第029話:レブロンとの別れ!謎の空中戦艦と動き出す陰謀!!
文字数 6,028文字
あ、あれっ……。
ぐ、グレントさん、どうしたんですか?
何の反応も無いんで、心配ですよー。
ミッシュさん。
ちょっと用事を思い出したので、
2、3日この牧場離れさせて頂きます……。
安心して下さい。
用事を無事に終えた際、一目散に
必ず戻って参ります。またその時に
遊んでくれると嬉しい所存……。
あっ、もしかして
飼い主のレブロンさんの所に行くんですか?
やっぱりご主人様が好きなんですねー。
良いなあ。僕も経験してみたいなっ!
大きく翼を羽ばたかせて、勢いよく
牧場独特の土と牧草を思い切り蹴り上げ、空へと上昇。
咄嗟に空中で方向転換をし、
ティブルエイド全土を見回す。
彼が見ている方向……
そこは決して近付いてはいけない、そして
忍びの里 "シノヴァシア" を襲撃し
フェルマータ城で幽閉されている
"ヴァル=バーンズ" に関係する場所――。
ヴァル様、私は貴方を助ける事も出来ずに
その場から逃げてしまった……。
一生の不覚です。謝って済む
問題ではありません。
唯一出来た事と言えば
当時心を許せたロッド一族のネックレスを
息子のシルドラさんに渡せた事だけ。彼は
少しずつフェルマータ城に
近付いています……。
バーンズ一族の元、主だったこの私が
命に賭けても、次こそは貴方を助けるべく
奮闘させて頂きます。もう少しの辛抱です。
待っていて下さい……。
彼はフランバージュの
用心棒 "レブロン" に仕える以前に
このティブルエイドで一番のどかな町
"シノヴァルド" と言った場所で暮らしていた
バーンズ一族の主を務めていた過去がある。
ただ、今は "禁じられた町" となり、
ティブルエイドの島民から忘れられ、
地図からも排除されてしまった。その理由は後ほど。
そんな中、この場所を唯一見つけられたのは、当時
地図作製の途中、モンスターに襲撃され
血を流し倒れていたシルドラの両親。
助けてくれた恩人こそ、この町の長
バーンズ一族であるヴァル。
忍者の里 "シノヴァシア" を襲撃したのにも理由がある。
その謎を今解き明かそうといよいよ
グレンドが立ち上がろうとしていた――。
どんな答えが待ち構えてたとしても。
前回のあらすじ。
ホットソープに向かう道中、
オープン当日を迎えていた
大型施設 "マリーナブルー" に立ち会う事が出来、
種類豊富なプール、豪華絢爛なマッチョダンサー、それと
シルドラと共にレブロンがほぼ閉園1時間前まで
踊り明かしたイベント "スプラッシュ・ダンス"を
心行くまで堪能したその次の日の出来事。
いよいよ、
本日レブロンとの別れの日――。
踊り疲れて筋肉痛になってしまった!!!
大腿四頭筋がパンパンし過ぎて痛い!!!
右に同じく。もちろん踊ったのは衝動的
だから仕方ないけど、プールや水泳は
有酸素運動の中で一番消費カロリーが多い。
だから、逆に入り過ぎるのも身体に悪くて
問題なんだ。すっかり忘れてたぜ……
はぁ、はぁ……
以前ローウェンって言う奴のスキルを
喰らった時の苦しみより辛いな……。
あっ!!! ぼ、僕知ってますよ!!!
確かクロスウッドの各地で
様々なスキルが発見されたって
新聞で見た覚えがありますっ。
ちなみに俺は "轟炎"。
自分の身体の部位に炎を纏い、多種多様な
技を直接相手に浴びせる事が出来たな。
あの時が懐かしいぜ……
あっ、確か "戟" って
武器を意味する言葉ですよねっ。
と言う事は、自分の手が様々な代物に
変わって悪を退治するスキルとかですか!?
やったー。ちなみにそのローウェンさんって
どんなスキル所持者だったんですか!?
気になりますよー。
す、済まん。
シルドラ、スキルの話はここまでだ。
これからその作品を読む人も少なからず
いる筈。楽しみが減ってしまうだろ?
あっ、そうですよね!!
うっかり聞いてしまう所でした……。
あれ? おい皆見てくれ。
あの道……、看板とか立ってないから
どっちにホットソープがあるか分からない。
そうだな。前は林のようだけど
行ける道が右と左しか無いぞ。どっちだ?
左だぜ、皆。
ここを5分程歩けば
ホットソープに辿り着ける。
えっと、確か……
長い道をひたすら歩けば
古ぼけた城が崖付近に建てられていた筈。
名前何だったかな。あれは……
お別れだ。ここまで
一緒に冒険してくれてありがとな。
この数日間、お前との旅で
色んな経験が出来た。本当に楽しかったぞ!
ホットソープ ⇐ ⇒フェルマータ城
ここは、所謂Y字路。
左に行けばシルドラ、右に行けばレブロンの目的地。
お互い、皆と過ごした思い出が走馬灯のように
彼の脳裏に蘇る。ただ、これは一時的な
別れ。またフランバージュとしての計画が終われば
リンクリング、そしてまた一緒に
冒険してくれる約束を交わした。
だけど、何だろう。
ふと別れが目前になると、
毎日過ごしたレブロンの笑顔が当分
見れなくなるのは寂しいと少し目を潤ませながらも
頬を優しくビンタして、自分に言い聞かす。
(お別れの時は泣かないって決めたんだ!
ここは笑顔で送り届けなくちゃっ。)
と、その前に……
****
ここは、巫女族が管理する森 "ヴァンウッド"。
上空でエアロブルー飛行場、
伝説の操縦士フラジーがフリューウィングと
共に墜落してしまい、出火する中、彼は強く身体を
強打してしまい、身体中のあちらこちらに
痣が付いてしまう。
療養させようと森の長、ルミシーと
ブルーノがシャノンの宿に運び、現在治療中。
【シャノン】
ルミシー様、これをフラジーさんの
背中に貼ってくれませんか?
あっ。確かこの湿布って
この森で採れたミンティフラワーの花びらを
調合して完成したお薬ですよねっ。
正解です。偉いですわ。
旅人の宿として、森の非常事態に備えて
様々な薬剤が常備されているから
ここは常に安全よ。
あれ?
今、声が聞こえたような……
えーっと、えっと……どうしよう。
落ち着いて下さい。
彼は多分、悪い夢に魘されているだけよ。
大丈夫。ルミシー様の迅速な対応のお陰で
少し安静にしていれば完治出来ます。
よく、頑張りましたね。
あ、あれっ!?
ブルーノさんが居ませんよー。
また何処かに行っちゃったんですか?
彼なら急用を思い出したって
ホットソープに向かいましたよ。
ブルーノさんも里を襲撃されてから
忙しないですね……。
だって!!
ブルーノさん、父親と一緒に少しずつ
発展を遂げていたシノヴァシアをヴァル様に
襲撃されて苦しんでるんですよっ。
こらっ。また襲撃犯に向かって
"様" って。
駄目じゃない!? アレドシア様に
怒られますよ!!
あの時は、横にブロスさんが居たから
迂闊な事言えなかったけど、
本当はヴァル様もなんか理由があって
やったんじゃないのか……って
言ってたんですっ!!!
私も、
長として
理由を聞く権利ありますよねっ。
彼の穏便な性格が
この事態をどう解決させるかが鍵ですね。
確か言ってたような気がするー。
どんな方なんだろう? 会ってみたいなー。
父の優しい性格が
忍者の里 "シノヴァシア" を
少しずつ住み良いモノにしようと、様々な人の
出会い、協力を経て助け合って来た。
ただ、里を襲撃された際、命を落としてしまう。
そしてそんな中、
息子のブルーノは親の教えを貫く為に、この一件を
穏便に解決する事を信念に掲げ、ティブルエイドを発ち
クロスウッドに来た所、港町ピュアブルーで
フロストと共に誰かが話している姿を確認。
何とか話し掛けようと、
その次の日に地元に戻る豪華客船の甲板で
まず自分の身元をあまり話さないようにと
子供の振りをして接触したのが始まり――。
そう、ヴァルを改心させる事が出来るのは
素直な心を持つ彼しか居ないと気付いたからだ。
****
そして、ここはティブルエイドから
遠く離れた遥か上空――。
通常の航空機より、遥かに凌駕する
耐久性、火力を誇り、生半可な攻撃も屁でも無い
空中戦艦 "ハデスバディード" 。
艦体の至る所に高い戦闘力を誇る武器が搭載されてあり
稼働には艦内のエンジン部に作られたオレンジ色に輝く
ソウルコアが利用されている。
その中で一番高価な家具で統一されて
天井にはシャンデリアが飾られている
ゴージャスな部屋、"迎賓室"。
そこには、如何にもヤバそうなメンバーが勢揃いしていた。
【????】
ヴァーロン様、其方の指示通り
当機は順調にプリズジェイドへ
航路通り進んでおります。
【ヴァーロン】
あぁ。どうやら順調みたいだな!!
このヴァーロンに出来ない事など
何1つ無い。このハデスバディードを
手に入れたのは何処のどいつだ?
その名を言ってみろ。
フフフ。お前等を
集結させて正解だったな……。よし。
もう一回問うぞ。俺等が狙うブツは何だ!?
ヴァーロン様、大変です!!
資材の運搬中に重傷を負った奴が……
【????】
謝っても無駄だ。重傷を負った奴など
使い物にならん。後にヴァーロン様が
直々に手を下すだろうな……。
そして、お前もだ。話の腰を
折るとは良い度胸じゃないか!!
気安く俺の名を呼ぶな!!!
反吐が出る。今楽にしてやるぞ!!!
彼の剛腕で下っ端の頭を
思い切り ガシッ と鷲掴みし……
【????】
ヴァーロン様、今扉開けました。
其処の方、真下の海には沢山の
バッドシャークが存在する。
喰われたら一溜まりもないだろう……。
ふん。良い気味だ。
ふん!!!
馬鹿は馬鹿らしく
サメに食われて死んで行くが良い。
何にも成す術もないまま、
下っ端は失態を犯してしまい、
そのまま艦体から投げ捨てられ下の海へ墜落。
そしてバッドシャークの餌食となり、死んで行く……。
誰も、ヴァーロンに逆らう事は出来ない。
そう、彼はハデスバディードを指揮する
首領――。
見事で御座います。
それでは、改めて私達が狙っている
モノをおさらい致しましょう。如何ですか?
ああ。俺こそ話を
逸らしてしまったな。じゃあ、イマリと
レーヴィン。お前等に任せたぞ!
【レーヴィン】
おう。俺等が狙っているのは
プリズジェイドで捕虜されている
ロッド一族が完成させた地図。
何故か、ヴァーロン様が目指している
"あの大陸" の所在地まで
記載されている。どうやって
行ったかは知らんけど……
【イマリ】
左様。ロッド一族はそれ故
息子さんがおられると先程情報を提供して
貰いました。その御方の事はちょっと
触れられません。ご許しを……
ソファから立ち上がり、マントを翻し
迎賓室の扉を開け、退出するヴァーロン。
通路を歩き、下へ行く階段付近で立ち止まり
彼が首からぶら下げているブローチの中身
"彼と写る1枚の写真" を見始める。
もう、アイツは覚えてない筈だ。
まだ幼少期だったもんな。元気にしてるか?
****
場所は戻り、Y字路――。
1人1人、握手を交わしていたレブロン。
ほんの少しでも一緒に過ごした日々は思い出。
少ない期間だけど、しっかりと
アロイス達、そしてカインドフォースの皆とも
感謝の意を込めて、笑顔でハイタッチも交わした。
そしてもちろん最後は
この物語の主人公、シルドラ=ロッド。
シルドラ、俺と
離れ離れになるのは寂しいか?
大丈夫だ。正直に言ってみろ。
正直に言うと、やっぱ寂しいです。
別れは出来ればしたくない……
でも、レブロンさんにも
フランバージュって言ったチームがあって
そこで僕と同じように、目標を果たす
任務があるんですよねっ。
だったら、夢を叶える同士として
応援しないといけませんよね!!
(だ、駄目だ。お、俺がヴァルを
処刑するなんて言えない……)
あ。心配かけて済まないな。
大丈夫だ。さてと、お別れの時間だな!!
でも、お別れする前にレブロンさんの
笑顔が見れて良かったです!!
ミルフの提案で
イノボーを狩って朝食を摂っている最中に
出会った時から、今までの出来事、そのどれもが
かけがえのない宝物。
一時的な別れだけど、記憶は決して色褪せる事が無い。
笑った時もあった。怒られた時もあった。
しかし、それは彼が立派な冒険者として
成長している証拠。
レブロンと抱擁し、
自分の更なる夢を宣言するシルドラ――。
レブロンさん、僕……もっと
皆に頼られる存在になりたいですっ!!!
お、デカく出たな。
良いぞ。夢って言うのは本人の努力次第だ。
俺がシルドラの光を照らしてやる!!!
ありがとうございますっ。
ビューウェーブでレブロンさんの帰り
待ってますねー。その時はまた笑顔で!!!
手を振りながら笑顔で別れ、フェルマータ城へと足を運ぶ。
こうして、シルドラ達との冒険は
一時終了し、彼はフランバージュの目的を果たしに
アレドシア様の用心棒として……
シルドラ。不思議な奴だったな。
ずっと抱え込んでいたモノなんか
何処かに消えた感じがする。
アイツのお陰か……。
仕方ねぇ。この俺が、
フランバージュの計画を
全て打ち砕いてやるぜ!!!
シルドラの為にな!!!まずはアレドシア様に直談判しないと。
シルドラ達と触れ合った事で、
大切なモノに気付かされたレブロン。
もし会っていなかったらそんな事、微塵たりとも
思っていなかっただろう。
"ヴァルを処刑するのは間違ってる"
アレドシア様の言う事は絶対服従――。
しかし、彼は心優しい熱き男。身体全体から滲み出ている
炎の気配は決して消える事は無い。
全てを終わらし、シルドラ達と
また笑顔で再会する為に今、レブロンが
フランバージュの計画阻止を目指し立ち上がる!!!
そして次回、
いよいよホットソープ編突入。
シルドラ、新しい衣装にチェンジします。
第30話へ続く――。
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