第079話:もう1つの過去!?シルドラとレブロンの絆・友情群青劇!!(前編)
文字数 6,693文字
今から数か月前
此処は "とある建築計画" が予定されている工事現場。
最新アミューズメントパーク 建設予定地
管理:ティブルエイド観光協会一同
ふぅ。此処に来るまで割と時間掛かったな。
もっと近場にすれば良かったぜ。
こんな場所に
連れて来た理由は何だ?
ギンジ殺しの内祝いでもやってくれるのか?
アレドシア様の
機嫌を損ねるような事をしてみろ。
あの里のように拳の鉄槌が下ると思え。
…………。
さっき言っただろ。オレは
テメェ等を歓迎すると。聞こえなかったか?
分相応な地位の方しか面会を
承らない私の父上の事を知ってるとは。
お前、よほどの大物だな。
まぁー、否定はしないさ。
この世は自由とお金があれば何でも出来る。
オレもテメェの親父と似た所があるんだなあ。
絶対的な権限を下せるとか、かな。
どんなに悪事を働いても、水面下で全部
帳消しにしてくれてるんだぜ。
ああ。父上は私に対して甘かったからな。
欲しい物は全て手に入れたつもりだ。
ただ、これからは違うだろ。
危険な狼族を捕虜する事に成功したんだ。
ティブルエイドにとって得な事をした。
株が上がってくれないと困るぞ。
ヴァル以外の狼は死刑。
もうこの世に居ない。後はテメェを
処刑すればオレも亡くなったシルギムに
顔立てが出来るんだけどさあ……
ファーラック一族は
裏の有権者だ。表沙汰になれば
一斉に消えた狼共の行方に誰もが
違和感を感じ、真っ先に疑われるのは私。
お
生憎様、未だ世間一般では
狼を処した奴の称号として
英雄と言われてる位だ。
そう言う事だ。
悪いな。私も父上譲りで慎重派なんだ。
邂逅を果たしてるなら熟知してる筈だろ?
ははっ。別に急かしてるつもりはねえさ。
どちらかと言えば、オレとアイツは
クルディーとプリメラの関係者を
片っ端から探しているだけだ。
ははーん。その様子だと
テメェもその2人にしてやられたんだな。
おい、ヴェスター。
お前の気持ちは分かるが、今は堪えろ。
安心しろ。オレは狼処刑の賛成派だ。
影ながらサポートしてやる。
何か始めるんだろ?
ああ。処刑はテメェの親父と同意見。
親子揃って恨む対象が同じ。
まさにナイスじゃん!!
勿論、捜索方法は任せる。
テメェの計画と同時進行で構わない。
必要な物資があれば随時支給をしよう。
そして、シノヴァシア襲撃時より
一足前に上空にて里の周辺やティブルエイドの様子を
翼を羽撃かせながら見回りを行っていた為、
長であるヴァルの元を離れた事により
現状況を全く知らなかったグレントは
深い反省をしながら、工事現場の様子を伺っていた。
ヴァル様!!!
このような事態に陥っていたとは
私一生の不覚です。只今救出させて貰います。
その時、
アグニブの相方が
撃ち込んだスナイパーライフルの1発の銃弾が
グレントの翼部を見事に射抜き滞空不能。
そのまま、何も出来ずに
急降下して行ってしまい――
そのまま
フレンドモンスターの牧場へと、
身体毎地面に叩きつけられて気絶してしまう。
ちょうど管理者である
グラッツの元に支給された衣装の着心地を
肌で実感していた最中の出来事だった。
彼は急ぎ足で駆け付け、様態を
1つ残らず確認し出す。
珍しいタイプの気絶方法だな。
眼が開いたままだ……。
取り敢えず処置だけは施さないとな。
待ってろ。必ず救ってやる!
(翼の羽根に弾丸の痕。
焼け焦げた時に発する独特な匂い。
掠った程度で命に別状が無いとなると……)
(間違いない。誰かが遠距離に適応した
狙撃銃で狙いを付けてたんだ。)
夏季のオープンに向けて
着々と施工を行っているマリーナブルー、現工事現場。
そして、グラッツが管理人を務めている
フレンドモンスターの牧場。
その2つの地点を
容易に見渡せる箇所からの狙撃を
遂行させたアグニブもまた不敵な笑みを零しつつも
照準を定めるスコープを取り外し
ジッパー式のプラスチック製の
ライフルケースにしまい出す。
よし!!!これで奴はもう飛べなくなったぜ。
アグニブの会話を盗み聞きとは、
良い根性してるじゃないか。
ふん。あんな高さから墜落したんだ。
生死の境を大いに彷徨えば良い。
この一件が運命を左右する
フレンドモンスターの牧場にお世話になる迄の出来事。
直々にレブロンが此処を訪れ
お供として常日頃、側で面倒を見てくれる事になる
彼と出逢いを果たした "その日" まで――。
クルディーとプリメラが
グレントに譲ったネックレスを持ってる事も知らずに。
****
現代、フェルマータ城
半壊と化した2階の食堂――。
崩落した床下から
見える1階の惨状を直視してしまい
もしかしたらレブロンも巻き込まれてしまった。のかと
冷や汗を掻きながらも、懸命に彼の行方を
くまなく捜索していた。
何処に居るんですか、レブロンさん!?
せっかく再会を果たしたのに!!
『やっぱり、
シルドラ達とは縒りを戻せねぇ!!!
感情に流される奴とは一緒に
居たくないだろ。』(69話参照)
そんな訳無いじゃないですか!!!
喜怒哀楽はどんな瞬間でも大切なのに
悪いように考えちゃダメなんですよ!!!
きっと、会ってない間に
辛い事、悩み事も全部
胸に抱え込んでしまったんですね。
今、僕に出来る事は
レブロンさんの心に寄り添ってあげる事。
いつも助けられて
慰め合って、笑い合った事も全部
嘘だと言うんですか?
その時、この廊下の奥の通路から
行ける2階の回廊から巨大な爆発音がした。
先に行かせないアレドシアの徹底的な妨害が
彼の進行を邪魔して行く。
ただ、その先には
レブロンが居るかもしれない。
此処にいる理由は彼は勿論だけど、アレドシアの
計画阻止と心の救出は必要条件。今までシルドラは
どんな困難な状況も勇気を
振り絞って乗り越えて来た。
こんな所で泣き言なんか言ってられない、と
己を鼓舞し、先の通路へ足を運び出す。
そして、2階の回廊――。
その箇所を保護している
城壁石積が爆破されてしまい危険な状態。
強いて言うなら、先程と同じ1階が剝き出し状態となり
この城のバランスも同時に失いかけようとしていた。
ふぅ。少しずつ
城のバランスが崩れ始めて来ている。
次爆破されたら、僕も海に真っ逆さま……
ダメだダメだ!!
余計な事を考えるな。今は
レブロンさんの元に早急に向かわないと!!
ってか、もう夕暮れだったんですね。
時間の流れが早いな……。
先程と同様、
この箇所も1階が見える程に
爆破の酷い痕跡が残ってしまい、そこから
下を覗き込もうとするとそこには
アレドシアの父上シルギムが
特に拘って作り上げた迎賓室に大量の
瓦礫が砂埃と共に散乱していた――。
えっと、柱時計や暖炉。
ソファや観葉植物の植木鉢、それに絵画。
もしかしたら客を迎え入れる
迎賓室とか、かな……。
そして、アレドシアの手により刺された
腹部に激しい痛みを堪えながら生死を彷徨っている――
お前の仲間も居るぞ。腹部に
深く刺したから、助かるか微妙だけどな。
ああ。未だ辛うじて脈拍はある。
只、放って置くと死ぬ確率は80%だ。
大抵、
以って後5時間の命。
同時刻に1人と1匹の力が尽き果てる寸法。
やはり私の計画に狂いは無いな。
何でそこまで
性懲りも無しに
レブロンさんに付き纏うんですか?
あっ、えっと……
棘があるような言い方したなら謝ります。
だけど、チームなんですよね。
信頼を得て活動を為されているのでは?
友情や、絆、信頼なんかただの空想だ!!!
私の指示通りに従えばこんな事態に
発展までしなかった。
そう、これはもう1つの過去。
彼からの "一身上の都合" による
申し出しにより、他の皆よりチームに
加入する事が遅くなったレブロン。
初日から、シルドラの元に顔を出した日までの記録。
そこにはヴェスターが他メンバーに迷惑を
掛け過ぎて辞めざるを得ない状況になった
過去も含まれていた。
****
時は遡り2月中旬――。
フェルマータ城の正門前。
今日からこのチームに所属するレブロンだ。
宜しく頼むぞ。
ちゃんと支給した服装を着用して来てるな。
このチームのドレスコードのような物だ。
それ以外の服での活動は禁ずる。
覚えて置いて欲しい。
よし、中へ入れ。
苦楽を共にする仲間を紹介しよう。
玄関の間で待機させている。
チームの一員としてのレブロン。
この時は未だ無邪気にメンバーと共に
色んな交流を果たし、どんな活動にも貢献出来るようにと
自分で果たしたい目標を胸にしまい込んでいた。
玄関の間――。
彼より先に加入を
果たした顔ぶれが楽しそうな会話をしながら
新人への歓迎態勢を整えている様子。
会話を一旦中断しろ。
余計な話をするなら後で時間を与える。
その時に大いに語れば良い。
名はレブロン。
お前等と共に任務を果たせる事に
喜びを感じてる。まだ不束な点が多いけど
このチームに早く馴染む事を約束する。
ああ。1か月前に
所属したから俺達の方が先輩だ。
分からない事があれば大いに聞いてくれ。
【グラッツ】
ちなみに俺の名前はグラッツ。
一通りメンバーの自己紹介をしよう。
先ずは右隣、名はブロス。
この顔ぶれでは最年少を誇る逸材だ。
【ブロス】
レブロンさん、
ご加入の程おめでとうございます。
苦楽を共にする同士として今後とも
宜しくお願いしますね。
えっ、その口調で最年少なの!?言葉遣いが綺麗過ぎて……
おい、レブロン。
それは表の顔。ちゃんとした裏の顔も……
ロギュア、余計な事を抜かすな。
アレドシア様が見ているぞ。
【ロギュア】
改めて、俺の名前はロギュア。
グラッツと共に実行部隊の1人として
このチームに所属している。
今後とも宜しくな。
そして今度は何と最年長の御方。
元気で活きのあるオジンだ。
※ オジンとは……おじさんを音変化をした言葉。
若々しさが感じられない中年の男性を示す。
良くそんな言葉知っていたのう。
ワイの事だと思うけどな。
【アッジ】
っちゅう事で、名はアッジや。
宜しく頼むで。けったいな口調で堪忍な。
と言う事は、
アレドシア様を含めて計6名。
あれ、事前情報だと確か後1人居たような……
ああ。ヴェスターの事か。
彼なら一足先に任務を受けて貰っている。
終わり次第、レブロンの教育係に
携わって貰う予定だ。
一先ず、全員分の自己紹介は終えたな。
そのまま活動における注意事項を
教えて置くぞ。
1回しか言わないから
メモを取るか、脳裏に叩き付けるかは
自分の好きにしろ。
あっ、確か
家からメモ帳持参したんだけど
あ、あれ!? 何処に置いたっけな……
1つ。私の指示は全て服従する事。
自己判断に置ける咄嗟な行動はご法度だ。
2つ。1人での任務時に誰かと
交流を交わした事も包み隠さずに
報告する事。
そして、3つ目。
計画中に余計な邪念が入り込まないよう
平和的な事は考えない事。絆、友情、
それに、信頼は全て捨てて
全力で取り組むように。
そうか。それなら早速
自分が違反を犯してる事分かってるよな。
お前の右腕に身に付けている時計。
それ、リンクリングだろ?
どういう代物か分かって口語してるのか?
絆を深めるなんて有り得ない。
私が預からせて貰う。良いな?
1つ目。私の指示には絶対服従。
3つ目。余計が邪念が入らないように徹底的。
その2つの違反が早速
加入したばかりのレブロンに襲い掛かり
右手に装着していたリンクリングが
アレドシアの手に渡ってしまう。
今、この時点で
もしかしたら自分は違ったチームに
属してしまったのか、と少しずつ悔やみ始めていた――。
次回、
フランバージュ加入時からの軌跡の全貌後編。
そして、現代ではフェルマータ城で人質に盗られた
レブロンの口から声を掠れさせながらも
本当の想いの丈をシルドラに叫び出す。
この想いはアレドシアも貫く。
第080話(後編)へ続く。
そして、今日9月21日は「
中秋の名月」。
本編では少し重いシチュエーションが続出してるので
今話のおまけとしてちょっとした
コーナーを設けさせて貰いました。
短編スタート。
ここは
忍者の里 "シノヴァシア"。
縁側にススキとお団子を飾り
夜空に浮かぶ満月を縁側に座りながら
鑑賞をしていたのは師範代表マツカゼ。
空気も美味いし、申し分無い瞬間だ。
どちらかと言えば少し肌寒い。
あっ、ここに
お団子があるじゃん!!
もしかしてマツカゼ様が一人で
全部食べようとしてたんですか!?
ズルいよー。ボクに1つ位分けても……
ブラウン、これは供え物なんだ。
今日は「中秋の名月」と申してな
秋の夜空に昇る月に、収穫の感謝を込めて
祈り、来たる来年も豊作であるように
祈願する伝統的な行事なんだ。
あっ、そうなんだね!
この里で収穫できる野菜って
ホントに美味しいもんね。里の土と
井戸水を汲んで、皆が手間暇かけて
作っているからその想いも
味として出てるんだ!!
うむ、良く言った!!!
里の者が朝早く起きて毎日精進してるんだ。
拙者達は瑞々しく美味しい野菜を
味わえてる事に感謝しなければならない。
勿論、コトハが提供したこの団子も
元々は稲穂から出来た米だからな。
でもさ、最近
ハービーグラウンド米も
有名になって来てるんだよね!!
ボク達が作り上げる米もそろそろ
刈取りの時期だから、頑張らないとっ。
こらこら。他の大陸と比べるでない。
米の一粒一粒に真髄を掛けているのは
何処の農家も同じだ。
本気で田んぼや畑と接している者共同士
来年も良い収穫が出来る事を
祈願しないと行けない。
そうだねー。じゃあ
ボクもお団子を食べてお祈りしよっと。
食べないのも
勿体無いからな。
せっかくだし頂くとしよう。
マツカゼは1つ1つの味を
確認しながら食べてるに対し
ブラウンはトントン拍子で食えるサイズだと
次々に口に運んでは、美味しい団子を食べれて
彼の口内には幸せな空間が広がっていた。
ただ、1つとんでもないオチが
ブラウンを襲う事になるとは――。
大丈夫だよー。
ボクのお腹は絶対安心の保証付き。
お腹痛くなった事が無いんだ!!!
流石、
満月型の
腹部をしているだけの事はあるな。
ちがーう!!!!! あっ
ボクの顔アイコンが挿し変わってるじゃん。
雛じゃなくて狸になってるよー!!!
ちょ、ちょっと!!!
お月見の邪魔をしないでよー!!!
あっ、これ絶対作者に
弄ばれてるな……。
読者の皆は風情のあるお月見を
楽しんでくださいね。あはは。
※ お腹をポンっ!と
叩いた際に顔アイコンが狸版ブラウンの台詞に
切り変わると思ってくれれば幸いです。
最後は不発となっております。
決してお団子を貪ってはいけません。
皆さんは良く噛んでお召しになって下さいね。
ー完ー
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