第054話:ブラウンとマツカゼ師範!シルドラの果てしない1日!!(前編)
文字数 6,256文字
そう!!
ボクの名前はブラウン。シノヴァシアの
住民で1番可愛い22歳の男の子なんだ。
そう。こう見えてボクは
何処かの誰かさんに栗頭って言われたから
頭が物寂しくて。でもね……
このニワトリ帽のせいで
シルドラ君に追い掛けられているんだ!
急いで逃げないと……
前回のあらすじ。
フェルマータ城が聳える海食崖、そして
ヴァンウッドの森にて2つの動きを確認。
1つ目、ブロスとの喧嘩で
海食崖から落とされたレブロンを助け出すために
メンバーを抜けたロギュアが必死になりながらも
命がけの探索を始めるが、見つからず
レブロンの無事を祈りながらグラッツも秘密裏に
進めていた計画に乗る。そこで明らかになったのは
かつてシルドラ達が訪れていたフレンドモンスターの牧場を
経営していた事が明らかに。狐族ランザー達と共に
無事再会を果たす――。
2つ目、死と偽りシルドラ達に報告するブロス。
シルドラを執念に追い掛けるけど、シノヴァシアから
マツカゼ率いる3人の師範が登場した事により
言い争いは無事に幕を閉じた。
この話はその後からの内容となります。
早朝――。
ツリーハウスの屋上で
酔っていたシルドラの看病をしている最中に
寝てしまい、気付いたらベッドの上で朝を迎えてしまう。
急いで旅人の宿に戻って来るシルヴェスとルミシー。
や、やっちまった……
看病中に寝てしまうなんて!
シルドラは大丈夫なのか?
きっと大丈夫ですよ。
多分、シャノンさんが薬を飲ませてますし
私達の知らない間に沢山寝てると思います!
ほら、見て下さい。
いつ帰って来ても良いように
玄関の鍵開けっ放しにしてくれています。
あら。やっと目を覚まして戻って来たのね。
ルミシー様、おはようございます。
おう。お陰様で沢山眠れた。
こんなに寝たのは超久し振りな位だ。
安心して下さい。
昨晩はちょっと一悶着ありましたけど
シルドラさんはぐっすりミルフさんと
熟睡しております。順調に回復しているわ。
シルヴェスさん、あの時流れ星に
祈った結果が出たんじゃないですか?
あら。何て祈ったんですか?
是非聞かせて貰いたいですわ。
ただ、1日でも早く
シルドラの体調が元に戻りますように!って
アイツの事を思いながら天に
捧げて願いを込めただけだ。
もしかしたら、
リノエルさんに
思いが伝わったかもしれませんね。
リノエルさんって言うのはね、
流れ星に3回きちんと自分の願い事を
言えてる人を上空で確認している方なんだ。
ライトステアと言った大陸があってね
あの空大陸より遥か上空にあるのよ。
人々が叶えた幸せな願いが其処の核となって
島々を動かしてると聞いた事あるわ。
成程な。好奇心旺盛な
シルドラと一緒に冒険すれば
いつかその大陸にも行けるかもな!
さあ、中に入ってお茶でもしましょう。
プラムちゃんもシルリアさんも
お先に召し上がってますよ。
あ、そうだ。
召し上がる前にシャワー浴びて来て良いか?
ええ、もちろんよ。
旅人の宿のお風呂はいつ入っても
癒されるわ。楽しんで来てね。
ふぅ。この湯心地格別だな。
俺の鍛えられた肉体を洗い流してくれる……
よっ。ブラウンか。
起きるのが早いんだな。お前も朝風呂か?
うん。趣味の1つでね。
それに朝にお風呂入ると強く安定した
メンタルを作る事が出来るんだ。
扉から顔だけを出し
釘を刺すように必要事項だけ言って
再びスーッと扉を閉める。もはやお化け屋敷にいても
可笑しくない程のクオリティ。ほんの一瞬でも
ブラウンの目には歯ブラシを持ったシルドラが
本当に歯磨きをしてるのか疑った位だ。
そう、あの表情で。
うわあーん。怖かったよー!!!
シルヴェス君、慰めて!
あっ、バレちゃった!
それでも優しく接してくれる
彼が大好きなんだ。告ってはないけどね。
でも、もし俺が女だったら
真っ先にシルドラに声を掛けてしまうかも。
その気持ち分かるー!
カッコいいって言うのは別にしても
内面がきちんとしていればボクなんか
すぐオッケーしちゃうかも。もちろん
優しい人が1番だよね!
男子更衣室、洗面台の前まで聞こえる
2人の会話にシルドラは滅多に
見せない顔を見せる。
馬鹿馬鹿しいですよね。
僕なんかまだちっぽけですよ……
****
シャノンとブラウンはほぼ同時刻
そして、次々に起床してくるメンバー。
ブラウンとシルヴェスもお風呂から上がり
彼女が1から手作りしてくれた
レモッシュティーの匂いを堪能しながら
優雅とは言えないけど、のほほんとした一時を
楽しい会話と共に過ごしていた。
しかし、プラムとシルリアの2人は
経営しているヴァーズメルトに戻らないといけない。
お別れの時間が来てしまったようだ。
そうも行かないわ。
早く店に戻って支度を始めないと!
今日はホットソープの皆様が来店するのよ。
皆、お姉ちゃんが作った
バージュベリーケーキがお目当てなんだ。
と言う事は、今回はラグさん達が
遊びに来るんですね。
でしたら、僕は元気に冒険してます!って
伝えて貰えませんか?
今度、シノヴァシアの
皆にも食べさせてあげたいので
その時はお願いしても良いかな?
あー、それボクも言おうとしたんだよー。
怒ると血糖値が上がるからマツカゼさんにも
食べさせてあげたいんだ。
ブラウン君の今までの
悪戯師範の皆さんにチクっちゃおうかな……
シルドラ君、またね!
久し振りに会えて楽しかったよ。また
ヴァーズメルトに遊びに来てね。
その時は、また美味しい
匂いを満喫しに行かせて貰います!
皆さんもお元気で。
シルドラさんも冒険の無事を祈っているわ。
かくして、店支度の為
配達の序に立ち寄ったシルリアとプラムは
朝早く旅人の宿を後にした。
そして、
ダイニングテーブル近くの棚上に置かれていた
親機で電話を掛けてたブルーノも
皆の元へと戻って来る。
シャノンさん、
お電話御貸し下さりありがとうございます。
マツカゼさんの所です。
シルドラ君と皆さんが起床した事を
報告させて貰いました。シノヴァシア一同
迎え入れる準備は常に整っています。
如何しますか?
そうですね。
師範の皆さんが退屈してるかもしれません。
ご高齢の方を待たせちゃ悪いです。
早速向かいましょう!!
シルドラ君とも此処でお別れになるのかな?
私はイヤだからね。
大丈夫です。全てが
片付いたら必ず報告しに行きます。
それまで、待っていてくれますよね?
貴方達とも一先ずのお別れですね。
ヴァンウッドにお越し下さって、本当に
有り難う御座いました。
シルドラさん、
虫に
刺された箇所を出してくれるかしら?
肩のちょい上辺り。
着慣れている服装をちょいと脱ぎ
シャノンの指示通り、スチュキートに刺されて
変な成分が身体の中に注ぎ込まれた箇所に
ミルフとシルヴェスが頑張って手に入れた
素材を調合し、夜分遅くまで作り上げた薬を
ビニール手袋を嵌めて、体内に黴菌が
入らないよう丁寧に塗り始める。
まるで
襷のような物ね。
ミルフさんとシルヴェス君が
頑張って手に入れてくれた素材を貰って
私が知識と応用を活かして、1つの薬を
完成させる。効き目は抜群に違いないわ。
それに、多分私の予想なんですけど……
シルドラさんがこの森に訪れてから
怒りに満ちた表情をし出したのは
スチュキートに刺されたからかもしれません。
あっ、思い出した!
確かその虫ってアングリアンって言う菌を
所持しているって以前マツカゼさんが
シモンさんと話し合っていたような気がする。
でも、この薬を
塗ったから心配は要らないわ。少しずつ
効き目が現れるから後は無理しない事。
分かったかしら?
彼女から手渡された物は
ヴァンウッドの森を守ってくれる花 "シンティア"。
ずっと作業部屋に飾ってあった数輪の
茎部分に半紙を貼り付け、萎れないように
繊細かつ丁寧に包装してある。
えっ、これってこの森を
守ってくれるシンティアじゃないですか!
こんな大切な物頂いて良いんですか?
いや。この花をヴァル様に
届けて欲しいのです。名付け親である
彼のお陰でこの森は平和を保たれています。
そのお礼をこのような形でお伝え出来ればと
思って。必ず渡して下さいね。
では、行くとしよう。
私とコレッタが先導させて貰うぞ。
森の
長、ルミシー
そして、旅人の宿管理人であるシャノン。
2人に見送られながらシルドラは彼女達に大きく手を振り
3人の師範が待つ忍者の里シノヴァシアへと向かう。
うわーい。シルドラ君達が
シノヴァシアに来てくれるなんて嬉しい!
そりゃそうだろ。
忍者の里に行けるなんて夢のまた夢だぞ。
滅多にない機会を与えてくれたシルドラには
感謝し切れないぜ。お前と冒険してなければ
此処に来れなかったかもしれないからな。
恥ずかしいじゃないですか!
皆が見ています。早く下ろしてください。
お前等、本当に仲良しなんだな。
シルドラも照れるなって!
意を決したかのように、
ブラウンはフェイスウォールに向かう森の小道
そして、崖の山道を物凄い速度で落ちないように
目にも見えぬ速度で走り抜ける。
そんな事言ってる場合じゃありません!
は、早く止まって下さいいいいいいい!!
ボクは急に止まれないよ!
あっ、見えて来た。あれを見てー。
あそこが忍者の里シノヴァシアなんだ!!
だからっ!!速すぎてよく景色が見えないんですって!!
冒険者は目で見て景色を楽しむモノ。
自分の足で歩いて、周りの風景やその土地の匂いを
感じたりする。ブラウンにおんぶして貰ったのは
良いけど、そんな事味わう余地も無く
気付いたら、彼の目の前に
忍者の里「シノヴァシア」が――。
もうすぐシルドラ達がこの里に訪れるんだ。
拙者の茶菓子でもてなすとしよう。
気に入ってくれると嬉しい。
その時、里外から
ドドドッと地面を蹴りながら
この里の方角へ誰かが走ってくる騒音……と言うより
もはや効果音に近い音が聞こえて来る。
何だ、敵襲か!?いや、違う。足の音は1つだけだ!!
もちろん、さっきマツカゼが聞き取ったのは
里の外をシルドラを連れて走っていた
ブラウンのダッシュ音。
正門を通ると
里の皆が一斉に集まれそうな大きな広場があり
その奥にマツカゼが住んでいる立派なお屋敷が存在する。
ここでシノヴァシアの紹介を
させて下さい。
シノヴァシアの全ての建物には近代和風建築が使われており
複雑な屋根の構成をしている箇所が多い。
井戸から水を掬って生活用水にしたり
薪を拾って暖を取ったり、里の女性陣が作り上げた作物を
食料に使ったりと本当に和を徹底しているのがこの場所。
敵襲と勘違いする位の音を立てて
走り抜けたブラウンに喝を入れ始める。
はい……
ブラウン君、前から聞きたかったんですけど
頭の上に乗ってるのってヒヨコですよね?
う、うん。正確に言うと
ピヨコ帽なんだ。
被り物や頭に乗せるモノを身につけるのが
ボクの趣味でして……
そんな事より、まずは彼を下ろして、っと!
よーし……
ブラウンは彼の股間に
刺激を与えた事を気にしてしまい、
咄嗟に右手をあらぬ場所に翳し、忍者の里の人間とは
到底思えない魔法の呪文みたいなセリフを言い出す。
違うんだよー!
治したいのはやまやまなんだけど
男の子のシンボルは安静になるまで
ソッとして置かないといけないからさー。
しかし、慌てる事もない筈だ。
シノヴァシアは逃げない。増してや
シルドラ達は客人じゃないか。
早く里の紹介をしてあげたいと
言う気持ちには心を強く打たれた。
それ程魅力があると言う証拠だからな。
でも、もう少し
丁重に扱ってくれると助かるぞ。
それはさておき。
シルドラ君、昨晩は済まなかったな。
貴方がマツカゼさんですね。
話はブルーノさんから聞きました。
しかし、
其方を傷つけた事には変わらない。
今此処で謝罪させてくれ。
いえいえ。貴方の活躍を
間近で見れなかったのは残念ですけどね!
そうか、優しいんだな。
此処で長話もなんだ。せっかくだし家に
上がってくれないか。来訪してくれた
御礼をさせてくれ。
ブラウンは他の皆が来たら
拙者の屋敷に連れて来る役目があるだろ。
それまではお預けだ。
と言う事で、シノヴァシア編突入だ。
皆の衆、宜しく頼むぞ。
後編も心の底から楽しんで欲しい。
ブラウンが何か仕出かすつもりだからな。
あっ、軽くバレてる……
それに他作品とのコラボもあるんだよね。
噂はかねがね聞いておる。
執筆者同士の戯れと言うのは楽しいもんだ。
他作品の人間模様は拙者も気になっている。
その方といつか共演出来る日を
気長に待ってるぞ。
ただな、軽口を叩くのはご法度だ!お願いだから平和にやってくれ。
いや、何でも無いんだ。
ご高齢の他愛の無い話と受け取って欲しい。
忍者の里 "
シノヴァシア"
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