第019話:アクアヴェークの邂逅!ヴァールブルグ海賊団vsフランバージュ!!
文字数 4,158文字
【????】
やめるんだ、ブロス……。
もういいだろ。当人は語ろうとしない。
【????】
俺達はアレドシア様の指示通り
シルドラに関与した奴を捕虜するだけだ。
これ以上はよせ!! もうゼルガスは
我等の領域内だ……
…………。
何言ってるんですか?
僕はいつも通りですよ……
なあ、ゼルガスさんよ……。
さぁ、フェルマータ城の地下牢へご案内だ。
逃げたらどうなるか分かってんだろ?
早くも、ゼルガス船長率いる
ヴァールブルグ海賊団、大ピンチ……。
前回のあらすじ
洋風なカフェで起きた珍事件を無事に
解決し、ようやくヴァーズメルトのお勧めである
バージュベリーケーキを食し終え、ホットソープへ
向かう為、エアロブルー飛行場へ
行き始めるシルドラ達。
その頃、行動を共にしているレブロンが用心棒を
務めているチーム "フランバージュ"。
リーダーであるアレドシアを筆頭に
"ヴァル=バーンズ" を処刑する為
何かを始動させようとしていた……。
ここはフェルマータ城――。
奥の部屋で眠っているヴァル=バーンズを
起こそうと何度も頬を叩いているメンバー、アッジ。
アレドシアの旦那っ、
すいやせん。なかなか起きないですぜ!
…………。
アッジ、退いてろ。俺が起こす。
おい、ヴァル……。早く起きたらどうだ?
ふん、やはり起きないな。
何故シノヴァシアを襲撃したのか
聞きたかったけど、まあ後に聞くとしよう。
ヴァルは死刑囚で時間が来るまで
処刑しないですし、レブロンさんは僕達の事
そっちのけでシルドラ達と楽しんでます……
シルドラ……、そいつ誰だ?
それに "達" って言ったな。
他に誰か居るのか。
さっきも言いましたけど、世界地図を
作る事を目標にしている冒険者です。他には
格闘家を夢見る男勝りな性格をしている
ミルフと言った女性もいるそうです……
世界地図?
ふん、大それた事を……。
所詮1人では叶わぬ夢だ。放って置け。
そんな事より、あの2人はどうした?
もう既に戻って来ています。
ロギュアさん、グラッツさん……
アレドシア様にご報告の程お願いします……。
【グラッツ】
分かったぜ。ブロスの兄貴が
気になっていたシルドラの情報だ。
アイツの財布をビューウェーブで盗んだ際、
中に入ってた物を取って来て置いたんだ。
この1枚の写真です。何かの
手掛かりになるかと思って
拝借して来たんですけど……
ふん。どう言う奴かこの目で確かめてやる。
写真見せて見ろ……
グラッツ、彼こそ
港町ビューウェーブでシルドラの財布を
盗んだ張本人。逃げている最中に走りながら
中に入っていた写真をくすんでいたとは知らずに……
ただ、その場から退場しようとした瞬間
同じメンバーであり、アレドシアの用心棒である
レブロンに出くわすとは思っても居なかった為、
誰にも気付かれる事なくずっと
アイコンタクトを送っていた。
しかし、任務の途中にレブロンさんに
檄を飛ばされるなんて想定外だったな。
あの威圧はいつ見ても怖い……
真っ正面に写っているのがシルドラか。
如何にも優しそうな面してるな。
そんな事より、両端に写っている
両親と思われる存在……
いや。その2人に似ている奴を
知っているだけで本人かどうかまでは
断言出来ないだけだ。
もし、それが本人だとしたら
その2人は今何処に居るんですか?
…………。
あまり首を突っ込まない方が身の為だ。
もう生きて帰れないだろう。
大陸 "プリズジェイド"。逃亡成功者0人の難攻不落な監獄だ……
過去にシルドラの両親と出会った、或いは
何処かで聞いた話なのかは定かではないけれど……
アレドシアが知っている今2人の居場所が
監獄大陸 "プリズジェイド" と言った
難攻不落な施設に居る事――。
ただ、1つだけ言える事がある。
彼等は "何か" をして捕虜されてしまった。
それはまだ先のお話。
****
その頃、シルドラ達は
もうすぐ辿り着くエアロブルー飛行場寸前の
ちょっとした道路の休憩スペースにある
ベンチに座り、先程訪れたヴァーズメルトで
店長のシルリアから貰ったドーナツを食べていた。
う、ウマっ!
シルリアが低糖って言ってたけど
十分に美味だぜ。どんなスイーツも
作れるなんてやっぱり凄いな。
そうだな。是非シルリアには
天才の称号 "スイートマジック" を……
それにだ、シルドラ。
"ドーナツの穴" って
別の言い方で言うと
ドーナツホー……
そんな事より、このドーナツ
何処かほんのりとレモンの匂いが……
朗報:常にシルドラ達は元気である。
****
場所は戻り、フェルマータ城――。
彼等の知らない所で暗躍しているアレドシアを
筆頭に構成されているフランバージュ。
フェルマータ城にてヴァルを処刑しようと
計画を少しずつ始動させようと
別の任務に就かせていたメンバーを
集結させていた。
次はロギュアの番だ。
確かお前はアクアヴェークに居たんだよな?
【ロギュア】
はい、アレドシア様。先程商船同士の
衝突事故が起きたみたいですけど
我々の計画には何の支障も
ありません。ただ……
気になる船が1隻ありまして……
近くで耳立てて聞いてたら
さっきグラッツが言ってたシルドラって
言う名を何度も連呼してました。
ふん、シルドラか……。どうやら
この計画に置いて邪魔な存在のようだな。
お前等一先ずここを退散して、
アクアヴェークに向かうぞ。誰か1人
ヴァルの監視を任せたいんだが……
ワイに任せてくれないか?
見張りぐらい初老にだって出来るわい!
****
ここはアクアヴェーク――。
漁業が盛んな港であり、近隣には魚料理がふんだんに
楽しめる鮮魚レストランや、釣り好きにはたまらない
穴場、そしてレブロンがグレンドと過ごした
思い出の砂浜がある……。
いつもは海水の色が綺麗な事で有名だけど
商船……、漁船同士の衝突事故が起きて
その際にエンジンオイルが海中にまで流れてしまい
水中に居る魚達が死に至っている様子。
そんな中、シルドラ達と別れた
ヴァールブルグ海賊団、船長ゼルガスと
フィランを連れて無事に海岸に到着成功。
彼女の友達、家族を
海岸線に沿ってくまなく探していると、
一目に付かない入り江に群れを成して、まるで
誰かの到着を待つかのように海の向こう側を
ずっと見ている美魚族の何匹かの姿を発見――。
フィラン、もしかして
アレがお前の連れじゃないのか?
良かったな。やっぱり海の異変に
気付いて一目の付かない場所に隠れる
美魚族の習性に助けられたようなもんか。
ほら、お前の居場所は此処じゃないぜ。俺と過ごした思い出を
忘れないでくれよな!!
早く行くんだ。楽しかったぞ。
はいっ。ゼルガスさん……
これからも色んな海をこの目で見て
航海を楽しんで下さいっ。色々と
ありがとうございましたー。
おう!!
家族と友達を大切にしてやってくれよな。
俺との約束だ。良いな?
もちろんですっ。
じゃあ、ゼルガスさん! ばいばーい!!
フィランとのお別れ――。
美魚族との出会いは彼にとって初体験。
自分とは違う種族に会うのは稀な為
色んな海を見て来た船長目線で
これからどんな旅が出来るのか
期待を胸に膨らませていた。とその時……
おっと!! 危ないな……
突然船が揺れるなんて何事だ。
誰だ!?
俺の船に土足で入って来るなんて
良い根性してるな。名を名乗ったらどうだ。
【ブロス】
挨拶がまだでしたね。
僕の名はブロス。フランバージュと言った
団体に所属しています。貴方の船は
我々が占領させて頂きました……。
甲板や船室で
寛いでいた船員が
いつの間にかアレドシア、グラッツ、ロギュアの
3人によって、素早い対応で捕虜されていて
手足が出せない状況にいた……。
貴方がゼルガスさんですね。これから
この船は我々フランバージュの
管轄となるんだ。大人しくして頂きたい……
大丈夫だ。ちょっと
"シルドラ" と言った
少年について聞きたいだけだ。きちんと
教えてくれたら何もしないと誓おう。
どうだ?
何だと! お前等
シルドラに何をする気だ!?
もし手出ししたらいくら赤の他人でも
絶対許さないからな!!!
いや、シルドラさんに聞きたい事が
山積みでして大変なんですよ。
ねえ、ゼルガスさん……
何だ!?
俺、お前嫌いだぞ……
そんな目で見るな!!!
嫌いで結構です。
どうせ貴方の船員さんはロクでなしが
多いんでしょ。そんな事位
見て承知ですよ……
何だと、テメェ!
確かに出来損ないかもしれないけど
俺が更生して楽しく航海してるんだぞ。
馬鹿にしてるのか? ふざけるな!!!
ええ、馬鹿にしてますよ。
何を腑抜けな事言ってるんですか?
貴方も馬鹿ですね……。
言わせておけば、こいつ……!!!
なんならお前も馬鹿だ。
やめるんだ、ブロス……。
もういいだろ。当人は語ろうとしない。
俺達はアレドシア様の指示通り
シルドラに関与した奴を捕虜するだけだ。
これ以上はよせ!! もうゼルガスは
我等の領域内だ……
僕の事馬鹿って言いましたね?
今きちんと聞こえてましたよ。
お前の航海もここまでだ……なあ、ゼルガスさんよ。さあ……
フェルマータ城の地下牢へとご案内だ。
逃げたらどうなるか分かってるだろ?
ここにはリーダーのアレドシア様も
居るんだ。船員達との牢獄生活
楽しんでくれるよな!!!
そこまでだ、ブロス。
彼等を丁重にフェルマータ城へと
運送するんだ。大人しく処刑が来る日を
待ってる事だ。そうだな、ゼルガス
処刑を担当するのは……
楽しかった思い出も時には残酷を産む……
これは警告――。
【悲報】
ヴァールブルグ海賊団、船長ゼルガス。
フランバージュによって制圧完了。
水面下で動く彼等の計画、更に加速を増し
物語は中盤へ突入する。
第020話へ続く……。
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