第062話:アジール再登場!vsアレドシア最終決戦前日譚!!(後編)
文字数 7,313文字
マツカゼ、シモン、イムラの3名。
ちなみに彼等はシノヴァシアで誠拳道を
生徒に教えている師範だ。
ふん。俺より年上か。
ただ、立場は全く以って違う。
アレドシアの事を1つでも伏せるなら
妙な真似としてラスターに通告する。
それだけは肝に据えて置け。
前編のあらすじ。
夜の出来事。
親玉スチュキートを倒し
害虫騒動が遂に終息。里の様子を山道を下りて
確認すると、中央広場が酷い有様に。アレドシアが
マツカゼの蔵内から盗み出した血液付きの剣で
対策として設置した松明と灯籠を破壊。
その破片が地面に散乱。
朝起床すると、ずっと気絶し
眠っていたブラウンがようやく目を覚まし
久しぶりに会話をしながら楽しんでいると
アレドシアに対抗できるもう1人の有権者、アジールが現れる。
彼と、ティブルエイドに向けて
牢獄島を動かしている獄長ブレイア。
普通だったら交わる事が無い、2組のタッグが
フランバージュの計画阻止に向けて、
最後の打ち合わせが始まる――。
****
ティブルエイドに向けて
牢獄島の中央監視塔にて
進行方法の様子を島内の様々な箇所に仕掛けられている
監視カメラの映像を見ながら話す2人。
ちゃんとテメェの話は聞いてる。
少し考え事をしていただけだ。
へぇー。お前もそんな顔するんだな。
出来ない部下への悩みか?
ティブルエイド
港町ビューウェーブの町長アジールから
連絡が入った。託を頼まれている。
読み上げていいか?
どうせアレドシアの事だろ。
読む必要は無い。余計な時間は不要だ。
ちょっと待ってくれ!!さっきも言っただろ。奴は有権者なんだ。
シルドラ達は彼に立ち向かおうと
必死でいる。対抗するべく
知恵を貸して頂きたいと。
ああ。それにアジールも
ティブルエイドの有権者らしくてな。
表向きが彼なら、裏が
アレドシア。ファーラック家は獰猛な
性格をしている狼族の里、シノヴァルドが
大陸には不要だと考え、同盟を組んでいた
シノヴァシアと話し合いを設けたらしい。
ただ、そこで一悶着が起きた。
懐かしいな。俺は
アレドシアの権限で狼族全員を有罪執行。
後に死刑になり、里は手付かず。
地図から消え失せたと言う事か。
これは、全て奴が企てた計画なんだ。
未だヴァルは訳あって仕留められてない。
アジールは本気でシルドラ達と
共に真相解明に向かってる。
後にアジールから
試作段階のリンクリング最新システムを使い
此方のモニターに繋げるみたいだ。
何時、何処にいても会話出来る
リモート機能って言ってたな。
成程。一時的に
俺と会話する奴がこのモニターに
映し出される訳か。便利な世の中で何より。
開始時刻を教えてくれ。
それについては、彼から連絡が入る予定だ。
それまで待機だな。
目的は一緒、アレドシアの連行。
有権者には
もう1人の有権者をぶつけるしかない。
同じ大陸に2人いても、方向性がきちんと
見えるモットーを掲げ、町民にどれだけ愛され
信頼を得るかで大いに違う。
ただ、この大陸からしたら本当に狼族が怖いのか?
住民の人達にちゃんと声を聴いたのか?
ヴァルを処刑して事態は治まるのか?
港町ビューウェーブの町長アジールは違う。
ティブルエイドの平和を維持する為にも
一肌脱ごうと始めていた。
****
マツカゼ宅。
留守番を頼まれたブラウン達はと言えば――
次はフラジーさんの番だよ!
大丈夫。シルヴェス君の胸は筋肉だもん。
どんな痛みも耐えてくれるんだー。
ぱんぱんぱーん!!!!
もう1つオマケにぱーんっ!!!
その瞬間、フラジーの問いに
シルヴェスの大胸筋が数回に渡って反応する。
鍛えた人なら分かる、そう胸ピクって言う奴だ。
じゃあ、次は
ミルフさんの弾力がある胸を
ぱんぱーんしない?
だって、格闘家目指してるんでしょ!?
こう見えてボク達ってソフトに
叩いてるから大丈夫だよ!
ぶ、ぶったね!!!
パパにも殴られた事ないのにー!!!
シルドラは男性。
あたいは女性、見ての通りだ。
理解したなら返事をしろ。この馬鹿共。
うわあああああああん!!!
ボクの事嫌いになっても、この作品は
嫌いにならないでね!!!
台詞にパロディが
入ってても全く違和感無いな。
一瞬見逃すかと思った。流石作者だ。
シルドラが居なくても
代わりを見つけて遊んでくれる人達が
こんなに側に沢山居る事に感謝をしながらも
当たり前の日々と光景が其処にはあった。
****
ブルーノ宅。
マツカゼの屋敷の
次に大きく、客間が大体7畳。
日差しが差し込む障子、真ん中に置かれている座卓
そして、師範達とシルドラにブロス、合計5人分の
来客用座椅子に腰を掛けながら
アジールから最新機能付きのリンクリングを
一時的に借り、年配の方にも分かる説明をする事に。
あれ? マツカゼさんの
湯呑みだけ皆さんとは違うんですね。
こう見えて陶芸も趣味の1つでな。
自宅の食器から花瓶まで拙者の手作りだ。
ブルーノの御宅には自慢作を
置かせて貰ってる。
彼はそれで集中力を極めたんだぜ。
轆轤を回す時って気が散っちゃ
失敗するだろ?
こらこら。これから
アジール殿が拙者達に腕時計の用途を
説明してくれるのに別の話をしたら
申し訳ないだろ。
それでは。
先ず
これが今回皆さんが使う
リモート機能が新たに追加された
試作品のリンクリングです。
行き渡ってますか?
僕の元にきちんと届いてます。
見た所、皆さんも大丈夫そうですね。
腕時計と言うのも
かなりの進歩を遂げたと聞いておる。
この代物も従来の物とは違うんだろ?
正解だ。シルドラが
持っているリンクリングは
過去に2回更新が実施されているんだ。
えっ、そうだったんですか!?初めて聞いたんですけど!!!
まあまあ。良くある
微調整や一部の不具合修正を
取り消す為の更新と把握してくれ。
うっ。機械には全く
疎いんだ。
俺に使い熟せるか不安だな……。
そこは大丈夫。
リンクリングは本来登録制なんだけど
シルドラと皆さんの情報を事前に
幾つか登録させて貰いました。
ちょっと!!!アジールさん、概要欄に
ツッコミ役って表示されてるんですけど!!
あの。未だ僕
実ってない所か熟れてもいません。
ほう。このボタンを
2回押せば、拙者の情報が閲覧出来るのか。
誠の傷が左目に有り。
勇ましく、誠拳道を極めた男の中の男。
忍者の里シノヴァシアで師範を務めている。
な、何で!!!マツカゼさんの情報が3行もあって
僕だけ1行なんですか!!!
依怙贔屓過ぎません!?
そう怒るなって。
これはあくまで一時的に登録した仮情報。
牢獄島の獄長に君達の大体のイメージを
伝えたかっただけだ。
それに、シルドラが
所有してるリンクリングは多分今日から
10日間以内に3回目の更新が入る予定。
これは俺が用意した物だからな。
ん? ちなみにこの左に
備えられているボタンは一体?
あ、そっちは
文字が表示されている箇所が
開くようになってるんですよー。そこは
僕が持ってる物と一緒なんですね!
そこが今回改良に
改良を重ねて一新された箇所なんだ。
その文字盤が表示されている上蓋を
通して、遠く離れた場所でも会話が
出来る機能が追加される事になった。
操作方法は簡単。右ボタンを1回押して
喋りたい方を一覧の中から選んで
画面にタッチ。後は話すだけ。
それだったら、俺にも簡単に出来そうだ。
説明が分かりやすくて助かった。
今回は
牢獄島の獄長
ブレイアが居る中央監視塔に繋がるように
事前に登録させて貰った。彼の名前を
見つけたら、タッチするだけで
上蓋越しに顔を映しながら
会話可能になるぞ。
どうせ、アレドシアの事を話すだけだろ。
そんな心配は要らないって。
アジールの右手に装着されている
リンクリングがピッと鳴り、内臓されている
小型スピーカーから圧のある男性の声が
聞こえ始めて来る。
ぶ、ブレイア様。
申し訳御座いません。
皆さんに新機能の用途を教えてまして。
ライアンから聞いた。
俺達が連行するアレドシアの情報提供と
奴を打破する会議。長時間は嫌いだ。
大体15分間で締めるぞ。
良いなら返事をしろ。
リンクリングの
文字盤液晶画面に顔を映せ。
事前に貰った情報と共に完全一致させる。
今から名前を読み上げる。該当したら
大きな声で返事。行くぞ。
ブレイア様、お初にお目に掛かります。
本日は宜しくお願いします。
ああ。
ツッコミ役って表示されてた奴か。
名前とお前の情報が一致しなかった。
一体誰だ?
マツカゼ、シモン、イムラの3名。
ちなみに彼等はシノヴァシアで誠拳道を
生徒に教えている師範達だ。
ふん。俺より年上か。
ただ、立場は全く以って違う。
アレドシアの事を1つでも伏せるなら
妙な真似としてラスターに通告する。
それだけは肝に据えて置け。
****
牢獄島、中央監視塔。
壁に掛かっている大型モニターに
シルドラと師範3名、里長ブルーノ
そしてブロスにアジール、計7名の顔が表示されている。
全員に緊張が走る中、獄長との会議が始まる――。
1つ目の問い。
この中で、アレドシアと直に
対面した奴は居るか?
ここに居る者達は全員
彼と必ずと言って衝突している。
昨日もシノヴァシアを襲撃されたばかりだ。
ぼ、僕は彼の口車に乗せられ
同じメンバーのレブロンを
フェルマータ城の海食崖から突き落とした。
そして、フランバージュの一員として
他の皆にも沢山迷惑を掛けた。
シルドラ、敵に対して
"さん" は不要。
何だ。脅迫されてても彼の
同情を買うと言うのか?
でも、何故そこまで
執拗にお前を狙うんだ?
心当たりとか無いのか?
僕の両親が処刑される
ヴァルさんに託したネックレスが
多分この1件に関わってるからだと思います。
ふん。テメェは察する能力も無いのか。
シルドラ、画面に映せ。
獄長のブレイアが
居る中央監視塔のモニターに
大きく表示させようと、上着のポケットに
常に入れているネックレスを
腕時計の液晶画面の枠内に入れる為
ほんの少し離して見せ始める。
ライアンは、と言えば
近くに居る別のスタッフに声を掛け、少し怪しい動きを見せる。
おい。あのネックレスを
もう少し大きく表示する事は出来ないか?
別の画面に切り替え、私だけに見せろ。
ライアン様、お待たせしました。
こちらがご依頼の物です。
うーん。何か文字が表記されてますけど
心当たりが無いですね。
おいおいおい!!!ちょっと待ってくれ。
これは空大陸の共通文字じゃないか。
「良い身分だな、ライアン。
こっちは古代遺跡の宝に興味があっても
フランバージュの計画が最優先だ。
こう言った場を設けてくれた
ラインバック家に感謝だな」
ま、まさか
彼が持っているネックレスは
シルドラを空に導くアイテム。
それと同時に両親が辿った道標。
全て地図製作を完了し、いつか息子にも
巣立って欲しいと言う意味を込めて
ピュアブルーの自宅に隠すように
残したという事か!!!
おい。何勝手にはしゃいでんだ。
まだ会議は終わってないぞ。
ふん。話を
真面に
聞いてないからそうなるんだ。
フェルマータ城内の詳細を聞いてた。
要するに作戦会議。俺なら真正面から
突破して奴の首を討ち取る。
うむ。
城壁に沿って歩くと
裏口がある厨房に辿り着く。其処から
城内へと侵入する事も可だ。
それじゃ駄目なのか?
先入観に
囚われるな。
誰しもがヴァルの処刑を阻止する為に
裏口から入って来る等、彼からしたら
想定内。当たり前過ぎる行動を取って
奴の手に引っ掛かるだけだ。
それに、
例えこの計画が成功しても
アレドシアは必ず城内に仕掛けた
爆弾を作動させて来る。それも予想済みだ。
あくまで俺の推測だけど
ファーラック一族は裏の有権者。
ティブルエイドで過去に起きた事件は
全て彼等の仕業だ。ヴェスターに
関して1つ分かった事があってな。
もちろん覚えてます。
ミルフさんの両親が務めていた
会社の名前、でしたよね?
ヴェスターさんの家地下から湧いた源泉を
何の断りも無しに自分の物にしたと。
そうだ。その件で
ファーラック一族が彼等にあった
源泉所有権を裏で破棄させた事が分かった。
それをオランドに通告し、残りの
資料がフェルマータ城に眠ってる。
証拠隠滅を謀ろうとしてるな。
そ、そんな。
だ、だからヴェスターさんは
そこまで強く発言が出来なかったんですね。
その上、彼を
追い詰めて殺させて置いて
今はそちらでお世話になっていると。
シルドラ、
少しはアレドシアを恨め。
そして早くレブロンを迎えに行ってやれ。
さあ、残り時間5分だ。
最後の打ち合わせを始めるぞ。
最後まで任務を全うする。これが師範3人の責務だ!!!
僕もですよっ!!!
忘れないで下さいね!!!
ブロス君もギャフンと言わせましょう。
ブレイア様、これが皆さんの本気です。
如何ですか?
だったら、
最初から俺を頼れば良いだろ。
アレドシア相手に時間を掛け過ぎだ。
す、すみません。
俺自身も多忙に追われているので……。
ブレイア様とアジールさんって
どう言った関係なんですか?
ああ。彼の肩書は
町長と有権者以外にもあってな。
大陸で無罪と認められ、尚且つ
もう1回更生の余地が認められた犯罪者に
対しカウンセリングをして貰ってる。
こうして、
残り5分となった会議は徹底的に話し込み
いよいよフェルマータ城編、要するに
アレドシアを丸め込む勢いで
幕を開けようとしていた。
****
フェルマータ城。
月の光で照らされているテラスに出て
最上階から見える景色を前にアレドシアは佇んでいた。
狼族の
長ヴァル=バーンズ
そして、計画を邪魔したゼルガスの処刑。
この日をどれだけ待ち侘びた事か。
精神も身体もボロボロ状態で
重い足を引きずって迄、よく此処まで
辿り着いたな。褒めてやる。
で、用件は何だ?
俺の考えは絶対に変わらない!!!お願いだ。考えを改めてくれないか!?
ずっと胸に秘めていた "たった1つの想い" も
シルドラと離れ離れになっても
正義を貫く為に守り抜きたい一心で
彼に向かって吐露するけれど
いよいよ計画は明日。
もう後戻りは出来ないと、
今此処で初めて右目に覆い被せている眼帯とマスクを外し
改めて意思表明をし直す。
ただ、そこには――
おい!!!お前、その右目どうしたんだ?
誰にやられたんだ!?
これは私に対しての
冒涜。
右目を負傷させた奴に復讐するしかない。
はぁ? 誰が教えるかよ!!!もう時間の針は動き出した。
後戻りは出来ないんだ!!!
目に物言わせてやる!!
これでフランバージュの計画は全て……
現在の時刻24:00。
つまり、計画当日。
この日の為に様々な計画を企てて来たアレドシア。
彼の猛追を阻止する為に動き出すシルドラ達。
いよいよ、次回
ティブルエイドを舞台に最終決戦の火蓋が
切って落とされるフェルマータ城編開始。
第063話へ続く。
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