第069話:喧嘩の果てに!ティブルエイドに迫る黒き煙の罠!!(前編)
文字数 4,747文字
フェルマータ城、正門前。
これは、
シルドラ達も望んでもいなかった
史上最悪過ぎるレブロンとの再会――。
信じられない光景と共に、彼の言動に衝撃を受けてしまう。
ぶ、ブラウン君!!!
だ、大丈夫なんですか!?
道着にたっぷり血が付着してるんですけど。
何処かアレドシアと
同じような目付きをしている。
それは、今まで
シルドラ達に見せた事が無い真剣な眼差しと共に
友情や絆を感じさせない態度まで。
夏の間、共に味わった体験や思い出を
振り返る事など、今のレブロンには微塵も無い。
違いますよね。何を言ってるんですか?
冗談は止めて下さいよ。
あっ、アレドシア!!!
そんな場所に居ないでこっちに来い!!!
ふん。
躊躇に
ミルフと話してる時間など無い。
私は有権者として
全ての計画を最後までやり通す義務がある。
その中でブラウンは障害物だった。
勿論、シルドラが関与した人物
全員が始末の対象内だ。
あぁ。言われなくてもそのつもりだ。
おい、レブロン!!!
全てはアレドシア様の為だ。
正義の拳も笑顔も封印して事を為した。
これで分かっただろ。
もうお前等と向き合っても無意味。
私の忠実な用心棒と化した。
さぁ、最後の仕上げを始めるぞ。
この光景はティブルエイド全土に流れてる。
最も絆が深い仲間の目前で
ブラウンをそこの崖から落とせ。
これで私の計画第2幕は完遂だ。
地面に倒れた際に付着した泥と
口から滲み出した血液で道着が汚くなっている。
何処を掴み出すかと、思えば
人命が左右される首を鷲掴み。しかし
ブラウンはまだ呼吸はある。ただ、気絶をしているだけ。
かつてブロスに下された公開処刑を
思い出しながら、何の躊躇いも無しに
崖に少しずつ歩き始める。
もう過去には戻れない。
拳を出した時点でもうお前の友人でもない。
今まで済まなかったな。
レブロンさん、
何やってるんですか!!!!
もうこれ以上、やめて下さい!!!
邪魔するな!!!こ、これはネックレスを渡さなかった
シルドラへの恨みと言ってた。俺の
苦しみも知らないで和気あいあいと
仲良くしやがって……
レブロン、聞こえないのか!?
さっさとやるんだ!!!
お前は黙ってろ!!!今問いかけてるのは、この馬鹿だ。
仲を切り裂く発言と共に侮辱をした。
黙ってられるか!!!
シルドラは
お前と再会を待ち侘びていた事
あたいはずっと横で見て来たんだ。
その為にアイツは今のままじゃダメだと
小さな努力の積み重ねで勇気を
手にしたんだぞ。
じゃあ、レブロンはどうなんだよ!?
本当に恨むべき相手は向こうだろ。
仲良しの腹いせに嫉妬してるのか、なぁ!?
逆恨みも大概にしろ!!!!
こんな奴とは思わなかったよ!!!
なぁ。
ブラウンを離してやれよ!!!
苦しんでるのが分からないのか!?
ただ、これ以上
ブラウンに手を出すなら
あたいも一発ぶん殴ってやるからな。
何とか踏み止まってくれたレブロン。
ミルフとの駆け引きは
見事、彼女に軍配が上がり
鷲掴みされていたブラウンを地面に
ゆっくりと下ろし、一番近くにいたシルヴェスが
彼の無事をいち早く確かめ始める。
あああああああー!!!!
今、シルドラ君の声がーーー!!!
おい。まだ痛みが引いてないんだから
今は安静にした方が良いぞ。
ほら、水を飲んでうがいして下さい。
口からの出血は可哀想ですもんね。
ほら、レブロンさんも。
感動の再会が台無しじゃないですか。
ブラウン君を離してくれたお礼です。
受け取って下さい。
ふん。こんな奴に水なんか渡すな。
同情する余地も無い。
で、でも……踏み止まってくれたって言う事は
本心じゃありませんよね。もし裏切るなら
信じたくないですけど、僕達の目の前で
今すぐにでも海に落としてます。
うがいをして
口内に残る嫌なドロドロとした血液を
取り除く今出来る最善策を終えたブラウンが
今にも泣きそうな声で、シルドラの元に走って来る。
霧の中、
ヴァンウッドの森で迷子になり
少しの時間でさえも、離れ離れになってしまい
いつも一緒にいた友達が近くに居ない
寂しさに駆られて、尚且つレブロンの
表情から笑顔が消え失せた事に対して
ずっとブラウンの心身も辛かったに違いない。
うわああああああん!!!
シルドラ君、怖かったよ!!!!!
ほら、言った通りだろ。
思い切り慰めてやってくれ。
ご、ごめんなさい。
霧の中でレブロンさんと出くわして
そのまま連れて来られちゃってね。
そうだったのか……。
功を奏し何とかブラウンと合流出来たけど
ちょっと複雑な心境だな。
なぁ、ブラウン。
覚えてる限りで良いんだけどさ
この喧嘩を発足したのは、どいつだ?
あっ!!! そう言えば此処に来る前にレブロンさんが確か……
『ブラウン、色々済まないな。
これはアレドシアの指示なんだ。
彼はシルドラを恨んでいる。きっと今まで
関わった奴も全員対象内。俺もその1人。』
『ああ、多分な。
俺はアイツにもう一度近付く為に
本当の用心棒となった。現にこれから
絆を崩す喧嘩を執り行われる事に
なっている。その際にお前を
痛め付けないといけない。』
『もしかしたら、ボクの
誠拳道と
相討ちになる可能性もあるじゃん!』
なっ!!何故、私の目論見が分かった!?
お前、まさか
端からレブロンに期待してなかったのか?
ああ。
一度私の計画に泥を塗ったからな。
そんな奴何処を信用出来るんだよ!!!
黙れ!!!
ティブルエイドの有権者なんだろ!!
先ず、人間性を何とかしたらどうだ!?
私に逆らうとは良い根性してるな。
牢獄島の獄長に通告しても良いんだぞ。
お前と対峙するのに
何の対策も無しに来るとでも思ったか?
そ、それなのに
俺はアレドシアの口車に乗せられ
ブラウンをこっ酷く痛め付けたのかよ。
やっぱり、
シルドラ達とは縒りを戻せねぇ!!!
感情に流される奴とは一緒に
居たくないだろ。
悪いな。お前達と
過ごした思い出はずっと忘れないぞ。
久しぶりにシルドラの顔を見れた訳だ。
もう悔いは無いな。
そんな事言わないで下さい。
もっと絆を深めたかったのに……
結局、レブロンを
アレドシアの手中に置いたのは
計画第2幕の軸となる喧嘩の結果が
相討ちとなった際に、どっちに転んでも
得を得るのは彼だけ、と元々答えを導いていた。
それは勿論、端から信用していないから。
本当に自分が築き上げた物が
他人に悉く覆されると執拗に追いかける
ストーカーのような者。決して逃げられない。
どのように調理してやろうか、と皆を巻き込む策略を企てる。
皆と一緒に居る意味を
考えると、自分は居てはいけない人間だと確信し
今改めてレブロンは彼等に別れを告げ
フェルマータ城内へと駆け出して行く。
ちょっと待って下さい!!
僕は絶対に諦めませんよっ!!!
はいっ。
きっと2人共訳アリなんですよ。
ミルフさんもレブロンさんの事を本気で
怒っていないと思いますし。
そうですよね?
ああ。一緒に過ごした仲だからな。
アイツの性格はこう見えても
分かってるつもりだ。
シルドラ君、
絶対に解決して必ず戻って来てね!!!
こんな所で負けちゃダメだよ!!!
よし、シルドラ!!!
アレドシアに一泡吹かせて来てやるんだ。
お前の勇気を見せ付けて来い!!!
しかし、レブロンの事を
諦めきれないシルドラは彼を追いかける為
意を決して遂にフェルマータ城、潜入開始。
レブロンが
抱える心の病を完全に振り解き
ティブルエイド各地で今まで
出会った人達に見守られながら
シルドラvsアレドシア、純真無垢な性格と
裏の有権者との真の対決が始まろうとしていた。
そんな中、
フェルマータ城正門前にアジュマリン海賊団で
屈指の美貌を保つ船長ヴァネッサが現れる。
な、何だあの美乳は!!!!
あ、あたいのよりデケぇじゃねぇか!!!
うわあーい。
お姉さんのお胸、おっきいね!!!
触ってもいいかな?
あら、可愛い子じゃない。
そうね。君の柔らかい頬を
触らせてくれたら考えても良いかな。
いや、お世話に
なってるのは俺の父さんなんだ。
同じ海賊同士、この世界の何処かに存在する
金貨大陸を探す宿敵みたいなもんさ。
そうよ! その手掛かりを
せっかく見つけてあげて来たのに
何処探しても居ないのよ!!
アクアヴェークで待ってる、
って言われたのにさ。もうっ!!
私で良ければ話してくれるかしら?
力になってあげるわ。
ええ。もちろんよ。
アジュマリン海賊団、船長として
名に恥じない活躍を見せてあげるんだから。
よし、見てろよ!!!あたい達もいつまでも黙ってると
思ったら大間違いだ!!!
うん!!! えっと……
ゼルガスさんの奪還作戦だよね!?
もちろんだよ!
ボクの出来る範囲で頑張るんだー!!!
あら。何処を探しても居ないと思ったら
あの城に捕らわれていたとは……
じゃあ、あたい等も
フェルマータ城内に潜入開始だ!!!
【ミルフ/シルヴェス/ブラウン/ヴァネッサ】
おうー!!!
フェルマータ城編、最高潮へ――。
数時間振りに
再会出来たブラウン、レブロンとの喧嘩は
何とか無事に鎮静を果たした。しかしながらも
彼の心はまだ脆く、自分が正義の拳を封印し
手を出した事に対し、絶対に避けられない
対峙を果たしてしまう。
「俺はシルドラ達を悲しませてしまった」と
悔恨の念に駆られてしまい、フェルマータ城内へと
自分自ら姿を消してしまった。
シルドラ、そして
ミルフ達の目的を果たすべく
心強い味方ヴァネッサと共に今、物語が大きく動き出す――。
次回、計画第2幕最終話。
不穏な空気と黒煙が港町ビューウェーブを襲う。
そして獄長ブレイアが遂にライアンと共に上陸。
第070話(後編)へ続く。
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