第023話:フリューウイング起動!フラジーの華麗なテクニック炸裂!!(後編)
文字数 5,240文字
中編のあらすじ。
シルドラ達を襲おうとしていたのは
コウモリモンスター "ブラッドバッド"。
ホットソープに向かう道中、
航路とは違うファウンドフォールの裏手にある
鍾乳洞に入ると、普段その場所に生息していない
コウモリモンスター "ブラッドバッド" の大群に遭遇。
レブロンは大のコウモリ嫌い。
血を好む襲撃犯から彼等は無事に逃れられるか?
今にも攻撃して来そうなコウモリを撃退しようと、
レブロンは自分の席の前に立ち、苦手だろうが
シルドラ達を守る事を約束し、
その衣類を振り回し始める……。
焦りながらもきちんと操縦桿を手元から
離す事なく、滞空維持をしている。
ここは鍾乳洞。
天井からは凶器に変わり兼ねない程の
鋭利な刃物状の鍾乳石。そして真下には
数十年も掛けて生成された石筍。
そして、少し奥の方に見える天井に入っている亀裂。
そう、彼が探しているモノとは
シルドラ達には知る由も無い。
****
ミネラードフォール。
父親のゼルガスの元まで送り届けるアロイスと
彼の息子であるシルヴェス。
自然公園、クリアリッチパークでとことん遊び尽くし
疲れた身体を癒す為、軟水である事で有名な
滝の水を汲んで、休憩スペースでリラックス中。
亀裂の中を覗き込むように、
シルヴェスは真下にある鍾乳洞に響き渡る
音、声を拾おうと耳を澄ます。
鳥のさざめき?
水が滴る音?
いや、違う。この独特な鳴き声とエンジン音。
ギュィーン と黒板を引っ掻くように
鳴くのはブラッドバッド。ただ、もう1つの正体は
2人も亀裂から出て来るまで "アレ" と気付く事は
想像していなかった。
****
フリューウィングの走行を妨害する
石筍。低いモノに比べて、高いモノは数メートルにも
及ぶ。その為、さすがに伝説の操縦士フラジーも
悪戦苦闘。ただ、彼が探していたモノが
近かった為、再び操縦桿を強く握り始める。
コウモリの群れを何とか避けようと
体制が
目の前にこれまでにない程の大きさを
誇る石筍を発見。
このままでは激突して、全員怪我だけじゃ
済まされない。その上、天然素材の宝物庫である
鍾乳洞に傷を付けてしまう。フラジーは
操縦により機体を持ち上げ、何とか
激突だけは逃れる事に成功。
ただ、状況だけは変わらない――。
少し気流が変わった為、
フリューウィングが少し右に傾き、
鍾乳洞に敷き詰められた壁の岩盤の一部が
機体を擦り付けてしまう。
速度出力を一定維持にし、
物凄い勢いで亀裂に近付く……。
そして、ようやく脱出すると同時に
耳を澄まして真下の鍾乳洞の音を
拾っていたシルヴェスとアロイスの目前に
シルドラ達が乗っている飛行艇が通過。
ただ、1つ事件が発生。
亀裂の範囲が狭かった為、思い切り岩盤に
擦り付けた結果、片翼が半壊……。
その一部が休憩していた彼等2人の前に落下。
****
ファウンドフォール、鍾乳洞を通り
ミネラードフォール近くの亀裂から無事に
脱出したシルドラ達は、エアロブルー飛行場離陸時より
低空飛行をしている事に気付く。
おい、お前等!!!
聴こえたら返事してくれ!!!
真下だ! 早く飛び降りろ!!
このままだと "ヴァンウッド" に
突っ込むぞ。大惨事になり兼ねない……
屈しない肉体もあれば、それを乗り越えられる
レブロンとミルフは一足先に
フリューウィングから飛び降り
エアロブルー飛行場でビッケ・チャイの2人に
説明を受けた救命胴衣を使い、無事に地上に着陸。
ただ、再びまたシルドラの身に
バンジージャンプの時の恐怖が押し寄せていた。
なかなか飛び降りてくれない彼に
フラジーは素直に謝り始める。
フラジーは操縦席の横にある
やむを得ない状況に陥った時の緊急ボタンを押し、
別れを告げ、彼は座席と共に地上に落下。
上空でフリューウィングの方を見ながら
シルドラは悔し涙を流し始める……。
この冒険、いつ何処で
どんな状況が訪れて来ても怖くない。と初めて
実感したシルドラ。救命胴衣のお陰で
何とか無事に地上に着陸。先に飛び降りた
ミルフ、レブロンとも合流。
しかし、フラジーだけはその場に残り
自分が何年も愛用していたフリューウィングと共に
全責任を負い、エアライドライセンスを持つ
資格などないと自覚し、忍びの里 "シノヴァシア"に
繋がる森の上空で操縦席から放り出されてしまい、
彼の身体はゆっくりと
ヴァンウッドへと落下……。
強い衝撃と共に地面に叩きつけられた為
エンジンオイルが漏れ始め、出火が起きてしまい
エアロブルー飛行場で整備士、操縦士に
支給される帽子が物悲しげに
頭から転げ落ち、横には
気絶している彼の姿が。
"森の様子が変"
"木々達が泣いている"
すぐさま異変を察知し、機体の周りに
広く炎の手が回っている中、駆け付けたのは
ヴァンウッド、巫女族であり
森の
ヴァンウッド、森に棲む巫女族の
優秀な対応により、当機周辺の消火は完了済。
ブルーノはゆっくりと歩き回ると
そこには墜落時に割れたリンクリングの破片が
あちらこちらに散乱してある。
フラジーにとってシルドラとの出会いは運命。
楽しい空の旅をしていた。いっぱい笑った。
しかし、少しのミスが大きな事故に繋がり
彼は全責任を自分で負う事になり、
最悪な事態になってしまった。
****
ここは、合流地点――。
ホットソープに行く所が、当機と共に一緒に
過ごし、リンクリングを交わした友達が目の前で
フリューウィングと共に墜落して行く姿を
見てしまい、何も出来なかった
シルドラはリンクリングに表示された
シルドラ・ロッド、登録解除――。の文字に涙ぐみ
思い切り時計を外し、地面に叩き付けてしまう。
シルドラ、涙のリタイア宣言……。
ここで彼の冒険は終わってしまうのか。
今、更なる決意の時が迫ろうとしていた。
第024話へ続く。
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