第020話:エアロブルー飛行場到着!伝説の操縦士フラジー登場!!
文字数 5,324文字
今日の天気は快晴――。
翼を持ち自由に飛び回る小鳥達、綺麗に咲き誇る花
そして、堂々たる姿で力強く立っている木々達は
快くシルドラ達を歓迎している。
ゴッシュやゼルガスとの別れ……
色んな方々との交流を胸に秘め
シルドラ達の新たな旅が始まろうとしていた。
ここはエアロブルー……。
無断に入れないように
網が色んな場所に張られてあり
此処を普段から使用している常連、観光客にも
自由にこの飛行場から離陸する飛行機を
見送る為にフリースポットが設けられている。
長い旅を経て、ティブルエイドの新たな地へ
向かおうとしているシルドラ達は
ようやく飛行場へと辿り着いた。
レブロンさん、ミルフさんっ
ようやくエアロブルーに着きましたね!!
そうだな。ずっと歩き回っていたけど
此処からは大空の旅か……。
ミルフに言われて、大空を見上げるシルドラ。
清々しい気持ちに浸り、目を瞑って
大自然を感じる。それに混じって飛行機独特の
エンジン音を五感でフルに味わっている。
確かに雲1つ無い。所謂
フライト日和って言う奴ですねっ!
飛行機は乗った事ないけど、
きっと楽しいに決まってます。
そうですよね、レブロンさん?
こんな日に外で鍛えられた身体を
色んな方に見せられたら、トレーニングを
常日頃行っている成果が得られる。だから
自分や筋肉にとっても高評価であり
余韻にも浸れる。そうですね……
はっ。5点……
だったら今すぐ此処で裸になって
シルドラから高得点を……
与えませんっ! ってか……
僕達飛行場に来てまで何やってるんですか!
何の共通点も無いですって。
ほら、聞いてくれ!!!
俺の胸辺りから聞こえてくるエンジン音……
答えはノー!!!ここから先は言わせませんよっ。
色んな意味で収拾がつかなくなります。
おうい、君達ー!!
楽しそうだね。ボクも混ぜてって……
あっ! 確かシルドラ君だったよね。
飛行場に到着して
如何にも規制が掛かりそうなネタを
数発レブロンとミルフがブチかまし、
ハイテンションになっていた所を見つけたのは……
以前港町 "ビューウェーブ" にやってきた
ホットソープの番台を務めているラグを
そこまで連れて来たエアロブルー飛行場の
スタッフ "ビッケ"。
うん。港町ビューウェーブで会ったよね!
どうしてもホットソープに行きたくて
仲間連れて来ちゃった!!
あ、えっ!?
シルドラ君って赤髪の狼こと
レブロンさんと一緒に冒険してるの?
俺の事知ってるのか。ありがとな!
シルドラと居ると毎日が楽しいんだ。
後、格闘家を目指し常に鍛錬中のミルフとも
一緒に冒険してるんだぜ!!
おう。この飛行場のスタッフだなんて
頼もしいな。是非名前聞かせてくれないか?
もちろんー。
ボクの名前はビッケだよ!
改めてエアロブルーへようこそっ。
他のスタッフもいるから案内するよー。
あっ、そうなんだね!
じゃあ、ビッケくんお願い出来るかな?
女性スタッフ "ビッケ" との再会を経て
受付カウンター、土産ブース……そして
休憩室、喫茶などが完備されている施設を通り
シルドラ達が案内された場所は
スタッフだけが入れる事務室――。
VIPのような歓迎をされている事に気付き
冒険者や観光客の方々に頭を下げながら
他のスタッフが待機している事務室へと入って行く。
****
【???】
ちょ、ちょっとビッケ!
何、関係者以外の人を通してるの!?
もう、前言ったじゃんっ!
港町ビューウェーブに可愛い男の子が居たって。
彼がそのシルドラ君なんだー。
それとお仲間も一緒に連れて来たよ!
あら、そうだったのね……。
ビッケがお世話になったみたいで
ご迷惑にならなかったかしら?
もうっ、ボクもう1人前の操縦士だよー!
迷惑になんかなってないよね!?
もちろんだよー。可愛い子と
一緒にお話し出来たんで楽しかったです!!
【チャイ】
あ、自己紹介が遅れたわ。私はチャイ。
ビッケと同じで "エアライドライセンス" を
持っている操縦士よ。宜しくね!!
あっ、そう言えばシルドラ君って
クロスウッドって言う大陸出身だから
免許の名前言っても分からないんだよねー。
じゃあ、私が説明するわ。
エアライドライセンスって言うのは、
この世界で年齢が18になった時に飛行機や
様々な空の便を操縦する事が
出来る証のようなモノよ。
栄誉あるモノじゃないですか!
飛行機を操縦出来るなんて
並大抵じゃないと無理ですよー。
えっ、フラジーさんを
御存知無いんですか……。この飛行場で
働いている "伝説の操縦士" ですよ。
で、伝説……だと!?
お、俺も "レジェンド級の筋肉" に……
お、いつもだったら此処で
シルドラのツッコミが来ると思ったけど
ビッケが来たか。それもアリだな!!
ボク、実はレブロンさんの大ファンなんだー。
だから生で見れてホントに嬉しくって。
彼と一緒に冒険が出来てるシルドラ君が
羨ましいんだー。
まあー、いつも羽目外し過ぎて
収拾付かない時が多々あるけど……
熱血って言う言葉が
一番似合ってる男ですよー。
ビッケくん、握手して貰ったらどうかな?
事務室のソファでゆっくりとしていたのは
ビッケと同じ女性操縦士、チャイ。
そして、この世界の
飛行機業界に欠かせないモノこそ
2人共所持しているエアライドライセンス。
しかし、その免許を持つ意味の1つとして
空に携わると言う事は
一歩間違えたら命に係わる職業。
観光客や冒険者を様々な目的地に送り届けなければ
いけないと言った使命を帯びている為
生半可な気持ちでは取得する事は出来ない……。
様々な試練を乗り越えたに違いない。
そう、彼女等はエアロブルーの立派な操縦士――。
あれ、そう言えば
またフラジーさんが見当たらないけど
何処に行っちゃったのー!?
多分格納庫じゃないかしら……。
さっき機体の整備と補給をするって
張り切って行ったわよ。
あっ、そうだ。シルドラさん達も
もし良かったら格納庫見学してみませんか?
本来はダメなんですけど、
ビッケの友達と言う事なんで、
快く歓迎するわ。付いて来てくれるかしら?
やったー。ミルフさん、
レブロンさん行きましょう!!
事務室を退出し、関係者以外
立ち入り禁止と書かれたドアを開けると、
受付近くにあるロビーから
「皆楽しそうだな!」
「アンコールっ!!」と言った感想や声援を
送っている観光客や冒険者の姿が見受けられる――。
人の集まりが気になったビッケは……
お、ビッケくんじゃん!
あのモニターに映っている動画見てくれ。
皆楽しそうに歌を歌っているんだ!!!
受付カウンターに置かれた
パソコンで流している動画を
モニターで見れるように工夫が施されていて、
搭乗する時間まで退屈しないシステムを
飛行場エアロブルーでは採用している――。
彼女等が流していたのは
動画サイトで現在ライブストリーミングしている動画。
チャンネル名は「ジャックの異世界探索チャンネル」
可愛い青年から、様々な種族の人間が楽しそうに
"みんなとここで" と言う楽曲を歌っていた。
あっ、僕の好きな曲調だー。
それと確かに皆楽しそうに歌ってますね!!
歌うのは気持ち良いからな。
基本はロック聞くけど、皆が交互で歌う曲も
俺は悪くないぞ。多分このジャックって
言う奴が此処で皆と過ごした思い出が
全面に出てる楽曲だと思うぞ!!!
きっとこの歌詞は
初めて訪れた彼を快く歓迎してくれた
お礼を皆に伝えたいと言うメッセージが
含まれてるに違いない。だって、ほら……
仲良く歌っている以上に
手を繋ぎ合ってるだろ?
ここに映っている
皆が好きになりそうだな!!
ミルフはどうだ? この輪の中に
入ってみたいと思わないか?
もちろんだぜ。それにしても本当に
良い歌詞だ。シルドラ……
もちろんこれは高評価、そして
チャンネル登録だよな?
もちろんですっ!
ビッケくん、チャイさん……
お願い出来ますかー?
基本パソコン操作は
チャイがやってるんだよー。
それに此処のアカウントも実はあってね。
これから大空の旅を満喫する色んな方に
直撃インタビューする事をコンセプトに
動画作りしてるんですっ!
チャンネル名は
"大空の翼/エアロブルーチャンネル" よ。
是非見てくれると嬉しいです。
きちんと宣伝してる所、さすがです!
動画界隈って戦争って言いますもんね……
地道な努力が高評価に繋がりますっ。
編集って大変ですけど、頑張って下さい!!
シルドラ君、ありがとね。
よし、この子のチャンネルは登録完了っと。
さて、遅くなったけど
格納庫に向かう途中だったね。
付いて来て。もうすぐ到着するわ。
シルドラは異世界を探索する
ジャックの姿に自分と重ね合わせながら
"僕と同じく楽しそうな旅をしてるんだな"
"色んな方との交流も楽しい"
と胸に手を当ててどちらも舞台は違えど、
自分が楽しいと思える冒険をしているのは間違いないと
思いつつ、彼は更なるティブルエイドの
見知らぬ地への旅に期待を寄せていた。
そして10分後――。
****
ここは格納庫。
飛行機……と言うより
何方かと言えば4座席、
単発プロペラ推進、高翼式の軽飛行機と
言った機体シリーズが専用の台に置かれてあり
現在エンジンの確認、プロペラの手入れが行われていた。
見た事ない飛行機が沢山あるな。
お前等はこれを操縦してるんだろ?
そうなんだー。一部の世界では
セスナって言われてるんだ。
カッコよくない?
うん。こんな飛行機、本当に熟練した
教官や整備士の元で教わらないと操縦
出来ませんよー。相当頑張ったんですね!!
それにしても彼は何処かしら?
此処にいると思ったんですけど……
二輪車に積載されているモノを
急ピッチで運搬していた為、地面に
落ちていた小石に全く気付かず多いに
ぶち撒けてしまい、転倒してしまう
1人の男性を目の当たりにする――。
痛いよー。グスン……
もう早くしないとビッケが言ってた
シルドラ君が来ちゃうよー。まだ
全て整備が終わってないのにー!!!
貴方がフラジーさんですねっ。
初めましてー。僕の名前はシルドラっ!
宜しくお願いします!!
何か期待外れだな……。
伝説の操縦士って言ってたから
もっと威厳があると思ったんだけど……
ミルフ、人は見た目に寄らないぞ!
こう見えて操作テクは
凄いのかもしれない……。
この俺が君達を目的地に届けてやる。
自己紹介遅れたな。
名はフラジー=キュレー。エアロブルーで
整備士と操縦士を兼任してる。
宜しく頼むぞ。
その前に、シルドラ君……
俺と "アレ" をしなくちゃいけない。
伝説の操縦士、フラジー=キュレーは
普段天然で所々ドジだけど、人一倍飛行機の事が詳しく
操縦となると人格が変わり、自分が
名付けた秘技を
解放させてしまう――。
次回、シルドラ達の空前絶後且つ
史上最悪の空の旅が始まる……。
****
ここはフェルマータ城、崖の下にある停泊場――。
ヴァールブルク海賊団、船長ゼルガスと
船員達がフランバージュに捕われてしまい
リーダー、アレドシアを筆頭に地下牢へと案内されていた。
おい、ボサッと歩くな!
もっとテキパキと歩いたらどうだ?
よく見ろよ。ちゃんと歩いてるだろ!!
それと……汚ねぇ手で触るんじゃねぇ!!!
何言ってるんですか?
毎日念入りに洗ってますよ……。
ふん。アレドシア様の次に偉い僕に向かって
口答えするとは良い度胸だな。レブロンを
使ってシルドラを処理するのも
アリなんだけどな……
おい、何だと! 彼等の縁は深いんだ。
それを簡単に断ち切るなんて!!!
絶対に許さないからな……
冗談に決まってるだろ。
シルドラを処理するのはアレドシア様から
指示が下った時だ。それまで地下牢で
首を長くして待ってる事だ!!!
馬鹿は大人しくしてれば良いんだよ……。
どうせ逃げられないんだからな。
フランバージュのメンバー "ブロス"。
圧倒的な目付き、口調……その全てが
夥しい何かに憑依されたかのように
更にゼルガスを絶望に陥れていく……。
それと同時に、彼の身に
かつてない程の大ピンチが襲おうとも
誰も知る由も……、無い――。
第021話へ続く……。
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