだなあ。
あ~~ん。目の前に美味しそうな
茸。
焼いた時に滲み出る旨味成分。
もうっ。今すぐにでも自分で
調理して食べたい位ですぅ~。
ブラウンちゃ~ん。ラウルさんの手作り料理食べたいのであれば
彼の自宅のトイレを綺麗に
掃除し終わるまで食事への参加は
禁じま~~~す。あははははは。
あっ、ちゃ、
ちゃんと反省してるし
トイレもきちんとキレイキレイにするからさ
ご飯はお願いだから食べさせてよーー!!!
よし、気を取り直して
2つ目の食材探しゲームと行くか。
おんどりゃあああ!!!!
次こそはあたいが食材を手に入れる!!!
何言ってるの!?
さっきは僕が見つけたのに
先にブラウン君が正解を言っちゃったから
次こそはこの僕が手に入れるんだー!!!!
いや、2問目も
ぜーったいにボクが見つけ出すの!!!
負けないからね!!!
お前等は
レッジアンガーと言った
色彩の実の存在を知ってるか?
あ、知ってます。
レブロンさんがその実を丸齧りして
口から火吐いてる光景を僕とミルフさんが
この目でしっかりと視認しました。
インディム街道「ブラウン亭」に向かう前。
ブラウン君がトイレ休憩した場所です。
えーーーーーーーっ!!!!
ボクも口から火出して見たいんだけど!!!
あーもうっ!!!
また話が収拾付かなくなるって!!
ラウルさん、続きをお願いします!!!
それにしても
よくあんな香辛料に手を付けられたな。
度胸あり過ぎだろ?
あー、アイツの度胸はあたいのお墨付きだ。
気合いで辛さも吹き飛ばすだろうよ。
でも、それとこの庭に生えている物と
何か関係があるんですか?
何言ってるんだよ?
関係があるからこうやって話してるんだろ。
良いか?
"レッジアンガー" は実が生ると
双子のようにもう1つ実が生ってな、
それをすり潰せば料理にも使える香辛料に
早変わりする特徴的な木の実でもあり――
ユメトの父が
レッジアンガーと区別する為に
別の囲いを作って、いつでも調達出来るよう
常に細心の注意を払って栽培してるんだ。
と言う事は、もしかして
レッジアンガーのもう片方の実を植えた
木に生っているその香辛料の元を
探しに行けば良いんだよな?
えっ!それって大丈夫なの!?
近くなった途端、鼻にツーンって
匂って来ないの!?
香辛料の元と言っても
成熟中の実はほぼ無臭状態だ。
人体に影響する匂いでは無いから
安心してくれ。
ラウルは再び指を差し、
カンムリダケが生えていた木々の向こう側、
杭で囲まれている箇所の木々に生えている事を
シルドラ達に伝えようと声掛けた途端に――
何の号令も無く
ブラウンはフライングをしてまでも
一番最初に見つけ出そうと、
作業中の沿道侵入禁止と書かれた柵付近を
無視しながらも走り抜ける。
って、ブラウンちょっと待て!!!!そっちから行くな!!!
もう、今の発した言葉も聞こえない範囲にいる。
ただ、ラウルの様子も何処か変。
えっ、どうしたの!?ブラウン君の事だから1番乗りで
見つけようとしているけど、ダメなの!?
ライトフェザー騎士団、
魂拳とまで呼ばれた男団員ラウル。
ブラウンの予測不可能な行動により
空賊襲撃以外で彼が危惧していた事態が遂に起きてしまった。
そう、目線の先にある
林間地帯の随所随所に巣を作ってしまった――
大量の蜂。
無闇に近づいちゃダメだ。
あの蜂共は人間の血液を
容赦なく吸い尽くす――
次回、ブラウンが招いてしまった
大量の蜂騒動を解決すべく、とある男が立ち上がる。
無事にシルドラ達はラウルお手製料理に
使用する香辛料を手に入れ、
食事に在りつけるか。
そして、本編のラストでは
現在、消息を絶っているブラウン亭のマスターこと
もう1人の「ブラウン」が意外な人物と接触する。
最後まで気が抜けない展開をご堪能あれ。
第114話へ続く。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)