第080話:もう1つの過去!?シルドラとレブロンの絆・友情群青劇!!(後編)
文字数 7,161文字
(前編のあらすじ)
過去
➀狼族の長、ヴァル=バーンズ。
捕虜成功を果たしたアグニブと
アレドシアの父親であるシルギムと邂逅を果たした
昔話を聞いてる現場を目撃してしまった
グレントは無情にも赤い背格好をしている彼に
翼を撃ち抜かれてしまい、落下。
偶然にもフレンドモンスターの牧場に墜落し
ほんの少しの時間だけ、管理者のグラッツにお世話になる事に。
② レブロンが新たなメンバーの1人として
所属される事になったチームで初めての顔合わせ。
絆・友情・信頼全て捨てて任務に取り組むようにと
言われた最中、右手に身に付けていた
リンクリングを取られてしまう。
現在
爆弾の魔の手により
次々と崩壊されていくフェルマータ城。
各所各所で瓦礫や崩落した際に空いた大きな穴を
交わし、2階の回廊に向かうとそこには
深い傷を負うレブロンを人質に取っているアレドシアの姿が。
私はレブロンのリンクリングを外させた。
ヴァルを処刑するのに絆など不要。
余計な感情が入ると何処かで
歯車が狂ってしまうからな。
れ、レブロンさんに
何を求めてるんですか!!
彼は悪事を果たせない性格なんですよ。
処刑なんて殺すのと同じです!!
じゃあ、私が
企てた計画をお前は全て否定するのか!?
もちろんですよ!!!
何で裏に逃げるんですか!?
大陸の皆さんと手を取り合って
狼族に対する対策を施せばこんな事には……
うるせえよ!!!
こっちは両親を殺されてるんだぞ。
恨みは募る程、怒りや憎しみを増すんだ。
その憎悪を全てヴァルにぶつける為に
フランバージュを起ち上げた。
な、何でそんな希望を持った
面するんだ!!
やめろよ。気持ち悪いだろ!?
そして時は再び
遡り
次に明かされるのは任務から帰って来た
ヴェスターがレブロンの教育係を務める事になった
初日から3日後の午前中へと戻る。
****
今の所、目立った活動は無し。
俺の初動任務も相当先だから今のうちに
用意された部屋の掃除でもするか。
よし!! 今日も
いつか出会える友の為に
笑顔を絶やさず元気良く行くぞ!!!
うわっと!!!!ぐ、グラッツさん。お願いですから
扉をノックしてから中に
入って来て下さい!!
敵は背後から獲物を狙う。
その手本をお前で試しただけだ。
もうっ!! 味方なんだから
もっと優しくして下さいよ!!
まあまあ。そんな怒るな。
お前の教育係が任務から帰って来たから
ちょうど紹介しようと思って
部屋までやって来た所だ。
そう言えば、初日に
アレドシア様から言われたな……。
ヴェスター、彼がお前の教育担当だ。
丁寧に教えてやってくれ。
【ヴェスター】
ふん。名はアレドシア様から聞いてるだろ。
二度まで言わせるなよ。
ん、いや。
アレドシア様直々にお前が所有する
リンクリングを没収したと聞いたもんでな。
どう言う面してるか拝みに来たって言う訳。
…………。
口の利き方が悪いな。
それでも俺の教育係なのか?
オレはオレの方法で
お前をこのチームに溶け込ませてやる。
口が悪いのは元々だ。同じ肉体を
持つ者同士仲良くやろうぜ。
ヴェスターの第1印象は微妙。
と言うより口調に棘があるのは一目瞭然。
そう言う性格なのかな、と
今は未だその事に関して触れる事は無かった。
メンバーの1人、教育係として同じ好。
レブロンの心の中で友達と呼べるような関係になりたいと
常に笑顔を絶やさない事を言い聞かせる。
そう言えば、ヴェスター。
アレドシア様から依頼された任務の
報告はしたのか? どんな結果だとしても
包み隠さずに上申しなければならないぞ。
何でお前に言われなくちゃいけないんだ!?
オレの方が先輩だぞ。年上に
言われる筋合いはねぇ!!!
ちっ。
胸糞悪い……。
レブロン、ちょっと付き合え。
お、おい!!!
もしレブロンに怪我なんか負わせたら
分かってるだろうな!?
ん? 同じ
メンツに怪我なんか負わせるか。
ティブルエイドの見回りに行くだけだぞ。
あ、そうだ。
アレドシア様にも言われたんだけど
この大陸の西部って何かあるのか?
聞いた話だとそこにも3人目の有権者が
常住しているともっぱら噂に
なってるみたいだな。
詳しい事は
俺も知らないんだ。
長年この大陸に住んでいるけど
まだ見知らぬ謎も多い島。自然が残した
遺物が残ってると冒険者界隈では
有名な話だからな。
まあ、そんな
夢のような話はまた別の機会だ。
オレ達には成し遂げなければならない
計画がある。その為に結成したチーム。
アレドシア様が切望する
住み易い大陸作りを支援する為に
レブロン、お前にも出番を作ってやる。
ちょっと顔出したい所があるから
少し遠出になるけど……。
****
フェルマータ城から南下して
徒歩40分程度。
展望台から見渡せるクラムビーチの近くの崖上に
自宅を構える兄の元を訪れていた。
ヴェスターか。
お前、今まで何処で何をしてたんだ!?
あれから音沙汰も無かったから
ずっと心配してたんだぞ!!!
済まん。途方に暮れてた最中に
トレーニングしていたら狼族に襲撃された。
ああ。運良くファーラック一族の
アレドシアっちゅう奴に助けられてな。
あ、あのヴァンウッドの森を越えた先にある
古城に住む裏の有権者か!!!
それに、その背格好……。
流石シルギムの息子だな。彼が
好きだった赤色の服を身に、ん?
おう。レブロンって言うんだ。
彼と同じチームで仲良くなりたくてな。
だったら、
絆をもっと深めてあげてくれ。
彼はリンクリングと言う代物を持って……
(ん、何だ。 もしかしてヴェスターも
リンクリングを所有してるのか?)
でも、もう良いのか?
久し振りに兄と再会出来たんだろ。
俺なら構わないで良いから
もっと喜びの時間を堪能したらどうだ?
そんな時間なら後でも作れる。
今はアレドシア様の為に尽力を果たせ。
無茶だけはするなよ。
俺は何時でもお前の味方だからな。
その時はまたレブロンを連れて来てくれ。
今度は美味い飯と共に歓迎しよう。
ヴェスターは
ミルフの両親、特に父であるオランドのせいで
ホットソープに構えていた自宅を立ち退かされて
行く場所を失くした自分の両親が
このロックドクリフを飛び降りた事で
自殺をしてしまった過去がある。
精神的にも
追い詰められていた所に
狼族に襲撃されて、アレドシアに救出されて貰って
彼の脳裏には恩しか無いと、このティブルエイドで
果たそうとしている計画、心を鬼にしてまで
誠心誠意を込めて叶えようとしていた――。
ただ、ゴッシュの証言により
言いかけた「ヴェスターもリンクリングを所有している」事を
示唆された為、心の何処かで疑問点が浮上しつつも
ゴッシュ宅を後にした。
****
クラムビーチ。
浜辺に流れ着いた流木に
腰を下ろしながら、アレドシアの前では
滅多に貰えない有意義な時間を2人で過ごしていた。
ふん。言われなくても分かる。
リンクリングの事だろ?
オレみたいに
過去に罪を犯した奴と繋がるなんて
どうかしてるけど、本当に絆と言う物が
存在するなら可能という文字を見たくてな。
え、えっ!?ヴェスターさんが絆と言う言葉を
口にするなんて、何かあったんですか!?
大丈夫なのか?
咄嗟な判断はご法度だったと思うけど。
それに試したい事があるからな。
その件にアレドシアは不要。牢獄島に
連行される覚悟を以って遂行するつもりだ。
獄長は怖いと聞くぞ。
それでもお前の信念を貫くのか?
ああ!!!
だから、レブロンにお願いだ。
オレがチームを辞める手筈にもなるから
ずっと仲違い状態を続けさせて貰うぞ。
その方が手っ取り早いからな。
成程。アレドシア様から
解雇通告があれば
すんなりと脱退出来る寸法か。
だとしたら、今お前は
偽りの表情をしてると言う事になるな。
この時だけ、特別。
もしかしたら
自分と何処か同じ境遇なのかも、と
レブロンにだけ本心を打ち明ける。彼が
このチームを辞める事、そして成し遂げなければならない
いずれその時が訪れるホットソープで
起きようとしていた "あの出来事"。
絆・友情・信頼を全て捨てて任務に取り組むように。
この2人だけは
絶対に出来ない注文だったのかもしれない。
そして遂にヴェスターは違反を犯し
赤い特攻服を脱ぎ、見えないように
重ね着をしていた服を彼に見せ付ける。
それを言うなら「子供」ですよ!!
本当に風邪引いたらどうするんですか!?
安心しろ。はしゃいでる最中に
身体も火照る筈だ。
ほら、向こうを見て見ろ。
元気な青年が女性の方と戯れてるぞ。
【フラジー】
待ってー!!!!
黄昏、はい次の文字何だ!?
あっ、違うよ!!!
ここは黄昏を別の言い方に変えるの!!!
別の言語でトワイライトって言う
言語があるからそれを答えないと
いけないのにー。
じゃあ、お姉さんが
間違えたから罰ゲームの時間だー。
良いよね?
そのままフラジーは
お姉さんの胸元に思いっ切り飛び付く。
これが、後に「黄昏トワイライト遊び」と呼ばれる事に。
ああ、壮観たる風景。と
自分の腕白な部分を全面に出し
何分間も抱擁タイムを味わっている彼を
目撃してしまった為、とてつもなく微妙な空気が
2人の休憩時間に流れてしまう。
何、あの飛び付き方!?あの有名な〇〇〇ダイブみたいだぞ!!!
ふぅ。
火照る所か
微妙な空気になってしまったな。
あれ、もう着替えたのか?
クラムビーチに来て未だ30分しか
経ってないと思うけど……。
悪りぃな。オレ、ああ言った
不埒な現場を目撃するのが苦手なんだ。
まあ、いい。
面と向かってオレの本心を言えたからな。
一旦フェルマータ城に戻るぞ。
今日を境に、
レブロンとヴェスターは決して素の顔を
アレドシアの目前では明かす事無く、チーム内
そして城内では約束を交わした「仲違いである事」を
悟られる事が無いように貫き通す。
ただ、数日経ったこの日は
いつもと雰囲気が何処か違うようで――
ったく、何度も言わせるなよ!!!
アレドシア様の命令だぞ。
だから、指示された場所に荷物置いたろ!!
何だ。ほんの数ミリでもズレたら
ダメなのかよ!?
そう言う事じゃねぇ!!
もっとテキパキに動けって言ってるんだ!!
うるせぇ!!!
自分のペースで動いたって別に良いだろ。
それとも何か、俺が鈍間だと
言いたいのか!?
黙るのはお前等2人だ。
騒がしいと思ったら只の諍いか。
少しは頭を冷やせ。
申し訳御座いません。
向こうの部屋で反省して来ます。
それに、ヴェスター。
これでレッドカード3枚目だ。
数々の迷惑と多大な違反行為をチームに
掛け続けて来た罰だ。明日の
午前9時59分を以って
お前の脱退を命ずる。
ふん。分かってるようなら
今のうちに部屋の掃除と身支度をしとけ。
惜しい存在を失くしたと思ってる。
只、計画を遂行するのに一丸となる事が要。
自分が引き起こした勝手な判断を
これを機に悔い改める事だな。
遂にこの日が来てしまった、と
顔の表情1つ変える事無く、もしかしたら
心の何処かではホッと一息付いているかもしれないと
クラムビーチでレブロンに言った本心が
今この瞬間で本物となってしまった。
****
翌日。
フェルマータ城正門前。
現実で言う所の卒業式。
学び舎から生徒の旅立ちを見届ける先生と
生徒の立ち位置とほぼ変わらない2人だけど、
このシチュエーションはその真逆。
解雇通告を出されてしまったヴェスターを見送る為に
正門前で待機し続けるレブロン。
ああ。あの赤い特攻服は
きちんと畳んで部屋に置いて来てやったさ。
もうオレには不必要だからな。
いや。アイツが
容易く返却するとは思えないから
無理に奴の自室の扉を抉じ開けて
奪取してやったぜ。
どうせ、今日でお別れなんだ。
最後の礼位どうって事ないだろ。
まあ、お前の
その冗談めいた顔を拝めるのが
見れなくなるのは正直寂しいけどな。
良いか、レブロン。
ここから先は良く聞いてくれ。
重要な話をさせて貰う。
お前と出会う前に
オレがとある任務を受けに行ってたのは
アレドシアから聞いているだろ?
その任務先でオレは
狼族の本当の優しさを知った。
確かに獰猛な存在で、攻撃性に
長けている種族かもしれない。だけど……
この世界に置ける
種族の中で強い心を所有した存在なんだ。
どんなに要らない種族だと罵倒されても
めげずに前だけを見続けている。
今も、あの扉の向こうで
いつの日か誰かが助けに来てくれる事を
望んでいるに違いない。
オレが今までやって来た事は全て
間違いだと気付かされた。
さぁ、お別れの時間だ。
もうそろそろ行かなくちゃな。
おう。数日間だけど
今日まで教育係を務めてくれてありがとな。
こんな情けない性格でも熱を持って
接してくれたのはお前が初めてだ。
良いか!?
これからどんな道に立っても
挫折や悩みって言うのは幾つも待ち受ける。
それをマイナスに考えるんじゃなく
仲間が居ればな、信頼関係は必ず絆を結び
相手を思ってくれる強い心を
分け与えてくれるんだ!!!
この会話を最後に
ヴェスターはフェルマータ城を立ち去り
レブロンとのお別れを果たし、
彼は後に
商売人として喫茶店ヴァーズメルトの
店長シルリアにアンジュソートを売り付け、
彼の心の根底にある「他界した両親」から成し遂げて
名を馳せたホットソープの宿泊施設 "ヴァリングス"の
完全崩落を狙い、彼は準備期間に入ろうとしていた。
癒えぬ過去を全て振り解く為に――。
****
現在。
そして、爆破の影響で
次々に崩落していくフェルマータ城。
腹部を刺されたレブロンを人質に
シルドラは今まで培った勇気を手にし、
アレドシアと対峙していた。
あの2人は
裏で隠れて友情を確かめ合っていた。
私の指示だけ聞いていればいいのに
毎日、諍いを起こしては場を汚す。
非常識にも程があるだろ。
喧嘩する程仲が良い、って言いますもんね。
2人共狼族の皆さんと同じように
強い心を秘めているかもしれません。
だけど、アレドシアさんは
それを全て断ち切ろうとしてるんです。
最愛の家族を失った過去は残念ですけど
今ならまだやり直せますよ。
だって、先程
間違えて入ったアレドシアさんの自室に
レブロンさんの真新しいリンクリングが
置いてありましたし。
ああ。今まで済まなかったな。こんな形で謝罪するのは癪だけど、
後で土下座でも何でもしてやる。はぁ、はぁ……。
別に謝罪なんかしなくて良いんですよ。
レブロンさんはいつものように
最高の笑顔で笑わせてくれれば
良いんですから。
さぁ、アレドシアさんも
ヴァルさんの処刑を解いて皆さんで――
そして、シルドラ達の背後の方で
城内の何処かに仕掛けられた
爆弾が爆発した事で夕方の綺麗な空に
黒煙が昇り詰め、フェルマータ城は次々とバランスを失い始め
その影響は海賊船を取り戻す彼等にも――。
フェルマータ城編残り3話。
いよいよ本当に大詰め。
アレドシアの心の修復度まで後10%。
完全崩壊と言う名の爆破を見つめるアグニブ達の動向。
大型モニターで見守る豪華な顔ぶれ。
見逃せない展開が盛り沢山。
次回、ゼルガスとブラウン達が再びピンチに。
ヴァールブルグ海賊団が所有する海賊船も目と鼻の先。
彼等は無事に乗船し、脱出する事が出来るか?
そして、遂に正門前に牢獄島の獄長ブレイアが登場。
彼は何を語り掛けるのだろうか?
第081話へ続く。
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