第040話:ホットソープ最終幕!花笑みし温泉街とヴェスターの未来!!
文字数 7,328文字
朝6時――。
ティブルエイド最北端にある港
ラズリアポートにある浜に打ち上げられた
計4人乗りの小型潜水艦に乗ってやって来たのは……
【????】
もうっ。偶然ティブルエイドの
海域に達したからヴェスターの連行を
頼むって、ボクまだ眠かったのになー。
【????】
仕方ないよ。あの人を
怒らせる訳には行かないもん。
シルヴィも分かるでしょ、彼の性格を。
あっ! だったらさ……
ホットソープでお土産売ってたら買わない?
ジェライド官長っていっつも
甘い物欲しがってるしねー。
【ジェライド(官長)】
「おい、シルヴィにカリエラ。
何かお菓子持ってたらくれよ。オレの
身体は今糖分を欲しがってるんだ!!」
序に、ボクも官長のお菓子
半分お裾分けして貰おうかなと思ってね。
以前、御馳走してくれたクランブルケーキ
美味しかったなあー。
また食べたいな。
【カリエラ】
また、食べ物の話なの?
本当、シルヴィは食べる事が好きだよね。
…………。
失礼だな。もちろん
囚人共の面倒もやってるからね!
おやつの時間は二の次だもん。
だったら、早くホットソープに
行かないとね。官長の機嫌が
損なわないうちにアジトに連れて行かないと
また怒られちゃう。連行は素早く正確によ。
もちろん分かってるでしょ?
****
朝8時――。
"囃子ノ宴" での大宴会は早朝5時まで続き
その後、6階から上の階層にある宿泊部屋にて
シルドラはミルフと同じ部屋でぐっすりと
眠っていたけど、毎日目覚まし時計を
掛けて寝ているシルドラは習慣的に
起きる癖が付いていた為、彼女より
先に起きて、視界がぼやけている
状態で洗面室へと向かう。
ふわぁーっ。シルドラおはよう。
やっぱり朝は清々しいな。
あああああああああ!!!!
お、お前一体何やってるんだ?
ちょっと鏡見てみろ。
それもその筈。
ミルフが寝惚け眼を擦ると
そこには疑いを隠せないシルドラの顔があった。
歯磨きをやっていると思いきや、
彼がやっていた行為とは……
あっ! ま、間違えて
ミルフさんの口紅塗ってしまいました……
朝っぱらから
何て言うモノを見せるんだ!
し、シルドラが変わってしまったあああ。
ちょ、ちょっと……
待って下さい! 何処に行くんですか!?
ミルフは彼の変貌に戸惑いを隠せず
部屋を飛び出し、隣の部屋で寝泊りしていた
エンディアとシルヴェスの元へ駆け込む。
シルドラも走りながらも
自分の右手で口元を拭き、彼女の後を
追い掛けるけど、部屋に入った途端、ベッドの上で
とんでもない姿で寝ている驚愕の
光景を目の当たりにしていた。
抱き合って寝てるんですけど!!!よりによって、裸で。
これこそ腐女子が興奮するBLっていう奴。
遠い国の文化で添い寝CDって言う物が
あると聞いた事あるぞ。羨ましすぎる!
あたいも2人の横で……
それにしても、2人の寝顔可愛いですよね。
エンディアさんも両親が居ないから
シルヴェス君を息子のように
可愛がってるに違いないです!
ミルフさん、
もう少し寝かせてあげませんか?
邪魔するのは悪いですよっ。
朝まで飲み続けた2人の
身体を休ませる為にも、シルドラとミルフは
エンディア達の部屋を後にし
少しずつ朝日が昇り、陽が差し込んで来た
廊下に出て、自室に戻ろうとする。
さてと、あたいはもう少し
寝ようかな。シルドラはどうするんだ?
昨日、ブランザさんに当館横の庭園を
勧められたので、ちょっと空気を
吸いに行って来ますね。
そっか。じゃあ、朝の新鮮な空気を
堪能して来い。部屋で待ってるからな!
****
ホットソープ、正面玄関から
左の通路を通り、道なりに行くと
池や季節折々の木々、花が色々咲いてある庭園――。
まだ朝早い為、誰も居なく
独り占め状態。こんな場所初めてと
このホットソープで遭った事を振り返りながら
物思いに更け、近くにあった腰掛けに座る。
ふうー。庭園って
風情がありますよね。
獅子落としや池の水の音。鯉が優雅に
泳ぐ様。本当ホットソープに来られて
最高の一時を味わえました。
バレバレですよ、ブランザさんっ!
隠れてるのすぐに見つけちゃいましたよー。
赤い敷物が敷かれている腰掛けの下に
隠れているブランザを一目散に発見。
シルドラが来る前から
一足先に庭園に来ていて、小鳥が飛び交っている姿、
朝の日差しを浴びて木々達が喜んでいる姿を見たり
このヴァリングスで味わえる庭園の
楽しみ方を五感でフルに味わっていた。
やっぱり来てくれたか!
此処は俺自慢の庭園なんだ。どうだ?
ホント、温泉が好きすぎる
ブランザさんの心意気を感じます!
さすが、レブロンさんの父さんですねっ。
今は分からないですけど、別れる直前まで
常に元気でしたよ。本当に笑いが
分かっていて、優しくて、何回も
道を誤った時にレブロンさんが
丁寧に接してくれて……
「何やら庭園で楽しそうに話してる」
そんな会話に入りたいと、
朝早く起床してホットソープの
散策を終えたヴェスターが2人の元へとやって来る。
おっ。ちょっとホットソープ散策を終えて
庭覗いたらお前等が話している姿を
目撃したから思わず来ちゃったぞ。
ピピッ。
突如として庭に鳴り響いた
シルドラの右手に装着してある
リンクリングが鳴り、その画面を2人に見せる。
ブランザ様、ヴェスター様の絆を確認出来ました。
一斉にリンクリングを行いますか?
こんな画面になったの初めてです!
でも、2人でやるにはどうすれば
良いんだろう?
とりあえず、オレ等のリンクリングを
翳して
みたらどうだ? 一斉って言う事だからな。
物は試しだ。他に方法が無いなら
そう言う事だろう。じゃあ……
掛け声を俺から。準備は良いか?
【シルドラ/ブランザ/ヴェスター】
リンクリングっ!!!
ピピッ。
続々と3人のリンクリングの画面に登録完了の
確認画面が表示されてていく。
シルドラ様のリンクリングが完了致しました。
登録番号003:ブランザ
登録番号004:ヴェスター
ヴェスター様のリンクリングが完了致しました。
登録番号001:シルドラ
ブランザ様のリンクリングが完了致しました。
登録番号100:シルドラ
登録番号101:ヴェスター
おめでとうございます!登録者数100名を越えたので、
新しいフレーム表示となります。
ヴェアソープライセンスを所持している
ブランザは知る人は居ない程の
色んな匂いや効果を掛け合わせた
固形石鹸を作る事が出来る職人。
旅する石鹸クリエイターとして交流した人は様々。
癒しを求め、幸せになって欲しいと
一つ一つの手作業に心を込め仕上げて行く工程から
お気に入りの職人として様々な絆を
これまで紡いで来た――。
ブランザさん、凄いじゃないですか!
改めて登録者数100名突破
おめでとうございますっ!!
石鹸好きは心も清らかだ。
シルドラに祝ってくれるなんて、光栄だな。
羨ましいな……
オレもいつかお前に近付く日が来るのかな?
ヴェスターの顔を見れば一目瞭然だ。
お前を信じてくれる奴が横にいるだろ?
シルドラが必ず導いてくれる。俺は
これから築き上げる絆を応援してるぞ。
お前がそう言ってくれるなら安心だな。
オレでも出来る事を証明してやる。
2人で必ず沢山の絆を深めましょうねっ!
指切りしませんか?
約束を守る
証の事だな。
もちろんだ。小指を交わし合う仲として
お前に全て捧げてやる。
冗談だよ。でもお前と此処で
会えた事がオレの人生を変えてくれたんだ。
シルドラ、色々ありがとな。
俺もお前に会えて良かった。
もうそろそろ行くんだろ。シルドラ、
着替えてヴァリングスの
正面玄関に来てくれ。
着心地はどうだった?
俺の経営してる店で借りたんだろ。
もちろんっ。柔らかな生地で
僕の身体にジャストフィットしていて
とても着易かったです。レンタルした
甲斐がありました。
たまには店に戻って、商売しないと
店客減っちゃいますよ!
気付いたら朝の8時を回るまで
庭園で話し合っていたシルドラ達。他の皆も
次々に起床し、身支度を整えて
いよいよホットソープでお世話になった
ヴァリングスの従業員ラグ、リタ、ブランザ。
そして、エンディア含む
カインドフォースメンバーとのお別れの時間がやって来た。
****
午前9時――。
ヴァリングス正面玄関。
すっかり様になった浴衣とお別れし
再び、冒険の旅へ出掛ける服装に着替え、合流する。
お待たせしました! なんか久々にこの服に
着替えた感じがします。
…………。
ダメだ。こんな時は笑顔で
旅の無事を祝わないといけないのに。
ラグさん、シルドラの湯
作ってくれてありがとうございました!
ちょっとハラハラでスリリングな
体験も出来たので、一石二鳥な楽しみが
出来ました。此処は花笑む温泉地
ホットソープ。きっと、更なる
望みが期待出来ますねっ!
それに、さっき実は
ブランザさんがヴァリングスの為に作った
新しい石鹸の匂い嗅がせて貰いましたよー。
そう言えば、まだ受け取って無かったな。
何だ。焦らしてたのか?
そう言う訳じゃ無いんだ。
数日経たないと匂いが発生しない
石鹸を作らさせて貰った。さっき
シルドラ達と話している最中に
その効果が現れてな……
きっとビックリしますよ!
受け取って嗅いでみて下さいっ。
ですよね、ヴェスターさん。
そうだな。さすが石鹸クリエイターだ。
1つ1つの手作業に愛と真髄が
詰まっていた。心地良い匂いに
オレ自身も癒されて貰った。
ブランザがヴァリングスの
未来を込めて作った新しい石鹸。
そこにはチェリーバームと言った草花の花弁と
その花から採取出来る液を調合し作った一品。
ちなみに花言葉には「絆」と言った
意味が込められている。
ほう。成程な……
確かにこの匂いの良さ
俺の心に染み付いてしまうな。まさか
あのチェリーバームを使っているとは。
ラグ。これからもお前が必要だ。
ヴァリングスを一緒に盛り上げて行こう。
何言ってんの。私も従業員よ。
ホットソープを愛しているのは私もそう。
抜け駆けなんてさせないわ。
おう。これからも
足引っ張るかもしれないけど
まずは復興を目指して、頑張らないとな!
ヴァリングスは必ず復興出来る筈です!
期待して待ってますね。
そして、エンディアさん
カインドフォースの皆さん……
あの時、再会出来た事
俺は忘れないぜ。立派に成長してる姿を
その目で確認出来て嬉しかったぞ。
僕も久し振りに心ゆくまで
皆さんと一緒に過ごせて楽しかったです!
そうだな。マリーナブルーから
行動を共にしてたけど、どれもこれも
忘れられない思い出だったぜ。
温泉好きにはたまらないホットソープ。
そして、ヴェスターとも出会えた。
俺の新たな記憶として……
急転直下――。
別れを惜しんでいる所、皆の元にやって来たのは
早朝にラズリアポートに到着し
ホットソープへやって来た看守みたいな
背格好をして居る2人組 。
よし。お土産も手に入れて
ヴェスターもお縄にした。さあ、アジトへ
戻るとするか。もう逃げられないもんねっ!
えっ。ボクの名前!?
ボクはシルヴィって言うんだ。
興味持って話してくれてるんだよね?
だから、シルヴェスも言ってるだろ。
突然ヴェスターを捕まえてるから
何者だと聞いてるんだよ!!
怒らなくても良いじゃないか……
君達も知ってるだろ。ここにいるのは
罪人だ。ホットソープの襲撃犯。及び
ヴァーズメルトの店長シルリアに
アンジュソートを売った張本人でも
ある事が発覚したんだ。
えっ!?
確かそのせいで僕がシルニャンに……
あの件もヴェスターさんが
原因だったんですね。
お前等、
牢獄島の看守だな。
聞いた事ある。その島は移動していて
常に何処にあるか分からないと。
それに、其処の関係者には必ずと言って
共通点がある。その帽子に付いてる
ドクロがその証だ。
あら。謎に包まれてる割には
私達の事良く知ってるわね。
何処かで情報が漏れてるのかしら。
いや、風の噂だ。この世界に
存在する様々な機関がある中で
必ず決まって帽子を身に着けているのが
牢獄島で働く看守、そしてトップの座に
居る官長クラスの人。
ただ、牢獄島の連中にはヴェスターを
追尾しない限り、此処にいる事は
分からず仕舞い。もしかして誰かが
彼を見張っているのか?
ふふん。カリエラには黙っていたんだけど
ヴェスターの連行はフランバージュの
リーダー、アレドシアさんからの
折り入っての希望だったんだよー。
と言う事で、午前10時10分。
場所はホットソープ、ヴァリングス
正面玄関前。ヴェスターの身柄を確保っと。
な、何だと……!!!
出て来いよ。そんなにオレの事が嫌いか?
圧倒的な権利で更にヴェスターを
追い詰めるフランバージュリーダー、アレドシア。
眼帯で隠れた右目に募る恨みが彼をどん底に
落としながら、シルドラ達の前に
とうとう姿を現す。
えっ、と……
貴方がフランバージュのリーダー。
確か、名前はアレドシアさん。
ブロス、落ち着け。
ようやくシルドラに会えたな。待ちに
待った瞬間だ。下がっていてくれ。
ヴァル=バーンズ。フェルマータ城で幽閉されている狼族。
忍者の里シノヴァシアを一夜にして襲撃した
張本人。奴はシノヴァルドと言った場所で
お前の両親と触れ合った過去がある。
その際に差し出したネックレスを
懸命に探してる最中だ。
レブロンに聞いても絶対に答えなかった。
ったく。お前と一緒に行動したせいで
友情なんか芽生えやがって!
どうしてくれるんだ?
どの口が言ってるんですか?
何を仕出かそうとしているのかは
知らないですけど、軽く罵詈雑言を
申してます。捕虜すべきなのは
貴方達の方です。
…………。
あのさあー、何言ってるの? もし、
シルドラ君を庇うなら、此処にいる
アレドシアさんを侮辱する事になるよー。
そう言えば、ヴェスターさんが
この世界の犯罪は特別だって言ってたけど。
はあー。仕方ないわね。
私が説明するわ。良い?
条例って言うのがあるのよ。通告者の
権限によって罪状が下される
仕組みになっていてね。
君が無罪なら問題は無いんだよー。
その判決が下される間、ボク達牢獄島の
看守が通告者の保護も行うように
なっているんだ。
だから、
もしアレドシアさんの身に
何があったならボクが許さないよ。
そういう事だ。
私に逆らおうとする不届き者がいれば
信頼できるメンバーであるブロスが
相手になってやるぞ。
手を出す行為、誹謗中傷、罵詈雑言は
喧嘩と捉えるだけ。犯罪にはならない。
覚えて置いた方が良いよ。
はぁ!?お前等、頭イカれてるだろ。
未然に防ぐのが役目じゃないのか?
ヴェスターさんは
アレドシア様の忠告無しでもホットソープを
襲撃した黒幕として自分の罪を
認めていたので自白する予定
だったんですけど、その場合
どんな対処になっていたんですか?
それなら、官長に報告すれば
少し待遇が変わっていたかもね。通告者
有り無しで多いに差が生まれるって
覚えてくれれば良いよ。
でも、オレが務めていた
元フランバージュのリーダーの権限は
絶対なんだろ。仕方ねぇ。連行してくれ。
おう。
シルドラ、本当のお別れだ。
最後まで迷惑掛けて済まなかったな。
次会った時までに、必ず罪を
償ってまたここに戻って、シルドラ達を
癒しの世界に連れて行ってやる。
約束ですよ!!
ここに居る皆はヴェスターさんの
帰りを待っていますよ。それを
忘れないで下さいねっ。
「きっと忘れない」と
シルドラと、彼の仲間を通して今1度
彼自身に足りないモノや、これから先の事を
本編を通して気付かさせてくれた。
この1歩は罪を償うべきの歩みではない。
未来へと歩み出した幸ある1歩。
ヴェスターは最後まで笑顔を貫き通し、
牢獄島の看守であるシルヴィとカリエラの2人に連れられ
ホットソープを後にするが、状況は変わらない。
フランバージュ、リーダーアレドシア。
その横にはかなり喧嘩っ早い
メンバーの1人であるブロス。
さあ、シルドラ。
お前の懐に眠っているネックレスを
渡して貰おう。さもなければ……
お前の相棒、ミルフを仕留めてやる!!!
そして、シルヴェス。
知ってるか? お前の
親父ゼルガス、ボコボコにしてやった。
顔中傷だらけ。最後までお前の名を
呟いて気絶した様をこの目で見た。
首突っ込んだ罰。ざまあねぇな!
…………。
立ち向かう術が無い……
どうすれば良いんだ?
かくして、ホットソープ編は
ヴェスターの連行により終幕を迎えた。
ただ、ヴァンウッドに向かう前に立ちはだかる壁――。
遂にシルドラの目前に現れたフランバージュ。
ティブルエイド編、いよいよ
ヴァル=バーンズに纏わる核心へと
物語が動き始める……。
第041話へ続く――。
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