第059話:アレドシアに迫る処罰!ブレイアとライアン本格始動!!
文字数 5,300文字
前話の続き。
牢獄島、中央監視塔――。
周辺には体格の良い警備員により
そう易々と塔内への侵入は困難となっている。
現在、空中戦艦 "ハデスバディード" の耐熱シールドを
打破し攻撃する事に成功した喜びが上がっていた。
やったぜ!!!
あのドデカい艦隊のシールドを
打ち破るなんてお前、凄いじゃないか!!!
何だ、お前!?
やけにクールだな。
もっと喜んでも良いと思うぞ!
そんな事で浮かれるな。
艦隊の腹が大破しただけだ。
あの戦艦はソウルコアと言った動力源で
滞空維持出来ている。あれをブチ壊さない
限り完全撃破したとは言えん。
てめぇが所属する機関、
ラスター大佐からの情報だ。
本当に何も聞かされて無いんだな。
あの筋肉バカ!!何で私に報告しないんだ!?
次会った際にアイツの腹筋蹴ってやる!!
おっと、失敬。
私情を挟んだな。ってか
お前とラスターが繋がっていたとは驚きだ。
ああ。奴のお陰で今の牢獄島がある。
この大陸の基盤を固めてくれた恩が
あってな。色々手を回してくれる
少ない旧友の1人だ。
それに、クルディーと
プリメラの処刑の指示を促したのも彼。
大佐の機嫌を損ね、機関が隠している区域に
侵入し地図に記した罰。もうラスターの
手からは逃げられねぇ。
ブレイア獄長、お疲れ様です。
彼は現在シルヴィとカリエラと共に
牢獄越しに会話を交わしてる。
健康面は良好。情緒も乱していません。
報告は以上だ。
もし良かったらこれ食ってくれ。
アイツがホットソープで買って来てくれた
物でな。凄く美味しいんだぜ。
報告御苦労。
どうせ甘いモノだからシルヴィの土産だろ?
後で頂く。デスクに置いておけ。
どうした?眼が明後日の方を向いてるな。
悩みがあるなら包み隠さず言ってみろ。
ああ。シルドラと
一度でも接した相手なら必須だ。
約1時間休憩有の取調べ。その様子は
ラスター大佐にも共有する予定。今回は
特に処刑を免れない両親の息子が
絡んでるからな。迂闊な一言でも言ったら
彼が牢獄島に出向く事になる。
出来るのか?
もし下手でもしたら解雇だ。
牢獄島を立ち去り、ジェライドは左遷。
獄長の俺でも保護し切れなくなるぞ。
そこからは管轄が違うからな。
大丈夫だ。ヴェスターは
自分の罪と向き合ってる。それに……
アイツはシルドラと最高の仲だそうだ。
リンクリングの交友記録見たなら
分かるだろ?
…………。
信用し合ってるからこそ
成し遂げた証拠か。要するに絆適合者。
よし、ジェライド!
お前にヴェスターの一件を託そう。
私からの権限ならブレイアも何も言わない。
ああ。ラスター直属の部下だ。
機関に喧嘩を売る程、馬鹿ではないからな。
****
東の収容施設、2階。
此処は人を殺めた犯罪者を収容する場所。
まず、中央監視塔と同じように
出入口には、1週間に1日、牢獄島の筋肉番長 "バンディル" により
鍛え上げられた腕力を誇る警備員が多数存在する。
そのせいで、過去にこの男に立ちはだかっても
返り討ちを喰らい、牢獄へと逆戻りになる為
この大陸を後にした
脱獄者は過去に誰も居ない――。
カリエラは
ヴェスターが見える鉄製のテーブルで書き物をしている中
シルヴィは自分が大好きなお菓子の話をしながら
ヴェスターと一緒に盛り上がっていた。
おうよ。
ヴィスクナッツのチョコだろ?
お前にもあの美味しさが分かるんだな。
もちろんだよっ!
だって、ハービーグラウンド製の
ミルクを使ってチョコを作ってるんだもん!
すぐに口の中で溶けちゃうから数秒で
食べ終わっちゃうんだけど……
あの
蕩ける美味しさ、ボクの
虜なんだ。
お取り寄せとかやってないかな?
オイっ!!!
横でちょこまかとうるせぇんだよ!!!
おめぇ、看守と何仲良くやってるんだ?
こいつ等、全員お前の敵だぞ。
じゃあ、君は自分が犯した罪と
きちんと向き合ってるの?
うるせぇよ!!!何でこの俺がおめぇのような年下に
物言いされてるのかが気に食わねぇんだよ。
只の悪口じゃん。
そんな大きな声を張り詰めても
何も響かない。更生し切れてない証拠。
それにヴェスターには
帰りを待ってくれている人がいる。
その為に自分から出向して来たんだよ。
そんな彼に怒る資格なんてあると思う?
あっ、そうだ。
確かバンディルさん、今糖分を
控えてるって言ってたから、この前
購入したお菓子がもったいないって
言ってたような気がする!!
はぁ。彼は
中央監視塔の地下よ。
私が見とくから早く行って来な。
****
場所は戻り、中央監視塔。
ジェライド官長が
その場を立ち去ってから話は打って変わり
現在ティブルエイドで起きている
フランバージュの騒動をライアンとブレイアの
2人で極秘に話していた。
しかし、参ったな。
シルドラの前に立ちはだかっている壁が
アレドシアだ。彼に勝算なんてあるのか?
正直無理な話だ。
ファーラックの名を持つ家系の息子な故
全て彼に受け継がれている。あの大陸の
財政、富、名誉も奴の手の平で
動かされている状態。
何だ? 同じ髪型で
口調も似てるから嫉妬してるのか?
ふん。何処が類似してるんだか……
立場的に俺の方が上だ。
獄長としての座は
誰にも譲らないと言う事か。立派だな。
ただ、ティブルエイドの状況は変わらない。
フランバージュはあれやこれやと
手を尽くし、もうすぐ計画を
開始するそうだ。
ああ。ただ現在奴等は内部分裂していてな
その中の2人と接触、そして
情報共有させて貰った。
名前はロギュアとグラッツだ。
メンバーの1人がアレドシア提案の喧嘩に
強制的に参加させられ、最終的には
城真下の海に落下してしまい
行方知らずでいる!!
ブレイア様、これは早急に
処罰を与えないといけません。公開が
頭に付いた処刑だ。一族の息子だろうが
犯罪は犯罪。ご指示をお願いする!!
潜行航路変更。
クルディーとプリメラ、
2人の罪人を "とある場所" に護送中だった。
しかし、以前ライアンが
ティブルエイドを訪問した際に遭遇した
フランバージュのメンバー "ロギュア" "グラッツ" との
情報共有により、アレドシアは "黒" と判断されてしまい
機関の女と獄長ブレイアに
目を付けられることになってしまった……。
今、牢獄島が
ティブルエイドへと航海再開――。
****
少し前のフェルマータ城、海食崖前。
狐族のランザー達と
無事に合流を果たす事が出来たのはグラッツ。
そう、彼はグレントを一時的に預かっている
フレンドモンスターの牧場の管理主である事が判明。
現在は聴力を巧みに使って
里の長であるブルーノを襲撃しようと目論んでいた
スチュキートの親玉を倒す事に成功。
ただ、彼等がシノヴァシアに向かう前
こんな事を話していた――。
ロギュア、前回
ブルーノ様にゼルガスの保護を
頼まれたあの空き地の名称だ。昔はあそこに
狼族が住んでいた里があった。だよな?
はい。
其処で
私は当時、長だった狼族である
ヴァル様のお世話を務めておりました。
未だレブロン様に仕える前の話ですけど……
それはさっきグラッツから聞いた。
そこで1つ聞いて欲しい。
お前の
主レブロンが
メンバーの1人であるブロスによって
海に落下させられた。彼はまだこの広い海の
何処かで波に攫われてる筈だ。
俺は彼を救出する為に
死に物狂いでフェルマータ城周辺を
捜索した。だけど、時間が経った故
海も時化ていたから泳ぐ事すら困難になり
断念せざるを得ない状況に
なった事、許してくれ……
れ、レブロン様……あの御方は私の欠点を指摘してくれた
心優しい性格の持ち主。そんな彼が
何で崖から落とされないと
いけないんですか?
…………。
アレドシア様とブロス。
性格難なあの御二方の仕業ですよね。
ほら、レブロンって
肉体も分厚ければ、心も穏やかだろ?
もちろんです。
私が1番、彼の性格を熟知しております。
本当に正義と言う言葉が似合う御方。
鍛え上げられた肉体。拳を交えないで
場を和ます存在。彼には
長所しかありません。
グレント、アイツを
助け出せるのはお前しかいない。
フレンドモンスターの管理者として
俺が許そう。その翼で高く舞い上がり
必ず見つけ出して来るんだ。良いな?
良いか!?此処はティブルエイドで
北北東に位置してな、大陸に沿って
南下している蒼潮って言う海流があるんだ。
風向きや波高からして、彼の身体は
その潮に運ばれ自ずとも
南の海岸に辿り着く筈だ。
ふふ。ランザーが
いつも釣りから帰宅する際に
同じ魚しか釣れない、って言ってるのにも
今彼が言った潮が関係あるのにな。
私、そのカラクリ
お姉ちゃんから聞いて、釣りをしに
海に行ったら、滅多に見ない
可愛い海水魚さんに出会えたんだー。
ぷんっ!!
2人してズルいじゃんかー。
お兄ちゃんにも教えろよー!!!
ロギュアさん、でしたよね?
取り敢えずクラムビーチに向かってみたいと
思います。知識の提供に感謝です。
確信を持って
レブロンの体は潮に運ばれ
ティブルエイドで南に点在する海岸、クラムビーチに
漂着している、とグレントは大きく翼を
羽ばたかせ上空へ飛び立ち、主の無事を
祈りながら向かい始める――。
此処で、時間軸の説明させて貰います。
本筋は
シルドラ達が滞在しているシノヴァシア組。
スチュキート退治真っ最中の出来事です。
➀ 狐族のランザー達は
フェルマータ城前の海食崖でとある邂逅を果たす。
② ロギュアの知識提供により
レブロンの大体の居場所が判明。一目散に
彼の無事を確認する為、一緒に付き添っていた
グレントが大空へと羽ばたき、クラムビーチへと向かう。
③ ゴッシュがこの時期にしか
お目に掛かれないラメックソルトを見つけた際に
反対側の岩場に倒れ込んでいたレブロンを救出。(58話参照)
しかし、③の事に関して
全く知らずに約5分間飛び続け
クラムビーチに辿り着く。
****
ゴッシュが立ち去った後、
大体23時頃のクラムビーチ。
シルドラがヴァールブルグ海賊団の船長ゼルガスと
出会ったポイントに着地し、東西に広がる
砂浜をくまなく捜索し始める。
ただ、しかし其処には彼の姿が無く――
い、居ません……。レブロン様、何処におられるんですか?
私、グレントがお迎えに上がりましたよ。
…………。
もしかして、ロギュアさんの読みが
外れてたんでしょうか?
その時、目にしたのは
砂浜に付いていた真新しい足跡。
ん? そう言えば……
この足跡は人間が歩く際に身に着ける
靴でしか付けられません。そして
反対側の岩場までその痕跡が
今も残っていますね。
と言う事は
先程までこの海岸にレブロン様が
居た証拠。そんな遠い場所から来た御方じゃ
ありません。この周辺にご自宅を
所持している御方……
あっ。もしかしたら
ゴッシュさんの所に
お邪魔しているかもしれません……。
一縷の望みは
ロックドクリフの崖の上に自宅をかまえる
ゴッシュに救出されて無事で居る事。
アクアヴェークで
一緒にこの目で見た夜空と燦然たる星々が脳裏に蘇り
どんな時も真摯になって接してくれたレブロンと
これからも一匹のフレンドモンスターとして
一緒に居たいと、改めて実感させられた瞬間だった。
急ぎ早になり、
ロックドクリフの展望台に続く階段を駆け上り
道なりに進む事5分……
ゴッシュの自宅に勢いよく飛び込んだ。
うぉっと!!!グレントか。危うくグラスを
落とす所だった。どうしたんだ?
ああ。遂先程
クラムビーチの岩場で倒れていたのを
助けて、庭で彼の身体を乾かしてる最中だ。
平然にゴッシュと接していたけれど
今レブロンの精神は崩壊寸前。
アレドシアには
フランバージュの一員として見放され
ブロスには素手で首を掴まれ、海食崖から落下させられる。
彼が貫いて来たモノが2人のメンバーに
悉く崩壊させられてしまい
彼には行く場所が無くなってしまった。
このままだと、シルドラやミルフに合わせる顔が無い。
今、試される
レブロンの心の試練――。
また再び笑顔で会える日が来るのか?
第060話へ続く。
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